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第10章 結婚するまで帰れません!?
2 結婚式・前編
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現代日本においても「結婚式」を挙げようとすると、実に数多くの手続きや準備やスケジュール管理に忙殺される。
「狂えるオルランド」の物語世界、8世紀の欧州でもそれは似たようなもので――実のところ、我々の想像する結婚式のイメージはキリスト教が生み出したといっても過言ではなかった。
何しろ帝政ローマ時代、キリスト教が普及する以前は男性優位社会であり、女性は子孫繁栄の為の道具のような扱いを受けていたのである。
今日に伝わるような華やかで、女性の立場や意思を尊重する形式が整えられたのは、キリスト教の貢献が大きいのだ。
「ロジェロ様。改宗して7週間ばかりとなりますわね」
尼僧メリッサが言った。
改宗の際に行う洗礼じたいは一瞬で終わる。だがロジェロの目的は改宗そのものではない。ブラダマンテと結婚する為なのだ。
中途改宗者にはキリスト教に関する知識講座を聞くことが義務付けられている。いわゆる「結婚講座」と呼ばれるこれは、実に3か月もの長丁場。だがこなさない事には、結婚式に関するマナーや常識を習得できていないと見做されてしまう。
「本来の受講時間には少々足りませんが……そこはそれ! 融通を利かせますわ。
ちょちょいと改宗した時期を修正してっと――」
「おい、いいのかよ……東ローマと往復の長旅の時間まで、講座受けた時間って事にしちまうって」
「善は急げですわ。ロジェロ様も早く、ブラダマンテと結ばれたいでしょう?」
「…………ま、まあな…………」
下田三郎教授からは、必ず挙式しなければならないとは――言われていない。
あくまで物語の最後の日が、ブラダマンテとロジェロの結婚祝いの宴の最終日となる、という話を聞いただけだ。実はこれ、いわゆる「結婚式」とは別物の行事だったりする。
物語の流れとして二人が結ばれるのは必然の出来事だが、役を演じるアイや黒崎が実際に式を行う必要はないのである。
しかし黒崎とアイは二人で話し合った結果――結婚式をする事にした。
しかも珍しい事に、先に言い出したのは黒崎の方である。
「もちろん司藤も、オレと式を挙げるのが嫌じゃなけりゃ、だが――」
「……いいわよ。せっかくだしやりましょ。結婚式」
思っていたよりあっさりと、アイは首を縦に振った。
「マ、マジか!? 本当にいいのか!?」
まるで自分が受け入れられたかのように、上気した顔になる黒崎。
異世界で顔を合わせたばかりの頃、綺織先輩を引き合いに出され嫌がられていた時に比べれば……大いなる進歩といった所だろう。
「『ブラダマンテ』がずっと願っていた事ですもの。
それに皆も。メリッサも、アストルフォも、ロジェロも、マルフィサも――
下田教授は義務はない、って言ってくれたけどさ。
やっぱりわたし達が結ばれて終わってこそ、大団円って呼べるんじゃない?」
アイの言葉に、黒崎は安堵したような落胆したような、何とも言えない気分になった。
「……そ、そうだよな。あくまで今のオレ達は、ロジェロとブラダマンテだし……物語の中の『配役』を演じてるだけ……だもんな……」
「――あ、誤解しないでね。もちろん楽しみよ。黒崎と式を挙げるの」
「…………えっ」
「ワクワクしちゃうわよね?
女の子だったら、バージンロードを歩いて指輪交換って、憧れる話だもの」
にんまりと微笑むアイ。赤面している黒崎を見て楽しんでいるようですらある。
「お前……オレの反応見てからかおうって魂胆じゃねーだろーな!?
思わせぶりな言い方しやがって!」
「あっははは! だって、面白いんだもん!
ね? 心配しなくても、ちゃんとわたし、今は余裕あるから。
黒崎もあんまり気負わずに……ね? 一緒に頑張りましょ」
「ほう……言ったな司藤。
本番当日になって慌てふためいたりするんじゃねえぞ?」
「ふっふーん。そのセリフ、そっくりそのままお返しするわ!
せいぜいわたしの事、カッコよくリードしてよねッ!」
物語世界に来てから、様々な事件があり……互いの距離は物理的にも精神的にも縮まってはいたが。
それでも根っこの部分は変わっていなかった。小学生の頃に偶然知り合い、一緒に遊び、泣き、笑い合った頃から――今までずっと。
**********
カトリックの形式に則り、式場はパリの北にあるサン・ドニ礼拝堂と決まった。
本格的な挙式を前に――ロジェロとブラダマンテの結婚を祝う来賓客がこぞって集まってきた。
契丹の王女アンジェリカと、その恋人のサラセン人メドロ。
「……良かったわねブラダマンテ! 私たちも故郷に帰ったら、それはもう豪勢な挙式しましょうねメドロ」
「オイラはアンジェリカと一緒なら、どんな風な式でも構わないよ!」
(祝辞に来たのか惚気に来たのかどっちだよ)
元ムーア人にして、十二勇士の一人フロリマールとその妻フロルドリ。
「とうとう挙式ですかおめでとうございます! 僕も思い出すなぁフロルドリとの披露宴を――」
「あの時は二組カップル同時成立で、結婚式も豪華に二倍の規模でしたわね~」
(お前らも結局惚気るんかい)
マイエンス家の不実な騎士ピナベルとその妻。
「……おおおお、オメデトウゴザイマス。これを機会に末長く仲良くしましょう。
なのでボクがブラダマンテを崖から突き落とした件に関しては無かった事にしていただけると……」
「ウチの夫、小心者な上にジャンピング土下座5秒前なんで許してあげてね」
(尻に敷かれてるけどなんやかや言いつつ仲良いよなこいつら)
善徳の魔女ロジェスティラとエチオピアの聖ヨハネ。いわゆる老人コンビ。
「妾の中のアルシナも宜しく、と言っておりました。あれからもう、すっかり大人しくなりましたわ」
「あれだけイレギュラー続きだったのに、よう結婚までこぎ着けたのう。結構!」
(いやぁアルシナの婆さんは強敵でしたね)
筋骨隆々のレーム大司教テュルパンと悪人面のマイエンス伯ガヌロン。
「拙僧がレーム大司教テュルパンである! 此度の婚儀、実にめでたい! 全力で祝福しようぞ!」
「……いつぞやは一族の愚息ピナベルが世話になった。良ければ儂も祝いの末席に加えて欲しい」
(今回の神父役ってテュルパンなのか? 一気に暑苦しくなりそう)
フランク国王シャルルマーニュ。十二勇士のひとり・智将オリヴィエ。
「ブラダマンテは我が親族に連なる美しき娘じゃ。大切にされよロジェロ殿」
「実際は親戚ってだけです。直接血の繋がりがあったら今頃血を見てますよ」
(なんか祝いって言うより脅されてるとしか思えねェんだけど!?)
フランク最強の騎士オルランドとその婚約者オード。
「お前たちとは色々あったが……済まなかったな。今は素直に祝福したい」
「今はこんな澄ましてますけど、ここに顔出すの結構ビビってたんですよこの人。
ゴツイ顔の割に笑えますよね!」
(オードもオルランドの幼馴染なんだっけ? いい性格してんなぁ)
ロジェロの妹マルフィサとスペイン最強の騎士フェロー。
「ロジェロ兄さん! 本当におめでとう。今だけは抱擁を自粛するぐらいの分別はあたしにもあるぞ!」
「マルフィサ殿に勝るとも劣らぬ見目麗しきブラダマンテ殿を娶るとは、ロジェロ殿も果報者よな!」
(なんでマルフィサの奴、フェローと一緒なんだ? 意外な組み合わせだな)
モブ騎士四人組とデンマーク勇者オジェの息子・ドゥドン。
「…………ええと、失礼ですがどちら様で?」
『忘れないで下さい! 時々でいいから思い出してあげてください!』
(やっべぇ。数が多い上に没個性的だからか、未だに誰が誰だか分かんねえ……)
クレルモン公爵家の一族。ブラダマンテの父エイモン。母ベアトリーチェ。
「バージンロードのエスコート役は儂に任せよ」
「ベールダウンの役は私ね! 準備万端ですことよブラダマンテさん!」
(何やかや言いつつ、娘の結婚式超楽しみなんだなこの二人……)
ブラダマンテの兄たち。長兄リナルド。次兄リッチャルデット。三兄アラルド。
「ロジェロ殿。約束の件ゆめゆめ忘れるでないぞ! 結婚後は一週間に一度、我に手紙を書くのだ!」
「……それ本当にマジでやるんですか?」
「兄ィはやれといったらやらせる男だ。災難だったな」
(……ああ、うん。忘れてないだろうな~とは思ってたんでもういいです)
……他諸々、この場に書き切れないほど。
本当に――本当に大勢の人々が、二人の門出を祝うため一堂に会していた。
「壮観だねえ、我が友ロジェロ」
イングランド王子アストルフォは感慨深げに言った。今回の彼はロジェロに交換用の指輪を渡す付添役だ。
「まるで我が事のように、緊張してきましたわ……」
尼僧メリッサも興奮気味に呟いた。今回の彼女は花嫁の持ち物を預かる介添え役である。
(ううむ。確かに錚々たるメンバーだ……もう後には引けねえ。
そんな事より司藤だ。花嫁衣裳の着替えとか手順とか……手間取ってなきゃいいんだが)
サン・ドニの式場に聖職者や親族、来賓が入場し――あっという間に満席に近い有様となった。
新郎役たる黒崎は、礼拝堂の祭壇前で新婦の到着を待つより他ない。
カトリック式の赤いバージンロードの先に現れるはずの姿を、皆今か今かと待ち望む中――とうとう、彼女はやってきた。
「狂えるオルランド」の物語世界、8世紀の欧州でもそれは似たようなもので――実のところ、我々の想像する結婚式のイメージはキリスト教が生み出したといっても過言ではなかった。
何しろ帝政ローマ時代、キリスト教が普及する以前は男性優位社会であり、女性は子孫繁栄の為の道具のような扱いを受けていたのである。
今日に伝わるような華やかで、女性の立場や意思を尊重する形式が整えられたのは、キリスト教の貢献が大きいのだ。
「ロジェロ様。改宗して7週間ばかりとなりますわね」
尼僧メリッサが言った。
改宗の際に行う洗礼じたいは一瞬で終わる。だがロジェロの目的は改宗そのものではない。ブラダマンテと結婚する為なのだ。
中途改宗者にはキリスト教に関する知識講座を聞くことが義務付けられている。いわゆる「結婚講座」と呼ばれるこれは、実に3か月もの長丁場。だがこなさない事には、結婚式に関するマナーや常識を習得できていないと見做されてしまう。
「本来の受講時間には少々足りませんが……そこはそれ! 融通を利かせますわ。
ちょちょいと改宗した時期を修正してっと――」
「おい、いいのかよ……東ローマと往復の長旅の時間まで、講座受けた時間って事にしちまうって」
「善は急げですわ。ロジェロ様も早く、ブラダマンテと結ばれたいでしょう?」
「…………ま、まあな…………」
下田三郎教授からは、必ず挙式しなければならないとは――言われていない。
あくまで物語の最後の日が、ブラダマンテとロジェロの結婚祝いの宴の最終日となる、という話を聞いただけだ。実はこれ、いわゆる「結婚式」とは別物の行事だったりする。
物語の流れとして二人が結ばれるのは必然の出来事だが、役を演じるアイや黒崎が実際に式を行う必要はないのである。
しかし黒崎とアイは二人で話し合った結果――結婚式をする事にした。
しかも珍しい事に、先に言い出したのは黒崎の方である。
「もちろん司藤も、オレと式を挙げるのが嫌じゃなけりゃ、だが――」
「……いいわよ。せっかくだしやりましょ。結婚式」
思っていたよりあっさりと、アイは首を縦に振った。
「マ、マジか!? 本当にいいのか!?」
まるで自分が受け入れられたかのように、上気した顔になる黒崎。
異世界で顔を合わせたばかりの頃、綺織先輩を引き合いに出され嫌がられていた時に比べれば……大いなる進歩といった所だろう。
「『ブラダマンテ』がずっと願っていた事ですもの。
それに皆も。メリッサも、アストルフォも、ロジェロも、マルフィサも――
下田教授は義務はない、って言ってくれたけどさ。
やっぱりわたし達が結ばれて終わってこそ、大団円って呼べるんじゃない?」
アイの言葉に、黒崎は安堵したような落胆したような、何とも言えない気分になった。
「……そ、そうだよな。あくまで今のオレ達は、ロジェロとブラダマンテだし……物語の中の『配役』を演じてるだけ……だもんな……」
「――あ、誤解しないでね。もちろん楽しみよ。黒崎と式を挙げるの」
「…………えっ」
「ワクワクしちゃうわよね?
女の子だったら、バージンロードを歩いて指輪交換って、憧れる話だもの」
にんまりと微笑むアイ。赤面している黒崎を見て楽しんでいるようですらある。
「お前……オレの反応見てからかおうって魂胆じゃねーだろーな!?
思わせぶりな言い方しやがって!」
「あっははは! だって、面白いんだもん!
ね? 心配しなくても、ちゃんとわたし、今は余裕あるから。
黒崎もあんまり気負わずに……ね? 一緒に頑張りましょ」
「ほう……言ったな司藤。
本番当日になって慌てふためいたりするんじゃねえぞ?」
「ふっふーん。そのセリフ、そっくりそのままお返しするわ!
せいぜいわたしの事、カッコよくリードしてよねッ!」
物語世界に来てから、様々な事件があり……互いの距離は物理的にも精神的にも縮まってはいたが。
それでも根っこの部分は変わっていなかった。小学生の頃に偶然知り合い、一緒に遊び、泣き、笑い合った頃から――今までずっと。
**********
カトリックの形式に則り、式場はパリの北にあるサン・ドニ礼拝堂と決まった。
本格的な挙式を前に――ロジェロとブラダマンテの結婚を祝う来賓客がこぞって集まってきた。
契丹の王女アンジェリカと、その恋人のサラセン人メドロ。
「……良かったわねブラダマンテ! 私たちも故郷に帰ったら、それはもう豪勢な挙式しましょうねメドロ」
「オイラはアンジェリカと一緒なら、どんな風な式でも構わないよ!」
(祝辞に来たのか惚気に来たのかどっちだよ)
元ムーア人にして、十二勇士の一人フロリマールとその妻フロルドリ。
「とうとう挙式ですかおめでとうございます! 僕も思い出すなぁフロルドリとの披露宴を――」
「あの時は二組カップル同時成立で、結婚式も豪華に二倍の規模でしたわね~」
(お前らも結局惚気るんかい)
マイエンス家の不実な騎士ピナベルとその妻。
「……おおおお、オメデトウゴザイマス。これを機会に末長く仲良くしましょう。
なのでボクがブラダマンテを崖から突き落とした件に関しては無かった事にしていただけると……」
「ウチの夫、小心者な上にジャンピング土下座5秒前なんで許してあげてね」
(尻に敷かれてるけどなんやかや言いつつ仲良いよなこいつら)
善徳の魔女ロジェスティラとエチオピアの聖ヨハネ。いわゆる老人コンビ。
「妾の中のアルシナも宜しく、と言っておりました。あれからもう、すっかり大人しくなりましたわ」
「あれだけイレギュラー続きだったのに、よう結婚までこぎ着けたのう。結構!」
(いやぁアルシナの婆さんは強敵でしたね)
筋骨隆々のレーム大司教テュルパンと悪人面のマイエンス伯ガヌロン。
「拙僧がレーム大司教テュルパンである! 此度の婚儀、実にめでたい! 全力で祝福しようぞ!」
「……いつぞやは一族の愚息ピナベルが世話になった。良ければ儂も祝いの末席に加えて欲しい」
(今回の神父役ってテュルパンなのか? 一気に暑苦しくなりそう)
フランク国王シャルルマーニュ。十二勇士のひとり・智将オリヴィエ。
「ブラダマンテは我が親族に連なる美しき娘じゃ。大切にされよロジェロ殿」
「実際は親戚ってだけです。直接血の繋がりがあったら今頃血を見てますよ」
(なんか祝いって言うより脅されてるとしか思えねェんだけど!?)
フランク最強の騎士オルランドとその婚約者オード。
「お前たちとは色々あったが……済まなかったな。今は素直に祝福したい」
「今はこんな澄ましてますけど、ここに顔出すの結構ビビってたんですよこの人。
ゴツイ顔の割に笑えますよね!」
(オードもオルランドの幼馴染なんだっけ? いい性格してんなぁ)
ロジェロの妹マルフィサとスペイン最強の騎士フェロー。
「ロジェロ兄さん! 本当におめでとう。今だけは抱擁を自粛するぐらいの分別はあたしにもあるぞ!」
「マルフィサ殿に勝るとも劣らぬ見目麗しきブラダマンテ殿を娶るとは、ロジェロ殿も果報者よな!」
(なんでマルフィサの奴、フェローと一緒なんだ? 意外な組み合わせだな)
モブ騎士四人組とデンマーク勇者オジェの息子・ドゥドン。
「…………ええと、失礼ですがどちら様で?」
『忘れないで下さい! 時々でいいから思い出してあげてください!』
(やっべぇ。数が多い上に没個性的だからか、未だに誰が誰だか分かんねえ……)
クレルモン公爵家の一族。ブラダマンテの父エイモン。母ベアトリーチェ。
「バージンロードのエスコート役は儂に任せよ」
「ベールダウンの役は私ね! 準備万端ですことよブラダマンテさん!」
(何やかや言いつつ、娘の結婚式超楽しみなんだなこの二人……)
ブラダマンテの兄たち。長兄リナルド。次兄リッチャルデット。三兄アラルド。
「ロジェロ殿。約束の件ゆめゆめ忘れるでないぞ! 結婚後は一週間に一度、我に手紙を書くのだ!」
「……それ本当にマジでやるんですか?」
「兄ィはやれといったらやらせる男だ。災難だったな」
(……ああ、うん。忘れてないだろうな~とは思ってたんでもういいです)
……他諸々、この場に書き切れないほど。
本当に――本当に大勢の人々が、二人の門出を祝うため一堂に会していた。
「壮観だねえ、我が友ロジェロ」
イングランド王子アストルフォは感慨深げに言った。今回の彼はロジェロに交換用の指輪を渡す付添役だ。
「まるで我が事のように、緊張してきましたわ……」
尼僧メリッサも興奮気味に呟いた。今回の彼女は花嫁の持ち物を預かる介添え役である。
(ううむ。確かに錚々たるメンバーだ……もう後には引けねえ。
そんな事より司藤だ。花嫁衣裳の着替えとか手順とか……手間取ってなきゃいいんだが)
サン・ドニの式場に聖職者や親族、来賓が入場し――あっという間に満席に近い有様となった。
新郎役たる黒崎は、礼拝堂の祭壇前で新婦の到着を待つより他ない。
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