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第一章 【第一星巡り部隊】
第二十一節 頭に響く声
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(…俺からすれば好敵手、相手からすれば敵…か)
疑いが晴れたかどうかはあの一瞬では分からない。
本部に司教がいた、となれば当然総責任者やほかの者の存在もいたのだろう。その人達が、俺の発言を聞いてどのような判断を下すかは俺には予想もつかない。
…調べなきゃいけないこともあるし。
長期の謹慎まではいかないだろうが、どのような通達が下りるのか不安が残ってしまう。
(悩んでても仕方ない、今はこの後のことを―――)
歩き始めようと一歩足を動かしたところで、視界がぶれてしまう。
床が柔らかくなってしまったかのように足取りがおぼつかない。額をおさえ、頭を振ってみてもそれは変わらない。
あれ、俺どうしたんだろう。
「リーディルク様、戻りましょう」
「………」
「―リーディルク様?」
司祭の声がする。
ああ、そうだ。この一室から出て、戻って、司教を待たなければ。
気が抜けた。思考がまとまらない。
歩いているのか止まっているのかすらも分からない。
司祭の、兄さんの声が遠くから聞こえてくる。
その内、父さんも戻ってくる。
折角家族と一緒に過ごせるんだ、早く戻っていろんなことを話したい。
「レナトッ……――ッ!!」
段々と視界が黒く狭まっていくのに比例して、兄さんの声も小さく遠くなっていく。
一瞬の出来事のはずなのに、長く長く俺の体に襲ってくる。
あぁ、俺は多分気を失いかけてるんだろうな。
思えば、帰ってきてからいろんなことがありすぎたんだ。
第六星巡り部隊のこと。
ペンダントの一件。
呪封じの書類のこと。
本部からの一件。
変わってしまったおばさまの魂の、こと。
(あのおばさまの魂は、一体だれが救ってくれるのだろう)
―――救えるものは、たった一握りだ。
その一握りを、俺たちがどう扱うかですべてが決まるんだ。すべてが―――
ふと思い出したこの言葉は……一体誰のものだったか。
思い出せないままゆっくりと襲い来る暗闇に身をゆだねた――。
◇◇◇
ふっと水面から浮上するように、目を開ければ見知った天井が見えた。
ぼんやりとした思考のまま数度瞬きを繰り返し、緩慢な動作で起き上がる。起き上がった拍子にズキンと頭が鈍く痛んだ。
痛む頭を押さえながら周りを見渡し、そこでようやく俺は今いる場所を理解する。
「俺の…部屋……」
ポツリとつぶやいた言葉は、静寂の中に吸収されて消えていく。
誰の気配も、音もしない。じりじりと肌を焼くようだった火の属性魔力は、いつの間にかふわりとした優しい風の属性魔力に変わっていた。
風の時間帯。
あれから俺はかなりの時間気絶していたようだ。
窓から見える景色はすでに暗闇に閉ざされ、ぽつぽつと家屋の光が星のように瞬いている。まだ鈍い思考のまま窓の外をじっと見据えていたが、突然の重く鋭い痛みに顔をしかめ、視線を逸らす。
大きな岩で殴られているかのような頭の痛みに、うぅう、と声にもならない声をあげながら己の体を護るように丸く丸く体を縮こませてしまう。
「レナト?起きたのですか」
心配そうな兄さんの声音。
控えめなノックの後、音をたてないようにゆっくりと一室の扉が開かれる。
カシャンっと、何かが割れる音の後、慌てたような足音を響かせ縮こまる俺の背中に兄さんの掌が添えられた。
「レ、レナトッ…どうしたのですか!?」
酷く狼狽した様子の兄さんに、俺は何も言い返せない。
ガンガン、ガンガンと強固な扉を岩で殴りつけこじ開けていくような痛みに、頭を振って対抗する。脳みそが叩きつけられ、揺さぶられる感覚に自然と涙が出てきてしまう。
頭痛の原因が、色々ありすぎてどう対処すればいいのか分からない。
疲労のせいなら薬を飲めば治まるだろう。魔力の使い過ぎだとするなら、もう一度眠りにつけば治まる。だが、考えたところで今現在襲い来る頭痛を対処しなければ、何もできない。
「兄さん、いたい…―頭が、割れそうに…いたいよ…」
痛い、痛い、痛い。
あたまがいたい。殴られてるように、痛む。ひどく痛む。
いたい、イタイ。
「―レナト」
低い、低い声音。
深い水底のようにシンと透き通る声音が、頭の奥に響いてくる。
強固な扉を護るように、力強く凪いだ波が殴りつけてくる岩を押し返すかのようだ。何も考えれなくなるほど強い痛みが、ゆっくりと、波に押されるように引いていく。
きつく閉じていた目を見開いて、俺は顔を上げて声音のした方に視線を向けた。
「……とう、さん…」
「今帰ったよ、レナト」
父さんはおおらかに微笑んで、俺の頭をぽんぽんと撫でてくれた。
その温かい掌の温度に、大人げなくも泣きそうになってしまう。
幼い頃からされてきた父さんの動作に安心する。皺の深い、見慣れた父さんの表情を見据えながら涙を拭って俺も笑みを返した。
――――
memo
ルベライド世界では、確かな時間概念はない。
時間の把握は、朝、夜。それだけの大雑把なものだが、それぞれに属性魔力が増幅する時間帯がある。
円を描き、中心に横一線引いた図形が、この世界での時計の役割。
(時間を指し示す針は一本のみ)
一線の上側が朝。一線の下側が夜と考える。
朝を二分割し、水、土。夜も同様に二分割して、火、風。
それぞれ
水の時間帯。
土の時間帯。
火の時間帯。
風の時間帯。
となっている
最初の針の位置は一線の上。右回りに針が進んでいくため、必ず左(←)が始点となってる。
疑いが晴れたかどうかはあの一瞬では分からない。
本部に司教がいた、となれば当然総責任者やほかの者の存在もいたのだろう。その人達が、俺の発言を聞いてどのような判断を下すかは俺には予想もつかない。
…調べなきゃいけないこともあるし。
長期の謹慎まではいかないだろうが、どのような通達が下りるのか不安が残ってしまう。
(悩んでても仕方ない、今はこの後のことを―――)
歩き始めようと一歩足を動かしたところで、視界がぶれてしまう。
床が柔らかくなってしまったかのように足取りがおぼつかない。額をおさえ、頭を振ってみてもそれは変わらない。
あれ、俺どうしたんだろう。
「リーディルク様、戻りましょう」
「………」
「―リーディルク様?」
司祭の声がする。
ああ、そうだ。この一室から出て、戻って、司教を待たなければ。
気が抜けた。思考がまとまらない。
歩いているのか止まっているのかすらも分からない。
司祭の、兄さんの声が遠くから聞こえてくる。
その内、父さんも戻ってくる。
折角家族と一緒に過ごせるんだ、早く戻っていろんなことを話したい。
「レナトッ……――ッ!!」
段々と視界が黒く狭まっていくのに比例して、兄さんの声も小さく遠くなっていく。
一瞬の出来事のはずなのに、長く長く俺の体に襲ってくる。
あぁ、俺は多分気を失いかけてるんだろうな。
思えば、帰ってきてからいろんなことがありすぎたんだ。
第六星巡り部隊のこと。
ペンダントの一件。
呪封じの書類のこと。
本部からの一件。
変わってしまったおばさまの魂の、こと。
(あのおばさまの魂は、一体だれが救ってくれるのだろう)
―――救えるものは、たった一握りだ。
その一握りを、俺たちがどう扱うかですべてが決まるんだ。すべてが―――
ふと思い出したこの言葉は……一体誰のものだったか。
思い出せないままゆっくりと襲い来る暗闇に身をゆだねた――。
◇◇◇
ふっと水面から浮上するように、目を開ければ見知った天井が見えた。
ぼんやりとした思考のまま数度瞬きを繰り返し、緩慢な動作で起き上がる。起き上がった拍子にズキンと頭が鈍く痛んだ。
痛む頭を押さえながら周りを見渡し、そこでようやく俺は今いる場所を理解する。
「俺の…部屋……」
ポツリとつぶやいた言葉は、静寂の中に吸収されて消えていく。
誰の気配も、音もしない。じりじりと肌を焼くようだった火の属性魔力は、いつの間にかふわりとした優しい風の属性魔力に変わっていた。
風の時間帯。
あれから俺はかなりの時間気絶していたようだ。
窓から見える景色はすでに暗闇に閉ざされ、ぽつぽつと家屋の光が星のように瞬いている。まだ鈍い思考のまま窓の外をじっと見据えていたが、突然の重く鋭い痛みに顔をしかめ、視線を逸らす。
大きな岩で殴られているかのような頭の痛みに、うぅう、と声にもならない声をあげながら己の体を護るように丸く丸く体を縮こませてしまう。
「レナト?起きたのですか」
心配そうな兄さんの声音。
控えめなノックの後、音をたてないようにゆっくりと一室の扉が開かれる。
カシャンっと、何かが割れる音の後、慌てたような足音を響かせ縮こまる俺の背中に兄さんの掌が添えられた。
「レ、レナトッ…どうしたのですか!?」
酷く狼狽した様子の兄さんに、俺は何も言い返せない。
ガンガン、ガンガンと強固な扉を岩で殴りつけこじ開けていくような痛みに、頭を振って対抗する。脳みそが叩きつけられ、揺さぶられる感覚に自然と涙が出てきてしまう。
頭痛の原因が、色々ありすぎてどう対処すればいいのか分からない。
疲労のせいなら薬を飲めば治まるだろう。魔力の使い過ぎだとするなら、もう一度眠りにつけば治まる。だが、考えたところで今現在襲い来る頭痛を対処しなければ、何もできない。
「兄さん、いたい…―頭が、割れそうに…いたいよ…」
痛い、痛い、痛い。
あたまがいたい。殴られてるように、痛む。ひどく痛む。
いたい、イタイ。
「―レナト」
低い、低い声音。
深い水底のようにシンと透き通る声音が、頭の奥に響いてくる。
強固な扉を護るように、力強く凪いだ波が殴りつけてくる岩を押し返すかのようだ。何も考えれなくなるほど強い痛みが、ゆっくりと、波に押されるように引いていく。
きつく閉じていた目を見開いて、俺は顔を上げて声音のした方に視線を向けた。
「……とう、さん…」
「今帰ったよ、レナト」
父さんはおおらかに微笑んで、俺の頭をぽんぽんと撫でてくれた。
その温かい掌の温度に、大人げなくも泣きそうになってしまう。
幼い頃からされてきた父さんの動作に安心する。皺の深い、見慣れた父さんの表情を見据えながら涙を拭って俺も笑みを返した。
――――
memo
ルベライド世界では、確かな時間概念はない。
時間の把握は、朝、夜。それだけの大雑把なものだが、それぞれに属性魔力が増幅する時間帯がある。
円を描き、中心に横一線引いた図形が、この世界での時計の役割。
(時間を指し示す針は一本のみ)
一線の上側が朝。一線の下側が夜と考える。
朝を二分割し、水、土。夜も同様に二分割して、火、風。
それぞれ
水の時間帯。
土の時間帯。
火の時間帯。
風の時間帯。
となっている
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