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164話 幕間 世界を知る妖精 3

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「いやぁ、今回は時間あったからちゃんとティナに色々聞けたし、まぁ有意義だったかな」

 両手を上げ伸びをするリルトの顔面に空中からラテルと瑠璃が現れ着地し、わちゃわちゃとしている。



 わしとロンドル殿はまだ放心状態だ。

 ロンドル殿は以前も神前に立った事があり、その時に聞いていたようだがリルトは死後に神に昇る事が決まっているという。
 歴史上、死した王を神に昇ったなどとホラを吹いて崇めようとして神罰を受けた国は知っているが、本当に神に昇る者が眼前にいるとは… 


 リルトは神界で莫大な功績を上げ昇神するという。
 以前の天使様が言っていた"デイメンティーナ神の功績"、先ほどまでの二人の仲睦まじい様子、そしてマルティアル神の首輪、おそらく色々と繋がっているのだろうが、神ならざる身で知る必要は無いのだろう。


 しかもなんといっても、ロンドル殿も初めて聞いた"精霊神の交代宣言"。
 何でも正しく名前と姿をまつられなければ人々の信仰心を受け取れず、神としての"格"を上げるのに支障があるという。
 なので交代はまだ先の話だが、なるべく混乱を抑える意味もあり近々世界中に神託が降ろされる事になる。

 エルフの国々の、東大陸の大混乱が目に浮かぶようだ…


(…まぁ、いいか)

 別に凶事まがごとではないのだ。
 我等が父は長きに渡り就かれていた重責から解き放たれ、交代後は悠々自適に暮らすとおっしゃっていた、子として喜ぶべき事だ。

 あることないこと騒ぐのはどうせ"統率派"の者達だし、あのような者達の事は考えるだけ時間の無駄だ。
 それに"エルフ症候群"が完治したからだろうか?
 離れてまで国の行く末に拘りいつまでも口を出していた今までの自分を不思議に思う。
 国は次代に託したのだ、わしが何時までも見守る必要は無いだろう。



「ファル爺、ずいぶん派手になっちゃったね。
 薬作ってあげるから髪染める?」

 ラテルを肩車して肩に瑠璃を乗せリルトが聞いてくる。

「リルト…様」
 我等が父が"様付け"で呼んでいたのだ、わしも付けない訳にはいかないだろう。


「気持ちわる! 大司教は最初からだから気にならないけど、ファル爺に"様"とか言われると寒気がする」
 眉をしかめたリルトにバッサリと言われる。

 驚いたが気分は良い。

「ははは、そうだな。
 ではなくリルトよ!我等が父から頂いたこの髪を染めるなどと、そんな罰当たりな事が出来るか!」

「そうなの?まぁいいけど、騒ぎになってもボクは知らん顔するからね」

「だいたいなんだリルトよ!あのゼルメスリュート様への態度は!"ジジイ"などと呼んで不敬だぞ!」


「だってあのジジイ、会うたびに"ティナ様との子供はまだなのか?"とか訳分からん事ばっかり言ってくるし、1ヶ月で出来る訳ないだろ」

「それだけデイメンティーナ様との仲を心配して下さっているんだ!神妙にお聞きしろ!」

「いやいや、あのジジイ絶対からかってるだけだって。
 恥ずかしがるティナを見て楽しんでるだけだよ」


 リルトには"精霊神交代"について話すなと二柱の神から口止めされているので昇神後に交代要員が自分であった事に気づく事になる。
 その時のリルトの顔はさぞかし傑作だろうと思うと顔がにやけてしまう。

「なに?ファル爺、何か良い事でもあったの?」
 にやけたわしに気づきリルトが尋ねる。

「そうだな、良い事づくめだ。
 リルト、明日から早速拠点づくりに着手するぞ!」




「いや、勝手に決めないで。
 明日はギルド行ってダンジョンの事調べるから」





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