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第二章:両想いのそのあとに
28. オオカミと理性
しおりを挟む「……あつい」
そう言うネロは徐ろに自身のシャツワンピースのボタンに手をかけ始める。
そしてアルジェントは突然のネロの行動に目を見開き、固まってしまう。
顔を紅潮させ見るからに酔っているネロは、アルジェントの前だというのに全く恥ずかしがる素振りも見せない。
覚束無いネロの小さな白い手によってゆっくりと外される繊細なデザインの花型ボタン。露わになっていく華奢な首元。着崩されたシャツワンピースと、そこから覗く白い肌。
普段見ることのないネロの胸元に、アルジェントは動揺する。
「ちょっ…と、ネロ?」
いくら酒を飲んでも基本変わることのないアルジェントの頬が熱を集め、ネロを直視しないようにと瞳を揺らす。
ネロの白い肌が酔っているからか少し赤みを帯びていて。
華奢な鎖骨が。水分量の多いその目が。
そして甘く、欲を掻き立てるネロの匂いが。
ネロの全てが、アルジェントを刺激する。
先程呑んだ酒が一瞬で体中に回るような、そんな錯覚に陥りそうなくらいには体が熱くなる。
理性を崩壊させるようなその状況に、アルジェントは思わず眉間に皺を寄せ、拳を握り締めながらネロから意識を逸らすよう努める。
どんなに理性的な男性であっても、好きな相手と2人きりでこのような状況になれば欲する人が殆どだろう。アルジェントも例外ではなく、ネロをに触れたいと、ネロの全てが欲しいと理性で蓋をした本能が体の奥底で叫んでいる。
グラグラと揺れる理性がなければネロの霰もない姿を想像しそうになる。
どこが好きか、どのように触られるのが良いのか、どんな風に善がるのか。
知りたい。知りたいが、今じゃない。
酒に酔った状況では意味がない。アルジェントの独りよがりになってしまう。きっと今の酔ったネロであればアルジェントの欲するままワンピースの下の素肌を見せてくれるだろうし、そういう雰囲気に持ち込むことだって可能だろう。
それにアルジェントはオオカミ獣人で、男で。さらにネロのようなウサギ獣人からすれば喰う側でもある。
強請らなくとも、ネロが嫌だと言ったとしても。アルジェントが望めば行為に持ち込むことなんて簡単で。ネロのことを一切思いやらない自分本位な行為であればそんなのいつだって出来る。
揺れる理性をどこかに追いやって、本能のまま喰らいつくことなんて容易い。
けれども愛してるから。ネロが何よりも大切だから、安易に触れることが出来ない。
ネロにはいつ何時も幸せであって欲しい。できることなら一生ネロが辛い思いをしないように、ネロに降りかかる不幸を自らが代わり受けたい。
そのくらい大切だからこそ嫌な思いをして欲しくない。
嫌な思いをさせるのが自分であるなんて、そんなの許せない。
だから、そういう行為はネロの心の準備が出来てからがいい。
それまでは健全な関係でいい。なんなら将来を誓って、家族になってからでも構わない。
だから、だからあまり刺激しないで欲しい。
今のネロの姿を視界に入れてしまうと我慢が出来なくなるから。
理性が仕事を放棄して、欲望を膨らませてしまうから。
しかしそんな欲望と鬩ぎ合うアルジェントを嘲笑うかのように、未だ酔いの冷めないネロはさらに3つ目のボタンに手をかける。これ以上開けてしまえばワンピースの下に着ている肌着が見えてしまう。
だから、これ以上は、本当に良くない。
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