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氷の公爵様は、甘く溶かしたい
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王城での騒動を終え、私たちは公爵領の屋敷へと戻ってきた。
帰りの馬車で揺られたせいか、少しうとうとしていた私は、体がふわりと浮き上がる感覚で目を覚ました。
「あ……クラウス様? 自分で歩けます」
「寝ていろ。長旅で疲れただろう」
屋敷の玄関ホール。クラウス様は当然のように私をお姫様抱っこしたまま、出迎えた使用人たちの前を堂々と歩いていく。
使用人たちは「おかえりなさいませ!」「奥様、よくぞあのような場所から無事にご生還を!」と、なぜか感涙しながら拍手で迎えてくれた。
そのまま連れて行かれたのは、私室ではなく、クラウス様の寝室だ。
「着替えを用意させる。……いや、下がっていい」
クラウス様は着替えを持ってきたメイドたちを追い払うと、鍵をカチャリと閉めた。
広い部屋に、二人きり。
「あの、クラウス様……?」
「ジゼル、こっちへ」
彼はベッドの縁に腰掛けると、自分の膝をポンと叩いた。
もう慣れたものだ。私は大人しく、彼の膝の上に収まる。
彼の体温は相変わらずひんやりとしていて、私の過剰な魔力の熱をスッと吸い取ってくれる。極上のエアコンのようだ。
「……今日は、よくやったな」
クラウス様は背後から私を包み込むと、私の髪に指を通した。
その手つきは、壊れ物を扱うように優しい。
「あの国王たちに、あんなふうに言い返せるとは思わなかった」
「いえ……全部、クラウス様が言ってくださったおかげです。私はただ、守られていただけです」
「それでいい。お前は俺の守備範囲の中で、ただ笑っていればいいんだ」
彼はドレッサーから櫛を手に取ると、私の長い髪を梳かし始めた。
サラ、サラ、と心地よい音が響く。
氷の魔公爵ともあろうお方が、妻の髪を梳かしているなんて、誰も信じないだろう。
「クラウス様、そんなことまで……使用人に任せれば」
「嫌だ。他の誰かがお前に触れるのは、髪の毛一本でも許せない」
独占欲たっぷりの言葉。
けれど、鏡越しに見える彼の表情は、嫉妬に狂っているというよりは、宝物を愛でる子供のように穏やかだった。
「それに、お前の髪は温かい。太陽の匂いがする」
「クラウス様の髪は、雪の匂いがしますね。……私、好きです」
私がそう伝えると、櫛を動かす手がピタリと止まった。
次の瞬間、首筋に冷たくて柔らかい感触。
彼が背後から、私のうなじにキスを落としたのだ。
「ひゃっ……!」
「……煽るな。ただでさえ、今日はずっとお前を抱きしめたくて我慢していたんだ」
彼は櫛を置くと、私を押し倒すようにしてベッドに沈めた。
上から覆いかぶさる彼の銀髪が、カーテンのように私の視界を塞ぐ。
アイスブルーの瞳が、熱を帯びてとろりと潤んでいる。
「ジゼル。……充電させてくれ」
「充、電……?」
「ああ。お前の熱がないと、もう生きていけない体になってしまった」
それは、魔力のパスをつなぐための口実なのか、それとも本心なのか。
彼は私の頬、まぶた、そして唇へと、雨粒のような優しいキスを降らせた。
冷たい唇が触れるたびに、私の体温が上がり、それを彼が嬉しそうに冷やす。
永遠に続くような、甘い悪循環。
「ん……く、クラウス様……くすぐったい……」
「我慢しろ。……今日は朝まで離さないと言っただろう?」
彼は私の首元に顔を埋め、深く息を吸い込んだ。
「元婚約者のことなど、記憶の欠片も残らないくらい、俺で上書きしてやる」
「もう、とっくに……クラウス様でいっぱいです……」
私の正直な告白に、彼は一瞬目を見開き、それから今まで見たこともないような、氷河さえも溶かすような甘い笑顔を見せた。
「……そうか。なら、もっといっぱいにしてやらないとな」
その夜、私は「抱き枕」の役目を果たしているはずが、いつの間にか彼に抱きしめられ、甘やかされ、とろとろに溶かされて眠りについたのだった。
もう、捨てられた聖女なんて呼ばせない。
私は、世界一過保護な氷の公爵様の、愛され花嫁なのだから。
帰りの馬車で揺られたせいか、少しうとうとしていた私は、体がふわりと浮き上がる感覚で目を覚ました。
「あ……クラウス様? 自分で歩けます」
「寝ていろ。長旅で疲れただろう」
屋敷の玄関ホール。クラウス様は当然のように私をお姫様抱っこしたまま、出迎えた使用人たちの前を堂々と歩いていく。
使用人たちは「おかえりなさいませ!」「奥様、よくぞあのような場所から無事にご生還を!」と、なぜか感涙しながら拍手で迎えてくれた。
そのまま連れて行かれたのは、私室ではなく、クラウス様の寝室だ。
「着替えを用意させる。……いや、下がっていい」
クラウス様は着替えを持ってきたメイドたちを追い払うと、鍵をカチャリと閉めた。
広い部屋に、二人きり。
「あの、クラウス様……?」
「ジゼル、こっちへ」
彼はベッドの縁に腰掛けると、自分の膝をポンと叩いた。
もう慣れたものだ。私は大人しく、彼の膝の上に収まる。
彼の体温は相変わらずひんやりとしていて、私の過剰な魔力の熱をスッと吸い取ってくれる。極上のエアコンのようだ。
「……今日は、よくやったな」
クラウス様は背後から私を包み込むと、私の髪に指を通した。
その手つきは、壊れ物を扱うように優しい。
「あの国王たちに、あんなふうに言い返せるとは思わなかった」
「いえ……全部、クラウス様が言ってくださったおかげです。私はただ、守られていただけです」
「それでいい。お前は俺の守備範囲の中で、ただ笑っていればいいんだ」
彼はドレッサーから櫛を手に取ると、私の長い髪を梳かし始めた。
サラ、サラ、と心地よい音が響く。
氷の魔公爵ともあろうお方が、妻の髪を梳かしているなんて、誰も信じないだろう。
「クラウス様、そんなことまで……使用人に任せれば」
「嫌だ。他の誰かがお前に触れるのは、髪の毛一本でも許せない」
独占欲たっぷりの言葉。
けれど、鏡越しに見える彼の表情は、嫉妬に狂っているというよりは、宝物を愛でる子供のように穏やかだった。
「それに、お前の髪は温かい。太陽の匂いがする」
「クラウス様の髪は、雪の匂いがしますね。……私、好きです」
私がそう伝えると、櫛を動かす手がピタリと止まった。
次の瞬間、首筋に冷たくて柔らかい感触。
彼が背後から、私のうなじにキスを落としたのだ。
「ひゃっ……!」
「……煽るな。ただでさえ、今日はずっとお前を抱きしめたくて我慢していたんだ」
彼は櫛を置くと、私を押し倒すようにしてベッドに沈めた。
上から覆いかぶさる彼の銀髪が、カーテンのように私の視界を塞ぐ。
アイスブルーの瞳が、熱を帯びてとろりと潤んでいる。
「ジゼル。……充電させてくれ」
「充、電……?」
「ああ。お前の熱がないと、もう生きていけない体になってしまった」
それは、魔力のパスをつなぐための口実なのか、それとも本心なのか。
彼は私の頬、まぶた、そして唇へと、雨粒のような優しいキスを降らせた。
冷たい唇が触れるたびに、私の体温が上がり、それを彼が嬉しそうに冷やす。
永遠に続くような、甘い悪循環。
「ん……く、クラウス様……くすぐったい……」
「我慢しろ。……今日は朝まで離さないと言っただろう?」
彼は私の首元に顔を埋め、深く息を吸い込んだ。
「元婚約者のことなど、記憶の欠片も残らないくらい、俺で上書きしてやる」
「もう、とっくに……クラウス様でいっぱいです……」
私の正直な告白に、彼は一瞬目を見開き、それから今まで見たこともないような、氷河さえも溶かすような甘い笑顔を見せた。
「……そうか。なら、もっといっぱいにしてやらないとな」
その夜、私は「抱き枕」の役目を果たしているはずが、いつの間にか彼に抱きしめられ、甘やかされ、とろとろに溶かされて眠りについたのだった。
もう、捨てられた聖女なんて呼ばせない。
私は、世界一過保護な氷の公爵様の、愛され花嫁なのだから。
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