私は悪役令嬢なのか、脇役なのか、モブなのかを知りたい

千代子レイ子

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13 ここは勇者ハーレムパートらしい

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※性匂わせあり。注意。


「うぃーす。……よろしくお願いしゃっーす」

 勇者様と呼ばれる青年が気だるく部屋に入ってきた。まぁ、帰って早々に魔王城へとんぼ返りじゃそうなるだろう。

 だがこの舐めた態度。日本のなんちゃってヤンキーバイト君を思い出す。普通の令嬢なら即アウトだけど、私は既視感が懐かしくて少し前世に酔いしれる。

 そこへ今度は教会から派遣されたと思われる女性が2人現れた。

「あっ、居た居た!! 勇者様ですか? こちらこそよろしくお願いしまーす!! 私はララっていいまぁーす!」
「わぁ。本物の勇者様だ! よろしくお願いしまーす!ミカでぇーす!」

 若い聖女2人が勇者に釘付け状態になっている。……私はどうやら眼中にないらしい。たが揃ったのならこちらも挨拶しなければならないでしょう。

「……勇者様をサポートするアルファー伯爵家が娘、リコリスでございます。初めての旅ですので色々ご迷惑をおかけすると思いますがよろしくお願いいたしますわ」

 とりあえず令嬢らしく愛想笑いをして反応を見る。

 (うん。全員無反応なのね。ならこちらもそれでやらせてもらうわよ!!)

 こうして気だるく居心地の悪い仲間と魔王城への旅が始まった。


「いやー、魔素の森まで伯爵様の馬車だと楽だわ」
「? 勇者様はいつもどのように行かれてらしたの?」
「あー、俺、元傭兵の平民だから勇者でも下っ端なんすよ! だから給料良くても保険ないから節約していつも乗り合い馬車使ってたんすよねぇー……」
「交通費は支給されていませんの?」
「されますよ。だからこそ、そこを浮かせて乗り合い馬車なんすよ!」

 (……なるほど。 急に話し掛けたのは私が金払いのいい貴族だからゴマすりして機嫌良くなっているのね。はぁ……現金過ぎるわぁ……)

 不満を腹に押し込んで上機嫌な勇者様の話を聞く。

「なので今回はとても楽で助かってるんす! しかもお嬢様が俺の魔素を完全回復してくれたし、宿も立派な部屋で有難いっす!」
「魔素の森からは大変ですからね。せめてそれまでは体力を減らさぬよう万全の状態で向かいたいのです」
「ありがてぇ!! でもお嬢様は凄く不安に思ってるみたいですけど、実は魔素以外はそんなに森は怖くないんすよ?」

 勇者様の話だと、どうやら魔素の森は濃度が濃い分、魔物は大人しく刺激しなければ襲って来ないとのこと。むしろ普通の森よりも安全らしい。

 しかも果物や魚などは人間が食べても特に影響はないそうだ。

「でも、なるべく最短で進むんで頑張って付いてきて下さい!」
「はい。よろしくお願いします」



 こうして魔素の森まで最短で行き、勇者様と聖女2人に状態異常回復の魔法をかけて歩いて行く・・・・・

「魔素の森の内部までは気を付けて欲しいっす。ここが1番魔物に会うと厄介な場所なんすよ」
「どうしてなんですかぁ?」
「魔物は空気を一定時間吸い込むと神経をやられて狂暴になるんすよ。まぁ、人間が魔素にやられるように魔物も空気が毒みたいなもんと考えてくれればいいっす!」

 (狂犬病みたいなものかな? 境目が1番両者にとって危険ってことね)

「えぇー!!ララこわーい!! でもでも、勇者様が守ってくれるよね?」
「ずるーい! ミカも勇者様に守ってもらいたい~!!」
「も、勿論守るっすよ!!」

 2人の聖女に挟まれてデレデレになる勇者様。そしてその勇者様の腕からこちらを見下したように蔑む2人の聖女。

 (いや、お前らのハーレムに元から入る気ないから! 勝手にライバル意識持たれても困るんですけど? それにこちとら伯爵令嬢ぞ? 身分社会分かってる? 封建時代に随分大胆なことが出来る聖女様だねぇ……)

 内心面倒な事になりそうだと溜め息を吐くと何を勘違いしたのか聖女2人はニヤニヤとこちらへ勝ち誇ったような顔を向ける始末だ。

 (……この先不安しかねぇー!!!)




 予想は悲しくも当たり、魔物が出るたびに可愛く悲鳴をあげては勇者様に抱き付く聖女たち。しかしここはもう内部のため魔物が出たとしても大人しいから、これはもはや彼女たちのパフォーマンスだ。

「ごめんなさ~い。勇者様ぁ。ララ恐くってつい~」
「いいよ! 俺がララを守るって約束したからさ!」
「あ~ん! 勇者様、優しいから大ー好き!!」
「お、俺もララちゃん可愛くて好きだよ!!」
「あっ! ララ!! 抜け駆けずるーい!!」

 (……おいおい! 勇者様よ! 最短で魔王城に行くんじゃねぇのかよ!! 両腕に聖女侍らしてイチャイチャしながら旅すんの勘弁して!!)

 だがこれはまだ序の口だった。魔王城までは最短で2日。遅くとも4日で行ける道のりなのに、この勇者様……いや色ボケ勇者は聖女たちとイチャイチャしたいため、それはそれはゆっくりと行くのだ。

 (……確かにこの森は虫はいないし、魔物は大人しいから魔素さえなければ本当にとても安全だわ。でもさぁ……)

「あん! もう、勇者様のエッチ! それは夜になってからって言ったでしょ?」
「勇者様! 今日は私もいっぱい可愛がってね! ひゃん! もう! 勇者様ったら! 今はまだダメだよぅ!」
「えー、ちょっとぐらいいいじゃん。ララも夜まで本当に待てる?」

 そう予想通りこの勇者と聖女(性女)たちはくっついた。もはや私の為に付けてくれた彼女たちは単なる勇者の性処理係になっており、今や私が彼女たちのメイドだ。

 (まぁ、勝手にマウントとって勇者の性処理してくれるから純潔は守られているし、勇者も流石に伯爵令嬢に手を出すとヤバいことは理解しているようだからそこは文句ない。……ないけど……)

「お嬢様! ちょっとここらで休憩しよう。 俺らは水を汲んで来るから!」
「……はい」

 (そう、やたらと休憩して性女たちとエッチしまくるから全然先に進まない!! 最短は?!! 今や最長だよ!!)


 案の定2時間後に勇者たちは帰ってきた。これでまた今日中に付くはずの魔王城には行けない。

「ごめん! ごめん! 2人が水浴びもしたいって言うから遅くなっちゃったよ!」
「えー! 私たちのせいじゃないでしょう! 勇者様も一緒に水浴びしたじゃない!」
「まっ、水浴びだけじゃなくてぇ~、気持ちいいこともしちゃったけどぉ。アハッ!!」
「…………」

 こうして勇者ハーレムを無理やり観賞させられながら、やっと魔王城についたのは次の日の夕方だった。
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