ロストソードの使い手

しぐれのりゅうじ

文字の大きさ
65 / 102
ホノカ編

六十五話 仄かな最後の夕食

しおりを挟む
「そんじゃ、そろそろ行くか」
「そうだね。じゃあ皆コノ達は行くね」

 しばらく彼らと話していて、そろそろ戻る流れになりホノカがそれを口にして、コノも同調した。

「コノハお姉ちゃん達頑張れよ!」
「応援してます!」

 男の子二人から無邪気な声援を受けた二人は似たようにはにかんだ。

「お兄さんも頑張ってね」
「うん、ありがとう」
「それと何か進展あったら教えて」
「……了解です」

 この子は最初からぶれないな。苦笑しつつも、その芯の強さはずっと持っていて欲しいなと思う。

「「「ばいばーい」」」

 僕達は彼らに手を振って東側を後にして、村長の家の帰り道に乗った。

「随分彼女に懐かれていたな」
「何でだろうね。最初からあんな感じだった気がする」
「まさか改たなライバルが……?」

 コノは小声で危機感を呟くが、多分そんな感じじゃないと思う。ヒューマンドラマを観察したいのだろう。

「それよりもこの後はどうしようか?」
「やる事も終わったし、明日も早いし今日はもう家で過ごそうぜ」
「さんせーい」

 ということで僕達は寄り道はせず家に戻った。

*

 夕食までは家で一人で読書をしたり、二人に誘われて軽く雑談したりちょっとした遊びをしたりと、まったりとした時間を過ごした。空が藍色になる頃に僕達はオボロさんに呼ばれて大部屋で食卓を囲んだ。

「今日はホノカが好きなエルフ鍋だ」
「おおっ! サンキューじいちゃん」
「しっかり味わうのだぞ」

 机の真ん中に大きな鍋があり、それぞれに掬って入れるお椀が置かれている。中身は緑色のスープで満たされていて、そこに具であるカラフルな野菜と肉が入っていた。

「うわぁ美味しそう……」
「それじゃあ手を合わせて」
「「「「いただきます」」」」

 いつも通り自然の恵みに長く感謝をしてから、全員同時に鍋の中ををつついた。

「これは……」

 入っている色々な具材をまとめて取って、そのまま口に入れると、濃厚なスープにスッキリとした味わいでシャキシャキした野菜達と甘みのある肉が混ざり合って、それぞれの味の悪い部分打ち消し合い、最初から最後まで美味のまま飲み込めた。そしてその温かさが身体に優しく流れてホッとする。これは長く食べても飽きがこなさそうだ。

「やっぱり最高です、エルフ鍋。ユウワさんは……って顔を見ればわかりますね」
「相変わらずおぬしは黙々と美味しそうに食べるな。作り手として嬉しい限りだ」

 二人から見守られるようにまじまじと顔を見られ食べづらくなる。そんなむず痒くて和やかな雰囲気の中、肝心のホノカはぱっとしない表情でいて。

「ホノカ、もしかして口に合わなかったか?」
「いや合わないんじゃないんだけどさ……」

 ホノカは頬をかきながら、気まずそうに思案した後に意を決してたのか、一度呼吸を整えると口を動かした。

「実は、亡霊になってから味覚が薄くてさ。最近になってそれがひどくなってんだよ。それに、腹も減らなくなっててるし。まぁ、食わないと魔力が回復しないから胃に入れないといけないんだけどな」

 彼女はできるだけ軽い雰囲気を出そうとする口調ではあったけど、声には微細な震えがあって。

「……もう慣れてるからそんな深刻そうにしないでくれ」
「そうだったんだ。ホノカ……ごめんね気づいてあげられなくて」
「こ、コノハ……」

 コノはホノカを柔らかく抱きしめた。それをされて、驚きに目を大きくしてから噛みしめるようにゆっくり瞼を閉じる。

「ありがとなコノハ。オレは大丈夫」
「ほ、本当に? 無理はしてない?」

 数秒してからコノの胸から離れたホノカは雪解け水のような微笑をたたえていた。

「ああ。味覚は少しはあるし、料理に込められた想いは感じられるからな。じいちゃんありがとな、すげぇ温かかったよ」
「……そうか。良かったよ、ホノカ」

 オボロさんの瞳はホノカの笑顔によってうるうるしている。

「ユウワも、そんな顔すんなよ。オレは気を遣われるのが一番嫌なんだ。それに、幸せそうにしてる奴を見るとこっちも幸せになるし美味しく感じられるんだ」
「うん……わかった。全力で味わうよ」
「ははっ、そこまでじゃなくていいけど。頼むげ」

 彼女の思いを汲んで僕達はさっきと変わらず、とまではいかなかったけれど、頬が緩むような空気感で食事を続ける。ホノカとの最後の夕食を後悔しないように。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

異世界生活〜異世界に飛ばされても生活水準は変えません〜 番外編『旅日記』

アーエル
ファンタジー
カクヨムさん→小説家になろうさんで連載(完結済)していた 【 異世界生活〜異世界に飛ばされても生活水準は変えません〜 】の番外編です。 カクヨム版の 分割投稿となりますので 一話が長かったり短かったりしています。

【魔女ローゼマリー伝説】~5歳で存在を忘れられた元王女の私だけど、自称美少女天才魔女として世界を救うために冒険したいと思います!~

ハムえっぐ
ファンタジー
かつて魔族が降臨し、7人の英雄によって平和がもたらされた大陸。その一国、ベルガー王国で物語は始まる。 王国の第一王女ローゼマリーは、5歳の誕生日の夜、幸せな時間のさなかに王宮を襲撃され、目の前で両親である国王夫妻を「漆黒の剣を持つ謎の黒髪の女」に殺害される。母が最後の力で放った転移魔法と「魔女ディルを頼れ」という遺言によりローゼマリーは辛くも死地を脱した。 15歳になったローゼは師ディルと別れ、両親の仇である黒髪の女を探し出すため、そして悪政により荒廃しつつある祖国の現状を確かめるため旅立つ。 国境の街ビオレールで冒険者として活動を始めたローゼは、運命的な出会いを果たす。因縁の仇と同じ黒髪と漆黒の剣を持つ少年傭兵リョウ。自由奔放で可愛いが、何か秘密を抱えていそうなエルフの美少女ベレニス。クセの強い仲間たちと共にローゼの新たな人生が動き出す。 これは王女の身分を失った最強天才魔女ローゼが、復讐の誓いを胸に仲間たちとの絆を育みながら、王国の闇や自らの運命に立ち向かう物語。友情、復讐、恋愛、魔法、剣戟、謀略が織りなす、ダークファンタジー英雄譚が、今、幕を開ける。  

ブラック企業でポイントを極めた俺、異世界で最強の農民になります

はぶさん
ファンタジー
ブラック企業で心をすり減らし過労死した俺が、異世界で手にしたのは『ポイント』を貯めてあらゆるものと交換できるスキルだった。 「今度こそ、誰にも搾取されないスローライフを送る!」 そう誓い、辺境の村で農業を始めたはずが、飢饉に苦しむ人々を見過ごせない。前世の知識とポイントで交換した現代の調味料で「奇跡のプリン」を生み出し、村を救った功績は、やがて王都の知るところとなる。 これは、ポイント稼ぎに執着する元社畜が、温かい食卓を夢見るうちに、うっかり世界の謎と巨大な悪意に立ち向かってしまう物語。最強農民の異世界改革、ここに開幕! 毎日二話更新できるよう頑張ります!

異世界ハズレモノ英雄譚〜無能ステータスと言われた俺が、ざまぁ見せつけながらのし上がっていくってよ!〜

mitsuzoエンターテインメンツ
ファンタジー
【週三日(月・水・金)投稿 基本12:00〜14:00】 異世界にクラスメートと共に召喚された瑛二。 『ハズレモノ』という聞いたこともない称号を得るが、その低スペックなステータスを見て、皆からハズレ称号とバカにされ、それどころか邪魔者扱いされ殺されそうに⋯⋯。 しかし、実は『超チートな称号』であることがわかった瑛二は、そこから自分をバカにした者や殺そうとした者に対して、圧倒的な力を隠しつつ、ざまぁを展開していく。 そして、そのざまぁは図らずも人類の命運を握るまでのものへと発展していくことに⋯⋯。

魔道具は歌う~パーティ追放後に最高ランクになった俺を幼馴染は信じない。後で気づいてももう遅い、今まで支えてくれた人達がいるから~

喰寝丸太
ファンタジー
異世界転生者シナグルのスキルは傾聴。 音が良く聞こえるだけの取り柄のないものだった、 幼馴染と加入したパーティを追放され、魔道具に出会うまでは。 魔道具の秘密を解き明かしたシナグルは、魔道具職人と冒険者でSSSランクに登り詰めるのだった。 そして再び出会う幼馴染。 彼女は俺がSSSランクだとは信じなかった。 もういい。 密かにやってた支援も打ち切る。 俺以外にも魔道具職人はいるさ。 落ちぶれて行く追放したパーティ。 俺は客とほのぼのとした良い関係を築きながら、成長していくのだった。

神様から転生スキルとして鑑定能力とリペア能力を授けられた理由

瀬乃一空
ファンタジー
普通の闇バイトだと思って気軽に応募したところ俺は某国の傭兵部隊に入れられた。しかし、ちょっとした俺のミスから呆気なく仲間7人とともに爆死。気が付くと目の前に神様が……。 神様は俺を異世界転生させる代わりに「罪業の柩」なるものを探すよう命じる。鑑定スキルや修復スキル、イケメン、その他を与えられることを条件に取りあえず承諾したものの、どうしたらよいか分からず、転生した途端、途方にくれるエルン。

鬼死回生~酒呑童子の異世界転生冒険記~

今田勝手
ファンタジー
平安時代の日本で魑魅魍魎を束ねた最強の鬼「酒呑童子」。 大江山で討伐されたその鬼は、死の間際「人に生まれ変わりたい」と願った。 目が覚めた彼が見たのは、平安京とは全く異なる世界で……。 これは、鬼が人間を目指す更生の物語である、のかもしれない。 ※本作品は「小説家になろう」「カクヨム」「ネオページ」でも同時連載中です。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

処理中です...