神官長は勇者に囚われて

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群衆の怒号が渦巻く玉座の間。
 シンは剣を構えたまま、私を背に庇って立っていた。

 「俺はイリアスを守る。……誰が敵でもだ」

 その宣言は確かに響いた。
 しかし、人々の心は分断され、混乱は極限に達していた。

 そのときだった。

 「イリアス様……!」

 涙に濡れた声と共に、王女リシェルが駆け出してきた。
 ドレスの裾を乱し、手には細身の短剣が握られている。

 「あなたさえいなければ……! 勇者さまは私のものに……!」

 閃く銀光が、真っ直ぐに私の胸を狙った。

 「――イリアス!!」

 次の瞬間、熱い衝撃が私を包んだ。
 振り返れば、シンが私を庇い、その胸に短剣が深々と突き立っていた。

 「シン……っ!」

 血が口から溢れ、彼は苦しい呼吸の中で笑った。
 「……君を、守れた……それで……いい……」

 足元が崩れ落ちるような感覚に襲われた。
 私は彼を抱きしめ、血に濡れた胸に顔を埋め、叫んだ。

 「嫌だ……シン、死なないで! どうして……どうして貴方が犠牲に……!」

 涙が溢れ、祈りの言葉が口から零れた。
 「神よ……どうか……! どうか彼を……!」

 その瞬間、胸の奥から光が溢れ出した。
 白銀の輝きが広間を満たし、温かな風がシンの身体を包み込む。

 「……イリアス……?」

 瞼を閉じていた彼の唇が震え、再び息を吹き返す。
 短剣が抜け落ち、傷口は光に飲まれて癒えていった。

 人々は息を呑み、目を見開いた。
 「神官長が……勇者を甦らせた……」
 「奇跡だ……!」

 私は涙に濡れた顔で彼を見つめた。
 「……お願い、もう……私を庇わないで。貴方を失うくらいなら、私は……」

 シンは弱々しく微笑み、私の頬を撫でた。
 「君が泣くのを見たくない。……それだけで、俺は生き返れるんだ」

 その言葉に、涙が止まらなかった。
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