ロストソードの使い手

しぐれのりゅうじ

文字の大きさ
36 / 102
ホノカ編

三十六話 ホノカ

しおりを挟む
「見てわかると思いますけど、ホノカはもう一人の祈り手なんですよ」
「じゃあ幼馴染の二人で祈るんだ」
「はい! 何だかすっごい運命なんですよね!」

 コノはホノカに親しげにボディタッチ。それにホノカは少し嫌がる素振りを見せつつも、満更でもなさそうで頬がほんのり赤らんでいた。

「う、運命とかそんな大層なもんじゃないだろ」
「そうかなー? だって七年に一度で、しかも同時に幼馴染の二人って超レアじゃない?」
「まぁそれはそうだけど、オレ達エルフは長生きだし、一度選ばれた奴は外れるから、超レアってほどじゃないだろ」

 そう言われると意外にもありえそうな確率な気がしてくる。

「でもでも、二人で神様に選ばれるのは物語の主人公みたいだし、すっごい素敵じゃない?」
「ただ祈るだけの人だし、物語にはならんだろ」
「もう、ホノカはすーぐ理屈っぽく言うんだから」
「コノハは夢見すぎなんだよ」

 二人は仲よさげにじゃれ合いの言い争いをする。対して僕は完全にその輪の中の外にいて、居心地悪く見ていた。

「まったく……ヒカゲも大変だろ、こういう感じだからさ」
「なにさーこういう感じって。ヒカゲさん、そんな事ないですよね?」

 突然そのバトルフィールドに立たされた。二人からどちら側につくのか問いただす視線を送られる。

「えっと……ほんのちょっとだけ大変かも」

 好意を向けられて嬉しいは嬉しいのだけど、困ってしまうのも事実で、思わずそう言ってしまう。

「そ、そんな~」
「本当にちょっとだけだから……その、気にしないで」
「あはは、やっぱりコノハはもう少し現実を見る目を持つべきだな」

 僕のせいでコノはしょぼんとしてしまい、どうしようかと思考を張り巡らせてると、手にあるぬいぐるみを思い出して。

「ご、ごめん。これもふもふして元気だして」
「あ……ふふっ、ヒカゲさんってやっぱり可愛いですよね」

 コノのぬいぐるみを手渡す。彼女はそれをむにむにさせて、微笑んだ。
「そのぬいぐるみオレか?」

「うん。何か記念で作ったとか言ってたよ」
「……それを買ったのか」
 ホノカの表情が理解できないってわかりやすく言っていて少し引きつっていた。
「何か可愛らしい趣味してんな」
「いいよね、あんなに強いのにギャップがあって」
「お、おう」

 何だか二人の価値観のズレが、僕とアオを見ているようで、つい過去の光景を想起させてしまう。

「オレなら強い武器とか買うけど、ヒカゲはそういうのには興味ないのか?」
「僕は昔から可愛い系が好きだったんだよね」

 変身ヒーローよりも魔法少女系のおもちゃを良く買ってもらっていた。アオはその反対。でも、互いに理解し合って、一緒に遊んでいた。

「わぁコノと一緒ですね。やっぱり運命の出会いだったんですよ!」
「おいおい、ただ趣味が同じだけだろ」
「それだけじゃないもん。出会ったこととか色々含めてそう感じたの。ホノカが何を言っても絶対運命だから」
「はいはい、わかったよ」

 コノの頑として譲らないといった様子にホノカは呆れ顔で折れる。

「それより、二人は何してたんだ?」
「ヒカゲさんに村の案内をしていたの」
「ふーん。じゃオレも一緒していいか?」

 僕とコノは同時に頷く。そうして、立ち話を終わらせて、ホノカと一緒に北側の方に向かうことに。
 神木のある場所から学び舎の方面の道も傾斜になって長い道が伸びている。前なら辟易していただろうけど、最近鍛え出した僕としてはトレーニングになりそうで、意気揚々と進んだ。

「学び舎って言いましたけど、実はそこにホノカの家でもあるんです」
「どういうこと?」
「他の人の家みたいにでかい木の中に学び舎とオレん家があるんだ。他にも医療所も入ってる」

 そう会話して、少し息が上がりだしたぐらいにようやく登りきった。そこは、整地された場所は限られておりあまり広さがなくて、幅も五人くらいが横に並べるくらい。そこから先は深い森になっている。道としては直線のみで、その奥には太く高さのある木があった。
「あそこです」
「めっちゃ大きいね」
「この村の中で一番だからな」

 異世界の学び舎とはどんな感じなのだろう。戦い方の勉強とか魔法の勉強とかするのかな。そんな風に色々と想像していると、レイアちゃんのことを思い出す。彼女も学校に通っていたっけ。

「……そういえば」

 レイアちゃんが死んでしまったのはカイトさんとエルフの村でテーリオ族の人に襲われたからだった。そして、つい最近にコノがテーリオ族の中のウルフェンに殺されそうになっていた。それに村の中でも暴れていると言っていたし。

「まさか」
「どうしたんですか?」

 色々なことが繋がり、思考の方に意識が集中してしまい足を止めてしまう。どうして気づかなかったんだろう。自分のバカさ加減に呆れそうになる。

「あいつらが侵入してきたぞー!」

 突如南の方面から大声が聞こえてきた。その切羽詰まった声音に、思わず振り返ってしまう。それから間もなくして悲鳴や戦闘の音が鳴り響いた。瞬時にあの人狼の姿が思い浮かんで。

「くそっまたかよ!」
「嫌……」

 恐らくその侵入者とはウルフェンのことだろう。ホノカは怒りを滲ませていて、コノは身体を縮こませて怯え出す。
 平穏な村の日常は破壊され、強い緊迫感が満たした。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【長編版】悪役令嬢の妹様

ファンタジー
 星守 真珠深(ほしもり ますみ)は社畜お局様街道をひた走る日本人女性。  そんな彼女が現在嵌っているのが『マジカルナイト・ミラクルドリーム』というベタな乙女ゲームに悪役令嬢として登場するアイシア・フォン・ラステリノーア公爵令嬢。  ぶっちゃけて言うと、ヒロイン、攻略対象共にどちらかと言えば嫌悪感しかない。しかし、何とかアイシアの断罪回避ルートはないものかと、探しに探してとうとう全ルート開き終えたのだが、全ては無駄な努力に終わってしまった。  やり場のない気持ちを抱え、気分転換にコンビニに行こうとしたら、気づけば悪楽令嬢アイシアの妹として転生していた。  ―――アイシアお姉様は私が守る!  最推し悪役令嬢、アイシアお姉様の断罪回避転生ライフを今ここに開始する! ※長編版をご希望下さり、本当にありがとうございます<(_ _)>  既に書き終えた物な為、激しく拙いですが特に手直し他はしていません。 ∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽ ※小説家になろう様にも掲載させていただいています。 ※作者創作の世界観です。史実等とは合致しない部分、異なる部分が多数あります。 ※この物語はフィクションです。実在の人物・団体等とは一切関係がありません。 ※実際に用いられる事のない表現や造語が出てきますが、御容赦ください。 ※リアル都合等により不定期、且つまったり進行となっております。 ※上記同理由で、予告等なしに更新停滞する事もあります。 ※まだまだ至らなかったり稚拙だったりしますが、生暖かくお許しいただければ幸いです。 ※御都合主義がそこかしに顔出しします。設定が掌ドリルにならないように気を付けていますが、もし大ボケしてたらお許しください。 ※誤字脱字等々、標準てんこ盛り搭載となっている作者です。気づけば適宜修正等していきます…御迷惑おかけしますが、お許しください。

明日を信じて生きていきます~異世界に転生した俺はのんびり暮らします~

みなと劉
ファンタジー
異世界に転生した主人公は、新たな冒険が待っていることを知りながらも、のんびりとした暮らしを選ぶことに決めました。 彼は明日を信じて、異世界での新しい生活を楽しむ決意を固めました。 最初の仲間たちと共に、未知の地での平穏な冒険が繰り広げられます。 一種の童話感覚で物語は語られます。 童話小説を読む感じで一読頂けると幸いです

貧弱の英雄

カタナヅキ
ファンタジー
この世界では誰もが生まれた時から「異能」と「レベル」呼ばれる能力を身に付けており、人々はレベルを上げて自分の能力を磨き、それに適した職業に就くのが当たり前だった。しかし、山奥で捨てられていたところを狩人に拾われ、後に「ナイ」と名付けられた少年は「貧弱」という異能の中でも異質な能力を身に付けていた。 貧弱の能力の効果は日付が変更される度に強制的にレベルがリセットされてしまい、生まれた時からナイは「レベル1」だった。どれだけ努力してレベルを上げようと日付変わる度にレベル1に戻ってしまい、レベルで上がった分の能力が低下してしまう。 自分の貧弱の技能に悲観する彼だったが、ある時にレベルを上昇させるときに身に付ける「SP」の存在を知る。これを使用すれば「技能」と呼ばれる様々な技術を身に付ける事を知り、レベルが毎日のようにリセットされる事を逆に利用して彼はSPを溜めて数々の技能を身に付け、落ちこぼれと呼んだ者達を見返すため、底辺から成り上がる―― ※修正要請のコメントは対処後に削除します。

絡みあうのは蜘蛛の糸 ~繋ぎ留められないのは平穏かな?~

志位斗 茂家波
ファンタジー
想いというのは中々厄介なものであろう。 それは人の手には余るものであり、人ならざる者にとってはさらに融通の利かないもの。 それでも、突き進むだけの感情は誰にも止めようがなく… これは、そんな重い想いにいつのまにかつながれていたものの物語である。 ――― 感想・指摘など可能な限り受け付けます。 小説家になろう様でも掲載しております。 興味があれば、ぜひどうぞ!!

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

アラフォーおっさんの週末ダンジョン探検記

ぽっちゃりおっさん
ファンタジー
 ある日、全世界の至る所にダンジョンと呼ばれる異空間が出現した。  そこには人外異形の生命体【魔物】が存在していた。  【魔物】を倒すと魔石を落とす。  魔石には膨大なエネルギーが秘められており、第五次産業革命が起こるほどの衝撃であった。  世は埋蔵金ならぬ、魔石を求めて日々各地のダンジョンを開発していった。

【完結短編】ある公爵令嬢の結婚前日

のま
ファンタジー
クラリスはもうすぐ結婚式を控えた公爵令嬢。 ある日から人生が変わっていったことを思い出しながら自宅での最後のお茶会を楽しむ。

【完結】異世界で魔道具チートでのんびり商売生活

シマセイ
ファンタジー
大学生・誠也は工事現場の穴に落ちて異世界へ。 物体に魔力を付与できるチートスキルを見つけ、 能力を隠しつつ魔道具を作って商業ギルドで商売開始。 のんびりスローライフを目指す毎日が幕を開ける!

処理中です...