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69話 路線修正 9
しおりを挟む奥さんは真剣な表情でオレを見つめ、返答を待っている。
…さて、どうしようか。
この感じだとおそらく売れるんだろう、しかもかなりデザイン的付加価値は高い、と。
ただ儲かる分にはありがたいけど…
「…条件があります」
「お聞きします」
「まず、ボクの本業は冒険者です。
なので、この作品で顔を売るつもりはありません。
というか求めていません」
「職人として公表、欲しい人間との顔繋ぎなどをしたくない、と」
「はい、それに、もっと作れとか、いついつまでに作れとか、そういう要望も受けられません」
「はい」
「なので、今後もしこれが売れるのであれば、ヒマを見つけて一定数は作ります。
ですが期限も数もお約束は出来ません。
オーダーメイドは…もしあれば、デザイン、使用する素材など、全てそちらで打ち合わせを済ませて、ギルドに連絡して下さい。
もちろん、それについても制作期限は受付けません。
それでもよければ…」
「もちろんけっこうです。
お約束についても"契約魔法"でしっかり契約をして、確実に遵守出来るようにいたします」
「…ずいぶんと即決ですね」
今まで成り行きを静観していたジョンさんが、話し始める。
「リルトさん、さっき話していた"王都の最高級宝飾店"というのが妻の実家なんです。
私には何となく素晴らしいモノだ、という程度しか分かりませんが、妻の鍛えられてきた目にはそれ以上のものが見えているのでしょう」
「…わかりました。先程の条件で良ければお売りします」
結局、厄介事が起きても、その時はその時だ、と思い、全部売る事にした。
律儀な事に、素材代の5倍近い値段を"手付金"だと言って払った上で、
「リルトさんの作品は、王都の実家で取り扱ってもらうつもりです。
実家の父がどれくらいの価値を付けるか、私でも読みきれないところがありますから。
差額は後からお支払いします」
と、言い出す。
(商売人にしては真面目すぎないか?)
「あと、こういった同一の色、形、特徴などを持つアクセサリーは、"シリーズ名"なんかを付けると、お客様に印象付けしやすいのですが、何かありませんか?」
「シリーズ名ですか…無難に"マーブル"かな?」
「マーブル?」
「あぁ、すいません。
マーブルって言うのは古代語で大理石の事です」
「なるほど、確かに大理石の模様に雰囲気が似てますね、ではそれにしましょう」
契約も終わり場も和んだので、軽く雑談をして帰った。
奥さんは、実家への売り込みに自ら王都に出向くつもりらしく、10歳になる娘さんを、まだ父に会わせていないので一緒に連れていくと言い出し、ジョンさんはかなり心配していた。
多少の猶予はあるので、追加で欲しい種類や、一応貴族向けなどの要望も聞いておいた。
制作が間に合えば一緒に持って行ってもらう。
そして、突然大金を稼いで気が大きくなったオレは、魔道具のトイレとシャワー、水とお湯の出る蛇口を2セット、排水の処理機を購入してしまった。
結局オマケしてもらっても、受け取った代金を上回って使ってしまった…
ストレージ内を快適にする為だ、初期投資だ!
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