Say!Yo!カマタケ物語

伊藤龍太郎

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第7話

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時は流れて同年度の二月になった。
珠美は就職先を探していた。
夏季休業期間中は,就職なんてこれっぽっちも考えていなかった。なぜなら家のことで忙しかったからだ。
しかし,遥子がきて珠美は家事をやるという負担が減ったので就職に対する意欲が湧いてきたのだ。
もちろんあの時も意欲はあったのだが,家事があるから。と欲を抑えつけていたのだ。これから就活生による競争が激しくなるので出来るだけ早く希望先を決めておきたいのだが,「えぇ~。どこにしよう。」と珠美は企業のホームページを見ながら本気で悩んでいた。
見かねた慶太がコーヒーを飲みながら
「決められないなら俺の会社にするか?」と冗談半分で言ってきた。
「それは絶対に嫌だ!普通に考えればわかるでしょ?父親と同じ会社で,家でも
会社でも一緒って。ホントに考えただけで吐きそうになるわ!」
「おい,そんな言い方ないだろ~。
いつからお父さんのことが嫌いになったんだ?」と不安そうに聞いてくる慶太に
「嫌いじゃないけど,異性の親と24時間同じ建物にいるって嫌じゃない?」
と珠美は弁明した。
慶太は自分の母と同じところで働くことを想像して「確かに嫌だな。ハハハハ」と呟き笑った。
それを見て珠美は呆れて「どうしよう!」とさっきよりも大きな声で悩んだ。
すると慶太が真面目なトーンで「自分のやりたいこと,得意な分野を活かせそうな職場の方がいいぞ。」と社会人の先輩としてアドバイスを送った。
珠美はその言葉を反芻して「わたしがやりたいことは,得意な分野は・・・。」
とブツブツ言いながらネットで企業を探していると「ここだ~!」と叫んだ。
志望先を決めた珠美は自己PRなどの作業を黙々と進めていた。
その様子を舞斗・華奈子・慶太そして遥子は温かく見守り心の中で「がんばれ。」と呟いた。
そして迎えた面接の日。珠美は珍しく緊張していた。
珠美はこれまで高校受験や大学受験など
多くの試練を乗り越えてきたが、あの時は緊張していなかった。
しかし,今回はガチガチに緊張して家族との会話でさえも噛みまくっていた。
その様子に舞斗をはじめとする家族全員が「大丈夫か?」と心配になったが,
「多分,大丈夫だろう。」と思い直した。
「それじゃあ,行ってきます。」珠美は
靴を履いて出かけようとしたが,足はガクガク震え,手は白くなっていた。
「いってらっしゃい。」と希望と願いを込めて舞斗たち4人は珠美を送り出した。
 面接会場に着いた珠美は受付を済ませ,自分の番が来るのを控え室でじっと待っていた。
ついに珠美の出番が来た。1つ大きく深呼吸をしてから扉をノックして「どうぞ」と応答が聞こえたので「失礼します。」と言って扉を開けた。
 遥子が夕飯の支度をしている時に珠美が帰ってきた。
「おかえり」と4人が笑顔で出迎えてくれた時珠美は緊張が一気にほぐれ,途端に涙が溢れてきた。珠美は涙で頬を濡らしながら「ただいま」と泣き笑いの表情で返した。
珠美は今日という日を絶対に忘れることはないだろう。
 あの日から二週間が経ち合否が判明する日を迎えた。
珠美はあの日と同じぐらいの緊張感を味わっていた。採用通知書は郵送で送られてくるので珠美ら五人は郵便局の配達員をじっと待っていた。時刻は午前11時を回ったその時ピーンポーンとインターホンが鳴った。玄関先に出て郵送物を受け取った。珠美はリビングに戻ってゆっくりと封を切った。中に入っていた書類をゆっくりと出して珠美はパッと書類を見た。そのには「採用通知書」と書いていたのが目に入った。結果を家族全員に報告すると笑顔で祝福してくれた。
珠美は嬉しさが頂点に達して憚ることなく泣いて泣いて泣き続けた。
ふと顔を上げると舞斗も泣いていた。
珠美は「ちょっと,なんで舞斗が泣いてるのよ。」と泣きながら聞くと舞斗も
泣きながら「なんか,姉ちゃんが採用されたってことが嬉しくて今までこんなこと思ったことないんだけど。なんでだろう。」と言ったが涙を拭いて「姉ちゃん。おめでとう。」と珠美の合格を祝った。
それから一週間後珠美は大学の卒業式を迎えた。珠美の学生生活がこの日で終わった。
それからさらに二週間後珠美は会社の入社式を迎えた。ここ一ヶ月は忙しくて大変だったが、希望を胸に新たな自分で切り拓いた道を歩いて行った。
空はどこまでも青く清々しかった。
 華奈子は高校三年生になりついに受験まで1年を切っている。しかし,華奈子は勉強に対する意欲が無くなりつつあった。






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