神官長は勇者に囚われて

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最終話

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光に包まれた広間で、私はシンの体温を確かめるように抱きしめていた。
 彼の胸は確かに上下し、温かな息が頬にかかる。
 ――生きている。

 群衆は奇跡を目撃し、混乱の声を上げた。
 「神官長が……勇者を甦らせた……!」
 「神の御業だ……!」
 「だが教会はイリアス様を断罪すると……!」

 憎悪と信仰、歓喜と疑念が入り混じり、世界は大きく揺らいでいた。

 王女リシェルはその場に崩れ落ち、短剣を手から落として嗚咽していた。
 「勇者さま……どうして……どうして私ではなく……」

 その姿に胸が痛んだ。
 彼女もまた、教会に唆され、愛を利用されただけの犠牲者なのだ。

 だが、シンは迷わなかった。
 立ち上がり、血に濡れた衣のまま剣を握り直す。
 「俺の伴侶はイリアスだ。国がどう言おうと、教会が何を企もうと関係ない」

 その瞳は燃えるように私を映していた。
 「この世界を敵にしてでも……俺は君を守る」

 その言葉に、広間は沈黙した。
 人々は畏怖と敬意を入り混ぜた眼差しをシンに注ぐ。

 私は彼の手を取り、声を震わせて告げた。
 「……シン。私はずっと、自分を汚れていると思ってきました。孤児院を守るために身体を差し出した過去も、弱さも、すべて罪だと……」

 彼は首を振り、私を抱き寄せた。
 「それでも君は俺の神だ。罪も涙も全部、俺だけのものだ」

 その囁きに胸が熱くなり、涙が溢れた。
 「なら……私も誓います。シン。どんな世界になろうとも、貴方の伴侶として共に歩みます」

 広間の天井から差し込む光が二人を照らし出す。
 人々の声は次第に鎮まり、ただ静かなざわめきが満ちた。

 ――こうして私は勇者に囚われ、そして守られ、愛される伴侶となった。
 逃げられない囚われでありながら、安堵と救済の場所でもあるその腕の中で。

 未来がどうなろうとも構わない。
 彼と共に生きる。それが私の選んだ、唯一の道なのだ。
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