【短編集】

●やきいもほくほく●

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"全く興味がない"それだけだった

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「今はソリッド兄様の事は関係ないだろう!?」

「もしミケーレ様の意思で婚約を解消するならば、ソリッド様とランドリゲス公爵に相談した方が良いと思いますわ」

「‥‥っ、俺だってランドリゲス公爵家の人間だ!」

「あまり役には立っていないようですけど‥」

「――!!」

「あらまぁ‥わたくしったら思っていたことが口から出てしまいましたわ」

「‥っ」

「申し訳ございません、ミケーレ様」


ついつい本音が出てしまったと、ソフィーアはわざと口元を押さえた。
それだけでミケーレは顔を真っ赤にして震えている。
どうやら反論の言葉すら出てこないのだろう。
口をパクパクさせている。

ソフィーアは万が一の為にパチンと小さく指を鳴らして準備をする。

ミケーレの怒りが爆発するのも時間の問題だろうと思いつつも、ソフィーアはミケーレをどんどんと追い立てていく。


「どういたしますか?ランドリゲス公爵家のミケーレ様が御自分で決めてくださいませ」

「‥‥」

「ああ、やはりミケーレ様には‥」


ぐっとミケーレが拳を握りしめる。
ソフィーアが目を細めてミケーレの動向を追っていた時だった。




―――パンッ




乾いた音が響く。

ミケーレの容赦のない手のひらがソフィーアの頬を叩いたのだ。
カラカラとテーブルの上に曲がった眼鏡が転がった。


(あーあ、ついにやりやがったわ。この馬鹿が)


いくら苛立って言葉が出ないからといって、手を上げるとは流石に思っていなかったソフィーアはギロリとミケーレを睨みつける。

手が痺れて痛いのか、泣きそうになりながらソフィーアを見ているミケーレ。
一応はいけないと思っているようだ。

ミケーレに叩かれたと、腫れた頬をランドリゲス公爵に見せたところで、またいつものように貢物と権力、そして「ミケーレにはよく言って聞かせるから」と言われるだけで何も意味はない。

ランドリゲス公爵夫人に毎度毎度、家に来られて「本当はとても良い子なんです」と泣かれるのも勘弁して欲しいものである。

それでは毎回、同じことの繰り返しで埒があかない。

だからこそソフィーアは"確実"が欲しかった。
勿論、この時の映像も後々大切に使わせてもらおう。


「俺だって、そのくらい自分で決められるッ!」

「‥どうでしょう」

「お前がっ、お前がそこまで言うのなら婚約破棄してやる!!」

「そうですか」

「――俺がお前を振ったんだっ!間違えるなよ!!」


ソフィーアは腫れた頬を押さえながら、1枚の紙を差し出す。
それにミケーレから婚約破棄してくれるのなら、これ以上有難い事はないとソフィーアは思っていた。

むしろ思惑通りに動いてくれるミケーレを見ていると気持ちいいくらいだ。
頬の痛みなど忘れてしまうくらいに。


「これはわたくしとの婚約を"ミケーレ様の意思で破棄する"と証明する書類です。此処にサインして下さいませ」

「っ、そんなものなくたって父上に言えばいいだろ!?」

「わたくしの両親を納得させる為だと思って‥お願い致します」


ミケーレはレンドルター伯爵家に嫌われているとは微塵も思っていない。
むしろ自分が婚約者で良かったな、的な態度である。
それにミケーレにランドリゲス公爵に報告しに行かれる事、それだけは避けたかった。

ソフィーアが静かに頭を下げる。
目的の為ならば、どんな事でも耐えてみせよう。


「ミケーレ様に、わたくしからの最後のお願いです」

「ふ、ふん‥そこまで言うのならサインしてやろう」


ミケーレはソフィーアの態度に気を良くしたのかソフィーアの提示した紙にサインする。
どうやら「お願い」という言葉が効いたようだ。

それにしても、書類をよく読みもしないでサインをしてしまうミケーレには尊敬してしまう。

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