なんでもできるスキル〈ゲームマスター〉を手に入れたけど速攻飽きたので、ヒロインを「俺の考えた最強の主人公」に仕立て上げます

八白 嘘

文字の大きさ
14 / 87

014 / 宝箱の中身は

しおりを挟む
 そのまま、せっかく背負ってきた毛布も使わずに眠り込んだ。
 何時間寝たかはわからない。
 十分かもしれないし、数時間かもしれない。
 寝転がれば、無音と思われた洞窟内にもかすかな生命の気配を感じたが、さほどは気にならなかった。

「──…………」

 ボリボリと、ばさつく髪の毛を掻きむしりながら身を起こす。

「背中いって……」

 疲れていたとは言え、こんなデコボコで濡れた悪路でよく眠れたものだ。
 俺は、毛布の重要性を改めて理解した。
 あれは、ただ暖を取るためだけのものではない。
 地面と接する部分を保護するためにも必要なのだ。
 寝起きの口内に水を流し込んだあと、バキバキになった背中をかばいながら立ち上がる。
 マップを挟んだクリップボードを左手に抱えながら、俺の火炎魔法によってガラス化した部分へと足を踏み入れた。
 高熱によって岩場が溶け、すこし歩きやすくなっている。

「……すげえな、魔法」

 魔力という新たなるリソースの感覚が、俺の体に刻み込まれている。
 体力が回復したことが理屈抜きで実感できるように、先程の休息によって魔力が充填されたのがわかる。
 魔力とは、体力と引き換えにして自動的に回復していくものらしい。
 魔力を使い過ぎれば、体力の回復が遅くなる。
 疲れがまったく取れなくなるのだ。
 俺が泥のように眠ったのも、それが理由だ。
 普通であれば、あんな場所で眠りにつくことはできまい。
 自分の導き出した答えに納得しながら、洞窟内を行く。
 岩肌のガラス化は数十メートルも続いていた。
 これでは、あの大コウモリたちなど、ひとたまりもなかっただろう。
 自らが引き起こした惨状に戦々恐々としながら、大コウモリの巣であった脇道まで戻ってきた。

「──…………」

 慎重に、巣を覗き込む。
 全滅したのか、あるいは熱と音に驚いて逃げたのか、あれほどいた大コウモリたちは一匹残らず姿を消していた。

「ふー……」

 思わず息を吐く。
 あの薄気味の悪い姿は、もう見たくない。
 巣に足を踏み入れると、さきほどは気が付かなかった異臭が鼻を突いた。
 恐らく、堆積たいせきした大コウモリたちの糞によるものだ。
 まだ乾ききっていないものが臭っているらしい。

「踏みたくねーなあ……」

 だが、そうも言ってはいられない。
 俺は、生々しいものをなるべく避けながら、コウモリの巣を進んでいった。
 大コウモリの糞で小高くなった通路を抜けると、ようやく突き当たりが見えてくる。

「──宝箱だ」

 そこでは、朱色に金の装飾が施された、あまりにも宝箱然とした宝箱が、その存在をこれ以上ないほどに主張していた。
 唐突に現れた人工物に、戸惑う。

「誰が置いたんだ……」

 思えば、多くのRPGでもそうだ。
 誰が置いたかわからない宝箱が、明らかに天然の洞窟にぽつんと置かれている。
 ゲーム内では違和感を覚えなかったが、こうして実際に遭遇してみると、不自然極まりない。
 それはそれとして、

「さーて、お宝お宝と。何が入っていますかね」

 苦労の末に見つけ出した宝箱だ。
 期待に弾む心を押さえつけながら、ゆっくりと宝箱に手を掛ける。
 そこで、はたと気が付いた。

「……まさか、ミミックってオチはないよな」

 幸い、宝箱に鍵穴はなく、取っ手なども見受けられない。
 俺は、宝箱から手を離すと、腰に提げた長剣の柄に軽く触れながら、その蓋を蹴り開いた。

「──…………」

 特に反応はない。
 ただの宝箱だったようだ。
 溜め息を一つ吐き、宝箱の中を覗き込む。

「……鉱石?」

 人工精霊の光を浴びて複雑な色合いに輝く未知の鉱石が、大きな宝箱いっぱいに詰まっていた。
 なるほど、一気に持って帰れないわけだ。
 俺は、鉱石の一つに手を伸ばした。
 ずしり。

「──おっも!」

 鉄や鉛などより遥かに重い。
 おまけに、不思議と温かい。
 恒温動物を思わせる生物じみた熱が、鉱石に宿っていた。

「なんだこれ……」

 わからないが、とにかく価値はありそうだ。
 二、三個持って帰れば、しばらくの宿代にはなるだろう。
 と言っても、体力的にも背負い袋の耐久力的にも数個が限界なのだが。
 俺は、鉱石を三個ほど背負い袋に押し込むと、ほのかに蛍色の光を放つ魔法の鍵束を取り出した。
 使い方は、すぐにわかった。
 鍵を手にすると、宝箱の上部にホログラムのような鍵穴が現れたのだ。
 鍵穴に魔法の鍵を差し込み、回す。

 ──かちり。

 小気味よい音と共に、蛍色の光が宝箱全体を覆った。
 光に手を伸ばすと、触れた感覚もないのに、それ以上進むことができない。
 不思議な感触だった。

「へえー……」

 思わず感心する。
 なるほど、これならば宝箱の占有権で揉めることも少ないだろう。
 冒険至上主義の世界なだけに、よく考えてあるものだ。

「──よッ、と」

 背負い袋を背負い直すと、あまりの重さに数歩たたらを踏んでしまった。
 たった三個であるにも関わらず、異様に重い。
 これ以上の探索は不可能と判断し、いったん竜とパイプ亭へと帰還することにした。
 さて、帰りは何時間かかるだろうか。
 背負い袋の肩紐があざにならないことを祈りながら、俺は元来た道を引き返して行った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

勇者パーティーを追放されたので、張り切ってスローライフをしたら魔王に世界が滅ぼされてました

まりあんぬさま
ファンタジー
かつて、世界を救う希望と称えられた“勇者パーティー”。 その中で地味に、黙々と補助・回復・結界を張り続けていたおっさん――バニッシュ=クラウゼン(38歳)は、ある日、突然追放を言い渡された。 理由は「お荷物」「地味すぎる」「若返くないから」。 ……笑えない。 人付き合いに疲れ果てたバニッシュは、「もう人とは関わらん」と北西の“魔の森”に引きこもり、誰も入って来られない結界を張って一人スローライフを開始……したはずだった。 だがその結界、なぜか“迷える者”だけは入れてしまう仕様だった!? 気づけば―― 記憶喪失の魔王の娘 迫害された獣人一家 古代魔法を使うエルフの美少女 天然ドジな女神 理想を追いすぎて仲間を失った情熱ドワーフ などなど、“迷える者たち”がどんどん集まってくる異種族スローライフ村が爆誕! ところが世界では、バニッシュの支援を失った勇者たちがボロボロに…… 魔王軍の侵攻は止まらず、世界滅亡のカウントダウンが始まっていた。 「もう面倒ごとはごめんだ。でも、目の前の誰かを見捨てるのも――もっとごめんだ」 これは、追放された“地味なおっさん”が、 異種族たちとスローライフしながら、 世界を救ってしまう(予定)のお話である。

猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣で最強すぎて困る

マーラッシュ
ファンタジー
旧題:狙って勇者パーティーを追放されて猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣だった。そして人間を拾ったら・・・ 何かを拾う度にトラブルに巻き込まれるけど、結果成り上がってしまう。 異世界転生者のユートは、バルトフェル帝国の山奥に一人で住んでいた。  ある日、盗賊に襲われている公爵令嬢を助けたことによって、勇者パーティーに推薦されることになる。  断ると角が立つと思い仕方なしに引き受けるが、このパーティーが最悪だった。  勇者ギアベルは皇帝の息子でやりたい放題。活躍すれば咎められ、上手く行かなければユートのせいにされ、パーティーに入った初日から後悔するのだった。そして他の仲間達は全て女性で、ギアベルに絶対服従していたため、味方は誰もいない。  ユートはすぐにでもパーティーを抜けるため、情報屋に金を払い噂を流すことにした。  勇者パーティーはユートがいなければ何も出来ない集団だという内容でだ。  プライドが高いギアベルは、噂を聞いてすぐに「貴様のような役立たずは勇者パーティーには必要ない!」と公衆の面前で追放してくれた。  しかし晴れて自由の身になったが、一つだけ誤算があった。  それはギアベルの怒りを買いすぎたせいで、帝国を追放されてしまったのだ。  そしてユートは荷物を取りに行くため自宅に戻ると、そこには腹をすかした猫が、道端には怪我をした犬が、さらに船の中には女の子が倒れていたが、それぞれの正体はとんでもないものであった。  これは自重できない異世界転生者が色々なものを拾った結果、トラブルに巻き込まれ解決していき成り上がり、幸せな異世界ライフを満喫する物語である。

ギャルい女神と超絶チート同盟〜女神に贔屓されまくった結果、主人公クラスなチート持ち達の同盟リーダーとなってしまったんだが〜

平明神
ファンタジー
 ユーゴ・タカトー。  それは、女神の「推し」になった男。  見た目ギャルな女神ユーラウリアの色仕掛けに負け、何度も異世界を救ってきた彼に新たに下った女神のお願いは、転生や転移した者達を探すこと。  彼が出会っていく者たちは、アニメやラノベの主人公を張れるほど強くて魅力的。だけど、みんなチート的な能力や武器を持つ濃いキャラで、なかなか一筋縄ではいかない者ばかり。  彼らと仲間になって同盟を組んだユーゴは、やがて彼らと共に様々な異世界を巻き込む大きな事件に関わっていく。  その過程で、彼はリーダーシップを発揮し、新たな力を開花させていくのだった!  女神から貰ったバラエティー豊かなチート能力とチートアイテムを駆使するユーゴは、どこへ行ってもみんなの度肝を抜きまくる!  さらに、彼にはもともと特殊な能力があるようで……?  英雄、聖女、魔王、人魚、侍、巫女、お嬢様、変身ヒーロー、巨大ロボット、歌姫、メイド、追放、ざまあ───  なんでもありの異世界アベンジャーズ!  女神の使徒と異世界チートな英雄たちとの絆が紡ぐ、運命の物語、ここに開幕! ※不定期更新。 ※感想やお気に入り登録をして頂けますと、作者のモチベーションがあがり、エタることなくもっと面白い話が作れます。

ラストアタック!〜御者のオッサン、棚ぼたで最強になる〜

KeyBow
ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞 ディノッゾ、36歳。職業、馬車の御者。 諸国を旅するのを生き甲斐としながらも、その実態は、酒と女が好きで、いつかは楽して暮らしたいと願う、どこにでもいる平凡なオッサンだ。 そんな男が、ある日、傲慢なSランクパーティーが挑むドラゴンの討伐に、くじ引きによって理不尽な捨て駒として巻き込まれる。 捨て駒として先行させられたディノッゾの馬車。竜との遭遇地点として聞かされていた場所より、遥か手前でそれは起こった。天を覆う巨大な影―――ドラゴンの襲撃。馬車は木っ端微塵に砕け散り、ディノッゾは、同乗していたメイドの少女リリアと共に、死の淵へと叩き落された―――はずだった。 腕には、守るべきメイドの少女。 眼下には、Sランクパーティーさえも圧倒する、伝説のドラゴン。 ―――それは、ただの不運な落下のはずだった。 崩れ落ちる崖から転落する際、杖代わりにしていただけの槍が、本当に、ただ偶然にも、ドラゴンのたった一つの弱点である『逆鱗』を貫いた。 その、あまりにも幸運な事故こそが、竜の命を絶つ『最後の一撃(ラストアタック)』となったことを、彼はまだ知らない。 死の淵から生還した彼が手に入れたのは、神の如き規格外の力と、彼を「師」と慕う、新たな仲間たちだった。 だが、その力の代償は、あまりにも大きい。 彼が何よりも愛していた“酒と女と気楽な旅”―― つまり平和で自堕落な生活そのものだった。 これは、英雄になるつもりのなかった「ただのオッサン」が、 守るべき者たちのため、そして亡き友との誓いのために、 いつしか、世界を救う伝説へと祭り上げられていく物語。 ―――その勘違いと優しさが、やがて世界を揺るがす。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

『異世界ガチャでユニークスキル全部乗せ!? ポンコツ神と俺の無自覚最強スローライフ』

チャチャ
ファンタジー
> 仕事帰りにファンタジー小説を買った帰り道、不運にも事故死した38歳の男。 気がつくと、目の前には“ポンコツ”と噂される神様がいた——。 「君、うっかり死んじゃったから、異世界に転生させてあげるよ♪」 「スキル? ステータス? もちろんガチャで決めるから!」 最初はブチギレ寸前だったが、引いたスキルはなんと全部ユニーク! 本人は気づいていないが、【超幸運】の持ち主だった! 「冒険? 魔王? いや、俺は村でのんびり暮らしたいんだけど……」 そんな願いとは裏腹に、次々とトラブルに巻き込まれ、無自覚に“最強伝説”を打ち立てていく! 神様のミスで始まった異世界生活。目指すはスローライフ、されど周囲は大騒ぎ! ◆ガチャ転生×最強×スローライフ! 無自覚チートな元おっさんが、今日も異世界でのんびり無双中!

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

処理中です...