五つの星々、転生管理ー星巡りの護りビトー

神谷凪紗

文字の大きさ
24 / 47
第一章 【第一星巡り部隊】

第二十一節 頭に響く声

しおりを挟む
(…俺からすれば好敵手、相手からすれば敵…か)

疑いが晴れたかどうかはあの一瞬では分からない。

本部に司教がいた、となれば当然総責任者やほかの者の存在もいたのだろう。その人達が、俺の発言を聞いてどのような判断を下すかは俺には予想もつかない。

…調べなきゃいけないこともあるし。
長期の謹慎まではいかないだろうが、どのような通達が下りるのか不安が残ってしまう。

(悩んでても仕方ない、今はこの後のことを―――)

歩き始めようと一歩足を動かしたところで、視界がぶれてしまう。
床が柔らかくなってしまったかのように足取りがおぼつかない。額をおさえ、頭を振ってみてもそれは変わらない。

あれ、俺どうしたんだろう。

「リーディルク様、戻りましょう」
「………」
「―リーディルク様?」

司祭の声がする。
ああ、そうだ。この一室から出て、戻って、司教を待たなければ。

気が抜けた。思考がまとまらない。

歩いているのか止まっているのかすらも分からない。

司祭の、兄さんの声が遠くから聞こえてくる。

その内、父さんも戻ってくる。
折角家族と一緒に過ごせるんだ、早く戻っていろんなことを話したい。

「レナトッ……――ッ!!」

段々と視界が黒く狭まっていくのに比例して、兄さんの声も小さく遠くなっていく。
一瞬の出来事のはずなのに、長く長く俺の体に襲ってくる。

あぁ、俺は多分気を失いかけてるんだろうな。

思えば、帰ってきてからいろんなことがありすぎたんだ。

第六星巡り部隊のこと。
ペンダントの一件。
呪封じの書類のこと。
本部からの一件。

変わってしまったおばさまの魂の、こと。


(あのおばさまの魂は、一体だれが救ってくれるのだろう)

―――救えるものは、たった一握りだ。
その一握りを、俺たちがどう扱うかですべてが決まるんだ。すべてが―――

ふと思い出したこの言葉は……一体誰のものだったか。


思い出せないままゆっくりと襲い来る暗闇に身をゆだねた――。


◇◇◇


ふっと水面から浮上するように、目を開ければ見知った天井が見えた。
ぼんやりとした思考のまま数度瞬きを繰り返し、緩慢な動作で起き上がる。起き上がった拍子にズキンと頭が鈍く痛んだ。

痛む頭を押さえながら周りを見渡し、そこでようやく俺は今いる場所を理解する。

「俺の…部屋……」

ポツリとつぶやいた言葉は、静寂の中に吸収されて消えていく。
誰の気配も、音もしない。じりじりと肌を焼くようだった火の属性魔力は、いつの間にかふわりとした優しい風の属性魔力に変わっていた。

風の時間帯。

あれから俺はかなりの時間気絶していたようだ。
窓から見える景色はすでに暗闇に閉ざされ、ぽつぽつと家屋の光が星のように瞬いている。まだ鈍い思考のまま窓の外をじっと見据えていたが、突然の重く鋭い痛みに顔をしかめ、視線を逸らす。

大きな岩で殴られているかのような頭の痛みに、うぅう、と声にもならない声をあげながら己の体を護るように丸く丸く体を縮こませてしまう。

「レナト?起きたのですか」

心配そうな兄さんの声音。
控えめなノックの後、音をたてないようにゆっくりと一室の扉が開かれる。

カシャンっと、何かが割れる音の後、慌てたような足音を響かせ縮こまる俺の背中に兄さんの掌が添えられた。

「レ、レナトッ…どうしたのですか!?」

酷く狼狽した様子の兄さんに、俺は何も言い返せない。

ガンガン、ガンガンと強固な扉を岩で殴りつけこじ開けていくような痛みに、頭を振って対抗する。脳みそが叩きつけられ、揺さぶられる感覚に自然と涙が出てきてしまう。

頭痛の原因が、色々ありすぎてどう対処すればいいのか分からない。
疲労のせいなら薬を飲めば治まるだろう。魔力の使い過ぎだとするなら、もう一度眠りにつけば治まる。だが、考えたところで今現在襲い来る頭痛を対処しなければ、何もできない。

「兄さん、いたい…―頭が、割れそうに…いたいよ…」


痛い、痛い、痛い。
あたまがいたい。殴られてるように、痛む。ひどく痛む。

いたい、イタイ。



「―レナト」

低い、低い声音。
深い水底のようにシンと透き通る声音が、頭の奥に響いてくる。

強固な扉を護るように、力強く凪いだ波が殴りつけてくる岩を押し返すかのようだ。何も考えれなくなるほど強い痛みが、ゆっくりと、波に押されるように引いていく。

きつく閉じていた目を見開いて、俺は顔を上げて声音のした方に視線を向けた。

「……とう、さん…」
「今帰ったよ、レナト」

父さんはおおらかに微笑んで、俺の頭をぽんぽんと撫でてくれた。

その温かい掌の温度に、大人げなくも泣きそうになってしまう。
幼い頃からされてきた父さんの動作に安心する。皺の深い、見慣れた父さんの表情を見据えながら涙を拭って俺も笑みを返した。

――――

memo

ルベライド世界では、確かな時間概念はない。
時間の把握は、朝、夜。それだけの大雑把なものだが、それぞれに属性魔力が増幅する時間帯がある。

円を描き、中心に横一線引いた図形が、この世界での時計の役割。
(時間を指し示す針は一本のみ)

一線の上側が朝。一線の下側が夜と考える。
朝を二分割し、水、土。夜も同様に二分割して、火、風。

それぞれ
水の時間帯。
土の時間帯。
火の時間帯。
風の時間帯。

となっている

最初の針の位置は一線の上。右回りに針が進んでいくため、必ず左(←)が始点となってる。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

『白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?』

夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」 教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。 ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。 王命による“形式結婚”。 夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。 だから、はい、離婚。勝手に。 白い結婚だったので、勝手に離婚しました。 何か問題あります?

ゲーム未登場の性格最悪な悪役令嬢に転生したら推しの妻だったので、人生の恩人である推しには離婚して私以外と結婚してもらいます!

クナリ
ファンタジー
江藤樹里は、かつて画家になることを夢見ていた二十七歳の女性。 ある日気がつくと、彼女は大好きな乙女ゲームであるハイグランド・シンフォニーの世界へ転生していた。 しかし彼女が転生したのは、ヘビーユーザーであるはずの自分さえ知らない、ユーフィニアという女性。 ユーフィニアがどこの誰なのかが分からないまま戸惑う樹里の前に、ユーフィニアに仕えているメイドや、樹里がゲーム内で最も推しているキャラであり、どん底にいたときの自分の心を救ってくれたリルベオラスらが現れる。 そして樹里は、絶世の美貌を持ちながらもハイグラの世界では稀代の悪女とされているユーフィニアの実情を知っていく。 国政にまで影響をもたらすほどの悪名を持つユーフィニアを、最愛の恩人であるリルベオラスの妻でいさせるわけにはいかない。 樹里は、ゲーム未登場ながら圧倒的なアクの強さを持つユーフィニアをリルベオラスから引き離すべく、離婚を目指して動き始めた。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! 仕事繁忙期の為、2月中旬まで更新を週一に致します。 カクヨム(吉野 ひな)様にも投稿しています。

出来損ない貴族の三男は、謎スキル【サブスク】で世界最強へと成り上がる〜今日も僕は、無能を演じながら能力を徴収する〜

シマセイ
ファンタジー
実力至上主義の貴族家に転生したものの、何の才能も持たない三男のルキウスは、「出来損ない」として優秀な兄たちから虐げられる日々を送っていた。 起死回生を願った五歳の「スキルの儀」で彼が授かったのは、【サブスクリプション】という誰も聞いたことのない謎のスキル。 その結果、彼の立場はさらに悪化。完全な「クズ」の烙印を押され、家族から存在しない者として扱われるようになってしまう。 絶望の淵で彼に寄り添うのは、心優しき専属メイドただ一人。 役立たずと蔑まれたこの謎のスキルが、やがて少年の運命を、そして世界を静かに揺るがしていくことを、まだ誰も知らない。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

処理中です...