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第七章 新しい始まり
真実の代償
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名門貴族フォンティーヌ家は、あっという間に崩壊した。
リリアーナはアンリに離縁された。
「君のせいで、私の人生まで台無しになってしまった。君は疫病神だ」
官職を失ったアンリは、さんざん罵声を浴びせかけた。しかしリリアーナはひとことも反論できなかった。
父と母と自分が、エリアナを――そしてヴァルモント家を破滅させるために、悪だくみをしたのは事実だからだ。
そして、みじめに失敗した。
財産も地位も名誉も、すべて失ってしまった。
リリアーナは実家に戻った。
父ロベールと母マルグリットは、リリアーナを温かく迎えた。
三人は――王命で禁止されているにもかかわらず――金貨や貴金属を馬車数台に積めるだけ積み込んで、都を後にした。
西の国境を超えて、隣国へ。
隣国第二の都市に流れ着き、そこで立派な屋敷を借りて、暮らし始めた。
彼らの暮らしは、数か月もしないうちに、破綻した。
収入がないにもかかわらず、貴族だった頃と同じ贅沢を続けたせいだ。
「お金がない」という、生まれて初めての事態。
ロベールとマルグリットは毎日のように口喧嘩するようになった。
いつも優しかった両親の変わりぶりに、リリアーナは心を痛めた。
やがて、マルグリットは、その美貌で「パトロン」をつかんだ。
夜になると着飾ってでかけていき、朝方戻ってくる。帰宅するときには多額の金を握っている。その金が、一家の生活費となった。
「名誉ある伯爵夫人ともあろう者が、そんな、商売女みたいな真似を!」
ロベールは激怒したが、マルグリットはひるまなかった。
「何が名誉よ! わたくしたちには、もう何も残っていない。ただの平民でしょ!? 悔しかったら、あなたも外で働いて、生活費ぐらい稼いできたらどうなの!」
名門貴族の嫡男であるロベールには、「外で働く」など、思いもよらないことだった。
何もできない。何をしたらよいのかもわからない。それに、平民に命令を受けるなんて、耐えられない。
文句を言いながらも、マルグリットが男から受け取った金で、昼間から酒を飲んでばかりいた。
リリアーナは毎日、不安と悲しみで押しつぶされそうだった。
ある日の夕方。マルグリットはリリアーナを鏡台の前に座らせ、自らリリアーナの髪をくしけずった。
今でも最高級の香油で手入れしているので、艶を失わない長い金髪。
「あなたは本当にきれいだわ、リリアーナ。あなたはわたくしの宝物よ」
マルグリットの細い指が、そっと、リリアーナの頬に触れる。
「その美しさを……家のために役立ててはもらえないかしら?」
「……いったい、何をすれば?」
「大したことではないの。わたくしのお友達のお友達が、あなたに一度会ってみたいと言っていてね。その人と今夜、食事に行ってくれないかしら? この市の助役を務めている方でね。とても立派な人なのよ」
リリアーナは硬直した。
「難しく考えなくてもいいわ。あなたはただ、座って、にこにこしていればいいの。……やってくれるわよね?」
リリアーナも子供ではない。
母親が自分に何を求めているのか、完璧に理解した。
頬に触れる母親の指が、自分をからめ取る蜘蛛の糸のように思えた。
「その方は……素敵な方なの? 若くて、器量が良くて、お金を持っていて、優しい?」
「んーーー……お金持ちではあるけれど……見た目が良いとはいえないわね。だいぶ、お年をめしているし」
「……!」
リリアーナは目をしばたいて、涙をこらえた。
リリアーナはアンリに離縁された。
「君のせいで、私の人生まで台無しになってしまった。君は疫病神だ」
官職を失ったアンリは、さんざん罵声を浴びせかけた。しかしリリアーナはひとことも反論できなかった。
父と母と自分が、エリアナを――そしてヴァルモント家を破滅させるために、悪だくみをしたのは事実だからだ。
そして、みじめに失敗した。
財産も地位も名誉も、すべて失ってしまった。
リリアーナは実家に戻った。
父ロベールと母マルグリットは、リリアーナを温かく迎えた。
三人は――王命で禁止されているにもかかわらず――金貨や貴金属を馬車数台に積めるだけ積み込んで、都を後にした。
西の国境を超えて、隣国へ。
隣国第二の都市に流れ着き、そこで立派な屋敷を借りて、暮らし始めた。
彼らの暮らしは、数か月もしないうちに、破綻した。
収入がないにもかかわらず、貴族だった頃と同じ贅沢を続けたせいだ。
「お金がない」という、生まれて初めての事態。
ロベールとマルグリットは毎日のように口喧嘩するようになった。
いつも優しかった両親の変わりぶりに、リリアーナは心を痛めた。
やがて、マルグリットは、その美貌で「パトロン」をつかんだ。
夜になると着飾ってでかけていき、朝方戻ってくる。帰宅するときには多額の金を握っている。その金が、一家の生活費となった。
「名誉ある伯爵夫人ともあろう者が、そんな、商売女みたいな真似を!」
ロベールは激怒したが、マルグリットはひるまなかった。
「何が名誉よ! わたくしたちには、もう何も残っていない。ただの平民でしょ!? 悔しかったら、あなたも外で働いて、生活費ぐらい稼いできたらどうなの!」
名門貴族の嫡男であるロベールには、「外で働く」など、思いもよらないことだった。
何もできない。何をしたらよいのかもわからない。それに、平民に命令を受けるなんて、耐えられない。
文句を言いながらも、マルグリットが男から受け取った金で、昼間から酒を飲んでばかりいた。
リリアーナは毎日、不安と悲しみで押しつぶされそうだった。
ある日の夕方。マルグリットはリリアーナを鏡台の前に座らせ、自らリリアーナの髪をくしけずった。
今でも最高級の香油で手入れしているので、艶を失わない長い金髪。
「あなたは本当にきれいだわ、リリアーナ。あなたはわたくしの宝物よ」
マルグリットの細い指が、そっと、リリアーナの頬に触れる。
「その美しさを……家のために役立ててはもらえないかしら?」
「……いったい、何をすれば?」
「大したことではないの。わたくしのお友達のお友達が、あなたに一度会ってみたいと言っていてね。その人と今夜、食事に行ってくれないかしら? この市の助役を務めている方でね。とても立派な人なのよ」
リリアーナは硬直した。
「難しく考えなくてもいいわ。あなたはただ、座って、にこにこしていればいいの。……やってくれるわよね?」
リリアーナも子供ではない。
母親が自分に何を求めているのか、完璧に理解した。
頬に触れる母親の指が、自分をからめ取る蜘蛛の糸のように思えた。
「その方は……素敵な方なの? 若くて、器量が良くて、お金を持っていて、優しい?」
「んーーー……お金持ちではあるけれど……見た目が良いとはいえないわね。だいぶ、お年をめしているし」
「……!」
リリアーナは目をしばたいて、涙をこらえた。
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