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第一章 花屋の花子さん
⑥ 呪い
しおりを挟む『なら、ユリの花言葉って知ってる?』
「ユリの……花言葉?」
『あの花はあの子の心なのよ』
「心ってどういう……」
『ウフフ、あの花がどうなるか楽しみだわ』
花子さんはそう言いながら、クスクスと笑っている。
『…………またね』
花子さんの言葉と同時に、冷たい風が髪の毛を揺らした。
わたしが目を閉じて開いた瞬間、トイレには誰もいなくなっていた。
先ほどまで閉まっていた扉は、すべて空いている。
三番目のトイレを覗き込んだとしても、何もなくて古びた和式の便器があるだけだった。
「夏希ちゃん……誰もいない」
「なっ……なに、なにいまの! 花子さんがっ! 本当に花子さんなの?」
先ほどまで本当にここに花子さんがいたのか、疑問に思ってしまう。
「花子さんは、いなくなっちゃったみたい」
「小春、早く帰ろうよっ……!」
夏希ちゃんは目に涙を浮かべてガクガクと震えている。
花子さんが消えたことがとても怖かったみたい。
わたしは三番目の誰もいない三番目のトイレを見つめていた。
夏希ちゃんはわたしの腕を掴んで、どんどんと出口に向かって進んでいく。
赤い扉を通って外に出ると、空はすっかり暗くなっていた。
急いで夏希ちゃんと歩いて商店街へと向かう。
わたしは夏希ちゃんについていくのに必死で息が苦しくなっていく。
やっと商店街に着いたころに夏希ちゃんの汗ばんだ手が離れた。
もう商店街のシャッターは閉まっていた。
「こ、怖かったぁ……! 小春、大丈夫?」
「はぁ……はぁ、わたしはっ、大丈夫! 夏希ちゃんは?」
「ウチは無理っ! かわいい子だったけど、やっぱり怖すぎる」
二人で肩を揺らしていると、お母さんたちが心配そうに駆け寄ってくる。
夏希ちゃんと明日、話そうと約束してわたしは頷いた。
遅くなっちゃったから怒られてしまうかもしれないと、そーっと家に戻るとお母さんは険しい表情だ。
「小春、どうして遅くなったの? 心配したんだからっ」
「ごめんなさい。夏希ちゃんと遊んでて楽しくて、時計を見るのを忘れちゃったの」
「ケータイも繋がらないし、びっくりしたわ」
わたしはいつも持ち歩いているケータイを見た。
旧校舎にいる時はお母さんからのメッセージや着信は鳴らなかったのに、画面にはメッセージありと着信ありの文字。
「ごめんなさい」
もう一度、お母さんに謝るとわたしの体を抱きしめてくれた。
わたしもお母さんを抱きしめ返す。
そして夕食の時にお母さんにあることを質問する。
それは凛々ちゃんが持っていた黒いユリについてだ。
「お母さん、どうしてお店で黒ユリは売らないの?」
「黒ユリ? 白とかピンクのユリじゃなくて?」
お母さんはわたしの質問を不思議そうに聞いている。
いつもお店の手伝いをしていても、黒い花はほとんど見かけない。
「黒ユリはあんまりいいイメージないのよ。花言葉がちょっとね……」
「……花言葉?」
そういえば花子さんも花言葉のことを言っていたことを思い出す。
お母さんに不思議がられたけど、花子さんのことを言えない。
「小春の部屋に花言葉の本があったでしょう? 調べてみたら?」
「うん、そうする!」
ご飯を食べた後に自分の部屋に向かった。
本棚から花言葉が書いてある本を見つけて、ユリのページを探す。
「ユリ、ユリ……あった!」
よく見かける白いユリの花言葉は『純粋』、黄色のユリの花言葉は『陽気』と書かれている。
オレンジ色やピンク色のユリでも色によって花言葉は違うことがわかる。
そして次のページをめくると、そこには黒ユリについて書かれていた。
「呪い……?」
わたしは驚いてしまった。
花言葉にもいいものや悪いものがあるみたいだ。
黒ユリの花言葉は『呪い』や『復讐』と、怖い言葉が並んでいたからだ。
お母さんが花屋に黒ユリを並べない理由もわかった。
でも呪いの黒ユリを受け取って、みんなに自慢していた凛々ちゃんが心配になった。
それと花子さんがいっていたこともだ。
『あの花はあの子の心なのよ』
わたしは本を見ながら考えていた。
それと、花をもらった凛々ちゃんはどうなってしまうのだろう、と。
「明日、凛々ちゃんと話してみよう!」
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