【完結】生贄にされた私が竜王陛下に溺愛されて、陥れた妹たちにざまぁしたら、幸せすぎて困ってます

深山きらら

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第三章 芽生える想い

未練なんてない

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 アリアーナは見る見るうちに衰弱していった。もう、自力でベッドに体を起こすこともできない。
 水を少し飲むだけで、食事はもう何日も摂れていなかった。

 クロエと侍医長がずっとアリアーナのそばについていたが――何ができるわけでもない。

 竜王の心痛は、誰の目にも明らかだった。
 竜王が部屋に入ってくるたび、侍医長は恐怖で身を震わせた。アリアーナを救えない自分に、竜王が制裁を下すのではないかと恐れているのだ。

 しかし、竜王は、アリアーナしか見ていなかった。

 ぐったりした体を、優しく抱き起こした。

「死なないでくれ。お前を失いたくない」
「私も……あなたと離れたくありません」

 アリアーナは、竜王の腕の中で囁いた。

「でも……人間は、いつか死ぬものです」
「まだ早い。お前はまだ若い。少なくとも、あと何十年は生きるはずだ」
「ごめんなさい……」

 涙が、アリアーナの血の気のない頬を伝った。

「……私、まだあなたと一緒にいたかった……」

 竜王は、何かを決心したように顔を上げた。

「方法が……ないわけではない。一か八かだが」
「え?」
「お前を、不老にする方法がある」

 アリアーナは、息を呑んだ。

「それは……?」
「竜族の秘術だ。伴侶に、自らの魔力を永久に分け与える。そうすれば、お前は不老不死になる」
「そんな秘術が……あるのでしたら、ぜひ……」
「しかし、代償がある。お前は人間ではなくなる。半竜、と呼ぶべき存在となる。人間でもなく竜族でもないが……魔力を持ち、永遠の時を生きる。二度と人間に戻ることはできない」

 アリアーナがその言葉の意味を理解するのに、時間がかかった。
 不老不死。永遠の命。けれど、人間ではなくなる。

「考える時間を……」
「ない」

 竜王は、彼女の手を握った。

「お前の命は、今夜までもたない」
「え……」
「選べ、アリアーナ。私と永遠を生きるか。それとも、人間として死ぬか」

 その問いは、あまりにも重かった。

 アリアーナの頭の中で、様々な思考が渦巻いた。
 人間でなくなる。それは、何を意味するのだろう。

 ぼんやりしていて――考え続けるのが難しい。

 けれども。
 自分が死んだら、竜王を悲しませることになる。
 そう思ったら――答えはただ一つしかないような気がした。

「私は……」

 アリアーナは、竜王の目を見つめた。

「あなたと一緒にいたい。永遠に」

 竜王の目が、大きく見開かれた。

「本当に、いいのか」
「はい」

 アリアーナは微笑んだ。

「私の居場所は、ここです」

 アリアーナはクロエに頼んで、ずっと首にかけていたネックレスを外してもらった。小さな水色の宝石がついたネックレス。生贄に捧げられた日、父がくれた母の形見だ。

 捨ててください、とアリアーナは言った。
 クロエは驚いた様子だった。

「でも、これは……大切な物では……?」
「私には……大切なものなんか、ありません。竜王様以外には……」

 弱々しく微笑むアリアーナ。

 クロエは窓を開け、大きな動作で、ネックレスを外へ投げ捨てた。
 その様子を、アリアーナは満ち足りた思いで眺めていた。

 宝石はきらきら光りながら雲海の中へ消えていく。



「おまえの覚悟、しかと受け取った。儀式を始めよう」

 竜王は、アリアーナを抱き上げた。
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