ロストソードの使い手

しぐれのりゅうじ

文字の大きさ
71 / 102
ホノカ編

七十一話 亡霊の力

しおりを挟む
「アアアア」

 亡霊は狙いを定めたように僕に爪を向けてくる。どうやらターゲットはホノカから僕へと移ったようだ。

「もしかして攻撃した相手に反応してるのかな」
「みたいだな。今はお前を狙ってるぞ」
「それなら攻撃をしなければ無害なんじゃ?」
「いや、今はそうだが亡霊はいずれあらゆる生命体を破壊し尽くす怪物となる。被害を抑えるため倒すなら今しかないだろう……」

 振り返るとオボロさんが苦しそうに片膝立ちになっている。

「じいちゃん大丈夫か」
「魔力を使いすぎたようだ。すまぬが回復するまで頼んだぞ」
「わ、わかりました」
「ユウワさんは心配せず相手の事を。コノが回復魔法をかけますから」

 そう言って彼女はオボロさんに触れて回復魔法を発動。ホノカも強力な魔法の反動からか直ぐ側で呼吸を整えている。
 僕も休みたいところだけど、そうも言っていられない。身体に鞭を打って力を入れ直し立ち上がった。

「……はぁ!」

 地面を強く蹴って亡霊との距離を縮める。そのリアクションで亡霊も同じく走り出した。

「アアァァァ!」

 強くなってるとはいえ、動きに変化はない。見切って最小限の動作で回避し、反撃の拳をぶつける。

「オオ?」
「くっ」

 だけど怯む様子もなく再び襲いかかってくる。そしてまたカウンター、再起、カウンター。そう繰り返す。
 しかし効かない。まるで手応えがなくてまるでゾンビだ。まぁ亡霊はそれと同じような存在だろうけど。

「ぜぇ……ぜぇ……」

 ギュララさん状態は長くは持たない。このままだとジリ貧で負けてしまう。

「アアアア!」
「デス……クロー!」

 意志のない突撃に身体を後ろに傾けて避けて、間髪いれずに赤黒い爪を振り下ろした。

「オオォォォォ!?」

 少しの手応えと共に亡霊を地面の上を滑らせる。

「がぁっ!?」

 技を終えると同時に心臓に鋭い痛みが走る。思わず座り込んでしまう。

「ユウワさん!」
「き、来ちゃ駄目だ。まだあいつは……」
「ウウウゥゥ?」

 案の定普通に起き上がってしまう。ただ多少のダメージは入っているのか、身体を気にしている素振りを見せた。

「デスクローを当てても駄目なんて……」
「ユウワ、オレが引き付ける。その内に少し休んどけ」
「た、助かるよ。無理はしないでね」
「フレイム! こっちだ、亡霊野郎!」

 復活したホノカが僕の前に出る。それから魔法をぶつけて注意を引くと、僕達から亡霊を離すように動き回り攻撃し続けた。

「ユウワさん、どこが痛みますか、」
「し、心臓の辺りが少し。それに結構な疲れがあって」
「ええと、効くかはわからないですけど魔法かけますね。ハイヒール!」

 コノの手が僕の左胸にそっと置かれて、そこから出る優しい緑の光に包みこまれる。少しすると、疲労感の方は和らいできて、荒くなっていた息も整ってきた。

「どうですか?」
「少し楽になった。ありがとう」
「その、無茶はしないでくださいね」
「わかってる。生きて必ずコノを守るから」

 深呼吸を一つ。気を入れ直して僕は再度足腰に力を込めた。

「ぐぉ!?」
「ホノカ!」

 そして戦線に復帰したその入れ替わりにホノカがコノの方へと吹き飛ばされ、地面を転がった。

「オレは大丈夫だ、気にせず戦え!」
「うん!」
「オオォォ」

 生半可な攻撃じゃあ通用しない。限りある回数のデスクローを確実に当てていって倒すしかない。
 今はホノカの方にヘイトが向かっていて、目の前に立つ僕には無防備でいる。チャンスだ。

「っ……デスクロー!」

 ホノカへと迫る亡霊に全力の一撃を叩き込んだ。こちらに眼中にない亡霊に当てるのは簡単で確実にぶつけられ、吹き飛ばした。

「がぁぁ……!」
「ゆ、ユウワさんっ!」

 焼きつくような心臓に激痛が走り、声を出した時血を吐くのではないかと思うほどだった。全身に脂汗がダラダラと垂れて、意識も揺らいだ。

「……オォ」
「まだ……だめか」

 技を喰らった亡霊は余裕そうに地面を両足で踏みしめていて、ぶつけた方であるこっちが膝をついて痛みに苦しんでいて。
 そんな僕に狙いを変えたように影が迫ってくる。

「ま、まずい」
「我が援護する。サンダー!」
「アァ?」

 稲妻がほとばしる。それを受けた亡霊は光の源流の方へと意識がそれた。

「ち、チャンスだ……」

 よろよろと真っ直ぐに身体を立たせた。すでに意識にモヤがかかりだして、息もしづらくなっている。それでも、これでないと止められないんだ。

「ユウワさん、無茶は駄目です!」
「で……デス……クロー」

 コノ声を振り切ってエネルギーを溜め込んだ。絶大な力に染まっていく。

「うぉぉぉ!」
「オオォ?」

 更に威力を高めるため加速して亡霊に肉薄。そして、隙だらけの身体に右腕を大きくアッパーに振りかぶって。

「なっ」
「ムダ……ダ」

 オボロさんを見ていた顔が僕の方に向いた。その一瞬、デスクローは空を切った。

「シルバークロー!」
「しまっ……」

 闇に飲まれていた爪が鈍く銀色に瞬き、それが恐ろしい速度で襲いかかってくる。

「ぐぅぅぅぅぅ」
「ユウワ!」
「ユウワさん!」

 反射的に左腕でそれをガード。引き裂かれ意識がショートしたかのように真っ赤に点滅する。身体が衝撃に弾かれて、地に転がされ全身を打ちつけた。

「があぁぁぁぁ!」

 それと同時に受けた傷を消し飛ばす、心臓を握りつぶされたような苦痛が脳天を貫いた。瞬間、力が失われて身体が元に戻ってしまって。

「ぁぁぁぁ……」
「オワリダ」

 亡霊が僕を見下ろす。でも、もはや何も考えられない。痛い、痛い、痛い、苦しい、苦しい、苦しい。それだけが思考を満たした。

「させるかよ! バーニング!」
「恩人を死なす訳にはいかぬ! スパーク!」
「チッ……メンドウナ」

 意志を持ち出し亡霊は連続で放たれる魔法のダメージを嫌って後ろに飛び退いた。

「今助けます! ハイヒール!」
「うぅぅ……」
「今度はオレ達の番だ。どうやらあいつは面倒な状態になったらしい」
「うむ。破壊の怪物になりかけのようだ」

 コノに再び回復魔法をかけてもらい、次第に意識がはっきりしてくる。そして腕の出血とその痛みも段々と弱まる。ただ、ギュララさんの力の反動の疲れと痛みは健在で。

「こ、コノ……早く戻らないと……」
「む、無理ですよ! もう身体がボロボロです!」

 僕を見るコノは泣きそうな顔でいて、全力で止めようと頭を横にふる。

「でも……このままだと」
「ぐはぁっ!」
「ぬぉぉ!」

 亡霊に立ち向かったホノカとオボロさんが、僕と同じようにやられて近くに倒れ込んでしまう。

「コノテイドカ。後は……」
「ひっ……」

 亡霊は、次はお前だとコノを指で指し示した。そして、一歩ずつ死をもたらそうと迫ってくる。

「させない!」
「う、動いちゃ……」
「僕はコノの勇者なんだ。命に代えてでも守る!」

 僕は気合で身起き上がりロストソードを手に持って、亡霊と対峙した。

「駄目……逃げて」

 ギュララさんの力が使えない僕が真っ向から戦えば間違いなく負ける。それに、ホノカとオボロさんの援護も期待できないそんな絶望的状況。

「大丈夫、必ず勝つ」

 だけど唯一で、そして確かな勝ち筋を僕は信じていた。

「……来たっ」
「ナニ?」

 亡霊の背に水の魔法が放たれた。まさに冷水を浴びせられた亡霊は、後ろを振り返る。

「またせたな!」

 そこにはサグルさんを含めた多くの村の人達がいた。信じていた応援が来てくれた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

異世界生活〜異世界に飛ばされても生活水準は変えません〜 番外編『旅日記』

アーエル
ファンタジー
カクヨムさん→小説家になろうさんで連載(完結済)していた 【 異世界生活〜異世界に飛ばされても生活水準は変えません〜 】の番外編です。 カクヨム版の 分割投稿となりますので 一話が長かったり短かったりしています。

【魔女ローゼマリー伝説】~5歳で存在を忘れられた元王女の私だけど、自称美少女天才魔女として世界を救うために冒険したいと思います!~

ハムえっぐ
ファンタジー
かつて魔族が降臨し、7人の英雄によって平和がもたらされた大陸。その一国、ベルガー王国で物語は始まる。 王国の第一王女ローゼマリーは、5歳の誕生日の夜、幸せな時間のさなかに王宮を襲撃され、目の前で両親である国王夫妻を「漆黒の剣を持つ謎の黒髪の女」に殺害される。母が最後の力で放った転移魔法と「魔女ディルを頼れ」という遺言によりローゼマリーは辛くも死地を脱した。 15歳になったローゼは師ディルと別れ、両親の仇である黒髪の女を探し出すため、そして悪政により荒廃しつつある祖国の現状を確かめるため旅立つ。 国境の街ビオレールで冒険者として活動を始めたローゼは、運命的な出会いを果たす。因縁の仇と同じ黒髪と漆黒の剣を持つ少年傭兵リョウ。自由奔放で可愛いが、何か秘密を抱えていそうなエルフの美少女ベレニス。クセの強い仲間たちと共にローゼの新たな人生が動き出す。 これは王女の身分を失った最強天才魔女ローゼが、復讐の誓いを胸に仲間たちとの絆を育みながら、王国の闇や自らの運命に立ち向かう物語。友情、復讐、恋愛、魔法、剣戟、謀略が織りなす、ダークファンタジー英雄譚が、今、幕を開ける。  

ブラック企業でポイントを極めた俺、異世界で最強の農民になります

はぶさん
ファンタジー
ブラック企業で心をすり減らし過労死した俺が、異世界で手にしたのは『ポイント』を貯めてあらゆるものと交換できるスキルだった。 「今度こそ、誰にも搾取されないスローライフを送る!」 そう誓い、辺境の村で農業を始めたはずが、飢饉に苦しむ人々を見過ごせない。前世の知識とポイントで交換した現代の調味料で「奇跡のプリン」を生み出し、村を救った功績は、やがて王都の知るところとなる。 これは、ポイント稼ぎに執着する元社畜が、温かい食卓を夢見るうちに、うっかり世界の謎と巨大な悪意に立ち向かってしまう物語。最強農民の異世界改革、ここに開幕! 毎日二話更新できるよう頑張ります!

魔道具は歌う~パーティ追放後に最高ランクになった俺を幼馴染は信じない。後で気づいてももう遅い、今まで支えてくれた人達がいるから~

喰寝丸太
ファンタジー
異世界転生者シナグルのスキルは傾聴。 音が良く聞こえるだけの取り柄のないものだった、 幼馴染と加入したパーティを追放され、魔道具に出会うまでは。 魔道具の秘密を解き明かしたシナグルは、魔道具職人と冒険者でSSSランクに登り詰めるのだった。 そして再び出会う幼馴染。 彼女は俺がSSSランクだとは信じなかった。 もういい。 密かにやってた支援も打ち切る。 俺以外にも魔道具職人はいるさ。 落ちぶれて行く追放したパーティ。 俺は客とほのぼのとした良い関係を築きながら、成長していくのだった。

神様から転生スキルとして鑑定能力とリペア能力を授けられた理由

瀬乃一空
ファンタジー
普通の闇バイトだと思って気軽に応募したところ俺は某国の傭兵部隊に入れられた。しかし、ちょっとした俺のミスから呆気なく仲間7人とともに爆死。気が付くと目の前に神様が……。 神様は俺を異世界転生させる代わりに「罪業の柩」なるものを探すよう命じる。鑑定スキルや修復スキル、イケメン、その他を与えられることを条件に取りあえず承諾したものの、どうしたらよいか分からず、転生した途端、途方にくれるエルン。

鬼死回生~酒呑童子の異世界転生冒険記~

今田勝手
ファンタジー
平安時代の日本で魑魅魍魎を束ねた最強の鬼「酒呑童子」。 大江山で討伐されたその鬼は、死の間際「人に生まれ変わりたい」と願った。 目が覚めた彼が見たのは、平安京とは全く異なる世界で……。 これは、鬼が人間を目指す更生の物語である、のかもしれない。 ※本作品は「小説家になろう」「カクヨム」「ネオページ」でも同時連載中です。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

異世界転生~チート魔法でスローライフ

玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。 43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。 その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」 大型連休を利用して、 穴場スポットへやってきた! テントを建て、BBQコンロに テーブル等用意して……。 近くの川まで散歩しに来たら、 何やら動物か?の気配が…… 木の影からこっそり覗くとそこには…… キラキラと光注ぐように発光した 「え!オオカミ!」 3メートルはありそうな巨大なオオカミが!! 急いでテントまで戻ってくると 「え!ここどこだ??」 都会の生活に疲れた主人公が、 異世界へ転生して 冒険者になって 魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。 恋愛は多分ありません。 基本スローライフを目指してます(笑) ※挿絵有りますが、自作です。 無断転載はしてません。 イラストは、あくまで私のイメージです ※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが 少し趣向を変えて、 若干ですが恋愛有りになります。 ※カクヨム、なろうでも公開しています

処理中です...