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令嬢のお仕置き
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「オリビアッ! あなた、また屋敷を抜け出したわね!」
自室でくつろいでいると、目をつり上げたセシリアがノックもなしに入ってきた。
「お母様、ノックくらいなさってください」
「お黙りなさい! あなたの身勝手な振る舞いのせいで皆が困っているということがどうしてわからないの!」
まくし立てるセシリアに肩をすくめた。
この国では十四歳から社交界へ仲間入りする。
十三歳である私にもそのときが近づいてきているのだ。
ゴルドランド家の、この地を治める貴族家の令嬢としての自覚はある。
社交界で恥をかかぬよう令嬢教育も真面目にこなしている。
しかし、だ。
社交界に出てしまえばこれまで以上に自由のない生活が待っていることだろう。
その事自体は納得している。
それが貴族の務めだ。
ただ、それならば今ある自由を満喫したいというのが私の気持ちだった。
ローブで顔を隠し、このゴルドランドの街を散策する。
それが私の楽しみだった。
露店で普段は食べられないものを食べたり、路地裏を覗き込んでみたり。
貴族として育てられた私にとって、目に写るもの全てが新鮮なのだ。
だから、こうして怒られることも初めてではないし、これでやめるつもりもない。
「あなたに何かあったらどうするの! 屋敷を抜け出す度に皆が街中を探し回るのよ」
「貴族の身の回りの世話をするのが使用人の仕事でしょう」
売り言葉に買い言葉というべきか。
少し言い過ぎたかと思ったときには遅かった。
セシリアの顔から怒りが消えた。
いや、違う。
抜け落ちた表情の裏にこれまでにない怒りを漏れていた。
これはまずい。
本能的にそう思った。
「お、お母様、申し訳ありませんでした。今の言葉はその……」
「もういいわ。こちらにいらっしゃい」
セシリアは私の腕をつかむとぐいぐいと引っ張っていく。
あの細い腕のどこにこれほどの力があるのだろう。
半ば引きずられるようにして私は連れていかれた。
たどり着いたのは玄関ホールだった。
仕事中の使用人たちが何事かと足を止めこちらを見ている。
「そこに四つん這いになりなさい」
静にセシリアが言った。
「えっ……」
「早く」
怒鳴りはしない。
その声はあくまで静かなものだ。
しかし、その迫力に私は従うしかなかった。
ゆっくり屈むと床に両手をついた。
「膝は伸ばして、足は開きなさい」
言われるがままに私は腰を上げていく。
使用人の前で四つん這いになる。
令嬢として育てられてきた私にとってこの姿はあまりに屈辱的だった。
しかし、セシリアの怒りがこの程度で収まるはずもなかった。
私の足の方へと回り込むと、おもむろに私のスカートの裾を持ち上げた。
「なっ!」
それだけではない。
露になったドロワーズを一気に下ろしたのだ。
明るい玄関ホール。
使用人たちの前で、私は無防備な下半身をさらけ出していた。
「きゃああああっ!」
私はすぐにスカートの裾を下ろし、その場にうずくまった。
(皆に見られた……)
着替えや湯浴みのときに裸を晒すことはある。
しかしそれはあくまでそういう場で、それも同性であるメイドの前だけだ。
しかし今この玄関ホールにはメイドだけでなく、男性の使用人もいる。
「なにをしているの。早く四つん這いに戻りなさい」
「む、無理ですお母様。男性もいるのですよ」
「それがどうかしましたか。あなたの言葉がどれほど皆を侮辱したのか、まだわかっていないようですね」
「わかりました、わかりましたから。だからどうかこれ以上は……」
「ならば選びなさい。今ここで四つん這いになるか。それとも家を出て修道院へ行くか」
「えっ……」
修道院へ行く。
それはつまり貴族ではなくなり、生涯神にのみ仕えるということだ。
修道院自体を悪くいうつもりはない。
ただ、何かしらの問題がある貴族令嬢が懲罰の意味合いを持って修道院へといくという風潮はたしかにあった。
それは物心ついた頃から貴族としての教育を受けてきた私にとって耐え難い屈辱である。
ゴルドランド家の家長はあくまで父であり、セシリアの一存で私が修道院へと送られることはない。
ないとは思うのだが、今のセシリアの様子を見るとありえないと断言できるだけの自信がなかった。
「早くなさい」
修道院へ行くということはこれまでの貴族としての私を否定することになる。
それならば一時の恥を晒そうとも貴族であり続ける道を選ぼう。
私は心を決めると再び四つん這いになった。
セシリアがスカートの裾を持ち上げる。
ドロワーズは下ろされたままであったため、それだけで剥き出しの下半身が使用人たちの前に晒された。
足が震え崩れ落ちそうになるが、目をつぶりじっと耐える。
「皆聞いてちょうだい。
この子は皆を侮辱する、言ってはならないことを言いました。
これはその言葉に対する躾です。
お仕事の手を止めさせて申し訳ないのだけど、この子が反省するまで少し付き合って下さい」
それだけ言うとセシリアは手を振りかぶり私の臀部を打った。
「かはっ……」
臀部から頭へと突き抜けるような衝撃に思わず目を見開いた。
少し遅れてじんわりとした痛みに襲われる。
打擲は一度で終わりではなかった。
手が振り下ろされる度、玄関ホールに肉を打つ高い音が響いた。
私の口からは耐えきれずに空気が幾度となく漏れてしまう。
これまで叱られたことはあっても、肉体的な懲罰を受けたことはなかった。
初めて受ける痛み。
そしてそんな惨めな姿を使用人、それも異性を含む者たちの前に晒している。
初めて経験することばかりで感情が追いついてこない。
やがて永遠にも感じる躾の時間がおわった。
私はすっかり足の力が抜け、膝をついて剥き出しの尻を掲げていた。
セシリアの躾によって予想以上に消耗しており、その恥ずかしい体勢を変える余裕もない。
使用人たちは気を遣ってか、それぞれの仕事へと戻るとこちらは見ないようにしてくれていた。
それだけが救いであり、その気遣いがありがたかった。
「オリビア、私だってあれがあなたの本心からの言葉でないことくらいわかっているわ。
でも、私たちは貴族なの。
その言葉には常に責任がつきまとう。
冗談や言い間違いでは済まされないわ。
あなたはしっかりしている。
社交界に出ても問題なく振る舞うことができるでしょう。
でも自分は大丈夫だというその驕りがいつかあなたを追い詰めることになる」
セシリアは私のスカートの裾を戻すと、私を優しく抱き締めた。
「私のことを嫌いになってもいいわ。
でもあなたはゴルドランド家の者であるということだけは忘れないで」
セシリアの温もりに、恥を晒しても流れなかった涙が溢れる。
「お母様のことを嫌いになんてなりませんっ……。申し訳ありません、でした」
この日の出来事は貴族として、そして一人のオリビアとして忘れることのできない日となった。
自室でくつろいでいると、目をつり上げたセシリアがノックもなしに入ってきた。
「お母様、ノックくらいなさってください」
「お黙りなさい! あなたの身勝手な振る舞いのせいで皆が困っているということがどうしてわからないの!」
まくし立てるセシリアに肩をすくめた。
この国では十四歳から社交界へ仲間入りする。
十三歳である私にもそのときが近づいてきているのだ。
ゴルドランド家の、この地を治める貴族家の令嬢としての自覚はある。
社交界で恥をかかぬよう令嬢教育も真面目にこなしている。
しかし、だ。
社交界に出てしまえばこれまで以上に自由のない生活が待っていることだろう。
その事自体は納得している。
それが貴族の務めだ。
ただ、それならば今ある自由を満喫したいというのが私の気持ちだった。
ローブで顔を隠し、このゴルドランドの街を散策する。
それが私の楽しみだった。
露店で普段は食べられないものを食べたり、路地裏を覗き込んでみたり。
貴族として育てられた私にとって、目に写るもの全てが新鮮なのだ。
だから、こうして怒られることも初めてではないし、これでやめるつもりもない。
「あなたに何かあったらどうするの! 屋敷を抜け出す度に皆が街中を探し回るのよ」
「貴族の身の回りの世話をするのが使用人の仕事でしょう」
売り言葉に買い言葉というべきか。
少し言い過ぎたかと思ったときには遅かった。
セシリアの顔から怒りが消えた。
いや、違う。
抜け落ちた表情の裏にこれまでにない怒りを漏れていた。
これはまずい。
本能的にそう思った。
「お、お母様、申し訳ありませんでした。今の言葉はその……」
「もういいわ。こちらにいらっしゃい」
セシリアは私の腕をつかむとぐいぐいと引っ張っていく。
あの細い腕のどこにこれほどの力があるのだろう。
半ば引きずられるようにして私は連れていかれた。
たどり着いたのは玄関ホールだった。
仕事中の使用人たちが何事かと足を止めこちらを見ている。
「そこに四つん這いになりなさい」
静にセシリアが言った。
「えっ……」
「早く」
怒鳴りはしない。
その声はあくまで静かなものだ。
しかし、その迫力に私は従うしかなかった。
ゆっくり屈むと床に両手をついた。
「膝は伸ばして、足は開きなさい」
言われるがままに私は腰を上げていく。
使用人の前で四つん這いになる。
令嬢として育てられてきた私にとってこの姿はあまりに屈辱的だった。
しかし、セシリアの怒りがこの程度で収まるはずもなかった。
私の足の方へと回り込むと、おもむろに私のスカートの裾を持ち上げた。
「なっ!」
それだけではない。
露になったドロワーズを一気に下ろしたのだ。
明るい玄関ホール。
使用人たちの前で、私は無防備な下半身をさらけ出していた。
「きゃああああっ!」
私はすぐにスカートの裾を下ろし、その場にうずくまった。
(皆に見られた……)
着替えや湯浴みのときに裸を晒すことはある。
しかしそれはあくまでそういう場で、それも同性であるメイドの前だけだ。
しかし今この玄関ホールにはメイドだけでなく、男性の使用人もいる。
「なにをしているの。早く四つん這いに戻りなさい」
「む、無理ですお母様。男性もいるのですよ」
「それがどうかしましたか。あなたの言葉がどれほど皆を侮辱したのか、まだわかっていないようですね」
「わかりました、わかりましたから。だからどうかこれ以上は……」
「ならば選びなさい。今ここで四つん這いになるか。それとも家を出て修道院へ行くか」
「えっ……」
修道院へ行く。
それはつまり貴族ではなくなり、生涯神にのみ仕えるということだ。
修道院自体を悪くいうつもりはない。
ただ、何かしらの問題がある貴族令嬢が懲罰の意味合いを持って修道院へといくという風潮はたしかにあった。
それは物心ついた頃から貴族としての教育を受けてきた私にとって耐え難い屈辱である。
ゴルドランド家の家長はあくまで父であり、セシリアの一存で私が修道院へと送られることはない。
ないとは思うのだが、今のセシリアの様子を見るとありえないと断言できるだけの自信がなかった。
「早くなさい」
修道院へ行くということはこれまでの貴族としての私を否定することになる。
それならば一時の恥を晒そうとも貴族であり続ける道を選ぼう。
私は心を決めると再び四つん這いになった。
セシリアがスカートの裾を持ち上げる。
ドロワーズは下ろされたままであったため、それだけで剥き出しの下半身が使用人たちの前に晒された。
足が震え崩れ落ちそうになるが、目をつぶりじっと耐える。
「皆聞いてちょうだい。
この子は皆を侮辱する、言ってはならないことを言いました。
これはその言葉に対する躾です。
お仕事の手を止めさせて申し訳ないのだけど、この子が反省するまで少し付き合って下さい」
それだけ言うとセシリアは手を振りかぶり私の臀部を打った。
「かはっ……」
臀部から頭へと突き抜けるような衝撃に思わず目を見開いた。
少し遅れてじんわりとした痛みに襲われる。
打擲は一度で終わりではなかった。
手が振り下ろされる度、玄関ホールに肉を打つ高い音が響いた。
私の口からは耐えきれずに空気が幾度となく漏れてしまう。
これまで叱られたことはあっても、肉体的な懲罰を受けたことはなかった。
初めて受ける痛み。
そしてそんな惨めな姿を使用人、それも異性を含む者たちの前に晒している。
初めて経験することばかりで感情が追いついてこない。
やがて永遠にも感じる躾の時間がおわった。
私はすっかり足の力が抜け、膝をついて剥き出しの尻を掲げていた。
セシリアの躾によって予想以上に消耗しており、その恥ずかしい体勢を変える余裕もない。
使用人たちは気を遣ってか、それぞれの仕事へと戻るとこちらは見ないようにしてくれていた。
それだけが救いであり、その気遣いがありがたかった。
「オリビア、私だってあれがあなたの本心からの言葉でないことくらいわかっているわ。
でも、私たちは貴族なの。
その言葉には常に責任がつきまとう。
冗談や言い間違いでは済まされないわ。
あなたはしっかりしている。
社交界に出ても問題なく振る舞うことができるでしょう。
でも自分は大丈夫だというその驕りがいつかあなたを追い詰めることになる」
セシリアは私のスカートの裾を戻すと、私を優しく抱き締めた。
「私のことを嫌いになってもいいわ。
でもあなたはゴルドランド家の者であるということだけは忘れないで」
セシリアの温もりに、恥を晒しても流れなかった涙が溢れる。
「お母様のことを嫌いになんてなりませんっ……。申し訳ありません、でした」
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