【完結】あなたを正しく消し去る方法

●やきいもほくほく●

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ー欲望ー

②④

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「それからフラーウムの美しい姿を見せびらかせにきたんだ。もう悲劇の王女なんて言わせないよ…………フラーウムは足先から髪の先まですべて僕のものだ」

「……ッ!?」


信じられないほどに低い声にアスファルの額に冷や汗が滲んだ。
彼のオーラに圧倒されているのか、これから何が起こるかわからない恐怖からなのかガクガクと足が震えてしまう。
フラーウムのダルモンテ王国での扱いを知っているようだが、アスファルはそれよりも気になることがある。

(今……なんて言った? 処罰して首を持ち帰る? それって……僕とヴィジョン伯爵のことか?)

ヴィジョン伯爵のフルネームはデイビス・ヴィジョンだ。
ルアンはアスファルとヴィジョン伯爵の名前を出している。
聞き間違えでなければ、彼はアスファルとヴィジョン伯爵に用がありここにいることになる。


「ルアン様、本性が出ていますよ。少し抑えてくださいませ」

「ああ、ごめんね。特にガルビン男爵は許せないから挽肉にしてやらないと気が済まない」

「…………!」

「簡単には死なせたくないから……ねぇ?」


やはりルアンはアスファルを最終的には殺す気でいるようだ。
その理由もわからない。
アスファルは自分を売り込むどころではないと悟る。

(まずは理由を聞いてっ……きっと誤解しているんだ。いや、殺されないように逃げるべきか?)

アスファルは無意識に一歩、また一歩と後ろに下がっていた時だった。
後ろから怒りを孕んだ金切り声が響く。
彼女の元に行こうとしようとした時にはもう遅かった。

タイミング悪くラウラとヴィジョン伯爵がこちらにやってきてしまう。


「アスファル、どこに行っていたのよ! わたくしをエスコートしないなんてどういうつもり!?」


アスファルの名前を呼ばれたことで、ルアンのまとっていた空気が瞬時に切り替わる。
あまりの威圧感に顔を上げることができない。
そんな様子にラウラは苛立ちを滲ませているが、目の前にいるルアンとフラーウムに気がついたのだろう。
彼女はすぐに外行きの顔に変わる。
ヴィジョン伯爵も彼らの高貴な服装に気がついたのだろう。


「わたくしにも紹介してちょうだい!」

「アスファル、何をしているんだ。ちゃんとしろっ」


シャツが汗に濡れてベッタリとくっついていた。
これ以上は何も言えない。うまく息が吸えないままだ。
しかしルアンはにっこりと笑顔であることを問いかける。


「君たちは……?」

「アスファルが申し訳ありません。私はデイビス・ヴィジョンと申し……」


ヴィジョン伯爵が手を前に出しながらそう言いかけた時だった。

──バシュッ!

先ほどまで話していたはずのヴィジョン伯爵の首がアスファルとラウラの前にゴロリと転がった。
飛び散る真っ赤な血液がスローモーションのように映し出されていた。
静まり返る会場でルアンが剣に付着した血を払う。
飛び散った彼の血はラウラのドレスとアスファルの手にかかる。
まるで〝次はお前たちの番だ〟と言われたような気がした。
カチャリと剣をしまう音がきこえる。


「──イヤアアァァアァッ、お父さまあぁっ!」


血溜まりを見つめながら呆然としている自分とは違い、ラウラの叫び声が会場いっぱいに響き渡る。
ラウラは恐怖からかわけのわからない暴言を吐きちらしていた。
隣にいたアスファルが反射的に彼女を止めようと声を絞り出そうとした時だった。
再び抜かれた剣によって、ポトリとラウラの首が落ちた。
周囲の令嬢たちが悲鳴を上げる。
フラーウムは顔色一つ変えない。そんなところがもっと恐ろしいではないか。


「……な、んで」

「何故? 彼の一族もろとも葬り去るんだよ。それでも足りないけどね」


両側には首のない体が横たわっている。
そんなアスファルの呟きに答えるようにルアンはにっこりと笑う。


「君とヴィジョン伯爵は協力してアーテルム帝国から身寄りのない孤児を集めて攫っては奴隷として売っていたそうじゃないか」

「…………は?」

「ヴィジョン伯爵が主犯格……君はそれを運んでいた。運び屋だ」


初めて聞く真実にアスファルは目を見開いた。


「なっ……ありえません! 誤解ですっ」

「言い訳はいらないよ。確固たる証拠があるからこうしているんだ」

「ほ、本当なんです……! 何を運んでいるのかは教えてくれませんでした。僕は何も知らなかったんだっ」


アスファルは自分の無実を証明しようと必死だった。
ヴィジョン伯爵から何も聞かされなかったのは事実なのだろうか。


「知らない、ね。知ろうとしなかっただけじゃないのか? 彼は子どもを好んで攫っていた。君にも覚えがあるんじゃないかい?」


アスファルの額にじんわりと汗が滲む。
ガンガンと音が鳴り、動く箱を不気味に思っていたこともある。
何が入っているのか気づいてないのではない。
気づいたらいけなかったのだ。
ヴィジョン伯爵がアスファルの弟や妹たちのことに異様に執着していたことを思い出す。

(まさか……本当に?)

アスファルはどんどんと青ざめていく。
これ以上、言葉はでなかった。


「君が何も言わずとも君の部下が色々と白状してくれたんだ。それに……弟や妹たちを見捨てて売ろうとしたことも聞いているよ」

「……そ、そんなわけないじゃないですか! 彼らは突然、いなくなったんだ! それはフラーがっ」
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