飾り窓の出来事

奇妙なタマゴ

荒れ狂う木々の中から目覚めるは儚く散った生命。その手に触れた時、契りを結ばされ逃げ惑うだろう。きっとこれも全て、ヤツの腹の中の光景でしかない。

もしかすると現実は神の机の上の小さな水槽で造られたケミカルな存在なのだろう。まるで家にある小瓶の中のマリモみたいだ。

けれどもその神も誰かによって創造されているなんて知りもしないだろう。神によって創られた技法によって飢餓にさらし歯車を狂わされる神父は闇に秘密を望む。

その最後の黒幕はゼウスみたいな偉大な者ではなく。一匹のひたすら醜い巨大な豚。

堕ちた先は楽園とはほど遠くて近くもあり、吐き気を催す花園。そこには意味は無く、存在する道理すらない。

今ここに存在しなかった世界も神の崇高な実験も一匹のひたすら醜い巨大な豚の腹の中の出来事に過ぎない。

しかもそのいつの一晩の夢でしかない。奇妙な殻に抱かれる悪臭を放つ悪夢。

きっとその豚が目を醒ますと、神も世界も人類も跡形もなく目覚めのゲップと共に糞と消え去る。

今ここに再び醜い世界達が羽化する。この奇妙なタマゴはモルモットとして狂った果実となり蜘蛛の意図を掻き消す。

最後の日まで蜘蛛の糸に貪り付く群がる人を横目に羽ばたくケミカルな存在。

蠢く闇が囁く。「ああ豚に感謝。」