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ー欲望ー
②⑤
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フラーのせいにしようとして口をつぐむ。
彼女は目の前にいる。それにルアンに溺愛されていることを考えると余計なことを言うべきではないと悟る。
「あはは! なら、本人たちから話を聞こうか。みんな、おいでよ」
ルアンの後ろから現れたのは侍女や燕尾服を着た妹や弟たちだった。
彼らも血に濡れるアスファルを冷めた目で見下している。
「彼らを捨ててもいいと言った。ヴィジョン伯爵に売ろうとしていたんだろう?」
「そんなわけっ……!」
「だが、いらないと言ったのは事実だ」
「──ッ!?」
あの時、ヴィジョン伯爵と二人で話していたはずなのにどうしてそのことを知っているのか。
アスファルには理解できなかった。
「奴隷として売られる前に、彼らをフラーウムが助けたんだ」
「……!」
ルアンはフラーウムとアスファルの間にあったやりとりも知っていたのだろうか。
ガクガクと震えるアスファルとは違い、ルアンはとても楽しそうに笑っている。
だけどフラーウムも弟や妹もアスファルを見下していた。
誰もアスファルを助けようとはしない。声すらかけることはなかった。
だけどそうなるのも当たり前だろう。アスファルは彼らを助けなかったのだから。
アスファルは欲望のまま動いていた。
「さて……どう責任を取ってもらおうか」
アスファルの前に突きつけられた剣先。
目の前には絶望しかないのにある言葉を思い出す。
『アスファル……欲に溺れるなよ。大切なものを失うことになるからな』
これがアスファルが欲に溺れた結末だった。
動けずにいるアスファルの首元から剣が離れていく。
そしてルアンの唇が耳元へ。
「楽に死ねると思うなよ?」
あまりの恐ろしさにアスファルは涙と鼻水が流れ出る。
アスファルは首を横に振ることしかできない。
妹や弟たちはそんなアスファルをただ見ているだけ。
謝りたくても、話したくてもそのチャンスすらないのだろう。
いくらでもやり直すことはできたのに、アスファル自身がそれを拒絶したのだ。
ルアンの体が離れた途端、アスファルはどこかから現れた帝国の騎士たちに腕を捕まれる。
「嫌だヤダヤダッ! 助けてっ、助けてくれえぇっ」
「…………」
「頼むっ、頼むがらあ゛あ゛ぁっ!」
いくら謝ろうとも叫ぼうとも、誰もアスファルを助けてはくれない。
これが一番大切にすべきものを裏切り続けた結果なのだろうか。
「お願いだ、フラー……! 助けてぇ、僕を助けてっ」
そんな時、フラーウムがアスファルを見て目を細めた。
彼女の口角が徐々に吊り上がっていく。
『 さ よ な ら 』
フラーウムは頬を赤く染めて、下品な娼婦のように興奮した笑みを浮かべている。
(もう……僕が知っている〝フラー〟はいなくなってしまった)
その表情は心の底からアスファルの死を喜んでいるように見えた。
それは美しくも残酷な笑顔だった。
* * *
フラーウムはルアンから離れてテラスに出た。
晴れ渡る空、そよそよと吹く風はとても気持ちいい。
髪を掻き上げてため息を吐いた。
後処理はルアンに任せていいだろう。
彼ならば腐りきった王家を丸め込むなど容易いことだ。
あの後、元家族に挨拶をしたが王妃とリリアンの間抜けな顔が忘れられない。
(シュヴァルツお兄様はいつ気がつくのかしら……あの人も本当に馬鹿よね)
死んだと思った妹が地位を手にして、権力に守られているのを見て思うところがあったのだろう。
ダルモンテ国王……父親も同様だ。
あの驚いた顔を見ただけでも今日はルアンと共にここに足を運んだ甲斐があったというものだ。
中でも性悪なリリアンの悔しそうな顔には腹を抱えて笑いたくなった。
最初はアスファルと幸せな道を歩めると思っていた。
けれど彼も欲に飲み込まれて変わってしまった。
アイツらと同じ、フラーウムの敵となったのだ。
(お前たちを潰すためなら私は悪魔に心臓を捧げたっていい……全員、地獄に堕ちろ)
後ろには侍女の格好をしたアスファルの妹が無表情でフラーウムにストールをかける。
アスファルトの弟と妹たちを引き取ったことに後悔はない。
つらい境遇を乗り越えて互いに支え合って命を繋いだのだ。
「フラーウム……大丈夫?」
テラスに足を踏み入れる一人の女性。
アスファルの妹が二人の姿が見えないようにすかさずカーテンを閉めた。
「ああ、お姉様……! ありがとうございます。すべてお姉様のおかげよ」
「えらいわ。フラーウム……よくやったわね」
褒められたフラーウムは彼女に抱きついた。
彼女は優しくフラーウムのハニーゴールドの髪を撫でる。
それだけで涙が溢れそうになる。
彼女がいなければ真実を知ることはなかった。
フラーウムはアスファルの妹や弟たちと共に、のたれ死んでいただろう。
「お姉様、もう少し待っていてね。他の子たちも動き出すから」
「そうね。あなたのおかげでスムーズに進みそうだわ」
「私の命はお姉様のものよ。必ず手に入れましょう……お姉様の欲しいものを」
「ふふ……ありがとう、フラーウム。頼りにしているから」
ー欲望ー end
彼女は目の前にいる。それにルアンに溺愛されていることを考えると余計なことを言うべきではないと悟る。
「あはは! なら、本人たちから話を聞こうか。みんな、おいでよ」
ルアンの後ろから現れたのは侍女や燕尾服を着た妹や弟たちだった。
彼らも血に濡れるアスファルを冷めた目で見下している。
「彼らを捨ててもいいと言った。ヴィジョン伯爵に売ろうとしていたんだろう?」
「そんなわけっ……!」
「だが、いらないと言ったのは事実だ」
「──ッ!?」
あの時、ヴィジョン伯爵と二人で話していたはずなのにどうしてそのことを知っているのか。
アスファルには理解できなかった。
「奴隷として売られる前に、彼らをフラーウムが助けたんだ」
「……!」
ルアンはフラーウムとアスファルの間にあったやりとりも知っていたのだろうか。
ガクガクと震えるアスファルとは違い、ルアンはとても楽しそうに笑っている。
だけどフラーウムも弟や妹もアスファルを見下していた。
誰もアスファルを助けようとはしない。声すらかけることはなかった。
だけどそうなるのも当たり前だろう。アスファルは彼らを助けなかったのだから。
アスファルは欲望のまま動いていた。
「さて……どう責任を取ってもらおうか」
アスファルの前に突きつけられた剣先。
目の前には絶望しかないのにある言葉を思い出す。
『アスファル……欲に溺れるなよ。大切なものを失うことになるからな』
これがアスファルが欲に溺れた結末だった。
動けずにいるアスファルの首元から剣が離れていく。
そしてルアンの唇が耳元へ。
「楽に死ねると思うなよ?」
あまりの恐ろしさにアスファルは涙と鼻水が流れ出る。
アスファルは首を横に振ることしかできない。
妹や弟たちはそんなアスファルをただ見ているだけ。
謝りたくても、話したくてもそのチャンスすらないのだろう。
いくらでもやり直すことはできたのに、アスファル自身がそれを拒絶したのだ。
ルアンの体が離れた途端、アスファルはどこかから現れた帝国の騎士たちに腕を捕まれる。
「嫌だヤダヤダッ! 助けてっ、助けてくれえぇっ」
「…………」
「頼むっ、頼むがらあ゛あ゛ぁっ!」
いくら謝ろうとも叫ぼうとも、誰もアスファルを助けてはくれない。
これが一番大切にすべきものを裏切り続けた結果なのだろうか。
「お願いだ、フラー……! 助けてぇ、僕を助けてっ」
そんな時、フラーウムがアスファルを見て目を細めた。
彼女の口角が徐々に吊り上がっていく。
『 さ よ な ら 』
フラーウムは頬を赤く染めて、下品な娼婦のように興奮した笑みを浮かべている。
(もう……僕が知っている〝フラー〟はいなくなってしまった)
その表情は心の底からアスファルの死を喜んでいるように見えた。
それは美しくも残酷な笑顔だった。
* * *
フラーウムはルアンから離れてテラスに出た。
晴れ渡る空、そよそよと吹く風はとても気持ちいい。
髪を掻き上げてため息を吐いた。
後処理はルアンに任せていいだろう。
彼ならば腐りきった王家を丸め込むなど容易いことだ。
あの後、元家族に挨拶をしたが王妃とリリアンの間抜けな顔が忘れられない。
(シュヴァルツお兄様はいつ気がつくのかしら……あの人も本当に馬鹿よね)
死んだと思った妹が地位を手にして、権力に守られているのを見て思うところがあったのだろう。
ダルモンテ国王……父親も同様だ。
あの驚いた顔を見ただけでも今日はルアンと共にここに足を運んだ甲斐があったというものだ。
中でも性悪なリリアンの悔しそうな顔には腹を抱えて笑いたくなった。
最初はアスファルと幸せな道を歩めると思っていた。
けれど彼も欲に飲み込まれて変わってしまった。
アイツらと同じ、フラーウムの敵となったのだ。
(お前たちを潰すためなら私は悪魔に心臓を捧げたっていい……全員、地獄に堕ちろ)
後ろには侍女の格好をしたアスファルの妹が無表情でフラーウムにストールをかける。
アスファルトの弟と妹たちを引き取ったことに後悔はない。
つらい境遇を乗り越えて互いに支え合って命を繋いだのだ。
「フラーウム……大丈夫?」
テラスに足を踏み入れる一人の女性。
アスファルの妹が二人の姿が見えないようにすかさずカーテンを閉めた。
「ああ、お姉様……! ありがとうございます。すべてお姉様のおかげよ」
「えらいわ。フラーウム……よくやったわね」
褒められたフラーウムは彼女に抱きついた。
彼女は優しくフラーウムのハニーゴールドの髪を撫でる。
それだけで涙が溢れそうになる。
彼女がいなければ真実を知ることはなかった。
フラーウムはアスファルの妹や弟たちと共に、のたれ死んでいただろう。
「お姉様、もう少し待っていてね。他の子たちも動き出すから」
「そうね。あなたのおかげでスムーズに進みそうだわ」
「私の命はお姉様のものよ。必ず手に入れましょう……お姉様の欲しいものを」
「ふふ……ありがとう、フラーウム。頼りにしているから」
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