婚約破棄された悪役令嬢は百合ルートを開拓するようです

黒うさぎ

文字の大きさ
2 / 30

2.悪役令嬢は百合ルートを開拓するようです

しおりを挟む
アリシア・ローデンブルク。
ローデンブルク公爵家の長女にして、ボルグ王国第一王子であるレイネスの「元」許嫁である。

アリシアは幼少の頃より、次期王妃としての教育を施されてきた。
勉学はもちろん、礼節や魔術、果てには武術に至るまで、あらゆる物事を叩き込まれた。
全ては次期国王となる、レイネスを支えるため。

この世に生を受けてから、アリシアの全てはレイネスと国のために捧げてきた。
アリシア自身も公爵家の人間として、その運命を受け入れていた。

だというのに、突然の婚約破棄。
それも衆人の前で、だ。

そのショックは計り知れないものであろう。
レイネスの前で顔を青くし、蹲るアリシアの姿は、あまりにもいたたまれなかった。

会場にいたものは、アリシアとの関係はどうあれ、このときばかりは彼女に対して同情の念を抱かざるをえなかった。



一方その頃。
婚約破棄を突きつけられた本人はというと。

「生メリア、めっちゃ可愛かったーー!!」

自室のベッドの上で悶えていた。
枕を抱きしめ、柔らかなベッドの上を転がる様からは、普段の凛としたアリシアの姿など想像できまい。

愛してやまなかった相手が、目の前に現れたのだ。
この反応も無理ないことだろう。

ひとしきり悶えたアリシアは「ふぅ……」と一息つくと、ベッドの上に座り直す。

「それにしても、私がアリシア、ね」

アリシアは「マジラプ」に登場する、サブキャラの一人である。
レイネスの婚約者であり、主人公であるメリアがレイネスに近づく度に、牽制してくるキャラだった。

婚約破棄後は、あまりのショックで乱心してしまい、メリアへあからさまな嫌がらせをしてくるようになる。
そしてその現場をレイネスに目撃され、最終的に公爵家を追放されてしまうというキャラだ。

「私はメリアのことが大好きだったけれど、だからといってアリシアのことが嫌いだった訳じゃないのよね」

前世の感覚でいうと、どう見たって浮気をしたレイネスが悪い。
アリシアはただの被害者である。

メリアに対する嫌がらせも婚約破棄後からで、それ以前は正々堂々、正面からメリアの貴族として至らない振る舞いに対する忠告を行っていただけである。
基本的に真面目なキャラなのだ。

それは、こうしてアリシアになってみてよくわかる。
前世の記憶に統合されてしまったが、アリシアとして生きてきた時間もしっかり覚えている。
だからこそ、ゲームの中では描かれていなかった、アリシアの血の滲むような努力を、身をもって知っている。

「攻略キャラに転生できればベストだったのでしょうけど……」

そうすればメリアへのアプローチも楽になる。
何せ、こちとら全ルート攻略者なのだ。
最短ルートでメリアを娶る自信がある。

「まあ、それは言っても仕方ないですね。
それより、これからどうしましょう」

ゲームではこの後、アリシアがメリアをいじめる展開になるわけだが、そんなことできるわけがない。
メリアをいじめるなんて言語道断だ。
もしそんな奴がいたら成敗してくれる。

しかし、そうなるといずれルートを外れてしまい、せっかく思い出したゲームの知識が活かせなくなるだろう。
それは残念ではあるが、まあ仕方ない。
この溢れ出る、メリアへの愛を思い出せただけでもよしとしよう。

どうせルートを外れるのなら、いっそのことアリシアルートを開拓してみるのもいいかもしれない。
ゲームにはなかった百合ルート。
「マジラプ」は乙女ゲーであり、百合ルートなどなくて当たり前なのだが、そんなことは関係ない。

「私はこの世界でメリアと幸せになる!」

アリシアは拳を突き上げ、輝かしい未来を夢想した。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

『偽りの血筋が溢れる世界で、ただ一人の君を見つけ出す 〜捨てられた公爵家の猫は騎士団長に溺愛されて逃げられません〜』

高瀬あい
恋愛
「にゃーーーーー!!(待てやコラァーーーー!)」 野良暮らしを逞しく満喫中の長毛種の猫。その中身は、高慢な義母によって魔物の森へ捨てられた成人女性の転生者だった。 ​獲物の魔力を少しだけ「チュウチュウ」と吸って、お返しに相手をピカピカに浄化し、傷を癒す。 そんな能力のおかげて気楽な自給自足な生活を送っていたある日、主人公は誘拐されかけた少年を助け(というか魔獣に激突し)、血まみれの冷徹騎士団長・エリオットに拾われてしまう。 ​「汚い。……洗おう」 「にゃーん!(お風呂は嫌! 離しなさいこのイケボ!)」 ​お揃いのリボンを結ばれ、美味しい魔力のご飯を献上される至福の贅沢生活。 しかし、生活費代わりとして騎士団長の中にある魔力の淀みを夜な夜な癒やすうち、その力は「聖獣」として覚醒していき、邪な輩の目を引くことに。 「お前は絶対渡さないよ。お前の帰る場所は、私の元だけだーー」 騎士団長からのヤバい溺愛を盾に、幸せペット生活、守らせていただきます!

処刑された悪役令嬢、二周目は「ぼっち」を卒業して最強チームを作ります!

みかぼう。
恋愛
地方を救おうとして『反逆者』に仕立て上げられ、断頭台で散ったエリアナ・ヴァルドレイン。 彼女の失敗は、有能すぎるがゆえに「独りで背負いすぎたこと」だった。 ループから始まった二周目。 彼女はこれまで周囲との間に引いていた「線」を、踏み越えることを決意した。 「お父様、私に『線を引け』と教えた貴方に、処刑台から見た真実をお話しします」 「殿下、私が貴方の『目』となります。王国に張り巡らされた謀略の糸を、共に断ち切りましょう」 淑女の仮面を脱ぎ捨て、父と王太子を「共闘者」へと変貌させる政争の道。 未来知識という『目』を使い、一歩ずつ確実に、破滅への先手を取っていく。 これは、独りで戦い、独りで死んだ令嬢が、信頼と連帯によって王国の未来を塗り替える――緻密かつ大胆なリベンジ政争劇。 「私を神輿にするのなら、覚悟してくださいませ。……その行き先は、貴方の破滅ですわ」 (※カクヨムにも掲載中です。)

転生したので推し活をしていたら、推しに溺愛されました。

ラム猫
恋愛
 異世界に転生した|天音《あまね》ことアメリーは、ある日、この世界が前世で熱狂的に遊んでいた乙女ゲームの世界であることに気が付く。  『煌めく騎士と甘い夜』の攻略対象の一人、騎士団長シオン・アルカス。アメリーは、彼の大ファンだった。彼女は喜びで飛び上がり、推し活と称してこっそりと彼に贈り物をするようになる。  しかしその行為は推しの目につき、彼に興味と執着を抱かれるようになったのだった。正体がばれてからは、あろうことか美しい彼の側でお世話係のような役割を担うことになる。  彼女は推しのためならばと奮闘するが、なぜか彼は彼女に甘い言葉を囁いてくるようになり……。 ※この作品は、『小説家になろう』様『カクヨム』様にも投稿しています。

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

推ししか勝たん!〜悪役令嬢?なにそれ、美味しいの?〜

みおな
恋愛
目が覚めたら、そこは前世で読んだラノベの世界で、自分が悪役令嬢だったとか、それこそラノベの中だけだと思っていた。 だけど、どう見ても私の容姿は乙女ゲーム『愛の歌を聴かせて』のラノベ版に出てくる悪役令嬢・・・もとい王太子の婚約者のアナスタシア・アデラインだ。 ええーっ。テンション下がるぅ。 私の推しって王太子じゃないんだよね。 同じ悪役令嬢なら、推しの婚約者になりたいんだけど。 これは、推しを愛でるためなら、家族も王族も攻略対象もヒロインも全部巻き込んで、好き勝手に生きる自称悪役令嬢のお話。

枯れ専モブ令嬢のはずが…どうしてこうなった!

宵森みなと
恋愛
気づけば異世界。しかもモブ美少女な伯爵令嬢に転生していたわたくし。 静かに余生——いえ、学園生活を送る予定でしたのに、魔法暴発事件で隠していた全属性持ちがバレてしまい、なぜか王子に目をつけられ、魔法師団から訓練指導、さらには騎士団長にも出会ってしまうという急展開。 ……団長様方、どうしてそんなに推せるお顔をしていらっしゃるのですか? 枯れ専なわたくしの理性がもちません——と思いつつ、学園生活を謳歌しつつ魔法の訓練や騎士団での治療の手助けと 忙しい日々。残念ながらお子様には興味がありませんとヒロイン(自称)の取り巻きへの塩対応に、怒らせると意外に強烈パンチの言葉を話すモブ令嬢(自称) これは、恋と使命のはざまで悩む“ちんまり美少女令嬢”が、騎士団と王都を巻き込みながら心を育てていく、 ――枯れ専ヒロインのほんわか異世界成長ラブファンタジーです。

転生してモブだったから安心してたら最恐王太子に溺愛されました。

琥珀
恋愛
ある日突然小説の世界に転生した事に気づいた主人公、スレイ。 ただのモブだと安心しきって人生を満喫しようとしたら…最恐の王太子が離してくれません!! スレイの兄は重度のシスコンで、スレイに執着するルルドは兄の友人でもあり、王太子でもある。 ヒロインを取り合う筈の物語が何故かモブの私がヒロインポジに!? 氷の様に無表情で周囲に怖がられている王太子ルルドと親しくなってきた時、小説の物語の中である事件が起こる事を思い出す。ルルドの為に必死にフラグを折りに行く主人公スレイ。 このお話は目立ちたくないモブがヒロインになるまでの物語ーーーー。

処理中です...