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第二十七話
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※龍一郎視点
「おじゅちゃ……」
小さな手が龍一郎の手に重ねられる。顔を上げると勇士が心配そうに龍一郎を見つめていた。
「おじゅちゃ、ゆうのちゅうしゅる?」
「ゆう……」
勇士はよく龍一郎と勇気にねだられてほっぺにキスをしてくれた。キスをすると笑顔になる。それを覚えていて龍一郎を元気付けようとしてくれているのか。
勇士が頬にちゅっとキスする。
自然と涙が溢れてきた。勇士を強く抱きしめ、小さな暖かさに浸る。
「おじゅちゃ……?」
まだ小さいから勇士は両親が死んだことを理解していない。
勇士にはまだまだ親が必要だ。子を守り、愛で包み込む存在が。
龍一郎は自分の命に、そして二人に誓いを立てた。
「俺が育てる……、俺が責任もって勇士を立派に育てる。もう誰にも奪われない。俺が必ず勇士を守る」
勇士は不思議そうな面持ちで龍一郎を見つめていた。
龍一郎は育児に専念したいと組長の座から降り、それから二人の生活が始まった。
組から抜けたとはいえ、家族が狙われるかもしれない。だから可愛らしい青い小鳥は鳥籠で大切に育てた。決して家から出さず、出かける時は必ずそばを離れなかった。
「とうしゃん」
初めてそう呼んでくれた日を憶えている。両親が別にいて亡くなったことを勇士はもう知っている。強要したことはない、自然と勇士がそう呼んでくれたのだ。
「うぅ……」
「とうしゃん、どうして泣いてるの?」
その日、龍一郎は嬉しすぎて泣いた。
そして変わらず幸せな日々がずっと続くと思っていた。なのに……。
「父さん、一緒にお風呂入ろ!」
「ああ、いいぞ」
軽い笑い声が浴室に響く。
二人は浴槽でパシャパシャと湯を掛け合って遊んでいた。勝ち目はないと思ったのだろう。勇士がシャワーを手にして龍一郎に向けて反撃を始める。
「おい、ゆう! それはずるいぞ!」
「きゃはは。くらえ~」
「うわ、わかったわかった! 降参するから!」
「いぇ~い。僕のかち~! じゃあ父さん、僕の髪と体洗ってね~」
「おい俺は使用人か?」
「文句な~し! 勝者は敗者の言うことを聞くんだよ」
「そのルール初耳だぞ。全く仕方ないな。じゃあ王様どうかお風呂からあがってくださいな」
「は~い!」
勇士の望み通り、髪と体を洗っていく。
前に勇士を座らせ、スポンジで体に泡を滑らせる。
こうして見ると本当大きくなったと実感する。勇士はもう小学二年生だ。学校には通わせていないが、これも勇士を守るためだ。
龍一郎はまじまじと勇士の体を見つめ、泡を広がらせていく。素手で感じる肌はマシュマロみたいに柔らかくとてもすべすべしていた。
それからちょっと心配になる綺麗なくびれ。もちもちとしてるのだろうか、つい触ってみたくなる太腿。可愛らしい小さなお尻。胸は淡い桜色で、股にある小さなそれは……。
「…………!」
龍一郎は体を固まらせる。自身の中心が熱くそして硬く聳え立っていた。
(は? 俺、なんで……)
龍一郎は困惑していた。何故自分がこんなにも性的興奮を覚えているのか。
動かなくなった龍一郎を不審に思ったのだろう。勇士が「父さんどうしたの?」と振り返ろうとする。龍一郎は慌てて大声を出した。
「前を見ろ!」
勇士が驚いてビクッと動きを止める。それから前を向いて泣き始めた。
「うえぇぇん。父さん、ごめんなさ~い」
怒られた。そう勘違いさせたことにすぐ気付いて龍一郎は急いで謝った。
「ゆう、ごめんな。お前を怒ったわけじゃないんだ。俺が馬鹿で間違って大声を出しちゃっただけなんだ」
「うぅ、そうなの?」
「ああ。ごめんな。大丈夫、俺は怒ってない」
「じゃあ父さんのお顔見ていい?」
本当に怒っていないか不安になってるのだろう。龍一郎は下を見た。中心は元通りになっていた。
「ああ、見てごらん。怒ってなんかいないから」
不安そうに振り返る勇士を慰める。しかしその頃、とてつもない罪悪感が龍一郎に襲いかかっていた。
(俺は勇士に欲情したっていうのか。……あんな小さな、しかも自分の子どもに)
龍一郎は小児性愛者ではない。普通の子ども相手に興奮したりはしない。だがペドフィリアの方がまだ罪悪感は薄かったかもしれない。
自分の大切な息子に欲情する最低な父親。龍一郎は死にたくなった。
性的欲求を解消するためだけに女性とそういうことはしていたが、これまで恋愛をしてはこなかった。それがいけなかったのか。
それとも家族の愛が行き過ぎてしまった結果か。
勇士を見る度に体のラインを追ってしまう。柔らかな唇、お昼寝をしている時にちらりと見える薄いお腹。
その度に龍一郎は熱い欲が湧き上がるのを感じ、そして死を望む程苦しくなった。
それからだ。勇気が夢に出るようになったのは。
何も言いはしない。だが憎悪と蔑むような瞳で龍一郎を見つめるのだ。
龍一郎は彼の足に縋って謝り続ける。
「すまない、俺は勇士を守り立派に育てるって誓ったのに。俺はっ……」
「…………」
「本当はお前たちが勇士を育てていたはずなんだ。その幸せを、人生を俺が奪った。あぁ勇気、本当にすまない」
「…………」
勇気は何も言わない。
これじゃあ駄目だと龍一郎は祖母に勇士を預けようとした。
祖母とは父が会わせてくれず母の葬式の一度しか顔を合わせたこしかないし、祖母は自分の娘の人生がヤクザにめちゃくちゃにされたと思っていることもあって龍一郎が組の一員になってからは会いに来ようとすることすらなくなった。
だが祖母はヤクザ以外で言えば母同様とても優しい人間だ。だから勇士のことも快く引き受けてくれた。
しかし結局出来なかった。
再び夢の中に勇気が現れる。黙ったまま見つめる勇気に龍一郎は懇願した。
「勇士には決して手を出さない! 必要以上に接しない。ただ勇士が健やかに成長出来るように守るだけに徹する! だからどうか勇士のそばにいさせてくれ! 俺には勇士しかいないんだ!」
「…………」
勇気はただ龍一郎を見つめていた。
龍一郎は勇士に対する態度を変えた。以前のようにスキンシップや賑やかな会話はしない。ただ親としての役割を果たすだけの存在になった。
組長として返り咲いたのも勇士と距離を置くためだった。だが自分がいない家に一人きりは寂しい。それに友人はとても重要なものだ。
勇気と舞が受けた屈辱を勇士には決して味あわせたくはなかった。だから貞操帯を「おまもり」と称して勇士に装着させ学校に通わせた。
勇士が精通してからの管理は欲情を隠すので必死だった。ただ勇士の自由を奪っていることの罪悪感が熱を抑えるのに役立った。
龍一郎は以前のように仲睦まじく過ごせなくともどうしても勇士のそばにいたかった。
だが勇士の心は違った。
『離して! 俺はもう父さんのそばにいたくないんだ!』
『俺、出て行くから。何度失敗したって構わない。けど必ずここから出て行く。もうこの家には戻らない』
龍一郎は勇士の意思を尊重した。そして勇士のために嫌われる選択をした。
「おじゅちゃ……」
小さな手が龍一郎の手に重ねられる。顔を上げると勇士が心配そうに龍一郎を見つめていた。
「おじゅちゃ、ゆうのちゅうしゅる?」
「ゆう……」
勇士はよく龍一郎と勇気にねだられてほっぺにキスをしてくれた。キスをすると笑顔になる。それを覚えていて龍一郎を元気付けようとしてくれているのか。
勇士が頬にちゅっとキスする。
自然と涙が溢れてきた。勇士を強く抱きしめ、小さな暖かさに浸る。
「おじゅちゃ……?」
まだ小さいから勇士は両親が死んだことを理解していない。
勇士にはまだまだ親が必要だ。子を守り、愛で包み込む存在が。
龍一郎は自分の命に、そして二人に誓いを立てた。
「俺が育てる……、俺が責任もって勇士を立派に育てる。もう誰にも奪われない。俺が必ず勇士を守る」
勇士は不思議そうな面持ちで龍一郎を見つめていた。
龍一郎は育児に専念したいと組長の座から降り、それから二人の生活が始まった。
組から抜けたとはいえ、家族が狙われるかもしれない。だから可愛らしい青い小鳥は鳥籠で大切に育てた。決して家から出さず、出かける時は必ずそばを離れなかった。
「とうしゃん」
初めてそう呼んでくれた日を憶えている。両親が別にいて亡くなったことを勇士はもう知っている。強要したことはない、自然と勇士がそう呼んでくれたのだ。
「うぅ……」
「とうしゃん、どうして泣いてるの?」
その日、龍一郎は嬉しすぎて泣いた。
そして変わらず幸せな日々がずっと続くと思っていた。なのに……。
「父さん、一緒にお風呂入ろ!」
「ああ、いいぞ」
軽い笑い声が浴室に響く。
二人は浴槽でパシャパシャと湯を掛け合って遊んでいた。勝ち目はないと思ったのだろう。勇士がシャワーを手にして龍一郎に向けて反撃を始める。
「おい、ゆう! それはずるいぞ!」
「きゃはは。くらえ~」
「うわ、わかったわかった! 降参するから!」
「いぇ~い。僕のかち~! じゃあ父さん、僕の髪と体洗ってね~」
「おい俺は使用人か?」
「文句な~し! 勝者は敗者の言うことを聞くんだよ」
「そのルール初耳だぞ。全く仕方ないな。じゃあ王様どうかお風呂からあがってくださいな」
「は~い!」
勇士の望み通り、髪と体を洗っていく。
前に勇士を座らせ、スポンジで体に泡を滑らせる。
こうして見ると本当大きくなったと実感する。勇士はもう小学二年生だ。学校には通わせていないが、これも勇士を守るためだ。
龍一郎はまじまじと勇士の体を見つめ、泡を広がらせていく。素手で感じる肌はマシュマロみたいに柔らかくとてもすべすべしていた。
それからちょっと心配になる綺麗なくびれ。もちもちとしてるのだろうか、つい触ってみたくなる太腿。可愛らしい小さなお尻。胸は淡い桜色で、股にある小さなそれは……。
「…………!」
龍一郎は体を固まらせる。自身の中心が熱くそして硬く聳え立っていた。
(は? 俺、なんで……)
龍一郎は困惑していた。何故自分がこんなにも性的興奮を覚えているのか。
動かなくなった龍一郎を不審に思ったのだろう。勇士が「父さんどうしたの?」と振り返ろうとする。龍一郎は慌てて大声を出した。
「前を見ろ!」
勇士が驚いてビクッと動きを止める。それから前を向いて泣き始めた。
「うえぇぇん。父さん、ごめんなさ~い」
怒られた。そう勘違いさせたことにすぐ気付いて龍一郎は急いで謝った。
「ゆう、ごめんな。お前を怒ったわけじゃないんだ。俺が馬鹿で間違って大声を出しちゃっただけなんだ」
「うぅ、そうなの?」
「ああ。ごめんな。大丈夫、俺は怒ってない」
「じゃあ父さんのお顔見ていい?」
本当に怒っていないか不安になってるのだろう。龍一郎は下を見た。中心は元通りになっていた。
「ああ、見てごらん。怒ってなんかいないから」
不安そうに振り返る勇士を慰める。しかしその頃、とてつもない罪悪感が龍一郎に襲いかかっていた。
(俺は勇士に欲情したっていうのか。……あんな小さな、しかも自分の子どもに)
龍一郎は小児性愛者ではない。普通の子ども相手に興奮したりはしない。だがペドフィリアの方がまだ罪悪感は薄かったかもしれない。
自分の大切な息子に欲情する最低な父親。龍一郎は死にたくなった。
性的欲求を解消するためだけに女性とそういうことはしていたが、これまで恋愛をしてはこなかった。それがいけなかったのか。
それとも家族の愛が行き過ぎてしまった結果か。
勇士を見る度に体のラインを追ってしまう。柔らかな唇、お昼寝をしている時にちらりと見える薄いお腹。
その度に龍一郎は熱い欲が湧き上がるのを感じ、そして死を望む程苦しくなった。
それからだ。勇気が夢に出るようになったのは。
何も言いはしない。だが憎悪と蔑むような瞳で龍一郎を見つめるのだ。
龍一郎は彼の足に縋って謝り続ける。
「すまない、俺は勇士を守り立派に育てるって誓ったのに。俺はっ……」
「…………」
「本当はお前たちが勇士を育てていたはずなんだ。その幸せを、人生を俺が奪った。あぁ勇気、本当にすまない」
「…………」
勇気は何も言わない。
これじゃあ駄目だと龍一郎は祖母に勇士を預けようとした。
祖母とは父が会わせてくれず母の葬式の一度しか顔を合わせたこしかないし、祖母は自分の娘の人生がヤクザにめちゃくちゃにされたと思っていることもあって龍一郎が組の一員になってからは会いに来ようとすることすらなくなった。
だが祖母はヤクザ以外で言えば母同様とても優しい人間だ。だから勇士のことも快く引き受けてくれた。
しかし結局出来なかった。
再び夢の中に勇気が現れる。黙ったまま見つめる勇気に龍一郎は懇願した。
「勇士には決して手を出さない! 必要以上に接しない。ただ勇士が健やかに成長出来るように守るだけに徹する! だからどうか勇士のそばにいさせてくれ! 俺には勇士しかいないんだ!」
「…………」
勇気はただ龍一郎を見つめていた。
龍一郎は勇士に対する態度を変えた。以前のようにスキンシップや賑やかな会話はしない。ただ親としての役割を果たすだけの存在になった。
組長として返り咲いたのも勇士と距離を置くためだった。だが自分がいない家に一人きりは寂しい。それに友人はとても重要なものだ。
勇気と舞が受けた屈辱を勇士には決して味あわせたくはなかった。だから貞操帯を「おまもり」と称して勇士に装着させ学校に通わせた。
勇士が精通してからの管理は欲情を隠すので必死だった。ただ勇士の自由を奪っていることの罪悪感が熱を抑えるのに役立った。
龍一郎は以前のように仲睦まじく過ごせなくともどうしても勇士のそばにいたかった。
だが勇士の心は違った。
『離して! 俺はもう父さんのそばにいたくないんだ!』
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