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一章
①②
しおりを挟むディアンヌもピーターの小さな体を包み込むように抱きしめる。
弟たちにいつもやるように、ピーターの柔らかいホワイトシルバーの髪を優しく撫でていた。
するとピーターは思わぬことを口にする。
「ボク、ディアンヌと一緒にいたい……!」
「え……?」
「リュド、ディアンヌと結婚してよ! ディアンヌにお母様になってほしいっ」
ピーターの言葉にディアンヌは驚愕していた。
(お母様になってほしいって……わたしが!?)
ディアンヌがリュドヴィックを見ると驚いているのか、大きく目が見開かれている。
もしかしてリュドヴィックがピーターの父親かもしれないと考えていた。
しかし『お父様』や『父上』ではなく、リュドと名前を呼んでいることが気になってしまう。
「……ダメだ」
「どうして!? リュドはそればっかり言って! ボク、さみしいよ」
「エヴァがいるだろう?」
「お母さんがいい! リュドはそばにいてくれないし……うわあぁぁん!」
ピーターはそう言って、大声で泣き出してしまった。
リュドヴィックはそんなピーターを見つめつつ、額を押さえて再びため息を吐いた。
眉間に深々と刻まれているシワ。
ディアンヌの胸元で大号泣するピーター。
ドレスはしっとりと濡れて涙と鼻水ですごいことになっていた。
(シャーリーに返さないといけないのに……安物のドレスだから、もういらないって言われたけど)
ディアンヌは泣き噦るピーターの背を撫でながら考えていた。
リュドヴィックとピーターの事情は詳しくはわからないが、ピーターの様子を見る限り寂しくて仕方ないのだろう。
ディアンヌは少しでもピーターの悲しみが癒えるようにと抱きしめる腕に力を込める。
するとピーターは肩を揺らしながら嗚咽していたが次第に落ち着いていき、寝息を立てて眠ってしまった。
ずっと走り回ってリュドヴィックを探していたのなら、疲れたのだろう。
それに子どもにとっては、もう眠たい時間なのかもしれない。
エヴァが「まぁ……!」と、驚いている。
リュドヴィックが「すまない」と言いつつ、ピーターを引き剥がそうとするが彼はディアンヌのドレスをがっしりと掴んでいて離れない。
エヴァも「ディアンヌ様と無理矢理離したら、数日は泣いてしまいそうですね」と、困ったように言った。
エヴァに手伝ってもらいながらピーターを抱えながらソファに座る。
困惑していたディアンヌは、リュドヴィックを見る。
彼もどうすればいいかわからないようだ。
「──リュドヴィック、リュド! いるか?」
「……!」
廊下から響くのはよく通る声だった。
リュドヴィックが扉を開くと、そこから飛び込むように入ってきたのは、これまた豪華な衣装に身を包んだ男性だった。
「リュド……ここにいたのか、探したぞ!」
「……陛下」
豪快に笑う男性を見てリュドヴィックが呟いた言葉を聞いて、ディアンヌは口をあんぐりと開けたまま動けなかった。
エヴァや医師が深々と腰を折るのを見て、ディアンヌも頭を下げる。
(陛下……!? 陛下って国王陛下ってこと?)
国王が親しげに名前を呼ぶということは、リュドヴィックはディアンヌの想像以上に上の立場にいるらしい。
ディアンヌはそんな人に働き口がないか頼んでしまったようだ。
自分の無知ゆえの大胆さに震えていると……。
「公の場では名前で呼ばないでください」
「おお、すまない……! ベルトルテ公爵と呼ぶのには慣れないな」
「はぁ……」
リュドヴィックは額を押さえている。
さすがのディアンヌでも、ロウナリー国王とこの国の宰相を務めるベルトルテ公爵の名前は知っている。
それにベルトルテ公爵領はメリーティー男爵領の隣だからだ。
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