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両親の深い愛
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セシリアは翌日さっそく、ルパートの馬車を借りて、フォレスター侯爵の屋敷へ向かった。
レティシアは、セシリアの外出に嫌な顔をしたが、「妊娠について実家に報告に行くのです」と言うセシリアを止める理由がない。
しかし、セシリアが実家を訪れるのは、まったく違う目的のためだった。
セシリアが祖母から相続した小さな領地を、弟に譲渡する。
フォレスター侯爵家から、セシリアを相続排除してもらう。
そのための手続きを、父に依頼するつもりだった。
自分の持っているもの、フォレスター侯爵家のものを、何一つロザリンドの子に相続させたくなかったのだ。
何も知らない両親は、喜んでセシリアを迎えた。
「元気そうね、セシリア。ルパート様とはうまくやっている?」
母が優しくセシリアを抱きしめる。
セシリアはぎこちなく微笑んだ。
メアリーに頼んで、「特に顔色が良く見える」ような化粧をしてきてよかった、と思った。
「お前に苦労をかけることになって、申し訳ないと思っている、セシリア。だが……レンフォード家では良くしてもらっているようだな。よかった。本当によかった」
父の目に涙が光る。
「私たちはいつも、あなたの幸せを祈っているのよ」
母も微笑む。
「レンフォード家の嫁として恥ずかしくない格好を」というレティシアの見栄で、セシリアは結婚後、豪華な外出着を仕立ててもらっている。それが両親の目には、セシリアが大切にされているように映るのだろう。
セシリアは胸がつまる思いがした。
両親は確かに、金のためにセシリアをレンフォード家に売り渡したが――セシリアの不幸を願っていたわけではない。
ルパートは、セシリアと年齢も近く、非常に裕福で、悪い噂もない。容姿も美しい。
たとえ政略結婚だとしても悪くない相手だ、きっと幸せになれる、と両親は判断したのだろう。
もしも両親が真実を知ったら。セシリアがレンフォード家でどんな扱いを受けているか知ったら。
父は即座に、セシリアを離縁させるに違いない、と確信できてしまった。
たとえその結果、フォレスター家が破産に追い込まれるとしても。父はセシリアの不幸を許容しないだろう。
そう思うと――セシリアは何も言えなくなった。
領地の譲渡。相続排除。そんなことを頼んだら、きっと理由を尋ねられる。
本当のことを両親に知られるわけにはいかない。
どんなに屈辱的でも、この結婚を続けなければいけないのだ。家族を守るためには。
セシリアは実家の庭を歩いた。たった三か月ほど離れただけなのに、ずいぶんひさしぶりな気がした。
なじみ深い風景が、心を癒してくれる。
そのとき。向こうから歩いてくる長身の男の姿が、セシリアの目にとまった。
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