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31話 しがらみと戦いの中へ 1

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 レシアナさんに促され2階へ、さらに3階へ、何故か必要ないのに【副ギルド長室】も案内された。
 今度、王都から取り寄せている、美味しい紅茶をご馳走してくれるらしい。

 昼食を一緒に過ごして、軽く世間話もして、ちょっと仲良くなった気がする。
 レシアナさんの言葉も、少し砕けて話しやすくなった。




 レシアナさんに続いて【ギルド長室】へ入る。
大きな執務机には、先ほどシブい声で入室の許可を出したヒゲの中年男性が座っている。

(おおぅシブい、まさに"The ギルド長"って感じだ)

 年は40前後?髪は薄くなく黒々としている、身体つきはガッシリしていて「昔は俺もAランク冒険者でな…」とか言い出しそう。

 オレが促されて座り、レシアナさんがお茶の用意をしている間に、ギルド長が向かいに座り、


 レシアナさんがオレの隣に座る。


(…おかしくない?何で隣?しかも心なしか近い)

 向かいでは、ギルド長も訝しげな顔をして、レシアナさんを見ているが、当の本人はバインダーのような物に紙を挟み、平然とペンの準備をしている。



「あ~…まずは自己紹介といこうか、私がルティスタの冒険者ギルド長、ハンクだ」

「リルトです、ハーフエルフ族で15歳です」

「今日は、わざわざ時間を取ってもらって、申し訳ないな」
「いえ、ジョイスさんの口ぶりから、【夜の森】に関して何か事情があるのは感じてますので」
「そうだな、まずはこちらの事情から話そう」
「はい、お願いします」


「まず、ここがゼニス伯爵領の町、というのは分かっているかね?」
「いえ、すみませんが"町"というものに入ったのも昨日が初めてです」

 ギルド長は軽く目を剥いている。
「そ、そうか、ざっと説明するが、ここは【オルガスティア王国】の最南東に位置する【ゼニス伯爵領】、その中でも最南東に位置する町だ」
「国の一番端、という訳ですね」
「そうだ」


「百年ほど前、当時のゼニス伯爵は"南下政策"を行っていた、理由は鉱山資源だ」
「鉱山資源」
「あぁ、その頃はまだ周辺国との諍いが絶えず、武具の素材になる鉱石は、いくらでも欲しい状況だった」
「なるほど」

「そして"ある山師"の資料から、【ベスティア山】には大規模な鉱脈が眠っているらしい事を知ったんだ」
「【ベスティア山】?」
「君も見た事があるんじゃないか?【夜の森】のさらに奥に連なる山を」
「あぁ、あの雪被っている大きい山ですかね」
「そうだ、あの辺りを【ベスティア山脈】というんだ」
「はい」

「そこで、まずはベスティア山脈の麓につなぐ為の中継地を作った」
「それがルティスタ、という訳ですね」
「そういう事だ」

「そして、ルティスタを拡張しながら、まずは道を作る為に、夜の森の伐採を始めた。
 そして奥に行った木こりは全員帰って来なかった」
「…」
「当然、衛兵や冒険者で捜索に出た、そいつらも一人として帰って来なかった」
 オレは無言の頷きで返す。
「ゼニス伯爵もさすがに馬鹿ではない、国中で探索能力の高い冒険者に依頼を出した」

「色々なパーティーの中から、個人で評判の高い者から、様々な探索者が10名、全てAランク以上の選抜チームを作った」
「よく集まりましたね」
「条件を出したんだ。
情報が取れれば取れるだけ、追加報酬を払うが、森への進入は自己責任、と」
「なるほど、少なくとも、無茶な命令で死ぬ事は無い訳ですね」
「そういう事だ」
「で、探索はどうなったんですか?」





「全員が【森の外の光が見えない所まで進めば、帰って来られないだろう】といって探索を中止した」



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