【完結】冷遇され続けた私、悪魔公爵と結婚して社交界の花形になりました~妹と継母の陰謀は全てお見通しです~

深山きらら

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第七章 新しい始まり

穏やかな日々

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 妊娠の知らせは、すぐに広まった。
 王宮からも、祝福の手紙が届いた。社交界の友人たちも喜びの言葉を送ってくれた。

「公爵夫人、おめでとうございます!」
「きっと、美しいお子様がお生まれになるでしょう」

 エリアナは幸せだった。
 お腹の中で、小さな命が育っている。そのことが奇跡のように感じられた。

 ある日、エリアナは庭園で、薔薇の世話をしていた。
 医師からは、無理はしないようにと言われていたが、軽い運動は問題ないとのことだった。

「エリアナ様」

 ソフィアが足早に近づいてきた。

「お客様です」
「お客様?」

 エリアナが自分の客間へ行くと、そこにいたのは見知らぬ老婆だ。

 いや、よく見ると、老婆ではない。
 日に焼け、栄養状態が悪いため、年老いて見えるだけだ。
 皮膚に張りがなく、しおれている。腰も曲がっている。
 質素な服を着た、小柄な中年女性。

「エリアナ様、ご無沙汰しております。……わたくしです。マルタでございます。ご記憶でいらっしゃいますでしょうか」

 その声を聞くまで、エリアナにはわかっていなかった。はっと息を呑んだ。

「マルタ!」

 フォンティーヌ家で、唯一エリアナに優しくしてくれた侍女。
 エリアナの記憶にある姿と、目の前にいるくたびれきった女性が、うまく結びつかない。

「どうして、ここに……」
「フォンティーヌ家が没落した後、行く当てがなくなりまして……図々しいとは存じますが、エリアナ様にお会いしたくて……」

 マルタの目には、涙が浮かんでいた。
 エリアナは、彼女を抱きしめた。

「よく来てくれました、マルタ。あなたは、わたくしの恩人です」
「恩人だなんて……わたくしは、何もしてさしあげられなくて……」
「いいえ。あなたは、わたくしに優しくしてくれた。それが、どれほど嬉しかったか」

 エリアナは、すぐに決断した。

「長旅で疲れたでしょう。しばらく休んで、元気になったら……ここで働いてくれませんか?」
「え……」
「わたくしには、これから生まれる子供がいます。その子の世話を、あなたに手伝ってもらいたいのです」

 マルタは涙を流した。

「ありがとうございます……エリアナ様……願ってもないことでございます……!」

 こうして、マルタはヴァルモント家の一員となった。
 過去の優しさが、報われた瞬間だった。




 月日が流れ、エリアナのお腹は大きくなっていった。

 アレクシスは、妻を大切に扱った。
 重いものを持たせない。長時間立たせない。常に、彼女の体調を気遣う。

「あなた、過保護すぎますよ」

 エリアナは、苦笑した。

「いや、これでも足りないくらいだ」
 アレクシスは、真剣な顔で言った。
「君と子供を、絶対に守る」

 その言葉が、エリアナには嬉しかった。

 ある夜、二人はベッドで並んで横になっていた。
 エリアナのお腹を、アレクシスがそっと撫でる。

「動いた」
「え?」
「子供が、動いた。今、蹴った」

 エリアナは微笑んだ。

「元気な子ですね」
「ああ。きっと、君に似て、優しく強い子になる」
「あなたに似て、正義感の強い子になりますよ」

 二人は、微笑み合った。

「この子に、たくさんの愛情を注ぎましょう」
 エリアナが言った。
「わたくしが受けられなかった愛情を、この子にはすべて与えたい」

「ああ。そして、この子が自分を愛せるように、育てよう」
 アレクシスは、エリアナの額にキスをした。
「君が、私に教えてくれたように」

 二人は抱き合った。
 お腹の中の子供を、二人で包み込むように。
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