乙女ゲームのモブに転生したけど誰も主人公を好きにならない件について

文字の大きさ
3 / 3

第三話 灰色の彼

しおりを挟む
 スッとした鼻筋、月のような黄金の瞳。記憶に深く残る美形。
 古城門……!
 一瞬にして、色んな感情が込み上がってくる。出会えた感動、前世に自身の命すら構わず救おうとしてくれたことへの感謝。けれどそれら全ては彼の暴風によってかき消される。
 アデルバートと繋ぐ手を振り払うように、彼は抱きとめた体を自身へと引っ張り、僕の腕を掴んだままアデルバートから隠すように前に出る。
「おい、てめぇ! なに横取りしてんだよ!」
 古城門、……いやロイドは鋭い目つきを更に鋭くさせ、アデルバートに怒りを露わにする。対して怒声を浴びせられている彼はどこ吹く風といった様子だ。
「横取り? なんのことだ?」
「ふざんけんな。寮生は寮長が決める決まりだろ。コイツは俺が取った。決まった以上、手を出すのはご法度だろうが」
「何を言っている? 彼は正真正銘アーサー・レークス寮の寮生だ。俺は何も横取ってなどいない」
「いけしゃあしゃあとホラ吹きやがって。おい、書面で通達きてんだろ。見せろ」
 憤りはそのままに、ロイドが僕に迫ってくる。
「いや、その……ぼ、僕もらってないんですけど」
 ロイドがアデルバートを睨みつけ、隠しもせず舌打ちをする。思わずビクリと心臓が怯える。
 アデルバートはというと、ロイドの睨みなど気にする様子もなく、余裕を含んだ態度で懐から封書を取り出す。
「通達はある。どうやらこちらに不手際があったようで彼に届いていなかったらしい。今朝返送されてきたため、俺が預かっていた」
 封書から一枚の紙を取り出し、ロイドに見せつける。
「分かったろ。これは俺のものだ。駄犬はさっさと失せろ」
 アデルバートがにんまりと優越に浸る笑顔を見せ、シッシッと追い払うような口調で言う。ロイドのこめかみにピキリと青筋が立った。
「汚ねぇ真似しやがって! 俺に知らせず式の日にちをズラしたのもお前だな!」
「それはお前の自己管理不足だろう。公に告知しているのにも関わらず、いつも学校を抜け出してぶらついているからそうなるんだ」
「あ゛あ゛? こちとら正式な手順踏んでやってんだぞ!」
「こちらも文書としてその青年がアーサー・レークス寮であると残っているのだが」
 二人の間に火花が散る。今にも爆発してしまいそうだ。上級生、しかも寮長の言い争いに周囲の顔が青くなる。
 寮長は出身も、成績も申し分ないエリート。学長よりも権限を持っており、喩えるなら王様のような存在だ。王様同士の喧嘩なんてひやひやして見ていられない。
しおりを挟む
感想 1

この作品の感想を投稿する

みんなの感想(1件)

朧月
2022.05.01 朧月

初めまして。
吉田さんが古城戸に絡む辺りから
古城戸が『古城門』になってます。どちらが正しいのでしょうか?(^◇^;)

2022.05.10

誤字報告ありがとうございます。
正しくは「古城門」です。
主要人物かつ更新してからしばらく経つのに気付きませんでした。申し訳ございません。

解除

あなたにおすすめの小説

片想いの相手が「そろそろ恋愛したい」と言ったので、用済みの俺はニートになることにしました。

はぴねこ
BL
 高校生の頃、片想いの親友に告白した。  彼はノンケだったから玉砕して友人関係も終わるものだと思っていた。  もしかすると気持ち悪いと軽蔑される覚悟までしていたのに、彼は「今は恋愛をしている時間がないんだ」と自分の夢を語ってくれた。  彼は会社を興した祖父のことをとても尊敬していて、自分も起業したいと熱く語ってくれた。  そして、俺の手を握って「できれば親友のお前には俺の右腕になってほしい」と言われた。  同性愛者の俺のことを気持ち悪いと遠ざけることもせずに、親友のままでいてくれた彼に俺は感謝して、同じ大学に進学して、大学の頃に彼と一緒にゲームを作成する会社を起業した。  あれから二十年間、本当に二人三脚で駆け抜けてきた。  そして、昨年売り出したVRMMOが世界的に大ヒットし、ゲーム大賞を取ったことを祝うパーティーで親友が語った言葉に俺の覚悟も決まった。 「俺もそろそろ恋愛したい」  親友のその言葉に、俺は、長年の片想いを終わらせる覚悟をした。  不憫な拗らせアラフォーが”愛”へと踏み出すお話です。

公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜

上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。 体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。 両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。 せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない? しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……? どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに? 偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも? ……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない?? ――― 病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。 ※別名義で連載していた作品になります。 (名義を統合しこちらに移動することになりました)

悪役令息に転生したらしいけど、何の悪役令息かわからないから好きにヤリチン生活ガンガンしよう!

ミクリ21 (新)
BL
ヤリチンの江住黒江は刺されて死んで、神を怒らせて悪役令息のクロエ・ユリアスに転生されてしまった………らしい。 らしいというのは、何の悪役令息かわからないからだ。 なので、クロエはヤリチン生活をガンガンいこうと決めたのだった。

推し変したら婚約者の様子がおかしくなりました。ついでに周りの様子もおかしくなりました。

オルロ
BL
ゲームの世界に転生したコルシャ。 ある日、推しを見て前世の記憶を取り戻したコルシャは、すっかり推しを追うのに夢中になってしまう。すると、ずっと冷たかった婚約者の様子が可笑しくなってきて、そして何故か周りの様子も?! 主人公総愛されで進んでいきます。それでも大丈夫という方はお読みください。

伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい

マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。 最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡) 世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。

【完結】最強公爵様に拾われた孤児、俺

福の島
BL
ゴリゴリに前世の記憶がある少年シオンは戸惑う。 目の前にいる男が、この世界最強の公爵様であり、ましてやシオンを養子にしたいとまで言ったのだから。 でも…まぁ…いっか…ご飯美味しいし、風呂は暖かい… ……あれ…? …やばい…俺めちゃくちゃ公爵様が好きだ… 前置きが長いですがすぐくっつくのでシリアスのシの字もありません。 1万2000字前後です。 攻めのキャラがブレるし若干変態です。 無表情系クール最強公爵様×のんき転生主人公(無自覚美形) おまけ完結済み

言い逃げしたら5年後捕まった件について。

なるせ
BL
 「ずっと、好きだよ。」 …長年ずっと一緒にいた幼馴染に告白をした。 もちろん、アイツがオレをそういう目で見てないのは百も承知だし、返事なんて求めてない。 ただ、これからはもう一緒にいないから…想いを伝えるぐらい、許してくれ。  そう思って告白したのが高校三年生の最後の登校日。……あれから5年経ったんだけど…  なんでアイツに馬乗りにされてるわけ!? ーーーーー 美形×平凡っていいですよね、、、、

【8話完結】帰ってきた勇者様が褒美に私を所望している件について。

キノア9g
BL
異世界召喚されたのは、 ブラック企業で心身ボロボロになった陰キャ勇者。 国王が用意した褒美は、金、地位、そして姫との結婚―― だが、彼が望んだのは「何の能力もない第三王子」だった。 顔だけ王子と蔑まれ、周囲から期待されなかったリュシアン。 過労で倒れた勇者に、ただ優しく手を伸ばしただけの彼は、 気づかぬうちに勇者の心を奪っていた。 「それでも俺は、あなたがいいんです」 だけど――勇者は彼を「姫」だと誤解していた。 切なさとすれ違い、 それでも惹かれ合う二人の、 優しくて不器用な恋の物語。 全8話。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。