推しを味方に付けたら最強だって知ってましたか?

●やきいもほくほく●

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番外編(その後のお話)

助け合って②(エヴァン)




エヴァンは確信していた。
夢で見た景色はこの辺りで間違いないはずなのだ。

ボコボコした道をタイラーに支えられながら進んでいく。
そして枯れかけた木の根元に緑色の淡い光が見えた。



「‥‥見つけた!!」



エヴァンは緑色の光の元に手を伸ばす。
 


「助けに来たよ‥!」

『だれ‥?』

「僕はエヴァン‥昨日夢で君を見たんだ」

『エヴァン‥‥エヴァン、たすけて』


傷だらけでボロボロになった精霊を、掬い上げるようにしてエヴァンは抱きしめた。
そのままリオノーラの元へと急いで戻る。


「母上‥っ!」

「エヴァンを夢で呼んでたのは、この精霊なのね!」

「うん‥!でもっ、この子の体がボロボロになってて‥‥どうしよう、メーア様ッ!」

「この子、風の小型精霊かしら?」

『うーん、似てるけど違う‥‥小型じゃない。木‥?森の精霊っぽいかな』

「森の精霊‥?」

『力の使い過ぎだ‥消えかけてる』

「メーア様っ、どうしよう‥!」

『‥‥』


エヴァンがハラハラと涙を流す。
メーアの言う通り、精霊の体は透けかけていた。


『水、の精霊王‥?』

『‥何を守ろうとした?』

『森、木が‥‥水も、よごれて‥』

『湖の水なら僕が浄化出来る』

『‥‥ありが、と』

「嫌だッ!消えないで‥!」


ぼたぼたと精霊の上にエヴァンの涙が落ちる。
それに気付いた精霊がエヴァンに手を伸ばす。


『‥たす、け‥‥ありが、と』

「‥‥っ」

『ねぇ、森の精霊‥‥エヴァンと契約しない?』

『‥‥??』

『分からないか‥人間に助けてもらうんだ。力が少し戻るから消えなくて済むよ』

『‥‥ほんと?森また、まもれる?』

『本当‥でもその代わりに、この人間と共に過ごし、守らなければならない。どうする‥?』

『、する‥エヴァンと森、まもる』

『そう‥‥手を伸ばして、エヴァンに触れて』


森の精霊がエヴァンに震える手を伸ばしてエヴァンの指に触れる。


『エヴァン‥名を』





「‥‥ヴァルト」





エヴァンの手の中が深い緑色の光に包まれる。
すると、目の前にエバーグリーンの目と髪に持つ、小さな男の子が現れた。


『‥たすかった?』

「ヴァルト!」

『エヴァン‥たすけにきてくれて、ありがとう!!』


エヴァンは嬉しそうにヴァルトの名を呼び、涙を浮かべながらヴァルトと抱き合っている。


『リオノーラ‥‥僕、嫌な予感がする』

「っ、私もよ!ヴァルト、急いで戻‥!」

『??』



ーーーバタンッ



エヴァンが倒れる前に、タイラーがエヴァンの体を受け止める。


『エヴァン‥!?』

「エヴァン!!」

『ヴァルト、一回戻った方がいいよ』

『ごめんなさい‥水の精霊王、みんなに説明‥!!』

『あとでね、僕は湖を浄化するから安心して戻りな』


メーアがそう言うとヴァルトは申し訳なさそうに、スッと消えた。
毎度恒例の契約時に起こる魔力不足である。

タイラーがエヴァンを抱き抱えながらリオノーラの元へと向かう。


「リオノーラ、どうする?城に帰るか?」

「メーアが湖を浄化するって言っていたから、暫く此処で待っていましょう」

「分かった」


メーアは観察するように周囲を見渡していた。


「メーア、森の精霊って‥?」

『この森にずっと住んでいたんだろうね‥あまり人間と関わる事がないから契約の事は知らなかったみたいだけど‥‥植物の精霊自体、相当綺麗な場所でないと生まれないしね』

「色んな精霊が居るのね‥」

『そうだね、人間が知らないだけで色んな精霊が居るんだよ』

「メーアも元々は氷の精霊だものね」

「そうだったの!?知らなかったわ‥ララは?」


スフレが言うとララは誇らしげに胸を張る。
どうやらララはメーアが氷の精霊だということは知っていたようだ。


リオノーラはスフレと共に湖を覗き込んだ。
水がとても濁っているように思えた。
魚が、1匹も泳いでいない。


「汚れてる‥ガイルと来た時は水が透き通っていて、魚が沢山いたのに」

「‥これって、もしかして」

『ゴミが溜まってる‥動物も精霊もいない。ヴァルトは森を守るために、ずっと大きな力を使い続けたんだ』

「帰ったらすぐに森の維持に動きましょう‥!フェリ様に相談しなくちゃ」

『そうだね』


メーアは水に手を伸ばして触れた後、汚れた湖の上を歩いていく。
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