バッドラック ――ハイジャック騒ぎの中、個人的な問題に慌てふためくエコノミークラスの乗客たち――

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ドレッドヘアーの男

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 機体を支える三つの車輪の内、後方に位置する左脚のギアだけが反応しない。ギアダウンを行えば本来はギアの降下を示すランプが点灯するのだが、現在は左脚のランプだけが点灯していないのだ。
 再度ギア降下のチェックしても一向に点らないランプに動揺を隠せないのは、副操縦士の横出だった。

「っ……やはり左脚のギア、下りていません」

 ハイジャック犯の対応に備えて近くを飛んでいた航空自衛隊の戦闘機に目視で確認させたところ、やはり車輪は出ていないとコックピットへ無線が入った。
 折角ハイジャックが解決したというのに、状況は最悪のまま変わらず。このフライトはもしや呪われているのではと、科学と技術の塊である機体を操っているにも拘らず、横出はありもしない超自然的な原因にまで目を向けてしまいそうになる。
 こんなとき、頼りになるのは機長だけ。乗客を混乱に陥れた先程のアナウンスを含め、今日一日で何度も馬鹿だと思い知らされたが、荒木機長も一応はベテランのパイロット。操縦技術に関しては同業者からも一目置かれている男である。
 その頼みの綱である荒木機長はというと――、

「えー、下りない航空機のタイヤとかけまして、機械音痴の妻が買うビデオデッキと説きます。その心は――どちらも接地(設置)に困るでしょう。お、これ上手くない? 今日の私、結構冴えてるな」

「危機感を持ってください! 危機感を!!」

「はっはっは、悪い悪い。これでも私だってかなり参っているんだ。気を紛らわせたくってな。まさか車輪が出ないとは。折角ハイジャック犯がコックピットから出ていったと思ったら、勝手に問題が解決していたというのに……」

「ですよね。僕も機長の命令に従ってハイジャック犯に飛びかからなくて済んだのに、よりによってこれですか……」

 災難と幸運、そして再び降りかかる災難に、コックピットの空気は重くなる。爆弾は不発に終わったらしいが、爆弾そのものの不備なのか、リモコンの不備なのか、そもそも爆弾が本当に積まれているのか何もわかっていない。この状態で、貨物を地面に擦りながらの胴体着陸はリスクが大きい。
 訓練を積み、それなりの覚悟もしていたつもりのパイロットの二人でこうなのだから、ただ乗り合わせただけの乗客の心境など、確認するまでもなく想像がつく。
 それでもこの状況で選択できる手段など限られており、やがては荒木の顔に覚悟が滲んだ。

「こうなれば……残された選択肢は一つだな。ハイジャック犯の魔の手から生き延びた機と乗客だ。きっと成し遂げられるだろう。横出君、着陸復行一回分を残して燃料の投棄だ」

「まさか――ですが機長!」

「なぁに、俺には確信がある。クルーにこのことを伝えろ。俺はちょっくら、不安がってる乗客を、再び華麗な機内アナウンスで落ち着かせておくとするかな」

 馬鹿話ばかりする荒木には不可能だと横出は否定しようと思ったのだが、初めて機長としての威厳を感じさせる荒木の信頼に足りる言葉と振舞いに、迷っていた横出も同じく覚悟を決めた。

「……わかりました。信じていますよ、機長! でもアナウンスは止めませんか?」



          ◇◇



 ハイジャックも無事解決したというのに、未だに浅井の隣に居座っている舞子は、捕まえたハイジャック犯を隣に座らせて見張っている浅井が大変だろうという、なんとも取って付けたような言い訳を並べ立て、残りのフライトを楽して休んでいた。
 その証拠に、舞子はハイジャック犯と自らの間に浅井を挿んで座っている。普通ならばハイジャック犯を中央の二席に座らせ、それを挟むのが見張り役としてのセオリーだろうが、舞子は危ないからといって平然とそれを拒み、自身とハイジャック犯の間に浅井を挿んで、自分だけは安全を確保した。

 とはいっても、舞子はハイジャック犯に未だ恐怖心を抱いているようだが、浅井の見る限りでは二人のハイジャック犯に抵抗の意思などなさそうだ。一応、ハイジャック犯の靴紐を抜き取って、それを使い両手首を体の前で縛ってはあるが、拘束も必要ないくらい、彼ら兄弟の顔は悪人の面影はなく、清々しく変化していた。
 兄弟が浄化された理由はもちろん、議員としての失墜どころか、ひき逃げ犯としても追及を逃れることのできなくなった金泉議員が酷く落ち込み、がっくりと項垂れているからだ。
 因みに合計三丁の拳銃や遠隔起爆装置は全て浅井が取り上げた。浮気の果てに拳銃を構えた憐れな男も、妻と浮気相手に再び挟まれて、修羅場という人生の戦場に戻った。己の欲求に忠実だった二人の男には、再び暴れる気力はもう残されていない。

 ……と、まあここまでは先程までの話である。十数分前に機長の飛び抜けて間の悪いブラックジョークがアナウンスで流れてからは、乗員乗客の顔色など一変している。
 特に舞子は、それが顕著だ。

「ぁぁぁぁ――駄目だ駄目だ駄目だ、もう駄目だッ!! やだ! どうしよう!? お母さん! お父さ――んは……まあいいや。まだ見ぬ私のダーリン! 私だま死にたくないよぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!」

 乗客の誰よりもパニックに陥るこの女がどうやって客室乗務員になることができたのか、今となってはそれが一番の疑問だが、舞子の下らない人生経験を聞き出すことに残り少ない時間を費やしたくはないので、その疑問は解決することなく、どうせあまり気にならないので記憶の彼方に放り投げる。
 するとようやく、乗客の混乱の引き金となったアナウンスから十数分、車輪は出ないらしいが安定した飛行が続けられていた最中で、再び機長からのアナウンスが客室に流れ始める。

『当機はトラブルのため、残された手段として左側の車輪を除いた二輪のみでの片脚着陸に入ります。心配はありません。クルーはこういった場合に備え万全の訓練を受けていますし、何より機長の私はこの現状でなぞかけを思い浮かぶほどに気楽です。え? 聞きたいですか? しょうがないな。では、えー、下りない航空機のタイヤとかけまして――『機長! それはもういいですから!』――ちょ、止めなさい横出君! オチまで言わせなさい! 最後は落とさないと! 私に落とさせなさい!!』

 乗客がコックピットの扉を叩き壊して機長に殴りにかかっていないのが、今日一番の軌跡かもしれない。

「片脚着陸とかありえない! ぎゃあああああああああっ! 死ぬ! これ絶対死ぬ! もう死んだ! いやあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ――!!」

 こいつ一人がジェットコースターにでも乗っているのかと思わせる、日頃の訓練など忘れて叫べるだけ叫ぶ舞子の無様な姿に、終始ろくでもない客室乗務員を貫き通せていると、浅井はある種の敬意を込めて侮蔑の眼差しを向ける。

「……仕事しろよ、このクズ」

「いいんです! 私はどうせ空のお茶くみですから!」

『衝撃に備え、姿勢を低く、体を前に倒して足首を掴んで――』

 舞子ではない客室乗務員のお姉さんが、賢明に仕事をして緊急時のマニュアルに沿った説明を機内でアナウンスする最中、同じ立場であるはずの舞子がすることといえば、死に際に人生の後悔をアナウンスをかき消す大声で叫ぶばかり。

「死にたくない! 昨日行きずりの男とでもエッチしとけばよかった! 大っ嫌いな先輩にいびられて悔しくて、噛んでたガムを先輩の鞄に入れたけど、あれ思い切って生卵にでもしてやればよかった! それに今日死ぬんなら、貯金なんかするんじゃなかった!!」

「おっ、そこだけは意外としっかり者だったんだな。幾ら貯めてたんだ?」

「……十八万」

「死んでも後悔ないな」

「そんなことない! 死にきれなくて幽霊になるかもしれません!!」

「俺だけは祟るなよ」

「ふん! 言われなくても誰が浅井さんなんか――って、あんた一人だけ生き残る気かこの薄情者!! 私と浅井さんは死ぬときは一緒ですよぉだ!!」

「うわぁ……お前に言われても嬉しくねえな……」

 いよいよ本格的に着陸のときが迫り、慌ただしかった客室乗務員たちも、それぞれの椅子に腰かけシートベルトを着用して衝撃に備え始めた。
 そして、機体が空気抵抗で揺れ動き出すと、客室乗務員の最後の指示か飛ぶ。

「頭を下げろ! ヘッドダウン!」

「ヘッドダァァァァァァァァウン!! でも頭下げても死ぬときは死ぬ!!」

「生き残るやつは生き残るけどな。ってお前……客室乗務員としての姿勢は半人前だけど、緊急時の姿勢だけは完璧だな。この中でお前だけが生き残りそうなポーズだ。今なら写真にでも撮れば教材にできるぞ」

 舞子をお手本にして浅井も衝撃に備えた姿勢をとると、鼓動が一段と速まった。
 確実に迫りくる死の可能性を誰もがひしひしと感じて、冷静でいられる余裕がなくなり、自然と本心が剥き出しになる。
 着陸時には舌を噛むほど揺れるかもしれないので、喋ることが叶わないかもしれない。口が開けなくなる前に、舞子と浅井は人生最後と覚悟する懺悔の言葉を口にした。

「職務怠慢でごめんなさい! 次の便からは仕事しますから!」

「こんな女の隣で死にたくない! 有り金全部先週の馬に賭けとけばよかった! あと俺ゲイじゃない!」

「えッ!? 嘘ォッ!?」

 死に際の懺悔は他の乗客も同じ。
 これまでの行いに対する後悔や、往生際の悪い言葉が機内に飛び交う。

「ハイジャック犯の分際で、伊梨花様に踏まれた俺がいけなかったんだ!」

「いや、こんな兄貴とハイジャックなんかした俺が悪かった……」

「揺れりゅ、気持ち悪い……ぇへへへ」

「わわわわ私は、やっぱり死にたくなどない! 悪徳議員と石を投げられ、人殺しと罵られて警察に捕まろうが、やっぱり死にたくはない!!」

「浮気してごめんなさい!」

「旦那に浮気されてごめんなさい!」

「佐賀男さん取ってごめんなさい!」

「黙って拳銃持ち込んで悪かった!」

「楽して金稼ごうと強盗した俺が悪かったああああああああああああああッ!」

 滑走路へ高度を落とした機体が二箇所の車輪で接地すると、機体には衝撃が走る。それでも機長の腕の良さだろうか、直ぐに機体が傾くことはなく、絶妙なバランスで速度を落としながら機体は滑走路を進む。

 機体の揺れが果たして許容できる範囲なのかも知らない乗客の悲鳴が轟く機内では、エコノミークラスで叫ばれた懺悔の声も掻き消され、誰が何を言っていたのかなど全くわからなくなる。

 滑走路をしばらく進むと、機体は車輪のない左側後方に大きく傾き、翼が地面を擦って火花を上げる。
 酷く揺れ、ジェットコースターの何倍もの恐怖を体感できる機内では、死と隣り合わせにされた乗客の悲鳴が大合唱を始め、浅井の口からも、人のものとは思えない声が発せられていた。
 そして――。



          ◇◇



 静まり返るのはこのコックピットだけではない。寸前まで聞こえていた乗客たちの悲鳴もピタリと止み、機内は恐ろしいほどの静寂に包まれていた。
 口が爆発で吹き飛んだわけではない。
 空気を吐き出すための肺が、引き裂かれたわけでもない。
 爆音で鼓膜が破けたわけでもないし、喉が焼かれたわけでもなかった。
 横出は、左に傾きながらも機体が完全静止していることを確かめると、自分の手足が全て揃っていることを実感しながら、計器類をチェックする。

「……ノ、ノーファイア。奇跡です……生きてます。着陸、成功しました!!」

「ふっ、私はやっぱりツイてるな」

 額に汗びっしょりで前髪をおでこに張り付けた荒木は今更ながら決め顔を作ろうとしたが、着陸の衝撃に荒木が浮かべていた情けない面が残っていたらしく、合わさって変顔になってしまっていると、横出はこっそりと笑う。
 それでも、荒木機長は流した汗も含め、全てが尊敬に値すると、横出は素直に礼を述べた。

「はい。我々クルーや乗客が生きているのも、機長のお蔭です。二度にわたる糞みたいなアナウンスのときはどうなるかと思いましたが、流石は機長、操縦技術だけは一流でしたね。……あ、そういえば、機長がそんなに片脚着陸に自信があったなんて、初めて知りましたよ。まさか、経験でもあったんですか?」

「ん? ああ、あれね。まあ一位だったからな。うん」

「一位? 訓練の結果か何かですか?」

「いや、今日の私の星座だ。やっぱりあれ、当たるな」

「え……星座――って、占いですか!? 占いであれだけの自信を!? はぁ……一瞬でも機長のことを尊敬した僕が馬鹿でしたよ。もう……」

 呑気な笑い顔を浮かべる荒木の横顔に、横出は溜息を漏らす。
 まさか自分が抱いていた尊敬と感謝が、占いに人生の岐路を任せる男に捧げられたものだとは。
 一度褒めてしまった言葉は引っ込めることができず、機嫌をよくする荒木に何も言い返せなくなった横出は、安堵した心に間もなく襲いかかる空しさという名の脱力感で、まるで着陸に失敗したパイロットのように、操縦席に深く崩れ落ちた。



          ◇◇



 自身が生還したのだと理解できると、乗客からは歓喜の声が各所で上がる。

「生きて……るのか? ……よかった。本当によかった! 生きててよかった!!」

「きゃっ!? んもう、佐賀男さんたら。まるで子供みたいに引っ付いてきて、そんなに怖かったの? よしよし」

 過激な奇跡を体感してまるで夢現になった佐賀男が、自分の置かれていた状況など頭から吹っ飛んで、思わず琴美の方へと抱き着いた。
 あろうことか琴美の方も満更でもない様子で佐賀男を受け入れる。
 直後、事態の深刻さに気付いた佐賀男が、恐怖によって凍り付きそうな体をギギギと音を立てて捻り、生きていてもなお待ち受けていた地獄に青ざめた。
 般若の面よりも、ジェイソンのアイスホッケーのマスクよりも、ミナミの帝王よりも、佐賀男に恐怖を植え付ける顔で睨み付ける松代は、今日一番に達した怒りで狂い、生還に喜ぶどの乗客よりも遥かに大きな声で叫んだ。

「テ……テメェはいっぺん死ねえええええええええええええええッッ!!」

「ご、ごめんなっさぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁい!!」

 佐賀男に生き残る道など、端っから残されていない。



          ◇◇



 そして浅井も、舞子に話しかけられてようやく自分は生きているのだと実感する。

「……あれ? 生きてる? 浅井さん、生きてますよね!? 私たち!」

「……ああ、みたいだ。ここが天国じゃなければだが」

「んー、じゃ絶対天国ではないですよね。だって浅井さんの隣ですし」

「いや……地獄じゃないか? だってお前の隣だし」

「あー、何かもう清々しい! 色々悩んでたことが馬鹿みたい。生きてるって最高! ってか、私は何に悩んでたんだろう? 突発的な五月病かな?」

「サボりたかっただけだろ。まあでも、これからはお互い、仕事頑張ろうな」

「はい!」

 とても単純な舞子の影響なのか、浅井も珍しく仕事に対する意欲、生きる意欲に溢れているような気がする。きっとこれはアドレナリンなんかがあれやこれして、普段よりも気持ちが高ぶっているせいだろう。
 その証拠に、淀みのない真っ直ぐな返事をした舞子の浮かべる、愛嬌たっぷりの笑顔には、不意を突かれて浅井もほんの僅かな間だったが、目と心を奪われた。
 それが恋心と呼べるものかどうかなど論じるまでもなくノーだが、舞子の見た目だけは褒めてもいいと浅井は思う。きっとこんな気持ちも、気持ちが高ぶって気分がいい所為なのだろう。そうでなければ、浅井が舞子のことを可愛いだなんて感じるはずないのだから。
 浅井は舞子から視線を外すと、別の座席を目で示して舞子に告げる。

「ほら、あっち行けよ。あの女、限界みたいだぞ」

「あっ……駄目だ、もう吐く……ォェ」

 絶叫する浮気男に続き、無事生還したにも拘らず、青ざめた顔で危機に直面している酔っぱらいの伊梨花。酔っぱらいながら頭も胃も、機体ごとシェイクされた伊梨花が、汚いマーライオンになるのは時間の問題だ。
 浅井に言われて伊梨花の現状を確認した舞子は、ごねることとサボることを仕事としていた今までとは打って変わって素早く立ち上がると、本職へと舞い戻る。

「直ぐに袋を持ってきますね。だから我慢してください。じゃないと、空港に待機してるマスコミに、吐瀉物塗れで機体から脱出するところ写されちゃいますよ」

「もう駄目……早く、全部吐く……」

 青い顔の伊梨花が、胃袋いっぱいのワインを喉元でなんとか踏み止まらせていると、奥の席で眠っていた白髪の老人が、突然目を覚まして伸びをした。
 離陸直後から眠っていたらしいので、ようやく目覚めたと言ってやるべきなのかもしれないが、あれだけの騒ぎの中、今の今までピクリともしなかった老人が動き出したことに、伊梨花も金泉も驚き、ビクンと肩を小さく跳ね上げていた。
 そんなこと微塵も気にしていない老人は、蘇ったミイラの如く、現世の空気を肺いっぱいに吸収して覚醒に入る。

「んん、ふぅ。いやいや、全く長いフライトじゃった。にしても……ホノルルの空港は少し訪れんかった間に、随分と左に傾いておるんじゃの。それにどうしたんじゃお前さんは? お前さんの顔は確かテレビで観たことがあったが、現職の議員が手足を縛られるなど……一体、何があったんじゃ? それではまるで護送中の罪人ではないか」

「……黙れ爺。くたばってろ」

「動いた……死んでなかったんだ」

「生憎、まだ生きとるよ。真っ青な顔をしている君よりは、調子もいいじゃろうな」

「ですよね……まあ私は、これからお先真っ暗ですから。ハイジャックだなんて、二度と経験したくもないトラブルをようやく乗り切っても、この糞オヤジの秘書をクビになって現在無職だし。おまけに結婚もできないし」

「糞オヤジとはなんだ」

「は? お前のことだよ金泉。いいからお前は大人しくして黙ってろ」

 金泉が隣で文句を垂れるが、既に雇い主でもなければ政治家としても未来がないその男は、現状手足をきつく縛られた状態で、一人で立ち上がることすら難しく、敬意を示すだけの価値はない。
 随分と口の悪い伊梨花の豹変ぶりに、何も言い返せない金泉が黙り込むと、二人のやり取りを見ていた白髪の老人が、寝起きで事情が把握できていないことも多いだろうが、伊梨花と金泉の関係性だけは把握した様子で、ふむふむと顎に手を置いた。

「君……この男に解雇されたのか?」

「ええ。せいかーい。お爺さん頭いいですね」

「そうか、ならば……どうじゃ? 私のところで働く気はないかの?」

「え? それは……?」

「それほど大きな会社ではないんじゃが、若い秘書が一人、既婚者の男に入れあげてろくに仕事をしないんじゃ。挙句の果てには、その男の家族旅行を邪魔しようと、男の隣の座席の航空チケットまで取ったそうなんじゃ。顔は美人なんじゃがの、どうにも相手を見る目と、悪い恋愛に人生の多くを割いてしまう気質がある。じゃから、秘書としても女性としてもお手本となることのできる、君みたいな優秀な人材を雇ってみたいとちょうど考えていたんじゃが、どうじゃろう?」

「優秀……ありがたいお話ですが、私はもう直ぐ、汚職議員になるアホ議員の下で働いていた秘書ですよ?」

「誰がアホ議員だ」

「お前だよ」

 迷いなく即座に返される伊梨花の反論に金泉は眉を顰め、その様子に老人は微笑む。

「いやいや、君はいい秘書だ。そこまでその男に言い返せるんじゃからの。それに、私は政治家が大嫌いだ。特に金に執着する輩はな。じゃが……若い子は好きだ。できれば君みたいな若い子と働きたいものじゃの」

「……若い? 若い? 若いの? 私? 若いですか?」

「ああ、君は若い女の子」

「おい爺さん、老けすぎて目が腐ってんじゃないのか? この女のどこが若ぁあああ痛たたたたたたた!?」

 間に挿む金泉を膝で踏みつけ身を乗り出し、伊梨花は白髪の老人の提案に目を輝かせる。

「是非とも! 明日からでもよろしくお願いしま――おろろろろろろろろろろろろろろ!!」

 興奮のあまり、伊梨花は喉元にまでせり上がる吐瀉物の気配にも対応が遅れ、話し声に合わせて限界を通り越した吐瀉物は、伊梨花の開いた口から逆流し、金泉と白髪の老人に向けて、シャワーのように撒き散らされた。

「――だっ、大丈夫ですか!?」

 袋を手に一足遅く駆け付けた舞子は、今日一番のパニックに陥る伊梨花たちに声をかけて手際よく宥めると、金泉と白髪の老人が頭から被ってしまった酸っぱい臭いの残念なシャワーの後始末に取りかかる。それも嫌な顔一つ浮かべずに。

「何だよ、真面目に仕事もできるじゃないか」

 思いのほか優秀だった舞子の仕事ぶりに感心する浅井は、感化されて自分も少しだけ仕事に対する意欲を出すが、舞子と違いここが職場ではなく、制服も着ていない浅井に出番はなかった。
 できることといえばハイジャック犯を見張っておくことくらいだが、彼らに逃げる気配は全くない。ハイジャック犯の様子はといえば、浅井の隣に座る初司が、呆れつつゲロ塗れの金泉を見て――いいや、少し羨ましそうに見ていたくらいか。
 そんな根っからのマゾ気質の初司の顔をまじまじと見詰め、不運な境遇にあった彼の人生に同情心が芽生えていた浅井は、日常会話と同じ調子で、警察官としてではなく、単なる隣に乗り合わせた一人の男として声をかけた。

「あんな下らない男の所為で捕まるなんて残念だよ。割と顔は、俺好みだったのに」

「……え?」

「ん? ああ、因みに俺はドSだからな。安心しろよ。相性はばっちりだ」

「……ええっ!?」

 マゾなのに何故だか見る見る顔が引きつる初司に、浅井は優しく微笑みかけた。



          ◇◇



「おお……生きてるぞ。俺たち生きてるぞ! なあ吾妻!?」

「……みたいだな」

「助かったんだ! これで生きて金が使えるな」

「ああ、天国のお偉いさんに賄賂として渡さずに済みそうだ」

 喜びよりも大きな安堵で、頼りないと思っていた機長の見事な着陸を称える吾妻は、後方の座席で生還を喜び合う声が騒がしくなり始めていたのを気に留めつつも、今後の予定には差し支えないかと判断する。
 あとは吾妻が懐に隠している拳銃を、一旦荷物を残して乗客が機体から降りることを促されるその最中に、ハイジャック犯の荷物に拳銃を滑り込ませるだけだ。後方の騒がしい乗客が席を立ってから、ハイジャック犯の荷物に手を出すとしよう。
 吾妻は頭の中で今後の計画を練りつつも、フライト最中ほどの緊張はせずに、左側に傾いた機内でも落ち着きを保ちつつ、笑顔が零れ落ちる乗客を眺めながら、彼らが機体を降りる瞬間を待っていた。

 ――パキッ。

「……ん? 何だ……今の音は?」

 着地から暫くして突然、吾妻の頭上で不穏な物音が小さく鳴った。
 どうも何かが壊れたような不穏なその物音に、吾妻は不吉な予兆を感じながら、恐る恐る頭上を見上げる。
 直ぐに特定できた音の発信源は、頭上の荷物入れの棚だった。その扉が、中の荷物に強く押されて僅かに開きかけていた。
 機体が左側に傾きながらの強引な着陸を行った挙句、内側から大金の重みで今尚押され続けている機体右側に位置する荷物入れの扉は、不規則且つ様々な衝撃で負荷がかかり、どこかに不具合が生じたらしい。先程の不穏な音の原因は、扉の留金か何かかが壊れた音だったのだろう。
 そして更にもう一度、その異音は鳴り響く。

 ――バキッ。

 一度目よりも明確に聞こえてきたその物音は、吾妻の隣に座る津田にも聞こえたらしく、津田もまた頭上を向くと、音の原因を捉えた。
 だけれども気付いてからではもう遅い。次の瞬間には、棚の中に入っている荷物の重さに扉が耐えきれず、再び連続して不穏な破壊音が聞こえると、壊れた扉は内側からの重みで勢いよく開け放たれた。
 そして――、

「吾妻!? 落ちる!」

「わかってるよ、畜生ォッ!!」

「――お、俺の金がぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 例の二億円が入った鞄の重さに耐えかねた扉は限界を迎えてバカンと開くと、機体が左に傾いていた所為で、扉が開いたと同時に荷物棚からは鞄が滑り落ちてくる。
 吾妻は座りながらも慌てて手を伸ばすが、落下する鞄の方が早く、間に合わない。
 更に不運だったのは、数時間前に津田が二丁目の拳銃を鞄から取り出した際、客室乗務員に声をかけられて慌てた津田が、鞄のチャックを閉め忘れていたことだ。口の開いたままだった鞄は、落下してくる際に中の札束をばかばか吐き捨てながら、一部津田がばらして鞄に入れていた一万円札数十枚が、桜吹雪のように機内に舞い落ちる。
 今回のフライトに比べると乗客にとってこれは大した異変ではないだろうが、彼らは唐突に起きたハプニングに黙ってはいられない。驚きを隠さず、ひらひらと舞い落ちる品のない花びらに、この状況を周囲に伝えるように口々に言葉を発した。

「何だこの金!?」

「万札が降ってきたわ!?」

「機内に札束があったぞ!」

「誰の鞄なの!?」

 騒ぎが伝達して大きくなるにつれ、吾妻は深く頭を落として黙り込み、それに伴い津田の表情はどんどんと冴えなくなる。
 それもそのはず、こんなところで騒ぎを起こして注目を集めてしまうと、持ち込んだ拳銃をハイジャック犯の荷物に忍ばせるどころではなく、挙句の果てに盗んだ金を乗客の大半に目撃されてしまったとあらば、吾妻たちは金泉を含めた乗客の印象に強く残り、このあとハイジャックの件で事情を聴きにやってくるであろう警察も、吾妻たちには注意することだろう。
 吾妻と津田は、ハイジャック犯と相当する重要人物に違いない。
 強盗計画はこれでとうとう丸潰れだ。

「あーあ……吾妻ごめん! 俺が鞄、閉め忘れてたみたいだ……」

「俺の……折角手に入れた、俺の金が……」

「金かぁ。今回は縁がなかったみたいだな。円だけに、ってか? ははは……」

「……許……ねえ」

「ん、何だ? 良く聞こえなかったからもう一回頼む」

「……許さねえって言ったんだ。もう我慢の限界だ……津田、お前をここでブッ殺す!!」

「ははは、またそんなこと言って、怖い顔してるけどいつもの冗談だろ? ……吾妻? え、ちょ、待って、それはやばいって!?」

 溜まりに溜まった不満はもう限界だ。津田と出会ってから今まで積み重ねてきたものが全て崩れ去り、吾妻の中で理性が弾け飛んだ。

 津田から預かっていた拳銃を懐から抜くと手早くスライドを引いて、自らの箍と一緒に安全装置も外した吾妻は、銃口を津田に向けて拳銃を構える。
 引き金にかかる指は、もう命乞い程度では止まらない。
 情けなどかけてやる気はない。
 驚愕しながら身を捩って銃口から逃れようとする津田に、吾妻は情け容赦なく、怒りの赴くままに引き金をかかる指を強く引いた。

「ここで死ねッ!!」

「うひいぃぃぃぃぃぃッ!? 死ぬ! ごめんなさい! だから止めて、吾妻ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ――!」

 ――カチッ。

「……あれ?」

 銃声ってこんな音だっただろうかと、吾妻はあまりの手応えのなさに疑問を覚えた。
 津田を殺す覚悟は確かに決めて、引き金はしっかり最後まで引いたはず。
 津田の方も殺されると信じ込んで、涙ながらに命乞いをして震えていたが、吾妻が引き金を引いて間抜けな音が拳銃から聞こえてくると、撃たれた痛みはこんな程度なのだろうかと、疑問に満ちた顔で自身の体を調べていた。

「……あれ? 俺、どこも……撃たれてない」

「は? 確かに引き金を引いたのに、何で弾が出てこないんだ……?」

 安全装置は外れている。ならば不発かと思い、吾妻は拳銃上部のスライドを引いて確かめるが、肝心の銃弾は何故だか排出されない。
 そのまま再び津田に銃口を向けて引き金を引いてみても、結果は先程と同じ。カチッと音はするが、銃声は鳴り響かず、銃弾も射出されはしない。
 苛立ちを奇妙な空振りに終わらされ、もやもやとした気持ちだけが残った吾妻は、不審に思い、試しに弾倉を取り出してみると、そこにはあるはずのものが存在していなかった。

「……津田、この拳銃、弾が入ってねえぞ?」

「ん? いやいや、そんなはずないだろ。だってその拳銃を買ったときに、この目でマガジンに弾が込められていることも、しっかりとチェックしたんだから――あっ!? うわぁ……やられた。あいつだ、きっとあの男に全弾抜かれたんだ……」

「あいつ?」

「金属探知機を潜るときに買収した職員の男だ。ドレッドヘアーの男が事前に話をつけてたらしいんだが、どうにもその男は借金をドレッドヘアーの男に肩代わりしてもらう代わりに、半ば無理やり協力させられてたみたいでよ、俺が拳銃を持ち込むのも乗り気じゃなくってさ、金のために仕方なく従っていたみたいなんだが……野郎、おどおどしてて気弱そうな男だったくせに、まんまと裏切りやがった。どうりで予備の弾は持ち込ませねえわけだ。最後の最後で変な良心働かせたんだな、きっと」

「ってことは、ハイジャック犯の銃も……?」

「弾なし、だろうな。この様子じゃ、多分爆弾も積んでないと思うぞ。だから遠隔起爆装置のスイッチを押しても不発だったんだな。うわぁ、最初っからハイジャック犯も、俺も、あの男に一杯食わされてたのか。口止め料だけ無駄に持っていかれちまった。とんだお間抜け野郎共だな、俺たちは。な、吾妻。はははっ、あははははは!」

「……津田ァ! お前に分けてやった金、全部返せ、この大馬鹿野郎!!」

 使い物にならないただの鉄屑と空の弾倉と投げ捨てて、吾妻は呑気に笑う津田の胸ぐらを掴みにかかる。

「今までの苦労と心配は何だったんだよ! 弾なしって何だ弾なしって!? 強盗が何で大事なタマ盗まれてんだよ! このオカマ野郎!! 返せよ俺の時間! 返せよ俺の金! 返せ俺の完璧な計画をォォォォォォォッ!」 

「ごめん、マジ、ごめんって吾妻」

「半笑いで何言ってんだ! 俺はお前のそういうところが嫌いなんだ!! あああああああああああ、もう!!」

 吾妻は津田の胸ぐらを掴むと激しく前後に揺すって、思い通りにいかずに癇癪を起こした子供のように、間抜けな自分たちに対するやり場のない鬱憤を吐き出す。
 一頻り騒いだ吾妻が、呼吸を整えようと大きく息を吸い込むと、そのタイミングを見計らって浅井が声をかけてきた。

「……取り込み中らしいけど、一言いいか?」

「あ? あんたは……確か浅井とか名乗ってた……」

「通路に落ちた鞄を念のために少し確かめさせてもらったが、この札束、本物は最初の方だけで、奥はほとんど偽物だったぞ」

「……は?」

 吾妻は慌てて散らばった金を拾い、確かめる。

「そんなはずは――」

「舞い散った一万円札はどれも本物みたいだが、鞄から落っこちたこの札束は殆ど偽物だな。百枚つづりの一枚目と百枚目は本物らしいが、間に挿んであるのはどれも四角く切ったただの紙切れだ。鞄の奥に詰められていた金に限っては、百万円の束の全てがただの紙切れだぞ」

「そんな……嘘だろ……」

「なんだこれは? お前たちは劇団の小道具でも作ってるのか?」

 吾妻は百万綴りの札束をぺらぺらと確かめてみるが、浅井の言ったとおり、ほぼ全ての金が偽札ですらないただの紙切れだった。

「……津田、お前は逃走用の車のトランクに入れた金、お前自身の手で下ろしたんだよな?」

「ん? えっーと……いや、ほらあの運転手、色々と手配してくれた協力者のドレッドヘアーの男が下ろしてくれたぞ。まるで大企業の社長付の運転手みたいに、丁寧にさ」

「やられた……」

「何が?」

「すり替えられてたんだよ。鞄ごと、金をな」

「まっさかぁ」

「そのまさかなんだよ……。さっきから気になってはいたんだ、金髪のハイジャック犯が口走っただろ? 金泉の情報を売った男がドレッドヘアーだって。あのときに気になってはいたんだが、でもドレッドヘアーだけで判断するのは流石にこじつけ過ぎかと思ってたんだが……これで確信できたな。俺たちはまんまと野郎にしてやられたってことだ」

「で、でもさ、強盗の仕切りは吾妻だっただろ?」

「……そのつもりだったんだよ。確かに言い出し、仲間を集めたのは俺だ。でも途中から日時や逃走経路まで全て用意してたのはあのドレッドヘアーの男なんだよ。便利な奴だとばっかり考えていたが……全てはこのためだったんだ、ちくしょう」

「そんなぁ……マジかよ……」

「ハイジャック犯の方も同じだな。知らない間に利用されていたんだろう。恐らくは俺たちごとハイジャック犯に自爆してもらうつもりで、手はずを整えてたんだ。機体と紙切れの金、それに俺たちも海に落として、強盗の責任は俺たちに背負わせて、ついでに金泉も纏めて消してしまえば、金は残らず全て野郎のもので、責め立てる人間もいなくなるからな」

 もう津田に八つ当たりする気さえ起こらない。そもそも金を盗まれていたんじゃ、高飛びが成功するか否かどころの問題ですらなかった。それなのに強盗計画を完璧だと信じて疑わなかった自分が心底情けなく、あまりにも間抜けすぎる。
 金だと思い込んでいた紙切れを隣の乗客の足元に放り投げた吾妻は、自分の座席にぐったりと腰を下ろす。吾妻に唯一残ったのは、この疲労感だけだ。
 疲労からか憤りさえ感じなくなっていた吾妻の肩が、不意にぽんぽんと叩かれた。吾妻がゆっくりと振り向くと、そこには浅井と名乗った男の姿があった。確かこの男の職業は――警察官。妙に笑顔が輝いて見えるのは、自分の職務に忠実な証しだろうか。

「それにしても残念だな。どうにもよくわからん金の件はともかく、拳銃はお前らも機内に持ち込んでいたということでいいんだよな? ハイジャック犯の人数よりも一丁多かった拳銃も、さてはお前らの仕業だな」

「いや、これは、その――」

「今更、言い訳が通用する状況だと思うか?」

 足掻こうが喚こうが、あまりにも分が悪すぎて、ろくな言い訳ができる状況ではないと悟った吾妻は、浅井の意地の悪い笑みに観念する。

「終わった……俺の計画が、人生一発逆転の計画が、こんなところで……糞っ、せめてビジネスクラスに乗りたかった……」

 力が抜けて立ち上がれない吾妻の心は放心状態で、天井を仰ぎ見ながら考えるのは、せめてビジネスクラスに乗って少しの間だけでもリッチな気分を味わったらよかったと、小さな後悔で大き過ぎる失敗に目を塞ぐことだった。
 吾妻の気苦労を知らずに傍から様子を窺えば、吾妻が不貞腐れた強盗にでも思えたのだろう。反省を促すつもりか、浅井は吾妻に顔を近付けると、耳元で囁く。
 けれど止めの一撃は、吾妻の考えていたような、正義心に満ちた警察官らしい甘い言葉ではなく、単なる彼の趣味だった。

「――それと、これは個人的な意見だが……俺は基本的にタマのない人間には興味がない。だからハイジャック犯の兄に続いて、お前が悪事を働いていたのは残念だ。結構可愛い顔してるのにな、弾なしの強盗犯。なんなら、残りの玉も俺が握り潰してやろうか?」

「……い、いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ――!!」

「よし、二名様拘束。真崎、縛るもの持ってこい」

「はーい。かしこまりました!」

 小さな切っ掛けから多くの人々へと不運の連鎖が渦巻き、騒ぎと騒乱が絶えることのなかったフライトは、こうして強盗犯の悲鳴を最後に締め括られた。

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