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第五話
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翌日の朝、遙香が目を覚ますと玄関の方で物音がした。そ~っとドアを開けて
様子を見てみると喜美夜がストレッチをしていた。遙香は部屋から出て「おばあちゃん。おはよう。」と話しかけると「遙香ちゃん。おはよう。ほんとにアンタは昔から早起きだね~。陽人くんとは対照的だね。」とジョーク混じりに遙香を褒めた。「お兄ちゃんも医者になってからはちゃんと早起きしてるよ。まぁ今日は相当疲れてただろうから寝てるけど。」と寝室の方を向くと陽人が立っていた。ギョッと驚く遙香と喜美夜を見て「誰がいつまでも寝てるって?あ,ばあちゃんおはよう。」とツッコミながらも挨拶はわすれない。「ところでおばあちゃんは何をしてたの?」と思い出したように遙香が聞くと「散歩をしようとしてたんだよ。そうだ!陽人くんと遙香ちゃんも一緒に行くか?せっかく早起きしたんだから。朝の北海道は空気が澄んでて気持ちいいよ。」と2人を散歩に誘うと2人は顔を見合わせてお互い頷き「じゃあ行こう。」と結論を出した。陽人・遙香が喜美夜と一緒に家を出ると風が3人の体を包んだ。少し冷たいが気持ちの良いそよ風だ。
「じゃあ、いつも私が歩いてる道を歩くからついてきてね。」と喜美夜は歩き出した。陽人と遙香もその後ろをついて歩こうと思ったが、喜美夜の歩きが思ったよりも早く2人と喜美夜の間の距離は段々と広くなり、ついには2人が走ってようやく喜美夜に追いついた。
「ばあちゃん。歩くの速すぎるよ。」と陽人が息を整えながら言うと「ほんとにもうすぐ80?信じられないわ。」と感嘆の声を上げると「まぁ、もう散歩を始めてどれくらい経つかしら?遙香ちゃんが生まれた時くらいから始めたから。19年?そりゃ歩くのも速くなるわよ。ちなみにここが折り返し地点だから帰りましょ。」と言いながら喜美夜は再び歩き出した。続けて陽人も「今度は負けねぇぞ!」と喜美夜に必死について行こうとした。その後ろで「ちょっとお兄ちゃん待ってよ!」と遙香も急いで追いつこうとしたが昨日までずっとベッドの上にいたので速く歩くことはできなかった。
遙香の視界から陽人と喜美夜の姿がどんどん小さくなっていった。その頃陽人も喜美夜に追いつくことは困難だと判断し、ペースを落とした。すると遙香のことをすっかり忘れていたことに気がつき、後ろを振り向くとかなり遠くの方から遙香が遙香が歩いてきているのが見えた。陽人は走って遙香のところまで戻り
「ごめん。ばあちゃんに追いつくことで頭がいっぱいで遙香のことを全く気づいてなかった。」と謝罪した後2人でひたすら歩いた。すると目の前に家が見えてきた。玄関の前には喜美夜が心配そうに待ってくれているのが見えた。
すると、喜美夜が2人に気づいて手を振った。2人が家に着くと「ごめんなさい。帰りは行きよりも速く歩こうと思っちゃう癖があって、それで2人のことを置いていっちゃった。」と謝罪し、3人で家に入った。
朝食がまだだったのでリビングに向かうと祖父の武雄(たけお)が座っていた。「あ,じいちゃん。大丈夫?」と
陽人が武雄の体を気遣うと「あぁ陽人。来てくれていたのか。あ,遙香も忙しいのにすまないね。でももう大丈夫!お前たちの顔を見たら元気になったよ。ほら,孫は万能薬って言うじゃないか!」
陽人と遙香は何を言っているのかわからなかった。いや,和弘と裕子もキョトンとしている。唯一喜美夜だけが武雄の言った例えに賛同している。
すると「そういえば,あなたたちはいつ向こうに戻るの?」と喜美夜が聞いた。
「僕と遙香は明日の朝に帰る。仕事があるからさ。」「私と和弘さんは,今週いっぱいここにいるつもり。」とそれぞれ答えた。「そうか,陽人と遙香は明日で帰っちゃうのか~。じゃあ、今夜はぱあ~っといっちゃうか!」と病み上がりの武雄が提案したが、喜美夜は「おじいちゃんは、病み上がりなんですからお酒は禁止ですよ。」と釘を刺した。シュンとなった武雄に「とにかくおじいちゃんが元気になって何よりだよ!」と裕子が機嫌を取り直させた。この日は1日陽人と遙香は明日の準備をした後休養をとった。
その夜、朝武雄の提案通りちょっとしたパーティーを開いた。パーティーといっても家族以外は誰も参加しないのだ。
陽人と和弘と裕子はビールを、遙香と喜美夜と武雄はウーロン茶を飲んだ。
パーティーはものすごく盛り上がった。
「こんなにこの家が明るくなったのはいつぶりかしら。」と喜美夜が呟いた。
その一言に一同がシーンと静まり返った。「まぁいいじゃないか,今日こうやって家族が全員揃ってパァっとできたんだから。過去のことは振り返らない。未来を見据えて生きて行こう。ポジティブシンキング!」と武雄がなんとかこの暗い空気を変えようと前向きな思考を促した。その武雄の気持ちが伝わったのか「そうですね。前向きに生きましょ。ありがとうございます。」と武雄の気遣いに感謝し,「さぁ,続きをしましょ!」とパーティーは再開した。
明日はついに陽人と遙香が帰る日。
一旦,家族とは離れてしまうが,すぐに会える。
様子を見てみると喜美夜がストレッチをしていた。遙香は部屋から出て「おばあちゃん。おはよう。」と話しかけると「遙香ちゃん。おはよう。ほんとにアンタは昔から早起きだね~。陽人くんとは対照的だね。」とジョーク混じりに遙香を褒めた。「お兄ちゃんも医者になってからはちゃんと早起きしてるよ。まぁ今日は相当疲れてただろうから寝てるけど。」と寝室の方を向くと陽人が立っていた。ギョッと驚く遙香と喜美夜を見て「誰がいつまでも寝てるって?あ,ばあちゃんおはよう。」とツッコミながらも挨拶はわすれない。「ところでおばあちゃんは何をしてたの?」と思い出したように遙香が聞くと「散歩をしようとしてたんだよ。そうだ!陽人くんと遙香ちゃんも一緒に行くか?せっかく早起きしたんだから。朝の北海道は空気が澄んでて気持ちいいよ。」と2人を散歩に誘うと2人は顔を見合わせてお互い頷き「じゃあ行こう。」と結論を出した。陽人・遙香が喜美夜と一緒に家を出ると風が3人の体を包んだ。少し冷たいが気持ちの良いそよ風だ。
「じゃあ、いつも私が歩いてる道を歩くからついてきてね。」と喜美夜は歩き出した。陽人と遙香もその後ろをついて歩こうと思ったが、喜美夜の歩きが思ったよりも早く2人と喜美夜の間の距離は段々と広くなり、ついには2人が走ってようやく喜美夜に追いついた。
「ばあちゃん。歩くの速すぎるよ。」と陽人が息を整えながら言うと「ほんとにもうすぐ80?信じられないわ。」と感嘆の声を上げると「まぁ、もう散歩を始めてどれくらい経つかしら?遙香ちゃんが生まれた時くらいから始めたから。19年?そりゃ歩くのも速くなるわよ。ちなみにここが折り返し地点だから帰りましょ。」と言いながら喜美夜は再び歩き出した。続けて陽人も「今度は負けねぇぞ!」と喜美夜に必死について行こうとした。その後ろで「ちょっとお兄ちゃん待ってよ!」と遙香も急いで追いつこうとしたが昨日までずっとベッドの上にいたので速く歩くことはできなかった。
遙香の視界から陽人と喜美夜の姿がどんどん小さくなっていった。その頃陽人も喜美夜に追いつくことは困難だと判断し、ペースを落とした。すると遙香のことをすっかり忘れていたことに気がつき、後ろを振り向くとかなり遠くの方から遙香が遙香が歩いてきているのが見えた。陽人は走って遙香のところまで戻り
「ごめん。ばあちゃんに追いつくことで頭がいっぱいで遙香のことを全く気づいてなかった。」と謝罪した後2人でひたすら歩いた。すると目の前に家が見えてきた。玄関の前には喜美夜が心配そうに待ってくれているのが見えた。
すると、喜美夜が2人に気づいて手を振った。2人が家に着くと「ごめんなさい。帰りは行きよりも速く歩こうと思っちゃう癖があって、それで2人のことを置いていっちゃった。」と謝罪し、3人で家に入った。
朝食がまだだったのでリビングに向かうと祖父の武雄(たけお)が座っていた。「あ,じいちゃん。大丈夫?」と
陽人が武雄の体を気遣うと「あぁ陽人。来てくれていたのか。あ,遙香も忙しいのにすまないね。でももう大丈夫!お前たちの顔を見たら元気になったよ。ほら,孫は万能薬って言うじゃないか!」
陽人と遙香は何を言っているのかわからなかった。いや,和弘と裕子もキョトンとしている。唯一喜美夜だけが武雄の言った例えに賛同している。
すると「そういえば,あなたたちはいつ向こうに戻るの?」と喜美夜が聞いた。
「僕と遙香は明日の朝に帰る。仕事があるからさ。」「私と和弘さんは,今週いっぱいここにいるつもり。」とそれぞれ答えた。「そうか,陽人と遙香は明日で帰っちゃうのか~。じゃあ、今夜はぱあ~っといっちゃうか!」と病み上がりの武雄が提案したが、喜美夜は「おじいちゃんは、病み上がりなんですからお酒は禁止ですよ。」と釘を刺した。シュンとなった武雄に「とにかくおじいちゃんが元気になって何よりだよ!」と裕子が機嫌を取り直させた。この日は1日陽人と遙香は明日の準備をした後休養をとった。
その夜、朝武雄の提案通りちょっとしたパーティーを開いた。パーティーといっても家族以外は誰も参加しないのだ。
陽人と和弘と裕子はビールを、遙香と喜美夜と武雄はウーロン茶を飲んだ。
パーティーはものすごく盛り上がった。
「こんなにこの家が明るくなったのはいつぶりかしら。」と喜美夜が呟いた。
その一言に一同がシーンと静まり返った。「まぁいいじゃないか,今日こうやって家族が全員揃ってパァっとできたんだから。過去のことは振り返らない。未来を見据えて生きて行こう。ポジティブシンキング!」と武雄がなんとかこの暗い空気を変えようと前向きな思考を促した。その武雄の気持ちが伝わったのか「そうですね。前向きに生きましょ。ありがとうございます。」と武雄の気遣いに感謝し,「さぁ,続きをしましょ!」とパーティーは再開した。
明日はついに陽人と遙香が帰る日。
一旦,家族とは離れてしまうが,すぐに会える。
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