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第二章 理解への扉
親交を深める
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「何を読んでいるのですか?」
「人間の歴史書だ」
竜王は本を見せた。
「お前たち人間は、短い生を生きる。だが、その短い時間の中で、実に多くのことを成し遂げる。戦争、平和、愛、憎しみ。全てが凝縮されている」
「あなたは…人間のことを、どう思っているのですか?」
竜王は、本を閉じた。
「わからない」
その答えは意外だった。
「千年生きても、人間は理解できない。お前たちは複雑だ。善良でありながら残酷で、愚かでありながら賢い。矛盾に満ちている」
「それは…竜も同じではありませんか?」
アリアーナの言葉に、竜王は目を見開いた。
「本で読みましたわ。……竜も矛盾している。力強いのに孤独で、永遠を生きるのに何かを求めている。竜は自らの心を理解できないことがある、と」
竜王は、長い沈黙の後、笑った。
それは、低く、どこか寂しげな笑いだった。
「お前は…本当に不思議な人間だ、アリアーナ」
初めて、竜王が彼女の名を呼んだ。
その声は、思いのほか優しかった。
その日から、奇妙な日常が始まった。
朝になると、竜王が人間の姿で部屋を訪れる。そして二人で図書室へ行き、本を読む。時々、竜王が本の内容について質問し、アリアーナが答える。あるいは、アリアーナが質問し、竜王が答える。
「この物語の主人公は、なぜ愛する者を裏切ったのでしょう」
「それは……愛しているからこそ、ではないか」
竜王は、窓の外を見つめた。
「愛する者を危険から守るため、あえて突き放した。お前たち人間は、そういうことをする」
「あなたは……そういうことをしたことが?」
「ない」
竜王は即座に答えた。
「竜は、愛する者を守るためなら、世界を敵に回す。突き放すなど、考えもしない」
その言葉には、強い確信が込められていた。
日が経つにつれ、アリアーナは城での生活に慣れていった。クロエや他の使用人たちとも親しくなった。彼女たちもまた、かつての生贄だった。そして今は、この城で穏やかに暮らしている。
使用人として働いているのは、何もせずに城の中で生き続けることに耐えられなかったからだ。
クロエがアリアーナを見る目に、ときおり、悲しみの色が交じっている――と、アリアーナは感じるようになった。
クロエはいつも微笑んでいて、とても優しいのだが。
ときどき悲しげな、つらそうな光を目に浮かべることがある。
「竜王様は、本当にお優しい方です」
クロエが、ある日そう言った。
「恐ろしい姿をしておられますが、心は誰よりも優しい。我々を家族のように扱ってくださる」
「でも、なぜ生贄の儀式を続けるのでしょう」
アリアーナの問いに、クロエは首を振った。
「それは、竜王様にもどうすることもできない契約なのです」
「契約?」
「ええ。太古の昔、人間と竜が結んだ契約。その詳細は、竜王様しか知りません」
アリアーナは、その夜、竜王に直接尋ねることにした。
「人間の歴史書だ」
竜王は本を見せた。
「お前たち人間は、短い生を生きる。だが、その短い時間の中で、実に多くのことを成し遂げる。戦争、平和、愛、憎しみ。全てが凝縮されている」
「あなたは…人間のことを、どう思っているのですか?」
竜王は、本を閉じた。
「わからない」
その答えは意外だった。
「千年生きても、人間は理解できない。お前たちは複雑だ。善良でありながら残酷で、愚かでありながら賢い。矛盾に満ちている」
「それは…竜も同じではありませんか?」
アリアーナの言葉に、竜王は目を見開いた。
「本で読みましたわ。……竜も矛盾している。力強いのに孤独で、永遠を生きるのに何かを求めている。竜は自らの心を理解できないことがある、と」
竜王は、長い沈黙の後、笑った。
それは、低く、どこか寂しげな笑いだった。
「お前は…本当に不思議な人間だ、アリアーナ」
初めて、竜王が彼女の名を呼んだ。
その声は、思いのほか優しかった。
その日から、奇妙な日常が始まった。
朝になると、竜王が人間の姿で部屋を訪れる。そして二人で図書室へ行き、本を読む。時々、竜王が本の内容について質問し、アリアーナが答える。あるいは、アリアーナが質問し、竜王が答える。
「この物語の主人公は、なぜ愛する者を裏切ったのでしょう」
「それは……愛しているからこそ、ではないか」
竜王は、窓の外を見つめた。
「愛する者を危険から守るため、あえて突き放した。お前たち人間は、そういうことをする」
「あなたは……そういうことをしたことが?」
「ない」
竜王は即座に答えた。
「竜は、愛する者を守るためなら、世界を敵に回す。突き放すなど、考えもしない」
その言葉には、強い確信が込められていた。
日が経つにつれ、アリアーナは城での生活に慣れていった。クロエや他の使用人たちとも親しくなった。彼女たちもまた、かつての生贄だった。そして今は、この城で穏やかに暮らしている。
使用人として働いているのは、何もせずに城の中で生き続けることに耐えられなかったからだ。
クロエがアリアーナを見る目に、ときおり、悲しみの色が交じっている――と、アリアーナは感じるようになった。
クロエはいつも微笑んでいて、とても優しいのだが。
ときどき悲しげな、つらそうな光を目に浮かべることがある。
「竜王様は、本当にお優しい方です」
クロエが、ある日そう言った。
「恐ろしい姿をしておられますが、心は誰よりも優しい。我々を家族のように扱ってくださる」
「でも、なぜ生贄の儀式を続けるのでしょう」
アリアーナの問いに、クロエは首を振った。
「それは、竜王様にもどうすることもできない契約なのです」
「契約?」
「ええ。太古の昔、人間と竜が結んだ契約。その詳細は、竜王様しか知りません」
アリアーナは、その夜、竜王に直接尋ねることにした。
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