【短編集】

●やきいもほくほく●

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ふしぎの国の悪役令嬢はざまぁされたって構わない!〜超塩対応だった婚約者が溺愛してくるなんて聞いていませんけど!〜

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「………めでたし、めでたし」

「ファビオラお嬢様、くだらないことばかり言うのはやめてくださいませ」

「くだらなくないわっ!だって、こんな展開あんまりだと思わない!?」

「思いません。髪を結えるのでじっとしていてください」

「エマは超可愛いくせに超冷たいんだから」

「…………。意味がわからないので黙ってください」

「はぁ~~~」


大きな溜息を吐いたファビオラは、鏡に映った自分の姿を見た。
この国には珍しい黒髪に白のメッシュが所々に入っている。
瞳は林檎のような赤。まるで童話の中から出てくる魔女のような毒々しい色合いの女の子だ。
家名が〝ブラック〟に関係しているためか、ファビオラや家族は黒い瞳か黒い髪を持っている。

ここでマスクウェルとの準備の途中だが気分を切り替えて、ロマンス小説の舞台の説明をしよう。

まず、この小説のヒロインのアリス・レッド。
アリスはレッド公爵家の令嬢でマスクウェルの婚約者だった可愛らしい少女だ。
この国を古くから支え続けた古参の貴族で、アリスは攻略対象者のトレイヴォンと幼馴染。トレイヴォン・ダイヤは公爵令息で騎士だ。

ハート女王はマスクウェルとアリスの間を引き裂いて、国を守ることを選んだ。
婚約者だった二人は引き離されてしまう。
とは言っても、今の段階では十二歳なので、まだ愛とか恋とかではないようだ。

ファビオラが悪役令嬢としてヒロインの『アリス』の前に立ちはだかるのが十六歳。
ファビオラは正統派の悪役令嬢でプライドが高く、我儘で傲慢な美少女。
ちなみにあまり頭はよくない。
ファビオラはマスクウェル・ハート・トランプの婚約者であることを誇りに思っていた。

薄々気づいている方はいるだろうがテーマとなっているのは『トランプ』である。
他の攻略対象者にサンドラー・スペードとカイド・クローバーがいるが、トランプ学園に通うまでは関係ないので今は割愛させていただこう。

マスクウェルはいつも柔らかい笑顔でいるのだが、本当はこの婚約に大きな不満がある。
しかしハート女王はマスクウェルの気持ちよりも王家を優先させた。
今、王家は貴族達からの不満を受けて板挟み状態だ。
これは新興貴族の勢いと古参貴族の不満を中和するために組まれた縁談だった。
王家の真の目的はブラック伯爵家の勢いを抑えて管理下に置くこと。
そしてお金目的で近づいてくる貴族の令息達の中でファビオラがマスクウェルを選んだ理由は……顔がいいことと王子様であることだ。

アリスとファビオラ、真逆な性格な二人なのだが、どちらを選ぶのか明白だろう。
そして引き裂かれたアリスとマスクウェル。
ブラック家の一人娘で女王様として育ってきたファビオラはマスクウェルとの初めての顔合わせで「あなたの顔が好きだから婚約者にしてあげる」と言った。

しかし今のファビオラもマスクウェルの顔に惚れ込んでいるため、性格は違うけれど物語上は道筋通りに進んでいるのである。
そんなファビオラの態度にマスクウェルがどう思ったのか……考えれば簡単だ。
マスクウェルにとってファビオラは好きでもなんでもなく全く興味を持っていない。

しかしそんな関係性に変化が起こる。
婚約してからファビオラはマスクウェルに本気で恋をしてしまう。
顔がタイプで王太子として完璧に振る舞い、民達に慕われる優しさを持っているマスクウェル。
裏の顔とのギャップがまたたまらない。
間近で見ていて惚れるなという方が無理だろう。
立場はいつの間にか逆転していき、マスクウェルの魅力にファビオラの方がハマってしまう。

十六歳でトランプ学園に入学した際に、アリスとマスクウェルは久しぶりに再会する。
アリスはマスクウェルの疲れた心を癒していき、以前は恋心がなかった二人の関係に変化が訪れる。

ファビオラはマスクウェルの気持ちの変化に気づき、アリスをあの手この手で追い詰めようとする。
しかしアリスは持ち前の明るさと粘り強さでファビオラに対抗していく。
マスクウェルとアリスの絆はより強固なものとなり、そこでファビオラは二人の絆を見せつけられて絶望へ。
そしてマスクウェルの愛が絶対に手に入らないことを悟り、ついに凶行に走る……とのことだ。

その中でも絶対的にアリスを慕っており、彼女の魅力にどっぷりと浸かっているのが幼馴染のトレイヴォン。
アリスのためならどんなことでもしてしまう闇深い一面もあり、ファビオラを断罪する騎士。
つまりマスクウェルと共にアリスを守り、ファビオラを断罪する瞬間、最高に盛り上がる。
トレイヴォンを選んだ場合も同じようなことが起こる。

しかしアリスを虐げることは今のファビオラには不可能だ。
だからアリスがマスクウェルと幸せになるためにできることをする。それしかない。

その前には断罪されないために、マスクウェルと関わらないようにして婚約者にならないようにしようと考えていた。
もし婚約者になったとしてもアリスを虐めないようにしてマスクウェルがヒロインに惚れたらそっと身を引けばいい……と思っていたがその野望は見事に砕け散った。
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