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第一章 花屋の花子さん
⑤ 花子さん……じゃない?
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そう言いながらトイレから出てきたのは、肩まで切り揃えられた真っ黒な髪と赤い吊りスカートを履いた女の子……ではなかった。
「え……?」
「花子さん……じゃない?」
肩まで切り揃えられた真っ黒な髪は少し丸みがあって、頭には大きな赤いリボンがついている。
白いシャツは襟や袖にレースやフリルがついていて、ボタンもお花。
赤いリボンがワンポイントになっている。
赤いミニスカートはふんわりとしていて、フリルやレースが可愛らしい。
膝が隠れるまである白い靴下が足を長く見せている。
お人形のような格好をした女の子がそこにいた。
「めっちゃ可愛い……!」
「うん、お人形さんみたい。かわいいね」
『ほんと? うれしいわ。がんばったかいがあった』
女の子はスカートをヒラヒラさせながら喜んでいる。
わたしは夏希ちゃんと目を合わせた。
旧校舎のトイレから出てきたのは〝トイレの花子さん〟ではなく、お人形のような女の子だったからだ。
『現代風にアレンジに憧れていたのよ! いいでしょう?』
スカートの端を持って、クルリとその場で回った女の子は楽しそうだ。
すっかりと、この場の空気は和んでいく。
怖さはどこかに飛んでいってしまったようだ。
「ウチは水島夏希だよ!」
「わたし、桜田小春。よろしくね」
『二人ともいい名前ね』
「ありがとう! えっと、あなたは……?」
女の子の雰囲気が少し変わった気がした。
そしてスカートから手を離した後にこちらにグッと顔を近づける。
『ワタシは花子さん……一緒に遊びましょう?』
花子さんの口端が、だんだんとつり上がっていくのが見えた。
わたしはあまりの恐怖に顔が引き攣っていく。
彼女が〝トイレの花子さん〟だったと気づいてしまったからだ。
「は、花子さん……あなたが?」
「どっ、どうしよう。まだノックもしてないのに、勝手に花子さんが来ちゃったんですけど!」
『アナタたちは本当にいい顔するのねぇ』
夏希ちゃんと抱き合いながら、わたしは震えていた。
花子さんはこちらが怖がっているのを嬉しそうにして見ている。
しかしすぐに飽きてしまったのか体を離してしまった。
そして三番目のトイレへと戻って、体を半分出すとあることを口にする。
『今日は花屋はお休みなの。残念だったわね』
「え……?」
『アナタたちも噂を聞いて、旧校舎に花を買いにきたんじゃないの?』
わたしは改めて目的を思い出す。
凛々ちゃんが持っていた黒いユリのことだ。
そのことについて質問しようと思ったが、夏希ちゃんが先に花子さんに問いかける。
「どうしてこんなところで花屋さんをしているの?」
『ウフフ、内緒!』
「内緒って……」
どうしてここで花子さんが花屋をしているのか、教えてくれないようだ。
『ここにはワタシが育てたお花を必要としている人が来るのよ』
「……必要としている人?」
凛々ちゃんが黒いユリを持っているのは、その花が必要だったからなのだろうか。
「凛々ちゃんは必要だったってこと?」
『そうよ。あの子は大切なことに気がつくことができるかしら?』
「ウチらもそうなの?」
『アナタたちは、なんだかおもしろそうだったから入れてあげたの。いい悲鳴も聞けたしね』
花子さんは、わたしたちを見ながらニヤニヤしている。
おもしろそうというのは、怖がったり悲鳴をあげたりしたことだろうか。
わたしは凛々ちゃんのことが気になって、花子さんに質問する。
「昨日、となりのクラスの子が黒いユリを持っていたの……!」
『そう……ついに学校に持ってきたのね』
花子さんの声が少しだけ暗くなる。
「わたしのお家、お花屋さんで黒いユリを売っているのをあまり見たことないから」
『ふーん、アナタはお花屋さんの子なのね。なら、お花に詳しいのかしら?』
「少しは……」
わたしがそう言うと、花子さんはにっこりと笑ってから扉の外に出てくる。
一瞬でわたしの目の前まで移動してくる花子さんに息を止めた。
「え……?」
「花子さん……じゃない?」
肩まで切り揃えられた真っ黒な髪は少し丸みがあって、頭には大きな赤いリボンがついている。
白いシャツは襟や袖にレースやフリルがついていて、ボタンもお花。
赤いリボンがワンポイントになっている。
赤いミニスカートはふんわりとしていて、フリルやレースが可愛らしい。
膝が隠れるまである白い靴下が足を長く見せている。
お人形のような格好をした女の子がそこにいた。
「めっちゃ可愛い……!」
「うん、お人形さんみたい。かわいいね」
『ほんと? うれしいわ。がんばったかいがあった』
女の子はスカートをヒラヒラさせながら喜んでいる。
わたしは夏希ちゃんと目を合わせた。
旧校舎のトイレから出てきたのは〝トイレの花子さん〟ではなく、お人形のような女の子だったからだ。
『現代風にアレンジに憧れていたのよ! いいでしょう?』
スカートの端を持って、クルリとその場で回った女の子は楽しそうだ。
すっかりと、この場の空気は和んでいく。
怖さはどこかに飛んでいってしまったようだ。
「ウチは水島夏希だよ!」
「わたし、桜田小春。よろしくね」
『二人ともいい名前ね』
「ありがとう! えっと、あなたは……?」
女の子の雰囲気が少し変わった気がした。
そしてスカートから手を離した後にこちらにグッと顔を近づける。
『ワタシは花子さん……一緒に遊びましょう?』
花子さんの口端が、だんだんとつり上がっていくのが見えた。
わたしはあまりの恐怖に顔が引き攣っていく。
彼女が〝トイレの花子さん〟だったと気づいてしまったからだ。
「は、花子さん……あなたが?」
「どっ、どうしよう。まだノックもしてないのに、勝手に花子さんが来ちゃったんですけど!」
『アナタたちは本当にいい顔するのねぇ』
夏希ちゃんと抱き合いながら、わたしは震えていた。
花子さんはこちらが怖がっているのを嬉しそうにして見ている。
しかしすぐに飽きてしまったのか体を離してしまった。
そして三番目のトイレへと戻って、体を半分出すとあることを口にする。
『今日は花屋はお休みなの。残念だったわね』
「え……?」
『アナタたちも噂を聞いて、旧校舎に花を買いにきたんじゃないの?』
わたしは改めて目的を思い出す。
凛々ちゃんが持っていた黒いユリのことだ。
そのことについて質問しようと思ったが、夏希ちゃんが先に花子さんに問いかける。
「どうしてこんなところで花屋さんをしているの?」
『ウフフ、内緒!』
「内緒って……」
どうしてここで花子さんが花屋をしているのか、教えてくれないようだ。
『ここにはワタシが育てたお花を必要としている人が来るのよ』
「……必要としている人?」
凛々ちゃんが黒いユリを持っているのは、その花が必要だったからなのだろうか。
「凛々ちゃんは必要だったってこと?」
『そうよ。あの子は大切なことに気がつくことができるかしら?』
「ウチらもそうなの?」
『アナタたちは、なんだかおもしろそうだったから入れてあげたの。いい悲鳴も聞けたしね』
花子さんは、わたしたちを見ながらニヤニヤしている。
おもしろそうというのは、怖がったり悲鳴をあげたりしたことだろうか。
わたしは凛々ちゃんのことが気になって、花子さんに質問する。
「昨日、となりのクラスの子が黒いユリを持っていたの……!」
『そう……ついに学校に持ってきたのね』
花子さんの声が少しだけ暗くなる。
「わたしのお家、お花屋さんで黒いユリを売っているのをあまり見たことないから」
『ふーん、アナタはお花屋さんの子なのね。なら、お花に詳しいのかしら?』
「少しは……」
わたしがそう言うと、花子さんはにっこりと笑ってから扉の外に出てくる。
一瞬でわたしの目の前まで移動してくる花子さんに息を止めた。
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