私は悪役令嬢なのか、脇役なのか、モブなのかを知りたい

千代子レイ子

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16 元聖女も被害者だった?

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 今回の事件は国を揺るがすものとして大々的に魅了に関する全てのことを禁止する法律が迅速に決められ流布された。

 そして緊急事案にも関わらず、わざと遅滞進行した勇者と聖女(性女)2人は厳しく罰せられ、特に今回の事で教会は品位を損なわれたと激怒した。

 当然2人も聖女剥奪と永久に教会に立ち入ることを拒否された。これは実質市民権を失くしたにも等しい。

「いやー!! 教会から拒否されたら何処で暮らせばいいのよ!! 石を投げつけられる生活なんて嫌!!」
「何でよ!! 何で私がこんな目にあってるのよ!!」

 門前で騒ぐ2人へ本当に石が投げつけられた。振り向くとそこには憎悪に歪む顔をした人々が石を拾っている。

「おい! ここに例の女達がいるぞ!!」
「ひっ!!」
「あっ! 逃げたぞ!!」


 彼女達は結局勇者を頼り、その勇者は何故かリコリスを頼って家まで来る図々しさをもっていた。

 本来なら追い返す処だが、ここで見殺しにするのも気が引けたので話だけならと招き入れる。

「……何故私の所に?」
「俺は罰せられて更に厳しい場所に移動となった。それは自業自得だし伯爵令嬢様に無礼を働きまくったからと理解しているっす」
「私へ無礼を働いたお詫びでしたら結構ですよ。緊急事態でしたし許しましょう。まぁ、遅滞注意を無視したことは貴方自身に罰が課せられてますのでもういいです」

 すると今まで勇者の隣で静かにしていた1人の元聖女が、いきなり立ち上がったと思ったらリコリスにカップを投げつけてきた。

 幸い避けたのでリコリスは無事だが紅茶がかかったソファーは染み抜きが大変そうで申し訳ない。

「伯爵令嬢が何よ!! 勇者様はヒーローなのよ! 令嬢の子守りのために私達教会の聖女が何で行かなきゃならないのよ! 平民だからって私は、あんたのメイドじゃないわ!!」

 物凄い怒鳴り声に一瞬怯むが実際メイド仕事をしたのはリコリスの方なのでその怒りは理不尽だ。

「……どんな内容で教会から派遣されたのかは知りませんが(予想はついてたけど)実際メイドのように魔王城まで給仕などしたのは私です。それでも不満なのですか?」

 さすがにこれは不味いと思ったのか、もう一人の元聖女が慌てて止めに入る。

「そ、そうだよ! あんたちょっとおかしいよ? 令嬢だからって森で見下して何もしなかったのは事実じゃん。しかも助けを求めてるのにその言い方は幾らなんでも酷いよ!」
「あぁ? 裏切るの? あん……た……ア……ガガ……アアエエ!!!!」

 その瞬間怒鳴っていた聖女から意味不明な奇声が発せられたと思ったら蝙蝠のような羽が生えて、そのまま凄い勢いでガラス窓を破って飛び去ってしまう。

「なっ!!」
「えっ?! 何?!!」
「…………」

 三者三様に驚いていると騒音に家の護衛が部屋に雪崩れ込んできた。

「お嬢様!! どういたし……!! お嬢様の安全を!!」
「!! いや、私は平気だからガラスの撤去と城への報告を先に!!」
「はい!!」
「勇者と元聖女もそのままに! 逃げたら要らぬ疑いがかかりますよ!」

 2人はリコリスの言葉にただただ頷いた。



 その後の展開は予想外に早かった。飛び去った元聖女は別件で魔王城へ帰る途中だった魔王陛下に捕まり、体内にあった魅了の秘宝と対になり奪われていた嫉妬の宝珠を所持していたらしい。

「これは宝珠自身が対である魅了の元に帰りたがったんだろう」

 ヴァンパイア公爵は奪われた2つが戻ってきて嬉しそうに語ったと言う。

 だがこちらとしては戦争になりかねない事件だ。まさか2つの強力な宝珠がわが国に有るとは思わなかったし、魅了事件と繋がっていた事もあり早急に犯人を見つける必要がある。



「この度は本当に申し訳ございませんでした。記憶は有るのですが何故あんなことをしたのか分からないほど後悔しております……」

 宝珠を抜き取られた元聖女は人が変わったように今までの非礼を土下座する勢いで謝られ、何故勇者様との旅であのようなことをしてしまったのか分からないと号泣していた。

 教会もこの事件で内部に敵勢力がいるかもしれないと魔王城に再度検査依頼を頼んだそうだ。

 (それにしても……教会が魔王城を頼るって……異世界だとしても違和感が拭えないなぁ……)


 そしてこの事件から半年後、勇者は元聖女2人と大人しく暮らしているらしく、こちらはもうほっといていいだろう。



 それよりも今は被害にあったカイン様たちの方が深刻だ。

「皇太子は事実上もう死期は近い(老人)だろうし、男爵令嬢に加担していた男たちは軒並み使い物にならない。ある意味カインだけが軽傷ですんだ。だがそれでも10才ほどは老けたがな」

 リコリスの父親が書類を見ながら遠回しに婚約をどうするか聞いてくる。破棄してもしなくてもリコリスはもう傷物だ。

 だが今回の功績で陛下からの信頼を得たことだけが不幸中の幸いなのかもしれない。

「……カイン様はなんと?」
「さあな……。治療中にて話し合いは今は無理だと言っている。事実かは知らんがな……」
「そうですか……」

 ただリコリスはもう一度カインに会いたかった。城で再会した時、すがるように声をかけてきた彼の姿が忘れなれなかったのだ。

 (あの時すぐにイバン様が止めたから会話はしてないのよね)

「では、治療が終わり次第話し合いの席を設けてください」
「いいのか? 何時になるのかわからんぞ?」
「はい。今後の為と思ってください」
「分かった」

 こうしてリコリスはその時を待つことにした。 
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