【完結】辺境伯の溺愛が重すぎます~追放された薬師見習いは、領主様に囲われています~

深山きらら

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涙があふれる

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 アディは国境の村に入り、患者たちの治療に当たった。
 ルーファスも、彼女の側を離れなかった。兵士たちを指揮し、村の封鎖を確実なものにしながら、常にアディの近くにいた。

 アディは不眠不休で、治療薬の開発に取り組んだ。
 薬草を採取し、調合し、試行錯誤を繰り返す。時には、感染のリスクがある患者のそばに長時間いることもあった。

「アディ、少し休め。このままでは、お前が倒れる」

 ルーファスは何度も休憩を促したが、アディは首を横に振った。

「大丈夫です。もう少しで、完成します……」

 彼女の顔は青白く、目の下にはができていた。それでも、その瞳は決意に燃えていた。

 ふとした拍子に、自分の疲れを自覚することがある。
 けれども、ルーファスがくれたペンダントを握りしめると――全身に力がみなぎってくる。変な話だが、彼に背後からそっと抱きしめられているような気がする。
 だから、アディはがんばれる。一人じゃないから、いくらでもがんばれるのだ。

 三日目の夜、ついに治療薬が完成した。

「できました……!」

 アディは歓喜の声を上げたが、その直後、めまいに襲われた。

「アディ!」

 ルーファスが彼女を支えた。

「大丈夫……です……これを、患者さんたちに……」

 治療薬はすぐに患者たちに投与された。そして、驚くべき効果を発揮した。
 高熱が下がり、咳が収まり、患者たちが次々と回復していく。村には、希望の光が戻ってきた。

「治った……」
「アディ様のおかげだ……」

 人々は涙を流しながら、感謝の言葉を述べた。

 だが、アディ自身は、もう限界だった。
 過労と、おそらくは感染の影響で、彼女の体は悲鳴を上げていた。

「領主様……よかった……みんな、助かって……」

 そう呟いて、アディはルーファスの腕の中で意識を失った。



「アディ! アディ!」

 ルーファスは彼女を抱き上げ、すぐに領主館へ運ぶよう指示した。
 馬車の中で、ルーファスはアディを抱きしめたまま、必死に呼びかけ続けた。

「目を覚ませ……頼む……」

 彼の声は震えていた。

(また失うのか。また、大切な人を失うのか)

 五年前の悪夢がよみがえってくる。
 セリーヌが息を引き取ったときの、あの絶望。あの喪失感。
 それがまた繰り返されようとしているのか。

「嫌だ……お前を失うのは嫌だ……」

 ルーファスの目から、涙があふれた。
 五年間、一度も流さなかった涙が、今、止まらなくなった。

「アディ……頼む……目を覚ましてくれ……」
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