婚約破棄された悪役令嬢は百合ルートを開拓するようです

黒うさぎ

文字の大きさ
3 / 30

3.悪役令嬢は父親に叱られるようです

しおりを挟む
「お父様、アリシアでございます」

「入れ」

「失礼いたします」

重厚な扉を開け、書斎へと入る。
中には書類と向き合う一人の男の姿があった。

バイス・ローデンブルク。
ローデンブルク公爵家の現当主であり、アリシアの実父である。
ロマンスグレーの髪を後ろでまとめ、端整な顔にかけられた黒縁の眼鏡から覗く鋭い双眸は、実娘であっても思わず萎縮してしまいそうになる。

この場所を訪れたのには訳がある。
アリシアが自室で一人盛り上がっていたところ、バイスに呼び出されたのだ。
十中八九、今日のパーティーでのことであろう。

「今日のあれはどういうことだ」

鋭い視線がアリシアを見据える。

「私が不甲斐ないばかりに、殿下のお心が私から離れてしまった結果でございます。
お父様が整えて下さった婚約をふいにしてしまい、申し訳ございませんでした」

自分は悪くないだろうとは思うが、そんなことを言ったところで仕方がないので、大人しく頭を下げる。

「確かにその点に関してはお前の不手際だな。
だが、殿下も殿下だ。
まさか衆人の前で婚約破棄を告げるとは……。
内々でのことならば、どうにか処理できたかもしれないが、既に他の貴族に知れ渡ってしまった以上、そう簡単な話ではあるまい。
まったく、殿下はいったい何をお考えなのだ」

(多分メリアのことだと思います)

婚約破棄イベントまで進んでいるということは、既にいくつかのイベントが終了しているということだ。
そしてそれは、レイネスルートへと着実に進んでいるということでもある。
まだ再分岐の可能性はあるが、このままいけばまず間違いないだろう。

メリアは元々孤児院で生活していた。
ある日、メリアの中に眠る癒しの魔法の才能を、孤児院のパトロンである、アレスティア子爵に見出だされる。
そしてそのまま、子のいなかったアレスティア家に養女として迎え入れられたという経歴を持つ。

そのため、メリアの振る舞いや言動には庶民的で、素朴なものがちらほらと散見される。
他の貴族令嬢にはないそのギャップに、貴族である攻略キャラたちは惹かれていくのだ。

レイネスもその内の一人である。
彼の場合、傍にアリシアという典型的な貴族令嬢がいたため、よりメリアのギャップに魅了されたのだろう。

今回の婚約破棄については、確かこうだったはずだ。

王子として日々感じる重圧。
それに加え、隣で完璧な貴族令嬢として振る舞うアリシアの存在に、レイネスは息苦しさを覚えてしまう。
そんなレイネスにとって、貴族らしくないメリアの存在は癒しだった。
アリシアとメリアのギャップが、アリシアに対する不満の増加を加速させる。

そして今日、パーティー会場でメリアに注意するアリシアの姿を目撃したことがきっかけとなり、衝動的に不満を爆発させてしてしまったというわけだ。

メリアが可愛いく、癒しであることは大いに認めるが、いくらなんでもアリシアが不憫すぎる。
アリシアの振る舞いは、貴族として模範的なものである。
今日メリアに注意していた内容についても、殿下へ挨拶にいく順番について、貴族内にある暗黙の了解を教えていただけなのだ。

まあ、前世を思い出した今では、婚約破棄してくれたお陰で百合ルート開拓に一歩近づいたので、レイネスには感謝したいくらいなのだが。

「起こってしまったことは仕方がない。
私の方でも手を回してみるが、お前もこれ以上殿下の不興を買うような行いは慎むように」

「かしこまりました」

アリシアは深く頭を下げた。


しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

『偽りの血筋が溢れる世界で、ただ一人の君を見つけ出す 〜捨てられた公爵家の猫は騎士団長に溺愛されて逃げられません〜』

高瀬あい
恋愛
「にゃーーーーー!!(待てやコラァーーーー!)」 野良暮らしを逞しく満喫中の長毛種の猫。その中身は、高慢な義母によって魔物の森へ捨てられた成人女性の転生者だった。 ​獲物の魔力を少しだけ「チュウチュウ」と吸って、お返しに相手をピカピカに浄化し、傷を癒す。 そんな能力のおかげて気楽な自給自足な生活を送っていたある日、主人公は誘拐されかけた少年を助け(というか魔獣に激突し)、血まみれの冷徹騎士団長・エリオットに拾われてしまう。 ​「汚い。……洗おう」 「にゃーん!(お風呂は嫌! 離しなさいこのイケボ!)」 ​お揃いのリボンを結ばれ、美味しい魔力のご飯を献上される至福の贅沢生活。 しかし、生活費代わりとして騎士団長の中にある魔力の淀みを夜な夜な癒やすうち、その力は「聖獣」として覚醒していき、邪な輩の目を引くことに。 「お前は絶対渡さないよ。お前の帰る場所は、私の元だけだーー」 騎士団長からのヤバい溺愛を盾に、幸せペット生活、守らせていただきます!

強すぎる力を隠し苦悩していた令嬢に転生したので、その力を使ってやり返します

天宮有
恋愛
 私は魔法が使える世界に転生して、伯爵令嬢のシンディ・リーイスになっていた。  その際にシンディの記憶が全て入ってきて、彼女が苦悩していたことを知る。  シンディは強すぎる魔力を持っていて、危険過ぎるからとその力を隠して生きてきた。  その結果、婚約者のオリドスに婚約破棄を言い渡されて、友人のヨハンに迷惑がかかると考えたようだ。  それなら――この強すぎる力で、全て解決すればいいだけだ。  私は今まで酷い扱いをシンディにしてきた元婚約者オリドスにやり返し、ヨハンを守ろうと決意していた。

ワンチャンあるかな、って転生先で推しにアタックしてるのがこちらの令嬢です

山口三
恋愛
恋愛ゲームの世界に転生した主人公。中世異世界のアカデミーを中心に繰り広げられるゲームだが、大好きな推しを目の前にして、ついつい欲が出てしまう。「私が転生したキャラは主人公じゃなくて、たたのモブ悪役。どうせ攻略対象の相手にはフラれて婚約破棄されるんだから・・・」 ひょんな事からクラスメイトのアロイスと協力して、主人公は推し様と、アロイスはゲームの主人公である聖女様との相思相愛を目指すが・・・。

断罪後の気楽な隠居生活をぶち壊したのは誰です!〜ここが乙女ゲームの世界だったなんて聞いていない〜

白雲八鈴
恋愛
全ては勘違いから始まった。  私はこの国の王子の一人であるラートウィンクルム殿下の婚約者だった。だけどこれは政略的な婚約。私を大人たちが良いように使おうとして『白銀の聖女』なんて通り名まで与えられた。  けれど、所詮偽物。本物が現れた時に私は気付かされた。あれ?もしかしてこの世界は乙女ゲームの世界なのでは?  関わり合う事を避け、婚約者の王子様から「貴様との婚約は破棄だ!」というお言葉をいただきました。  竜の谷に追放された私が血だらけの鎧を拾い。未だに乙女ゲームの世界から抜け出せていないのではと内心モヤモヤと思いながら過ごして行くことから始まる物語。 『私の居場所を奪った聖女様、貴女は何がしたいの?国を滅ぼしたい?』 ❋王都スタンピード編完結。次回投稿までかなりの時間が開くため、一旦閉じます。完結表記ですが、王都編が完結したと捉えてもらえればありがたいです。 *乙女ゲーム要素は少ないです。どちらかと言うとファンタジー要素の方が強いです。 *表現が不適切なところがあるかもしれませんが、その事に対して推奨しているわけではありません。物語としての表現です。不快であればそのまま閉じてください。 *いつもどおり程々に誤字脱字はあると思います。確認はしておりますが、どうしても漏れてしまっています。 *他のサイトでは別のタイトル名で投稿しております。小説家になろう様では異世界恋愛部門で日間8位となる評価をいただきました。

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

婚約破棄された際もらった慰謝料で田舎の土地を買い農家になった元貴族令嬢、野菜を買いにきたベジタリアン第三王子に求婚される

さら
恋愛
婚約破棄された元伯爵令嬢クラリス。 慰謝料代わりに受け取った金で田舎の小さな土地を買い、農業を始めることに。泥にまみれて種を撒き、水をやり、必死に生きる日々。貴族の煌びやかな日々は失ったけれど、土と共に過ごす穏やかな時間が、彼女に新しい幸せをくれる――はずだった。 だがある日、畑に現れたのは野菜好きで有名な第三王子レオニール。 「この野菜は……他とは違う。僕は、あなたが欲しい」 そう言って真剣な瞳で求婚してきて!? 王妃も兄王子たちも立ちはだかる。 「身分違いの恋」なんて笑われても、二人の気持ちは揺るがない。荒れ地を畑に変えるように、愛もまた努力で実を結ぶのか――。

転生モブは分岐点に立つ〜悪役令嬢かヒロインか、それが問題だ!〜

みおな
恋愛
 転生したら、乙女ゲームのモブ令嬢でした。って、どれだけラノベの世界なの?  だけど、ありがたいことに悪役令嬢でもヒロインでもなく、完全なモブ!!  これは離れたところから、乙女ゲームの展開を楽しもうと思っていたのに、どうして私が巻き込まれるの?  私ってモブですよね? さて、選択です。悪役令嬢ルート?ヒロインルート?

処理中です...