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ふしぎの国の悪役令嬢はざまぁされたって構わない!〜超塩対応だった婚約者が溺愛してくるなんて聞いていませんけど!〜
⑨
しおりを挟む「それに今日、マスクウェル殿下の顔面に見惚れていたら、ついつい紅茶にお砂糖入れ過ぎてしまったわ……!えへへ、でもさすがエマね。あの手捌き惚れ惚れしてしまうわ。あっ、何でああなったかって言うと、マスクウェル殿下が何でわたくしにだけ塩対応なのかってことを考えていたからで……まぁ、少し寂しいけどマスクウェル殿下のためなら何でも我慢出来るわ!欲を言えば、優しく微笑み掛けてもらったりなんかしちゃったりして!フフッ、そしたらまるで本当の婚約者同士みたいになれるのかしら」
「…………」
「ああ、言わなくてもわかってるわ。本当はマスクウェル殿下に嫌われているのかしら。笑ってくれないし、一緒にいても詰まらなそうにしているもの。でも嫌われてたっていいの!わたくし愛に生きるって決めたから!たとえ使い捨てにされるだけだとしても、マスクウェル殿下の幸せを見届けるまで生きていこうって決めたのに……わたくしったらダメね」
「…………」
「エマ、怒らないでね。でもマスクウェル殿下が別の人と結ばれたら……結ばれたら、多分ご飯が一週間くらい喉を通らない自信があるわ!でもトレイヴォン様が〝そうなっても俺がもらってやる〟って言っていたし、大丈夫よね?三年前のあの約束はまだ有効なのかしら……エマはどう思う?」
「……!?」
「でもね、正直なところ……こうしてマスクウェル殿下と過ごすとどんどん欲張りになっていくの。こんなわたくしじゃマスクウェル殿下に嫌われちゃうわ……!ねぇ、エマ。さっきからわたくしの話を聞いてる?怒ってるなら機嫌直してよ。わたくしはエマの幸せも勿論、願ってるし……そういえばこの間、縁談がきたって言っていたけど、やっぱりわたくしは受けるべきだと思うの!」
ノックの音が聞こえて、バタンと扉が開く音と共にファビオラは
体を起こす。
ワゴンを引いたエマがこちらににやって来る姿が見えた。
それと同時に紅茶の良い香りが立ち込める。
ここでファビオラが何かが違うことに気づく。
(あれ……?何でワゴンを引いたエマが扉からやってくるの?)
エマから「ファビオラお嬢様、目が覚めたのですね」と冷静な言葉が聞こえた。
エマが今、扉から入ってきたというのなら今、誰と話していたのだろうか。
(き、気のせいよ……!たまたまカタンって音がして、わたくしが勝手に一人で喋っていただけよ!そ、そうでしょう!?誰かそうだと言って)
冷や汗がタラリと流れていく。
ギギギッと首をゆっくりと動かすと、ベッドの横に座っている人物を見て思いきり目を見開いた。
(───ギャアアアアアァアアァァッ!)
自分が今、早口すぎて何を言ったのか思い出せなかった。
エマにいつも語りかけるようにして喋ってしまったのはマスクウェルについてだ。
つまり本人に相談していたということになる。
(わ、わたくし……マスクウェル殿下に何を言ったの?)
答えは自分の心内を全てである。
鋭い視線にファビオラはエマに助けを求めるように視線を送る。
ただ自分が普段、エマに話しているような気持ちを赤裸々に喋ってしまったことだけは理解できた。
しかしエマはまたいつものようにマスクウェルの前ではしゃいでいただけだろうと思っているのだろう。
エマのフォローを期待できないと思ったファビオラは人差し指を合わせながら視線を泳がせる。
「あー……」
「…………」
目の前に座っているのは、氷のような表情でこちらを見ているマスクウェル。
その瞬間、ファビオラの頭が真っ白になる。
思考を停止したファビオラの口から咄嗟に出てきた言葉は自分でも予想できないものだった。
「あっ……好きです」
「……」
「…………っ!」
二人の間に、今までにない気まずい沈黙が流れた。
ファビオラの全身の毛穴から汗が噴きだしていく。
エマも何かやらかしたのだと状況を把握しようと頭をフル回転させているようだった。
ワゴンを持ったまま珍しく固まっている。
ずっと長い時間、地獄のような時間を過ごして数秒……。
マクスウェルの形のいい唇がゆっくりと開いた。
「…………君の気持ちは十分、わかったよ」
「へ……?」
「目が覚めてよかった。僕は失礼するよ」
「…………は、ひ?」
立ち上がって部屋から出て行くマスクウェルの後ろ姿を見ながらファビオラは動けずにいた。
エマがマスクウェルを案内するために早足で彼の後を追いかけていった。
どのくらい時間が経ったのかはわからない。
その間「マスクウェル殿下にここまで付き添ってくれた御礼をいわなくちゃ」とか「わたくし、何を喋ったんだっけ?」と答えが出ないことをぐるぐると考えていた。
エマが部屋に戻ってきたことはわかっても、声すら出せずにいた。
「…………ファビオラお嬢様」
「……ッ」
「大丈夫ですか?」
エマの声に、ファビオラの体の力がフッと抜けてベッドの後ろに倒れ込んだ。
そして「うわぁあぁあぁん!」と、子供のように泣きながらベッドの上に伏せになりゴロゴロと体を左右に動かした。
「どうしようぅうぅ、やっちゃったあああぁ!マスクウェル殿下の前でッ、マスクウェル殿下の前でぇぇっ」
「落ち着いて下さい、ファビオラお嬢様。マスクウェル殿下は……」
「うわあぁん!エマァァァッ!エマァアアァァッ」
「……うるさいです。お嬢様」
「クールゥウゥッ、でも好きぃ」
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