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番外編(本編の内容とは少し異なります。時系列バラバラです)
⑨側に居るためには(クーシャ&ルマン)
(クーシャとルマンの出会い)
美しく完璧だと思っていたリオノーラが、コロコロと表情を変えてケーキを頬張る姿を見て驚いていた。
それと同時に安心していたのだ。
余りにも手が届かないような存在に気後れしていたからだった。
『また次もクーシャの"好き"を探しに行きましょうね』
その言葉通り、姉のリオノーラと一緒に街に出掛けたり、本を読みながら"好き"を探していた。
だんだんと自分の好みを把握してくると、リオノーラは笑顔を浮かべて喜んでくれた。
自分にもこんなにも好きな事があって、嬉しいと感じる事が出来るのだと気付けた時に、空っぽだった心が何かで満たされるのを感じていた。
いつの間にか紙に書ききれないほどの"好き"と"嬉しい"が書かれていた。
「クーシャが好きなものは身の回りに沢山あるのよ」
そう教えてくれたリオノーラに不思議な気持ちを抱いていた。
教えてもらった"好き"の感情に酷似していた。
只、一つだけ分かるのはスフレやアーリン、ジョンテに対しての"好き"と姉に対しての"好き"は違う気持ちだということだった。
けれど困らせたくない。一番は笑顔でいて欲しい。
幼い頃に落としていった感情を、リオノーラは一つ一つ拾い上げてくれる。
けれど、その中には気付かなければ良かった苦しみも含まれていた。
(……この気持ちは、しまっておこう)
手に入らないものを乞い強請るよりも、家族として側にいる事を選んだ。
たまにスフレが羨ましくなる。
絶対に手に入らないものを追いかけて、堂々と好きだと言えるのだから。
クーシャはそんなことを考えながら眠りについた。
しかしいつもと違うことが起こる。
『ねぇ、あなた悩んでるの……?』
「ッ!!?」
赤い目で綺麗な金色の毛を靡かせた大きな狐が姿勢良く前に座っていた。
火の玉が沢山浮いているのを見て、クーシャは辺りをキョロキョロと見回した。
自分は確かに眠りについた筈なのに……。
「なんで狐が……?」
『なんででしょうね』
「もしかして精霊?」
『あぁ、やっぱり……彼の方の気配がするわ』
クーシャは無意識に一歩後ろに下がる。
『近くで見ると彼の方の瞳に似てるのね……本当に綺麗だわ』
「彼の方……?」
ふわふわな尻尾が左右に動き、耳がぴこぴこと動いているのを追いかけていた。
「……何か用ですか?」
『あなたと契約してあげてもいいわ』
「契約?」
『そうよ、彼の方の側に居るためにはあなたの体が必要なの』
「……?」
話が飛躍しすぎて狐の言っている事は理解出来ない。
『契約』
確か、精霊のリーベになれるのは王族以外は女性だった筈。
なのに王族でもなく女性ではない、自分と契約する事は出来るのだろうか。
「僕、男ですけど……」
『そんなの知ってるわ』
狐はこちらにゆっくり歩いてくる。
にやにやと笑みを深めるだけで何も応えてはくれない。
『アタシ、女は嫌いなのよ』
「え…………?」
さも当然のように言い放った狐の周囲に火の玉と遊びながら舌舐めずりをする。
『とっても美味しそうね』
「僕は……食べても美味しくないと思います」
『ふふっ、知ってるわ……あなたの抱えてる気持ちが美味しそうだって言ったのよ』
「!?」
『アタシの手を取りなさい……クーシャ』
その言葉に目を見開いた。
全てを見透かされたような……そんな気持ちになったからだ。
『変化を望むのなら、少しでも前に進みたいのなら……あたしの手を取りなさい』
甘い言葉に絆されてはいけないと頭では分かっていた。
けれど、何故か手を取らなければいけないような気がした。
『欲しいものは手に入らない。だけど側にいる事は出来る』
「欲しい、もの……?」
『貴方も側に居たい相手がいるのでしょう?さぁ、早く手を取りなさい』
震える手を伸ばす。
『名を……』
「ルマン」
手が淡く光り輝く。
狐……ルマンは嬉しそうにそこら中を飛び跳ねる。
『やったわ!契約成功。宜しくね、クーシャ』
「……」
『あたしと一緒に楽しみましょう?まずはあなたをアタシのリーベとして良い男にしなくちゃね』
「……」
『彼の方のおかげで王族以外の男と契約できるなんて……これはもう運命よ!』
「運命?」
『アタシは女が嫌いだから困っていたの。あなたが居てくれて助かったわ』
楽しく笑う狐が女性が嫌いな理由が、なんとなく頭に思い浮かぶ言葉。
「……それはルマンが雄なのに、男が好きだから?」
『あら……うふふ、正解』
「……」
『心配しなくてもクーシャは全然好みじゃないから大丈夫よ。アタシは生まれてからずっと、彼の方をお慕いしてるの』
「…………へぇ」
『ち・な・みに、このことをあの女共に言ったらタダじゃおかないわよ……燃やされたくなかったら黙ってなさい』
自分の軽率な行動を悔いていた。
彼の方は結局誰かは分からないが、ルマンがとても好きな男なのだろう。
狐につままれたような気分だ。
実際そうなのだが。
(…………変なのに捕まった気がする)
『ふふっ!楽しくなりそうだわ』
「……」
end
美しく完璧だと思っていたリオノーラが、コロコロと表情を変えてケーキを頬張る姿を見て驚いていた。
それと同時に安心していたのだ。
余りにも手が届かないような存在に気後れしていたからだった。
『また次もクーシャの"好き"を探しに行きましょうね』
その言葉通り、姉のリオノーラと一緒に街に出掛けたり、本を読みながら"好き"を探していた。
だんだんと自分の好みを把握してくると、リオノーラは笑顔を浮かべて喜んでくれた。
自分にもこんなにも好きな事があって、嬉しいと感じる事が出来るのだと気付けた時に、空っぽだった心が何かで満たされるのを感じていた。
いつの間にか紙に書ききれないほどの"好き"と"嬉しい"が書かれていた。
「クーシャが好きなものは身の回りに沢山あるのよ」
そう教えてくれたリオノーラに不思議な気持ちを抱いていた。
教えてもらった"好き"の感情に酷似していた。
只、一つだけ分かるのはスフレやアーリン、ジョンテに対しての"好き"と姉に対しての"好き"は違う気持ちだということだった。
けれど困らせたくない。一番は笑顔でいて欲しい。
幼い頃に落としていった感情を、リオノーラは一つ一つ拾い上げてくれる。
けれど、その中には気付かなければ良かった苦しみも含まれていた。
(……この気持ちは、しまっておこう)
手に入らないものを乞い強請るよりも、家族として側にいる事を選んだ。
たまにスフレが羨ましくなる。
絶対に手に入らないものを追いかけて、堂々と好きだと言えるのだから。
クーシャはそんなことを考えながら眠りについた。
しかしいつもと違うことが起こる。
『ねぇ、あなた悩んでるの……?』
「ッ!!?」
赤い目で綺麗な金色の毛を靡かせた大きな狐が姿勢良く前に座っていた。
火の玉が沢山浮いているのを見て、クーシャは辺りをキョロキョロと見回した。
自分は確かに眠りについた筈なのに……。
「なんで狐が……?」
『なんででしょうね』
「もしかして精霊?」
『あぁ、やっぱり……彼の方の気配がするわ』
クーシャは無意識に一歩後ろに下がる。
『近くで見ると彼の方の瞳に似てるのね……本当に綺麗だわ』
「彼の方……?」
ふわふわな尻尾が左右に動き、耳がぴこぴこと動いているのを追いかけていた。
「……何か用ですか?」
『あなたと契約してあげてもいいわ』
「契約?」
『そうよ、彼の方の側に居るためにはあなたの体が必要なの』
「……?」
話が飛躍しすぎて狐の言っている事は理解出来ない。
『契約』
確か、精霊のリーベになれるのは王族以外は女性だった筈。
なのに王族でもなく女性ではない、自分と契約する事は出来るのだろうか。
「僕、男ですけど……」
『そんなの知ってるわ』
狐はこちらにゆっくり歩いてくる。
にやにやと笑みを深めるだけで何も応えてはくれない。
『アタシ、女は嫌いなのよ』
「え…………?」
さも当然のように言い放った狐の周囲に火の玉と遊びながら舌舐めずりをする。
『とっても美味しそうね』
「僕は……食べても美味しくないと思います」
『ふふっ、知ってるわ……あなたの抱えてる気持ちが美味しそうだって言ったのよ』
「!?」
『アタシの手を取りなさい……クーシャ』
その言葉に目を見開いた。
全てを見透かされたような……そんな気持ちになったからだ。
『変化を望むのなら、少しでも前に進みたいのなら……あたしの手を取りなさい』
甘い言葉に絆されてはいけないと頭では分かっていた。
けれど、何故か手を取らなければいけないような気がした。
『欲しいものは手に入らない。だけど側にいる事は出来る』
「欲しい、もの……?」
『貴方も側に居たい相手がいるのでしょう?さぁ、早く手を取りなさい』
震える手を伸ばす。
『名を……』
「ルマン」
手が淡く光り輝く。
狐……ルマンは嬉しそうにそこら中を飛び跳ねる。
『やったわ!契約成功。宜しくね、クーシャ』
「……」
『あたしと一緒に楽しみましょう?まずはあなたをアタシのリーベとして良い男にしなくちゃね』
「……」
『彼の方のおかげで王族以外の男と契約できるなんて……これはもう運命よ!』
「運命?」
『アタシは女が嫌いだから困っていたの。あなたが居てくれて助かったわ』
楽しく笑う狐が女性が嫌いな理由が、なんとなく頭に思い浮かぶ言葉。
「……それはルマンが雄なのに、男が好きだから?」
『あら……うふふ、正解』
「……」
『心配しなくてもクーシャは全然好みじゃないから大丈夫よ。アタシは生まれてからずっと、彼の方をお慕いしてるの』
「…………へぇ」
『ち・な・みに、このことをあの女共に言ったらタダじゃおかないわよ……燃やされたくなかったら黙ってなさい』
自分の軽率な行動を悔いていた。
彼の方は結局誰かは分からないが、ルマンがとても好きな男なのだろう。
狐につままれたような気分だ。
実際そうなのだが。
(…………変なのに捕まった気がする)
『ふふっ!楽しくなりそうだわ』
「……」
end
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