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掌編小説

ボクより先に逝かないで

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 どうして、ボクなのか。
 どうして、君なのか。

 何故、ボクたちが病気にならないといけないの?
 何故、ボクたちが生命を落とさなきゃいけないの?

 ボクたちが一体何をした?
 ボクたちは何もしてないよ。

 何で君が最初に死ななくちゃいけないの?
 何でボクが後に死ななくちゃいけないの?

 お願い、逝かないで。
 ボクより先に死なないで。

 お願い、『サヨナラ』なんて言わないで。
 ボクもすぐにそっちへ逝って君に追いつくから。

 死神よ、連れて行くならボクだけにしろ。
 死神よ、彼女を連れて行かないで。
 彼女だけはどうか生かしてくれ。

 それがダメなら、どうしても彼女も連れて行くというのなら。
 せめて……せめて、先に連れて行くのはボクにしてくれ。

 愛しい人の死を見るのは、後にすぐ死ぬと分かっていても、少しでも置いて行かれるのは、やっぱり辛いことだから……。

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