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5.嘘つき
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「ところでオルクス、一つ質問があるのだけれどいいかしら?」
俺の手を握るリーゼの手に力が入った。
「どうかした?」
「いえ、私の天恵の話をしたのだから、よかったらオルクスの天恵も聞かせてもらえたらと思って。
ほら、私はこんな感じだから、あまり他人とそういう話をする機会がなくて。
別に話したくなければ無理には聞かないわ」
「いや、別にいいよ。俺のは〈暗視〉っていう天恵だ。
明かりがなくても、昼間のようによく見えるっていう能力なんだけど。
パーティーでも組んで、泊まりがけで依頼を受けて夜番なんかをするときには役に立ちそうだけど、昼間にゴブリンを倒す分には必要ない天恵だよ」
握る手にさらに力が入る。
まだ離しては駄目なのだろうか。
正直少し痛い。
「……そう。話は変わるけれど、私嘘をつく人って嫌いなの」
「そりゃあ、まあ。誰だってそんなもんじゃないの? 必要な嘘もあるとは思うけど、一般的にいいものじゃないし」
「確かに必要な嘘もあると、私もそう思うわ。
そこでオルクスに聞くけれど、あなたさっき私の裸を見えてないって言ったわよね?
暗くて何にも見えなかったって。あれは必要な嘘なのかしら?」
薄く笑みを浮かべたリーゼが尋ねてくる。
どうしてだろう、〈威光〉の効力が上がっている気がする。
それに右手の骨が悲鳴をあげ始めた。
この細腕のどこにこれだけの握力があるのだろう。
「あれはその……。見えていたこともなきにしもあらずといいますか……。見えていないこともないといいますか……」
今すぐ目を逸らしたいのに、なぜだかリーゼから目を逸らすことができない。
「見えていたのね」
「……はい」
自白した。
「……どこまで見えていたのかしら?」
「どこまでといわれると、胸の頂から下の毛まではっきりと……」
今思い出してもリーゼの裸体は美しかった。
「……わかったわ。
それで私的には、嘘つきには相応の罰が必要だと思うの。
オルクスもそう思うでしょう?」
「いや、俺は別に……。反省していると思うのでそのまま解放するというのもありかなー、なんて」
「罰は必要よね?」
リーゼの声の圧が上がる。
「……はい」
「ならオルクスには〈威光〉の練習台になってもらいましょう。
出力を任意で調整できるようになれば、私の人付き合いも改善すると思うのよね」
「それはいい考えだね」
「そこでまずは全力で〈威光〉を使用したらどうなるか確認してみようかなって」
「ち、ちょっと待って! 手加減を覚えるとかそういう方向の練習を……」
「逃がさないわよ」
リーゼが俺の顔を両手で挟む。
少し表情に乏しい印象のリーゼだが、今はその頬が赤く染まっているのがはっきりとわかった。
息も届きそうな距離にリーゼの顔がある。
ああ、なんて綺麗なんだ。
俺はその日見た、透き通るようなエメラルド色の瞳と、漏らして濡れたズボンと、気を失う直前になめた地面の味を一生忘れないだろう。
俺の手を握るリーゼの手に力が入った。
「どうかした?」
「いえ、私の天恵の話をしたのだから、よかったらオルクスの天恵も聞かせてもらえたらと思って。
ほら、私はこんな感じだから、あまり他人とそういう話をする機会がなくて。
別に話したくなければ無理には聞かないわ」
「いや、別にいいよ。俺のは〈暗視〉っていう天恵だ。
明かりがなくても、昼間のようによく見えるっていう能力なんだけど。
パーティーでも組んで、泊まりがけで依頼を受けて夜番なんかをするときには役に立ちそうだけど、昼間にゴブリンを倒す分には必要ない天恵だよ」
握る手にさらに力が入る。
まだ離しては駄目なのだろうか。
正直少し痛い。
「……そう。話は変わるけれど、私嘘をつく人って嫌いなの」
「そりゃあ、まあ。誰だってそんなもんじゃないの? 必要な嘘もあるとは思うけど、一般的にいいものじゃないし」
「確かに必要な嘘もあると、私もそう思うわ。
そこでオルクスに聞くけれど、あなたさっき私の裸を見えてないって言ったわよね?
暗くて何にも見えなかったって。あれは必要な嘘なのかしら?」
薄く笑みを浮かべたリーゼが尋ねてくる。
どうしてだろう、〈威光〉の効力が上がっている気がする。
それに右手の骨が悲鳴をあげ始めた。
この細腕のどこにこれだけの握力があるのだろう。
「あれはその……。見えていたこともなきにしもあらずといいますか……。見えていないこともないといいますか……」
今すぐ目を逸らしたいのに、なぜだかリーゼから目を逸らすことができない。
「見えていたのね」
「……はい」
自白した。
「……どこまで見えていたのかしら?」
「どこまでといわれると、胸の頂から下の毛まではっきりと……」
今思い出してもリーゼの裸体は美しかった。
「……わかったわ。
それで私的には、嘘つきには相応の罰が必要だと思うの。
オルクスもそう思うでしょう?」
「いや、俺は別に……。反省していると思うのでそのまま解放するというのもありかなー、なんて」
「罰は必要よね?」
リーゼの声の圧が上がる。
「……はい」
「ならオルクスには〈威光〉の練習台になってもらいましょう。
出力を任意で調整できるようになれば、私の人付き合いも改善すると思うのよね」
「それはいい考えだね」
「そこでまずは全力で〈威光〉を使用したらどうなるか確認してみようかなって」
「ち、ちょっと待って! 手加減を覚えるとかそういう方向の練習を……」
「逃がさないわよ」
リーゼが俺の顔を両手で挟む。
少し表情に乏しい印象のリーゼだが、今はその頬が赤く染まっているのがはっきりとわかった。
息も届きそうな距離にリーゼの顔がある。
ああ、なんて綺麗なんだ。
俺はその日見た、透き通るようなエメラルド色の瞳と、漏らして濡れたズボンと、気を失う直前になめた地面の味を一生忘れないだろう。
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