【奨励賞】花屋の花子さん

●やきいもほくほく●

文字の大きさ
14 / 24
第三章 青紫色のアジサイ(前編)

①④ トイレの花子さん

しおりを挟む
梅雨の話で盛り上がっていたけどアジサイと聞いて、わたしはランドセルの中から一冊の本を取り出す。
それは『花言葉』の新しい本だった。
家にあった花言葉の本は、わたしが小さい頃から持っている本。
だから、お母さんのお店をお手伝いしてもらったおこづかいを貯めていた貯金箱を持って、冬馬くんちの本屋さんに向かう。
そこで冬馬くんのおばあちゃんと話して、この花言葉の本を買ったんだ。
そして、ランドセルに入れて持ち歩いていた。
朝読書の時間や寝る前に読んでいた。

「えっと、アジサイの花言葉は……」
「でた! 小春は最近、花言葉の本ばっかり読んでるね」
「冬馬くんちの本屋さんで買った花言葉の本、色別の花言葉ものってるし、バラとかチューリップは本数によっても意味が変わるんだよ!」

この本を読み始めてから、お店にある花のことに詳しくなった。
それに、お母さんに役に立てることも増えたんだ。

「へぇー! そうなんだ。でもウチは雑誌の方が好きだけどぉ」
「夏希ちゃんはいつもおしゃれだもんね」
「ふふん、雑誌で勉強してるもん!」

夏希ちゃんは得意げに服を見せている。
いつもおしゃれな夏希ちゃんはカラフルな洋服が好きみたい。
凛々ちゃんはワンピースが多くてお嬢様みたいな格好をしている。
わたしは可愛い洋服が好きで、花柄とかレースの服が多い。

わたしはアジサイのページを開きながら意味を調べていた。
青や紫のアジサイは『冷淡』『無情』『知的』『神秘的』と、いう意味があるみたい。
白いアジサイには『一途な愛情』、ピンクや赤のアジサイは『強い愛情』、緑のアジサイは『ひたむきな愛』という意味があるんだって。

「なんか青と紫のアジサイだけ花言葉怖くない?」
「たしかに……」
「青と紫には辛抱強い愛って意味もあるみたいだけど……」

他の色のアジサイに比べて、青と紫だけ冷たい印象があった。
すると夏希ちゃんはわたしの後ろの席にいる冬馬くんを見つめながら顎に手を当てて考えている。

「なんかさ、青紫のアジサイのクールな感じって冬馬に似てない?」
「え……?」

冬馬くんは夏希ちゃんの言葉に反応したのか、本から目線を外してこちらを見た。

「……何の話?」
「私、冬馬くんと同じクラスになったことあるけど、声を初めて聞いた気がするわ」

凛々ちゃんは冬馬くんが喋ったことに驚いているみたい。
冬馬くんは確かにあまり喋らない。
でもわたしたちとは比較的よく話してくれる。
わたしはアジサイの花言葉がのっている本のページを冬馬くんに見せた。
冬馬くんは文字を読んだ後に、眉を寄せながらこちらを見る。

「……そうか?」
「知的とか冷淡とか、冬馬っぽい~」

夏希ちゃんがそう言ったけど、この話に興味がなくなってしまったのか、冬馬くんは再び本に視線を戻してしまう。
独特な雰囲気の冬馬くんに凛々ちゃんは戸惑っているみたい。
わたしは冬馬くんの真っ黒な表紙に赤い文字が書いてある本を見て問いかける。

「冬馬くんは何読んでいるの?」
「学校の怪談。今はトイレの花子さんのページ」

たまたま花子さんの名前がでてきたことで、三人で思わず視線を合わせてしまった。
花子さんに全然会えていないことを思い出したからだ。

「花子さん……会いたいな」

もう二度と花子さんに会えないのは悲しいと思った。
わたしが落ち込んでいると、冬馬くんはびっくりするようなことを言った。

「小春、そんなに花子さんに会いたいのか?」
「……えっ!?」
「今、花子さんに会いたいって言っただろう?」

無意識に心の声が表に出てしまっていたみたい。
わたしは思わず、口元を押さえた。

「旧校舎のトイレなら花子さんがいるんじゃないか?」
「そ、そうだね」

わたしは思わず頷いてしまった。
冬馬くんはパタリと本を閉じてからキラキラした瞳でこちらを見た。

「なら、会いに行こう」
「冬馬くん、ほんとに行くの!?」
「小春は花子さんに会いたいんだろう? 僕も会いたい」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

9日間

柏木みのり
児童書・童話
 サマーキャンプから友達の健太と一緒に隣の世界に迷い込んだ竜(リョウ)は文武両道の11歳。魔法との出会い。人々との出会い。初めて経験する様々な気持ち。そして究極の選択——夢か友情か。   (also @ なろう)

モブの私が理想語ったら主役級な彼が翌日その通りにイメチェンしてきた話……する?

待鳥園子
児童書・童話
ある日。教室の中で、自分の理想の男の子について語った澪。 けど、その篤実に同じクラスの主役級男子鷹羽日向くんが、自分が希望した理想通りにイメチェンをして来た! ……え? どうして。私の話を聞いていた訳ではなくて、偶然だよね? 何もかも、私の勘違いだよね? 信じられないことに鷹羽くんが私に告白してきたんだけど、私たちはすんなり付き合う……なんてこともなく、なんだか良くわからないことになってきて?! 【第2回きずな児童書大賞】で奨励賞受賞出来ました♡ありがとうございます!

四尾がつむぐえにし、そこかしこ

月芝
児童書・童話
その日、小学校に激震が走った。 憧れのキラキラ王子さまが転校する。 女子たちの嘆きはひとしお。 彼に淡い想いを抱いていたユイもまた動揺を隠せない。 だからとてどうこうする勇気もない。 うつむき複雑な気持ちを抱えたままの帰り道。 家の近所に見覚えのない小路を見つけたユイは、少し寄り道してみることにする。 まさかそんな小さな冒険が、あんなに大ごとになるなんて……。 ひょんなことから石の祠に祀られた三尾の稲荷にコンコン見込まれて、 三つのお仕事を手伝うことになったユイ。 達成すれば、なんと一つだけ何でも願い事を叶えてくれるという。 もしかしたら、もしかしちゃうかも? そこかしこにて泡沫のごとくあらわれては消えてゆく、えにしたち。 結んで、切って、ほどいて、繋いで、笑って、泣いて。 いろんな不思議を知り、数多のえにしを目にし、触れた先にて、 はたしてユイは何を求め願うのか。 少女のちょっと不思議な冒険譚。 ここに開幕。

極甘独占欲持ち王子様は、優しくて甘すぎて。

猫菜こん
児童書・童話
 私は人より目立たずに、ひっそりと生きていたい。  だから大きな伊達眼鏡で、毎日を静かに過ごしていたのに――……。 「それじゃあこの子は、俺がもらうよ。」  優しく引き寄せられ、“王子様”の腕の中に閉じ込められ。  ……これは一体どういう状況なんですか!?  静かな場所が好きで大人しめな地味子ちゃん  できるだけ目立たないように過ごしたい  湖宮結衣(こみやゆい)  ×  文武両道な学園の王子様  実は、好きな子を誰よりも独り占めしたがり……?  氷堂秦斗(ひょうどうかなと)  最初は【仮】のはずだった。 「結衣さん……って呼んでもいい?  だから、俺のことも名前で呼んでほしいな。」 「さっきので嫉妬したから、ちょっとだけ抱きしめられてて。」 「俺は前から結衣さんのことが好きだったし、  今もどうしようもないくらい好きなんだ。」  ……でもいつの間にか、どうしようもないくらい溺れていた。

黒地蔵

紫音みけ🐾書籍発売中
児童書・童話
友人と肝試しにやってきた中学一年生の少女・ましろは、誤って転倒した際に頭を打ち、人知れず幽体離脱してしまう。元に戻る方法もわからず孤独に怯える彼女のもとへ、たったひとり救いの手を差し伸べたのは、自らを『黒地蔵』と名乗る不思議な少年だった。黒地蔵というのは地元で有名な『呪いの地蔵』なのだが、果たしてこの少年を信じても良いのだろうか……。目には見えない真実をめぐる現代ファンタジー。 ※表紙イラスト=ミカスケ様

わたしの婚約者は学園の王子さま!

久里いちご
児童書・童話
平凡な女子中学生、野崎莉子にはみんなに隠している秘密がある。実は、学園中の女子が憧れる王子、漣奏多の婚約者なのだ!こんなことを奏多の親衛隊に知られたら、平和な学校生活は望めない!周りを気にしてこの関係をひた隠しにする莉子VSそんな彼女の態度に不満そうな奏多によるドキドキ学園ラブコメ。

アリアさんの幽閉教室

柚月しずく
児童書・童話
この学校には、ある噂が広まっていた。 「黒い手紙が届いたら、それはアリアさんからの招待状」 招かれた人は、夜の学校に閉じ込められて「恐怖の時間」を過ごすことになる……と。 招待状を受け取った人は、アリアさんから絶対に逃れられないらしい。 『恋の以心伝心ゲーム』 私たちならこんなの楽勝! 夜の学校に閉じ込められた杏樹と星七くん。 アリアさんによって開催されたのは以心伝心ゲーム。 心が通じ合っていれば簡単なはずなのに、なぜかうまくいかなくて……?? 『呪いの人形』 この人形、何度捨てても戻ってくる 体調が悪くなった陽菜は、原因が突然現れた人形のせいではないかと疑いはじめる。 人形の存在が恐ろしくなって捨てることにするが、ソレはまた家に現れた。 陽菜にずっと付き纏う理由とは――。 『恐怖の鬼ごっこ』 アリアさんに招待されたのは、美亜、梨々花、優斗。小さい頃から一緒にいる幼馴染の3人。 突如アリアさんに捕まってはいけない鬼ごっこがはじまるが、美亜が置いて行かれてしまう。 仲良し3人組の幼馴染に一体何があったのか。生き残るのは一体誰――? 『招かれざる人』 新聞部の七緒は、アリアさんの記事を書こうと自ら夜の学校に忍び込む。 アリアさんが見つからず意気消沈する中、代わりに現れたのは同じ新聞部の萌香だった。 強がっていたが、夜の学校に一人でいるのが怖かった七緒はホッと安心する。 しかしそこで待ち受けていたのは、予想しない出来事だった――。 ゾクッと怖くて、ハラハラドキドキ。 最後には、ゾッとするどんでん返しがあなたを待っている。

【完結】玩具の青い鳥

かのん
児童書・童話
 かつて偉大なる王が、聖なる塔での一騎打ちにより、呪われた黒竜を打倒した。それ以来、青は幸福を、翼は王を、空は神の領域を示す時代がここにある。  トイ・ブルーバードは玩具やとして国々を旅していたのだが、貿易の町にてこの国の王女に出会ったことでその運命を翻弄されていく。  王女と玩具屋の一幕をご覧あれ。

処理中です...