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拾われた聖女
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冷たい。そう感じるはずだった。
けれど、彼の素手から流れ込んできたのは、ピリピリした強大な力の奔流だった。
魔力だ。ものすごい量の。
「……ぁ……」
思わず声が漏れる。
男の目が、驚愕に見開かれたのが分かった。
「生きてたのか。それに……凍らない、だと?」
彼は信じられないものを見るような目で自分の手と、私の顔を交互に見た。
そして次の瞬間、彼はまるで壊れ物を扱うかのように、その太くたくましい腕で私を抱き上げたのだ。
ふわりと体が浮く。
彼の胸板の厚さと、そこから伝わる圧倒的な体温に、私は包み込まれた。
清潔で冷ややかな冬の香りがするのに、どうしようもなく温かい。
「見つけた」
彼は私の耳元で、獲物を捕らえた獣のように低く囁いた。
「俺の熱に耐えられる女……。お前を、逃がさない」
その言葉の意味を理解する前に、私の意識は完全に途切れた。
次に目を覚ましたとき、私は天蓋付きの豪奢なベッドの上にいた。
暖炉の火がパチパチと爆ぜる音が聞こえる。
柔らかい絹の肌触りに戸惑いながら身を起こすと、部屋の隅にある一人掛けのソファに、あの銀髪の男性が座っていることに気づいた。
彼は足を組み、書類を読んでいたが、私が動く気配を感じて顔を上げた。
明るいところで見ると、その美貌は人間離れしていた。彫刻のように整った顔立ちだが、表情は氷のように冷たい。
「目覚めたか」
「あ、あの……ここは……?」
「俺の屋敷だ。シルヴィアン公爵領へようこそ」
シルヴィアン公爵。
その名を聞いた瞬間、私は息を飲んだ。
「氷の魔公爵」。北の辺境を治めるその人は、強大すぎる魔力を持つがゆえに、触れたもの全てを凍らせてしまうという恐ろしい噂の持ち主だ。冷酷無比で、人の心を持たないとも言われている。
私は慌ててベッドから下りようとして、ふらついた。
「動くな」
鋭い声。
私はすくみ上がった。
「ひっ……!」
反射的に身を縮めた。
殴られる、怒鳴られる。染みついた恐怖が蘇る。
公爵様は私の反応を見て、わずかに眉をひそめた。
ため息をつき、サイドテーブルにあった椀を手に取って近づいてくる。
「怯えるな。取って食いやしない」
「す、すみません……ごめんなさい……」
「謝るな。お前は何もしていない」
彼は椀を私の口元に突き出した。
湯気が立つスープだ。野菜と肉が煮込まれた、良い匂いがする。
「食え」
「え……?」
「冷えた体は、中からも温める必要がある」
命令口調だが、その目は私の様子を慎重に観察していた。
恐る恐る受け取った。まだ動きにくい手で、ゆっくり匙を扱う。
スープは温かかった。じんわりと染み渡る旨味に、思わず涙が出そうになった。こんなに温かい食事を、ゆっくり摂ったのはいつ以来だろう。
「……おいしい、です」
「そうか。なら全部食え」
彼の口調はぶっきらぼうだが、悪意は感じられない。
私はスープをすべて飲み干した。空になった器を返すと、彼は満足したようにうなずいた。
けれど、彼の素手から流れ込んできたのは、ピリピリした強大な力の奔流だった。
魔力だ。ものすごい量の。
「……ぁ……」
思わず声が漏れる。
男の目が、驚愕に見開かれたのが分かった。
「生きてたのか。それに……凍らない、だと?」
彼は信じられないものを見るような目で自分の手と、私の顔を交互に見た。
そして次の瞬間、彼はまるで壊れ物を扱うかのように、その太くたくましい腕で私を抱き上げたのだ。
ふわりと体が浮く。
彼の胸板の厚さと、そこから伝わる圧倒的な体温に、私は包み込まれた。
清潔で冷ややかな冬の香りがするのに、どうしようもなく温かい。
「見つけた」
彼は私の耳元で、獲物を捕らえた獣のように低く囁いた。
「俺の熱に耐えられる女……。お前を、逃がさない」
その言葉の意味を理解する前に、私の意識は完全に途切れた。
次に目を覚ましたとき、私は天蓋付きの豪奢なベッドの上にいた。
暖炉の火がパチパチと爆ぜる音が聞こえる。
柔らかい絹の肌触りに戸惑いながら身を起こすと、部屋の隅にある一人掛けのソファに、あの銀髪の男性が座っていることに気づいた。
彼は足を組み、書類を読んでいたが、私が動く気配を感じて顔を上げた。
明るいところで見ると、その美貌は人間離れしていた。彫刻のように整った顔立ちだが、表情は氷のように冷たい。
「目覚めたか」
「あ、あの……ここは……?」
「俺の屋敷だ。シルヴィアン公爵領へようこそ」
シルヴィアン公爵。
その名を聞いた瞬間、私は息を飲んだ。
「氷の魔公爵」。北の辺境を治めるその人は、強大すぎる魔力を持つがゆえに、触れたもの全てを凍らせてしまうという恐ろしい噂の持ち主だ。冷酷無比で、人の心を持たないとも言われている。
私は慌ててベッドから下りようとして、ふらついた。
「動くな」
鋭い声。
私はすくみ上がった。
「ひっ……!」
反射的に身を縮めた。
殴られる、怒鳴られる。染みついた恐怖が蘇る。
公爵様は私の反応を見て、わずかに眉をひそめた。
ため息をつき、サイドテーブルにあった椀を手に取って近づいてくる。
「怯えるな。取って食いやしない」
「す、すみません……ごめんなさい……」
「謝るな。お前は何もしていない」
彼は椀を私の口元に突き出した。
湯気が立つスープだ。野菜と肉が煮込まれた、良い匂いがする。
「食え」
「え……?」
「冷えた体は、中からも温める必要がある」
命令口調だが、その目は私の様子を慎重に観察していた。
恐る恐る受け取った。まだ動きにくい手で、ゆっくり匙を扱う。
スープは温かかった。じんわりと染み渡る旨味に、思わず涙が出そうになった。こんなに温かい食事を、ゆっくり摂ったのはいつ以来だろう。
「……おいしい、です」
「そうか。なら全部食え」
彼の口調はぶっきらぼうだが、悪意は感じられない。
私はスープをすべて飲み干した。空になった器を返すと、彼は満足したようにうなずいた。
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