5 / 5
第五話
しおりを挟む
大きな音を立てて走る車。
それに混乱して逃げ込んだ先は不幸にも歓楽街。夜なのにビカビカととても明るくて目がおかしくなりそうだった。それと人が多くて騒がしい。
僕も人間だから踏み潰される心配はいらないけれど、急に大声をあげたり、「今、お店探してますか?」なんて話しかけてくる人なんかがいて怖かった。
そしてなるべく暗く、人のいない裏道に逃げて僕はそこで蹲り、一歩も動けないでいた。
「うぅ……、人間怖い。帰りたい」
僕の精神状態を分かりやすく説明するならホラーゲームを現実で体験して硬直しているような感じだった。
けれど二階堂くんに会いたい。
とは言っても二階堂くんの居場所さえ分からない。
感情だけが突っ走り、動いてしまった自分の無計画さに頭を悩ませる。
これからどうしよう。一旦静かな動物園に戻って二階堂くんに会う方法を考えた方がいいのだろうけど、帰り道も分からない。
心細くてポロポロと瞳から涙が溢れる。
「大丈夫ですか?」
ふと声を掛けられビクッと肩が大きく跳ねる。
顔を上げると体格の大きい男の人が心配そうに僕を窺っていた。
「…………」
体格差に恐怖で声も出ない。
体は壁のようで簡単に僕を握り潰せそうだ。
恐怖が加速し、ウォンバット特有の習性が働く。
ウォンバットは敵に襲われると巣穴に入り、頭隠して尻隠さずの状態になる。これは固い尻を生かした身を守る術で、たとえお尻を咬まれても痛みは感じない。
今の僕もそんな状態で、四つん這いになって相手に尻を突き出していた。
「……!」
巣穴がないのが心許ないけれど生き残りたい一心で姿勢を崩さないように頑張る。
「えっ!? ……あ、あの──」
「なんでもしますからどうか命だけは取らないでください!」
命乞いをすれば流石に同種を襲うような真似はしないだろうと縋る。
「店長、グラスなんですけど……」
突如、居酒屋の裏口から前掛けをしたもう一人男が現れ、絶望する。けれどその顔を見て僕は心から救われた。
「旭!」
ドタドタと駆けつけて勢いのまま抱きつく。「うわ!」と旭が僕に驚き、よろめく。
「旭~、怖かったよぉ~!」
旭に対する嫉妬も忘れて、頬を濡らして安堵する。旭は当然顔も名前も知らない僕に抱きつかれて困惑していた。
「だ、だれ!?」
「うわぁん! あさひ~、っひぐ、うぇ~ん」
「ちょ、えっとその……と、とりあえず落ち着こう。な?」
取り乱す僕に旭が安心させようと背中をポンポンと軽く叩く。おかげで次第に涙も収まり、嗚咽交じりながらも普通に話せるところまで回復する。
「あの、一旦離れてもらえないかな?」
泣き止んでも抱きついたままの僕に旭はお願いするけれど、場所も人も何もかも未知数な空間でやっと見つけた顔見知りを手放す気は更々ない。
「やだ!」
そう言って更にぎゅっと抱きしめる力を強めると旭は諦めたようだった。無理矢理引き剥がそうとはしないでなすがままの状態になる。
それに混乱して逃げ込んだ先は不幸にも歓楽街。夜なのにビカビカととても明るくて目がおかしくなりそうだった。それと人が多くて騒がしい。
僕も人間だから踏み潰される心配はいらないけれど、急に大声をあげたり、「今、お店探してますか?」なんて話しかけてくる人なんかがいて怖かった。
そしてなるべく暗く、人のいない裏道に逃げて僕はそこで蹲り、一歩も動けないでいた。
「うぅ……、人間怖い。帰りたい」
僕の精神状態を分かりやすく説明するならホラーゲームを現実で体験して硬直しているような感じだった。
けれど二階堂くんに会いたい。
とは言っても二階堂くんの居場所さえ分からない。
感情だけが突っ走り、動いてしまった自分の無計画さに頭を悩ませる。
これからどうしよう。一旦静かな動物園に戻って二階堂くんに会う方法を考えた方がいいのだろうけど、帰り道も分からない。
心細くてポロポロと瞳から涙が溢れる。
「大丈夫ですか?」
ふと声を掛けられビクッと肩が大きく跳ねる。
顔を上げると体格の大きい男の人が心配そうに僕を窺っていた。
「…………」
体格差に恐怖で声も出ない。
体は壁のようで簡単に僕を握り潰せそうだ。
恐怖が加速し、ウォンバット特有の習性が働く。
ウォンバットは敵に襲われると巣穴に入り、頭隠して尻隠さずの状態になる。これは固い尻を生かした身を守る術で、たとえお尻を咬まれても痛みは感じない。
今の僕もそんな状態で、四つん這いになって相手に尻を突き出していた。
「……!」
巣穴がないのが心許ないけれど生き残りたい一心で姿勢を崩さないように頑張る。
「えっ!? ……あ、あの──」
「なんでもしますからどうか命だけは取らないでください!」
命乞いをすれば流石に同種を襲うような真似はしないだろうと縋る。
「店長、グラスなんですけど……」
突如、居酒屋の裏口から前掛けをしたもう一人男が現れ、絶望する。けれどその顔を見て僕は心から救われた。
「旭!」
ドタドタと駆けつけて勢いのまま抱きつく。「うわ!」と旭が僕に驚き、よろめく。
「旭~、怖かったよぉ~!」
旭に対する嫉妬も忘れて、頬を濡らして安堵する。旭は当然顔も名前も知らない僕に抱きつかれて困惑していた。
「だ、だれ!?」
「うわぁん! あさひ~、っひぐ、うぇ~ん」
「ちょ、えっとその……と、とりあえず落ち着こう。な?」
取り乱す僕に旭が安心させようと背中をポンポンと軽く叩く。おかげで次第に涙も収まり、嗚咽交じりながらも普通に話せるところまで回復する。
「あの、一旦離れてもらえないかな?」
泣き止んでも抱きついたままの僕に旭はお願いするけれど、場所も人も何もかも未知数な空間でやっと見つけた顔見知りを手放す気は更々ない。
「やだ!」
そう言って更にぎゅっと抱きしめる力を強めると旭は諦めたようだった。無理矢理引き剥がそうとはしないでなすがままの状態になる。
10
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(1件)
ネタバレ含む
あなたにおすすめの小説
怒られるのが怖くて体調不良を言えない大人
こじらせた処女
BL
幼少期、風邪を引いて学校を休むと母親に怒られていた経験から、体調不良を誰かに伝えることが苦手になってしまった佐倉憂(さくらうい)。
しんどいことを訴えると仕事に行けないとヒステリックを起こされ怒られていたため、次第に我慢して学校に行くようになった。
「風邪をひくことは悪いこと」
社会人になって1人暮らしを始めてもその認識は治らないまま。多少の熱や頭痛があっても怒られることを危惧して出勤している。
とある日、いつものように会社に行って業務をこなしていた時。午前では無視できていただるけが無視できないものになっていた。
それでも、自己管理がなっていない、日頃ちゃんと体調管理が出来てない、そう怒られるのが怖くて、言えずにいると…?
鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる
結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。
冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。
憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。
誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。
鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。
月弥総合病院
御月様(旧名 僕君☽☽︎)
キャラ文芸
月弥総合病院。極度の病院嫌いや完治が難しい疾患、診察、検査などの医療行為を拒否したり中々治療が進められない子を治療していく。
また、ここは凄腕の医師達が集まる病院。特にその中の計5人が圧倒的に遥か上回る実力を持ち、「白鳥」と呼ばれている。
(小児科のストーリー)医療に全然詳しく無いのでそれっぽく書いてます...!!
臣下が王の乳首を吸って服従の意を示す儀式の話
八億児
BL
架空の国と儀式の、真面目騎士×どスケベビッチ王。
古代アイルランドには臣下が王の乳首を吸って服従の意を示す儀式があったそうで、それはよいものだと思いましたので古代アイルランドとは特に関係なく王の乳首を吸ってもらいました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。