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1巻
1-3
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それだけでも驚きではあるが、ランダルトとお茶をしたいかと言われたら、勿論答えはノーだ。
「お断り致します」
「…………」
「わたくしは殿下と関わりたくありませんし、婚約者には絶対に、なりたくありません」
「……お前の気持ちは分かった」
「ならば、そのようにお伝えくださいませ」
パルファンは腕を組んで壁にもたれかかる。
そして俯いていた顔を上げ、真っ直ぐにローズレイを見た。
「父上と母上を困らせる気か……?」
「…………」
「今、ランダルトの機嫌を損ねたくない。それに逃げられなくなる前に折り合いをつけて従った方が身の為だぞ」
正論……確かにパルファンの言う通りだった。
このままローズレイが拒否し続ければ、両親に迷惑を掛けてしまうだろう。
それに家名に泥を塗る事にも繋がる。
「婚約者になれと言っているわけじゃない。関わりたくないのなら本人にそう言えばいい」
「……!?」
「今は俺の友人だからな」
目の前にいる男は、本当にパルファン・ヒューレッドだろうか……?
ゆっくりとローズレイに近づいてくるパルファンから目が離せなかった。
身構える事も忘れて、ローズレイはパルファンを見上げる。
パルファンは、そっと跪くとローズレイの手を取った。
「…………以前は、すまなかった」
「………………え?」
「おかげで目が覚めた、今ではランダルトの側近として側にいるんだ」
「そう、ですか……」
「本当に申し訳なかった……」
「…………」
「…………」
「えっと…………はい」
真剣な顔でパルファンは頭を下げてから、スッと立ち上がると、驚きすぎて固まっているローズレイに微笑みかける。
「綺麗になったな、ローズレイ」
ボボっと顔が赤くなるのを感じて、ローズレイはパルファンに握られて手を振り払い、両手で頬を押さえてクルリと背を向ける。
「…………ローズレイ?」
「お兄様」
「……?」
「いきなりデレないでください」
「……デレ? それはなんだ」
少し大人びた兄に以前の横暴さはまるでなかった。
ローズレイは深呼吸をしてから咳払いをする。
表情を戻してからパルファンへと向き直る。
「…………我儘を言って申し訳ありません……行きます」
パルファンは「えらいな」と言ってローズレイの頭を優しく撫でた。
そしてパルファンとの会話は、信じられないくらいよく弾んだ。
今度帰った時に手合わせをしよう、街に美味しいお菓子がある……何気ない話だったが、普通に会話が成立していた。
こんな風にパルファンと話したのは初めてではないだろうか。
五年前にぶっ潰そうとしていたパルファンと、一瞬で距離が縮まったようだ。
完全に信頼しているわけではないが、嘘をついている様子もない。
ローズレイに対する敵意は全く感じなかった。
何より、五年越しのパルファンからの誠意の篭った謝罪は胸に響いた。
けれど、気の進まないお茶会の場に一歩、また一歩と近づいて行く。
「わたくし、お兄様が羨ましいわ」
「…………何故だ?」
「その足で何処にでも行けて、好きに学ぶ事が出来て、新しい世界を見れるのでしょう……? わたくしは、まだここから出た事もないのに…………お兄様は何でも手に入れられるのよ? 本当に羨ましい……」
「………………それは」
「護身術も身に付けましたのに……お父様とお母様には〝まだ外に出てはいけない〟と言われて……」
「そうか…………そう、だったのか……」
パルファンは神妙な面持ちで、納得したように頷いた。
「……俺もお前が羨ましかったんだ。両親から愛情を一身に受けて宝物のように大切にされていたお前が……」
「…………お兄様」
「お前も苦しかったんだな……今日、ここに来て良かった。胸につかえていたものが取れた気がする」
晴れやかな気持ちだ、とパルファンは続けた。
コツコツとブーツの音が廊下に響く。
「父上に許可を取らねばな」
「……何の許可ですか?」
「お前の側にいてもいいという許可だ」
「そんなものいりませんわ……また階段から突き落とされるのなら話は別ですが」
「おいおいローズレイ、悪い冗談はよしてくれ」
「ふふ、もう簡単には突き落とされませんわよ?」
ローズレイが笑みを浮かべると、パルファンはひらひらと両手を上げた。
そんな軽口を叩く間にも、ランダルトの待つ場所への距離が近づいていく。
「くれぐれも失礼のないようにな」
「…………分かっています」
「しかし何故、婚約者になりたくないんだ? この国に住む者ならば一度は望む事だろう?」
王太子と結婚して王妃になる。
どの令嬢も一度は夢見る事だ。
だからこそ、それを拒否するローズレイに違和感を覚えるのだろう。
しかし、この先の未来が分かっているローズレイからしてみれば、スフィアが絡む恋愛事情に巻き込まれたくはないし、闇に飲まれて国を失いたくもない。
ランダルトがスフィアを好きになる事が分かっているのに、婚約してわざわざ振られるなんてごめんである。
入れ替わって二度目の人生、自分の幸せを掴む為に頑張りたい。
だからこそ、ランダルトとの婚約は何としても避けたかった。
「…………わたくし、愛のない殿方との結婚より、お父様とお母様のように愛に溢れた結婚をしたいのです」
前の世界では、生きるために必死で恋をしている暇がなかった。
せっかく新しいチャンスを貰えたのだ。
お互いを尊重出来るような素晴らしい恋愛をしてみたい。
「待て、ローズレイ!」
何故だか兄が急に慌て出したが、止める気はない。
「あの貼り付けたような笑みが嫌なのです! あの顔見まして? わたくしに全く興味なんてありませんわ……!」
冷静に見れば分かる事だ。
恋に浮かれた以前のローズレイには分からなかったのかもしれないが、嘘くさい笑顔、上辺だけの優しさ。
ローズレイの事など何一つ見ていない。
「おい……!」
そう話すローズレイの後ろを見て、焦ったような声を出すパルファン。
なんだろうと疑問に思い、振り向くと……
「…………そんな事は、ないと思うけどね」
いつの間にか背後にいるランダルトに、ローズレイは目を見開いた。
「いつまでも来ないから迎えに来たんだけど、面白い話が聞こえてね……」
「……すまない、ランダルト」
「パルファン、君の妹は随分と面白い御令嬢のようだね」
「殿下に褒められるなんて光栄ですわ」
「はぁ……」
パルファンが溜息を吐いた。
失礼のないように……と、先程言ったばかりなのにコレでは、兄としてはそういう反応にもなるだろう。
ローズレイとしてはとにかく、婚約者にならない事が目標である。
なので、この先ランダルトに嫌われようが構わない。
それなのに、ランダルトは怒りもせずに笑顔でローズレイを見ていた。
「お茶会の続きといこうか。ねぇ……? パルファン、ローズレイ」
そんなランダルトの一言で始まった嵐のようなお茶会は、なんとか無事に終わった。
ご機嫌なランダルトと胃を押さえていたパルファンを見送った後、庭で摘み取った花を花瓶に生けながら、ローズレイは何度目か分からない溜息を吐いた。
ランダルトがここまで強引に食らいついてくるのは予想外だった。
それに、ローズレイの記憶にあるランダルトとは反応が違っていた。
以前は家の取り決めで婚約したので、関係はアッサリとしたものだったのだ。
パルファンに変化があったから、側にいるランダルトの性格も少し変わったという事も考えられるが、ここまでローズレイに対しての態度が変わるものだろうか?
(…………分からない)
それにローズレイは、王太子の婚約者になったからこそ外に出る事を許された。
けれど、婚約するつもりは毛頭ないので、いつ外に出られるかは分からない。
公爵家の庭は広大で、散歩するにしても十五分以上は掛かってしまう。
それにずっと同じ景色を見続けるのは退屈だ。
これからもずっと屋敷にいたいかと問われれば、答えはノーだ。
それに何かあった時の為に外の世界を知っておきたい。
ローズレイはすぐにビスクの部屋へと駆け出した。
「外に行きたい……?」
「はい、お父様。わたくしもみんなのように街にお出かけしてみたいのです」
「…………どうしようね」
「お願いします」
「外、か……」
ローズレイも強くなった。
初めてのお出かけには良い時期だろう。
真剣な顔のビスクに違和感を募らせながらも、ローズレイは外に行きたいと強く訴えた。
ローズレイの予想に反して、ビスクは難しい顔をしている。
眉間のシワを更に深めて、何かを考えているようだった。
「ゼフ……リズレイは?」
「ご婦人方とサロンで過ごされております」
「終わり次第、この件を伝えよ」
「かしこまりました」
ゼフは音もなく現れて、音もなく去って行く。
ローズレイは、いくら鍛えてもゼフのように気配を消す事は出来ない。
「いいな……わたくしもゼフのような人が欲しい……」
心の声がポロリと漏れた。
ゼフのように、強くて仕事が出来る人が側にいてくれたら……と思ったのだ。
執事や侍女ではなく、単純にローズレイを支えてくれる味方が欲しいのかもしれない。
しかし、ローズレイは大切な事を忘れていた。
父の前で無闇に〝欲しい〟と言ってはいけない事を……
――チリンチリン!!
ビスクが鳴らした激しいベルの音と共に、屋敷で働く者達が集合する。
その異常な光景に、ローズレイは瞬きをパチパチと繰り返す事しか出来なかった。
ここ最近はなかったので失念していたが、ローズレイの〝欲しい〟をビスクは見逃さない。
普段から何も欲しがらないからと、隙があればローズレイを甘やかそうと全力を尽くすビスク。
その恐ろしさを改めて知る事になろうとは……!
「お、お父さま…………」
「今すぐローズレイと歳も近く、武術に長けて、知識と教養がある子供を探してくれっ!」
前のローズレイは、ビスクと特に深く関わる事はなかったからか、どんな時も冷静で何を考えているか分からない父親、という印象しかなかったようだ。
しかし……今のビスクはどうだろうか。
何故か年々ローズレイを甘やかすようになっている。
恥ずかしいやら、皆に申し訳ないやらで、ローズレイは手のひらで顔を覆う。
それに以前とは違い、リズレイの過干渉もビスクが間に入ってくれるおかげで、負担は軽くなっていた。
もちろん、ローズレイも出来る範囲でリズレイの期待に応えるようにしているが、出来ない事は出来ないと伝えている。
だから心の余裕もあるし、楽しんで毎日を過ごしている。
「そんな事より、お父様! 外の話ですっ……!」
これ以上、屋敷のみんなに迷惑をかける前に止めなければならない。
ローズレイは焦りながら話を逸らそうと必死になる。
「出来れば、お父様かお母様とお出かけしたいのですが……」
忙しいビスクとリズレイに頼むのは気が引けるが、初めての外出なので不安な事も多い。
「もしお父様が多忙であれば、ゼフをお借りしたいのです」
「娘とお出かけ……あぁ、なんて素敵なんだろう…………」
「あの、お父様……?」
完全に思考は何処かへ行ってしまったようだ。
そしてバンっと扉が開き、大きな音と共にリズレイが入ってきた。
「ローズちゃん! 外に行きたいんですって!?」
「……お母様!? お客様は……」
「それどころじゃないわ! 服を用意して、それに新しい靴もッ!! 馬車と、それから……ユーア! ユーアはいないのっ!?」
「はい、奥様!」
「こちらに来て頂戴!! ローズちゃんのサイズを教えてっ」
「ゼフ! 今すぐ第一騎士団に連絡を取れッ!!」
「…………」
初めてのお出かけは前途多難のようである。
ビスクとリズレイが何故こんなに過保護になってしまったのかは不明だが、ローズレイだって、もう十四歳だ。
街に行くだけで新しい服を作るなんて大袈裟である。
確かに、家から出た事がないので他所行きの服は持ってはいないが……
結局、その日のうちにヒューレッド家御用達のデザイナーを呼び、リズレイは心底嬉しそうにローズレイの服を選んでいた。
出来上がったワンピースは薄い水色で、リズレイの好みがたっぷりと盛り込まれていた。
シンプルなデザインだが、所々にフリルやレースが施されていてあり可愛らしい。
腰元を引き締めるリボンは、背中で綺麗に纏められて、同じ素材のリボンの髪飾りが、統一感を出していた。
髪はふわふわに巻き、ツインテールにしている。
しかし、これでは目立ちすぎてしまう事に気付いたビスクによって、顔も髪も全て隠す事になった。
その時のリズレイは、この世の終わりのような顔をしていた。
ヒューレッド領の中でも一番大きな街へ行く事となり、ローズレイはリズレイに手を振って、初めて屋敷を出た。
馬車に揺られながら、窓から外の景色を眺める。
ヨーロッパのような街並みに、見た事のない建物、そして沢山の人。
ローズレイはビスクにエスコートされながら馬車を降りた。
ビスクと手を繋ぎながら歩いていく。
大きめの帽子に髪の毛を仕舞い込み、念には念をと眼鏡をかけた。
後ろからは大勢の護衛が一定の距離を空けて付いて来る……
『娘の初めてのお出かけに付き添えないなら騎士団を辞める』
そう言って休みを無理矢理もぎ取ったビスクは、今まで見た事がないくらいにご機嫌である。
真っ赤な髪と瞳を隠す為に、ローズレイと同じ格好をしている。
眼鏡までお揃いだ。
ローズレイは見た事のない野菜や果物に目を輝かせた。
素晴らしい景色は目を楽しませてくれる。
初めて感じる街の空気にローズレイは、はしゃいでいた。
「お父様! わたくし、あれが見てみたいですわ! あちらに行きましょう」
「ローズ、もう少し砕けた言葉で話しなさい。ここは街だよ」
「うっ……わ、分かったわ」
ローズレイが大きな声を出したせいで周りからの視線が痛い。
急いでその場を離れてから、可愛い雑貨屋を見つけて店へと入る。
それから、お菓子を売っている路面店、ビスクが贔屓にしている武器屋と色んなお店を回っていたのだが、突然「助けてー!」と悲鳴が聞こえた。
「ローズ! ここでしばらく待ってられるか?」
「もちろんです! お父様、お気をつけて」
「……すまない」
ビスクが叫び声のした方へと向かう。
ローズレイは花壇に腰掛け、先程買ってもらったお菓子を頬張った。
視線を感じて辺りを見回せば、遠くから護衛がじっとローズレイを見つめている。
ローズレイが思わず苦笑いをして、いつもとは違う景色を楽しんでいた時だった。
――ガンッ!!
「…………ゴホッ」
突然の音に驚いて後ろを振り返ると、狭くて暗い路地裏に、ボロボロになっている黒髪の少年が倒れていた。
ゴホゴホと激しく咳き込み、吐血している。
「……大丈夫ッ!?」
ローズレイは少年に駆け寄り、ポシェットからハンカチを出す。
そして、身体を起こそうと手を伸ばした時だった……
「……ッ、触るな!!」
バチンと手を弾かれて、その拍子にハラリとローズレイの帽子が落ちる。
尻餅をついたローズレイは、急いで帽子をかぶり直すが、目の前の相手にはしっかり見られてしまった。
「…………女神」
少年は目を見開いて、呆然とそう呟いた。
「違うわ」
「王族か……?」
「違う!」
「……ふん」
黒髪の少年は、手の甲で口元の血を拭いながらヨロヨロと立ち上がった。
「どこに、行くの?」
「…………さぁな」
「怪我をしているの?」
「お前に、関係ねぇ……」
ガリガリに痩せた細い腕に青白い肌……それに酷い怪我をしているようだ。
何処かに逃げようとしているのか壁伝いに歩いて行くが、力が抜けて膝から崩れ落ちてしまった。
口元からポタポタと滴る血が、痛々しくて見ていられない。
ローズレイはグッと手を握りしめた。
「ねぇ、何があったの……? 怪我もしてるし、手当てをした方がいいわ。わたくしの家に来ない?」
「お前……何を言ってるのか、わかってんのか?」
「…………? もちろんわかってるわ」
「わかってねぇッ!!」
怒鳴り声を上げた少年は咳き込んで倒れ込む。
「ゲボっ、俺は黒髪だぞ……」
「えぇ、そうね……?」
確かに目の前にいる少年は黒髪だ。
ローズレイにとってはゼフと同じ色、という認識である。
長い前髪で瞳の色は分からなかったが、そちらもゼフと同じ黒なのだろうか。
「は……?」
「え……?」
しばらくの沈黙。
肩で息をして、苦しそうに顔を歪める少年を見ていると気が気ではない。
それにローズレイには、少年の言葉の真意が全く分からない。
「どこかに売り飛ばす気か……?」
「貴方を……? 何故売り飛ばすの?」
「そうやって優しい顔して力を奪い取るんだろう……」
「……? なんの力を奪うの……?」
「はっ……何も知らない箱入りのお嬢様かよ…………」
馬鹿にしたように少年は笑いながら、ゆっくりと目蓋が落ちていく。
そのまま壁にずるずると寄りかかり、パタリと倒れ込んでしまった。
意識を失った少年を助けたくて、護衛に声を掛ける。
戻って来たビスクは、路地裏で少年を支えているローズレイを見てひどく驚いた顔をしていた。
ローズレイが家に連れて帰りたいと言うと、ビスクはしばらく考え込んだ後に小さく頷いた。
「お断り致します」
「…………」
「わたくしは殿下と関わりたくありませんし、婚約者には絶対に、なりたくありません」
「……お前の気持ちは分かった」
「ならば、そのようにお伝えくださいませ」
パルファンは腕を組んで壁にもたれかかる。
そして俯いていた顔を上げ、真っ直ぐにローズレイを見た。
「父上と母上を困らせる気か……?」
「…………」
「今、ランダルトの機嫌を損ねたくない。それに逃げられなくなる前に折り合いをつけて従った方が身の為だぞ」
正論……確かにパルファンの言う通りだった。
このままローズレイが拒否し続ければ、両親に迷惑を掛けてしまうだろう。
それに家名に泥を塗る事にも繋がる。
「婚約者になれと言っているわけじゃない。関わりたくないのなら本人にそう言えばいい」
「……!?」
「今は俺の友人だからな」
目の前にいる男は、本当にパルファン・ヒューレッドだろうか……?
ゆっくりとローズレイに近づいてくるパルファンから目が離せなかった。
身構える事も忘れて、ローズレイはパルファンを見上げる。
パルファンは、そっと跪くとローズレイの手を取った。
「…………以前は、すまなかった」
「………………え?」
「おかげで目が覚めた、今ではランダルトの側近として側にいるんだ」
「そう、ですか……」
「本当に申し訳なかった……」
「…………」
「…………」
「えっと…………はい」
真剣な顔でパルファンは頭を下げてから、スッと立ち上がると、驚きすぎて固まっているローズレイに微笑みかける。
「綺麗になったな、ローズレイ」
ボボっと顔が赤くなるのを感じて、ローズレイはパルファンに握られて手を振り払い、両手で頬を押さえてクルリと背を向ける。
「…………ローズレイ?」
「お兄様」
「……?」
「いきなりデレないでください」
「……デレ? それはなんだ」
少し大人びた兄に以前の横暴さはまるでなかった。
ローズレイは深呼吸をしてから咳払いをする。
表情を戻してからパルファンへと向き直る。
「…………我儘を言って申し訳ありません……行きます」
パルファンは「えらいな」と言ってローズレイの頭を優しく撫でた。
そしてパルファンとの会話は、信じられないくらいよく弾んだ。
今度帰った時に手合わせをしよう、街に美味しいお菓子がある……何気ない話だったが、普通に会話が成立していた。
こんな風にパルファンと話したのは初めてではないだろうか。
五年前にぶっ潰そうとしていたパルファンと、一瞬で距離が縮まったようだ。
完全に信頼しているわけではないが、嘘をついている様子もない。
ローズレイに対する敵意は全く感じなかった。
何より、五年越しのパルファンからの誠意の篭った謝罪は胸に響いた。
けれど、気の進まないお茶会の場に一歩、また一歩と近づいて行く。
「わたくし、お兄様が羨ましいわ」
「…………何故だ?」
「その足で何処にでも行けて、好きに学ぶ事が出来て、新しい世界を見れるのでしょう……? わたくしは、まだここから出た事もないのに…………お兄様は何でも手に入れられるのよ? 本当に羨ましい……」
「………………それは」
「護身術も身に付けましたのに……お父様とお母様には〝まだ外に出てはいけない〟と言われて……」
「そうか…………そう、だったのか……」
パルファンは神妙な面持ちで、納得したように頷いた。
「……俺もお前が羨ましかったんだ。両親から愛情を一身に受けて宝物のように大切にされていたお前が……」
「…………お兄様」
「お前も苦しかったんだな……今日、ここに来て良かった。胸につかえていたものが取れた気がする」
晴れやかな気持ちだ、とパルファンは続けた。
コツコツとブーツの音が廊下に響く。
「父上に許可を取らねばな」
「……何の許可ですか?」
「お前の側にいてもいいという許可だ」
「そんなものいりませんわ……また階段から突き落とされるのなら話は別ですが」
「おいおいローズレイ、悪い冗談はよしてくれ」
「ふふ、もう簡単には突き落とされませんわよ?」
ローズレイが笑みを浮かべると、パルファンはひらひらと両手を上げた。
そんな軽口を叩く間にも、ランダルトの待つ場所への距離が近づいていく。
「くれぐれも失礼のないようにな」
「…………分かっています」
「しかし何故、婚約者になりたくないんだ? この国に住む者ならば一度は望む事だろう?」
王太子と結婚して王妃になる。
どの令嬢も一度は夢見る事だ。
だからこそ、それを拒否するローズレイに違和感を覚えるのだろう。
しかし、この先の未来が分かっているローズレイからしてみれば、スフィアが絡む恋愛事情に巻き込まれたくはないし、闇に飲まれて国を失いたくもない。
ランダルトがスフィアを好きになる事が分かっているのに、婚約してわざわざ振られるなんてごめんである。
入れ替わって二度目の人生、自分の幸せを掴む為に頑張りたい。
だからこそ、ランダルトとの婚約は何としても避けたかった。
「…………わたくし、愛のない殿方との結婚より、お父様とお母様のように愛に溢れた結婚をしたいのです」
前の世界では、生きるために必死で恋をしている暇がなかった。
せっかく新しいチャンスを貰えたのだ。
お互いを尊重出来るような素晴らしい恋愛をしてみたい。
「待て、ローズレイ!」
何故だか兄が急に慌て出したが、止める気はない。
「あの貼り付けたような笑みが嫌なのです! あの顔見まして? わたくしに全く興味なんてありませんわ……!」
冷静に見れば分かる事だ。
恋に浮かれた以前のローズレイには分からなかったのかもしれないが、嘘くさい笑顔、上辺だけの優しさ。
ローズレイの事など何一つ見ていない。
「おい……!」
そう話すローズレイの後ろを見て、焦ったような声を出すパルファン。
なんだろうと疑問に思い、振り向くと……
「…………そんな事は、ないと思うけどね」
いつの間にか背後にいるランダルトに、ローズレイは目を見開いた。
「いつまでも来ないから迎えに来たんだけど、面白い話が聞こえてね……」
「……すまない、ランダルト」
「パルファン、君の妹は随分と面白い御令嬢のようだね」
「殿下に褒められるなんて光栄ですわ」
「はぁ……」
パルファンが溜息を吐いた。
失礼のないように……と、先程言ったばかりなのにコレでは、兄としてはそういう反応にもなるだろう。
ローズレイとしてはとにかく、婚約者にならない事が目標である。
なので、この先ランダルトに嫌われようが構わない。
それなのに、ランダルトは怒りもせずに笑顔でローズレイを見ていた。
「お茶会の続きといこうか。ねぇ……? パルファン、ローズレイ」
そんなランダルトの一言で始まった嵐のようなお茶会は、なんとか無事に終わった。
ご機嫌なランダルトと胃を押さえていたパルファンを見送った後、庭で摘み取った花を花瓶に生けながら、ローズレイは何度目か分からない溜息を吐いた。
ランダルトがここまで強引に食らいついてくるのは予想外だった。
それに、ローズレイの記憶にあるランダルトとは反応が違っていた。
以前は家の取り決めで婚約したので、関係はアッサリとしたものだったのだ。
パルファンに変化があったから、側にいるランダルトの性格も少し変わったという事も考えられるが、ここまでローズレイに対しての態度が変わるものだろうか?
(…………分からない)
それにローズレイは、王太子の婚約者になったからこそ外に出る事を許された。
けれど、婚約するつもりは毛頭ないので、いつ外に出られるかは分からない。
公爵家の庭は広大で、散歩するにしても十五分以上は掛かってしまう。
それにずっと同じ景色を見続けるのは退屈だ。
これからもずっと屋敷にいたいかと問われれば、答えはノーだ。
それに何かあった時の為に外の世界を知っておきたい。
ローズレイはすぐにビスクの部屋へと駆け出した。
「外に行きたい……?」
「はい、お父様。わたくしもみんなのように街にお出かけしてみたいのです」
「…………どうしようね」
「お願いします」
「外、か……」
ローズレイも強くなった。
初めてのお出かけには良い時期だろう。
真剣な顔のビスクに違和感を募らせながらも、ローズレイは外に行きたいと強く訴えた。
ローズレイの予想に反して、ビスクは難しい顔をしている。
眉間のシワを更に深めて、何かを考えているようだった。
「ゼフ……リズレイは?」
「ご婦人方とサロンで過ごされております」
「終わり次第、この件を伝えよ」
「かしこまりました」
ゼフは音もなく現れて、音もなく去って行く。
ローズレイは、いくら鍛えてもゼフのように気配を消す事は出来ない。
「いいな……わたくしもゼフのような人が欲しい……」
心の声がポロリと漏れた。
ゼフのように、強くて仕事が出来る人が側にいてくれたら……と思ったのだ。
執事や侍女ではなく、単純にローズレイを支えてくれる味方が欲しいのかもしれない。
しかし、ローズレイは大切な事を忘れていた。
父の前で無闇に〝欲しい〟と言ってはいけない事を……
――チリンチリン!!
ビスクが鳴らした激しいベルの音と共に、屋敷で働く者達が集合する。
その異常な光景に、ローズレイは瞬きをパチパチと繰り返す事しか出来なかった。
ここ最近はなかったので失念していたが、ローズレイの〝欲しい〟をビスクは見逃さない。
普段から何も欲しがらないからと、隙があればローズレイを甘やかそうと全力を尽くすビスク。
その恐ろしさを改めて知る事になろうとは……!
「お、お父さま…………」
「今すぐローズレイと歳も近く、武術に長けて、知識と教養がある子供を探してくれっ!」
前のローズレイは、ビスクと特に深く関わる事はなかったからか、どんな時も冷静で何を考えているか分からない父親、という印象しかなかったようだ。
しかし……今のビスクはどうだろうか。
何故か年々ローズレイを甘やかすようになっている。
恥ずかしいやら、皆に申し訳ないやらで、ローズレイは手のひらで顔を覆う。
それに以前とは違い、リズレイの過干渉もビスクが間に入ってくれるおかげで、負担は軽くなっていた。
もちろん、ローズレイも出来る範囲でリズレイの期待に応えるようにしているが、出来ない事は出来ないと伝えている。
だから心の余裕もあるし、楽しんで毎日を過ごしている。
「そんな事より、お父様! 外の話ですっ……!」
これ以上、屋敷のみんなに迷惑をかける前に止めなければならない。
ローズレイは焦りながら話を逸らそうと必死になる。
「出来れば、お父様かお母様とお出かけしたいのですが……」
忙しいビスクとリズレイに頼むのは気が引けるが、初めての外出なので不安な事も多い。
「もしお父様が多忙であれば、ゼフをお借りしたいのです」
「娘とお出かけ……あぁ、なんて素敵なんだろう…………」
「あの、お父様……?」
完全に思考は何処かへ行ってしまったようだ。
そしてバンっと扉が開き、大きな音と共にリズレイが入ってきた。
「ローズちゃん! 外に行きたいんですって!?」
「……お母様!? お客様は……」
「それどころじゃないわ! 服を用意して、それに新しい靴もッ!! 馬車と、それから……ユーア! ユーアはいないのっ!?」
「はい、奥様!」
「こちらに来て頂戴!! ローズちゃんのサイズを教えてっ」
「ゼフ! 今すぐ第一騎士団に連絡を取れッ!!」
「…………」
初めてのお出かけは前途多難のようである。
ビスクとリズレイが何故こんなに過保護になってしまったのかは不明だが、ローズレイだって、もう十四歳だ。
街に行くだけで新しい服を作るなんて大袈裟である。
確かに、家から出た事がないので他所行きの服は持ってはいないが……
結局、その日のうちにヒューレッド家御用達のデザイナーを呼び、リズレイは心底嬉しそうにローズレイの服を選んでいた。
出来上がったワンピースは薄い水色で、リズレイの好みがたっぷりと盛り込まれていた。
シンプルなデザインだが、所々にフリルやレースが施されていてあり可愛らしい。
腰元を引き締めるリボンは、背中で綺麗に纏められて、同じ素材のリボンの髪飾りが、統一感を出していた。
髪はふわふわに巻き、ツインテールにしている。
しかし、これでは目立ちすぎてしまう事に気付いたビスクによって、顔も髪も全て隠す事になった。
その時のリズレイは、この世の終わりのような顔をしていた。
ヒューレッド領の中でも一番大きな街へ行く事となり、ローズレイはリズレイに手を振って、初めて屋敷を出た。
馬車に揺られながら、窓から外の景色を眺める。
ヨーロッパのような街並みに、見た事のない建物、そして沢山の人。
ローズレイはビスクにエスコートされながら馬車を降りた。
ビスクと手を繋ぎながら歩いていく。
大きめの帽子に髪の毛を仕舞い込み、念には念をと眼鏡をかけた。
後ろからは大勢の護衛が一定の距離を空けて付いて来る……
『娘の初めてのお出かけに付き添えないなら騎士団を辞める』
そう言って休みを無理矢理もぎ取ったビスクは、今まで見た事がないくらいにご機嫌である。
真っ赤な髪と瞳を隠す為に、ローズレイと同じ格好をしている。
眼鏡までお揃いだ。
ローズレイは見た事のない野菜や果物に目を輝かせた。
素晴らしい景色は目を楽しませてくれる。
初めて感じる街の空気にローズレイは、はしゃいでいた。
「お父様! わたくし、あれが見てみたいですわ! あちらに行きましょう」
「ローズ、もう少し砕けた言葉で話しなさい。ここは街だよ」
「うっ……わ、分かったわ」
ローズレイが大きな声を出したせいで周りからの視線が痛い。
急いでその場を離れてから、可愛い雑貨屋を見つけて店へと入る。
それから、お菓子を売っている路面店、ビスクが贔屓にしている武器屋と色んなお店を回っていたのだが、突然「助けてー!」と悲鳴が聞こえた。
「ローズ! ここでしばらく待ってられるか?」
「もちろんです! お父様、お気をつけて」
「……すまない」
ビスクが叫び声のした方へと向かう。
ローズレイは花壇に腰掛け、先程買ってもらったお菓子を頬張った。
視線を感じて辺りを見回せば、遠くから護衛がじっとローズレイを見つめている。
ローズレイが思わず苦笑いをして、いつもとは違う景色を楽しんでいた時だった。
――ガンッ!!
「…………ゴホッ」
突然の音に驚いて後ろを振り返ると、狭くて暗い路地裏に、ボロボロになっている黒髪の少年が倒れていた。
ゴホゴホと激しく咳き込み、吐血している。
「……大丈夫ッ!?」
ローズレイは少年に駆け寄り、ポシェットからハンカチを出す。
そして、身体を起こそうと手を伸ばした時だった……
「……ッ、触るな!!」
バチンと手を弾かれて、その拍子にハラリとローズレイの帽子が落ちる。
尻餅をついたローズレイは、急いで帽子をかぶり直すが、目の前の相手にはしっかり見られてしまった。
「…………女神」
少年は目を見開いて、呆然とそう呟いた。
「違うわ」
「王族か……?」
「違う!」
「……ふん」
黒髪の少年は、手の甲で口元の血を拭いながらヨロヨロと立ち上がった。
「どこに、行くの?」
「…………さぁな」
「怪我をしているの?」
「お前に、関係ねぇ……」
ガリガリに痩せた細い腕に青白い肌……それに酷い怪我をしているようだ。
何処かに逃げようとしているのか壁伝いに歩いて行くが、力が抜けて膝から崩れ落ちてしまった。
口元からポタポタと滴る血が、痛々しくて見ていられない。
ローズレイはグッと手を握りしめた。
「ねぇ、何があったの……? 怪我もしてるし、手当てをした方がいいわ。わたくしの家に来ない?」
「お前……何を言ってるのか、わかってんのか?」
「…………? もちろんわかってるわ」
「わかってねぇッ!!」
怒鳴り声を上げた少年は咳き込んで倒れ込む。
「ゲボっ、俺は黒髪だぞ……」
「えぇ、そうね……?」
確かに目の前にいる少年は黒髪だ。
ローズレイにとってはゼフと同じ色、という認識である。
長い前髪で瞳の色は分からなかったが、そちらもゼフと同じ黒なのだろうか。
「は……?」
「え……?」
しばらくの沈黙。
肩で息をして、苦しそうに顔を歪める少年を見ていると気が気ではない。
それにローズレイには、少年の言葉の真意が全く分からない。
「どこかに売り飛ばす気か……?」
「貴方を……? 何故売り飛ばすの?」
「そうやって優しい顔して力を奪い取るんだろう……」
「……? なんの力を奪うの……?」
「はっ……何も知らない箱入りのお嬢様かよ…………」
馬鹿にしたように少年は笑いながら、ゆっくりと目蓋が落ちていく。
そのまま壁にずるずると寄りかかり、パタリと倒れ込んでしまった。
意識を失った少年を助けたくて、護衛に声を掛ける。
戻って来たビスクは、路地裏で少年を支えているローズレイを見てひどく驚いた顔をしていた。
ローズレイが家に連れて帰りたいと言うと、ビスクはしばらく考え込んだ後に小さく頷いた。
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