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第8章 ランペドゥーサ島の決戦
2 ブラダマンテ達、ランペドゥーサへ
唐突に出てきた島の名前に、アイも黒崎も困惑した。
「ラン……何とか島? どこそれ」
「ランペドゥーサ島、な。まあ、オレも詳しい事はよく知らんけど」
手紙によればアグラマン大王は今、南フランスを離れ地中海はシチリア島の南にあるランペドゥーサなる島にいるらしい。
といっても、司藤アイにとって全く馴染みの無い地名であった。
「……そうだ。こういう時は下田教授に聞けばいいわね」
アイは早速、下田三郎に念話を送る事にした。
原理は不明だが、アイは魔本「狂えるオルランド」の世界に転移した当初から、現実世界にいる下田教授と脳内で会話する事ができる。つまり現代の知識や物語の設定などの情報を、彼を通じて教わる事ができるのだ。
ииииииииии
「下田教授! 聞こえる?
また教えて欲しいんだけど。ランペドゥーサ島ってどんな所?」
アイの念話による呼びかけに、やや時間が経ってから――下田教授の野太い声が返って来た。
『ランペドゥーサ島……か。現代ではリゾート地で有名だな。
海がとても綺麗でなぁ。船が宙に浮かんで見えるほど海水が澄んでいるんだ。
まあ、位置的にはイタリアというよりアフリカ・チュニジアに近いんだがな』
実際ランペドゥーサ島は、アグラマン大王の本拠地ビゼルタ(註:チュニス北西の港町ビゼルト)から50キロと離れていない場所にある。
「へえ、それは楽しみね……じゃなくって!
確かに観光で行ってみたい気もするけど、なんでアグラマン大王がそんな小さな島で黒崎を待ってるのかって話よ」
『きっとバカンスを楽しんでいるんだろう』
「ちょっと! ふざけないでよ!」
『……冗談だ。ランペドゥーサは物語では重要な場所でな。
フランク・サラセンの戦争終結に向けて、3対3の戦いを繰り広げたんだ。
その時の決戦メンバーはフランク側がオルランド・オリヴィエ・フロリマール。サラセン側はアグラマン・グラダッソ・ソブリノ』
「そうなんだ……でも今の状況じゃ戦争なんて終わってるし、決闘なんてできないわよ?
フランク側の三人はみんな重傷を負って療養中だし、サラセン側のグラダッソはもう死んでるし」
『そうだな……すでにアイ君たちの世界は、原典から全くかけ離れたオリジナルの展開になってしまった。
故にアグラマンが何の為に、しかもロジェロ君をランペドゥーサに呼びつけようとしているのか、私にも分からん。
ひょっとしたら額面通り、本当に単に軍属を解くための手続きがしたいだけなのかも知れん』
すでに原典と異なる展開になっている以上、物語の先を教わる事はできない。
今までも話がそのまま進んだ訳ではなかったが、今回は特に先が読めない。アグラマンの真意は――直接会って確かめなければ判らないだろう。
『ところでアイ君。手紙で呼び出されたのはロジェロ君だけか?』
「え、えーっと――」
手紙を確認してみると、呼び出されたのはロジェロだけではなかった。
彼の妹マルフィサと、女騎士ブラダマンテ――つまり、司藤アイもである。
ииииииииии
数日後。ブラダマンテとロジェロ、そしてインドの王女マルフィサの三人は――ピナベルの乗ってきたガレー船を借り受け、地中海はシチリア島の南にある、ランペドゥーサを目指した。
折しも空は晴れ渡り、海はコバルトブルーに輝いている。
「ホントに綺麗な海ね!」ブラダマンテは歓声を上げた。
船影が遥か底に映るため、本当に船が宙を浮いて動いているように見えるのだ。
「できればゆっくり観光で来たかったな」ロジェロ――黒崎八式も呟いた。
「観光のようなものだろう、ロジェロ兄さん!」
口を挟んできたのはロジェロの妹・マルフィサである。
「確かに心地よい風に美しい眺めだ! 戦争が終わってしまった後なのが口惜しいぐらいに」
脳筋ぶりが伺える発言に、黒崎は幾分引きはしたが。
穏やかな地中海を渡る。特に難破などのトラブルもなく、ブラダマンテ達の船はランペドゥーサに到着した。
「ついて来ちゃって今更な話なんだけど。なんでわたしまで名前が書いてあったのかしら」
アイは不思議そうに首を傾げた。
「サラセン軍属の解任話なら、わざわざ呼びつける必要はない筈だし……?」
「案外、結婚祝いの挨拶がしたい、とかだったりしてな」
冗談めかして笑う黒崎だったが、アグラマンはロジェロがブラダマンテに懸想しているのを知っていた。意外とあり得る話かもしれない。
現地の島民に道を尋ね、三人はアグラマン大王の待つ場所へと向かった。
古びて形はやや崩れているが、ローマの闘技場をそのまま縮小コピーしたような広場の遺跡だった。
そして見つかる、遺跡にたむろするサラセン人たち。彼らも三人であった。
「あ~らロジェロ! お久しぶりね!
ここランペドゥーサ島は、のんびりくつろぐにはイイ所だけれど……いい加減、待ちくたびれちゃったわよォ」
陽気な声を上げ、手を振っているのは――清潔なターバンを巻いた目つきの鋭いサラセン人青年、アフリカ大王アグラマン。
その脇を固めるのは初老の将軍と、筋骨たくましい髭面のサラセン騎士――アグラマンの側近・ガルボの老王ソブリノと、スペイン最強の騎士フェローである。
「ラン……何とか島? どこそれ」
「ランペドゥーサ島、な。まあ、オレも詳しい事はよく知らんけど」
手紙によればアグラマン大王は今、南フランスを離れ地中海はシチリア島の南にあるランペドゥーサなる島にいるらしい。
といっても、司藤アイにとって全く馴染みの無い地名であった。
「……そうだ。こういう時は下田教授に聞けばいいわね」
アイは早速、下田三郎に念話を送る事にした。
原理は不明だが、アイは魔本「狂えるオルランド」の世界に転移した当初から、現実世界にいる下田教授と脳内で会話する事ができる。つまり現代の知識や物語の設定などの情報を、彼を通じて教わる事ができるのだ。
ииииииииии
「下田教授! 聞こえる?
また教えて欲しいんだけど。ランペドゥーサ島ってどんな所?」
アイの念話による呼びかけに、やや時間が経ってから――下田教授の野太い声が返って来た。
『ランペドゥーサ島……か。現代ではリゾート地で有名だな。
海がとても綺麗でなぁ。船が宙に浮かんで見えるほど海水が澄んでいるんだ。
まあ、位置的にはイタリアというよりアフリカ・チュニジアに近いんだがな』
実際ランペドゥーサ島は、アグラマン大王の本拠地ビゼルタ(註:チュニス北西の港町ビゼルト)から50キロと離れていない場所にある。
「へえ、それは楽しみね……じゃなくって!
確かに観光で行ってみたい気もするけど、なんでアグラマン大王がそんな小さな島で黒崎を待ってるのかって話よ」
『きっとバカンスを楽しんでいるんだろう』
「ちょっと! ふざけないでよ!」
『……冗談だ。ランペドゥーサは物語では重要な場所でな。
フランク・サラセンの戦争終結に向けて、3対3の戦いを繰り広げたんだ。
その時の決戦メンバーはフランク側がオルランド・オリヴィエ・フロリマール。サラセン側はアグラマン・グラダッソ・ソブリノ』
「そうなんだ……でも今の状況じゃ戦争なんて終わってるし、決闘なんてできないわよ?
フランク側の三人はみんな重傷を負って療養中だし、サラセン側のグラダッソはもう死んでるし」
『そうだな……すでにアイ君たちの世界は、原典から全くかけ離れたオリジナルの展開になってしまった。
故にアグラマンが何の為に、しかもロジェロ君をランペドゥーサに呼びつけようとしているのか、私にも分からん。
ひょっとしたら額面通り、本当に単に軍属を解くための手続きがしたいだけなのかも知れん』
すでに原典と異なる展開になっている以上、物語の先を教わる事はできない。
今までも話がそのまま進んだ訳ではなかったが、今回は特に先が読めない。アグラマンの真意は――直接会って確かめなければ判らないだろう。
『ところでアイ君。手紙で呼び出されたのはロジェロ君だけか?』
「え、えーっと――」
手紙を確認してみると、呼び出されたのはロジェロだけではなかった。
彼の妹マルフィサと、女騎士ブラダマンテ――つまり、司藤アイもである。
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数日後。ブラダマンテとロジェロ、そしてインドの王女マルフィサの三人は――ピナベルの乗ってきたガレー船を借り受け、地中海はシチリア島の南にある、ランペドゥーサを目指した。
折しも空は晴れ渡り、海はコバルトブルーに輝いている。
「ホントに綺麗な海ね!」ブラダマンテは歓声を上げた。
船影が遥か底に映るため、本当に船が宙を浮いて動いているように見えるのだ。
「できればゆっくり観光で来たかったな」ロジェロ――黒崎八式も呟いた。
「観光のようなものだろう、ロジェロ兄さん!」
口を挟んできたのはロジェロの妹・マルフィサである。
「確かに心地よい風に美しい眺めだ! 戦争が終わってしまった後なのが口惜しいぐらいに」
脳筋ぶりが伺える発言に、黒崎は幾分引きはしたが。
穏やかな地中海を渡る。特に難破などのトラブルもなく、ブラダマンテ達の船はランペドゥーサに到着した。
「ついて来ちゃって今更な話なんだけど。なんでわたしまで名前が書いてあったのかしら」
アイは不思議そうに首を傾げた。
「サラセン軍属の解任話なら、わざわざ呼びつける必要はない筈だし……?」
「案外、結婚祝いの挨拶がしたい、とかだったりしてな」
冗談めかして笑う黒崎だったが、アグラマンはロジェロがブラダマンテに懸想しているのを知っていた。意外とあり得る話かもしれない。
現地の島民に道を尋ね、三人はアグラマン大王の待つ場所へと向かった。
古びて形はやや崩れているが、ローマの闘技場をそのまま縮小コピーしたような広場の遺跡だった。
そして見つかる、遺跡にたむろするサラセン人たち。彼らも三人であった。
「あ~らロジェロ! お久しぶりね!
ここランペドゥーサ島は、のんびりくつろぐにはイイ所だけれど……いい加減、待ちくたびれちゃったわよォ」
陽気な声を上げ、手を振っているのは――清潔なターバンを巻いた目つきの鋭いサラセン人青年、アフリカ大王アグラマン。
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