私は悪役令嬢なのか、脇役なのか、モブなのかを知りたい

千代子レイ子

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28 黒幕

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 マーガレット様は運が良いと言ったが私は違うと思っている。何故なら初めから彼女たちの行動はおかしかったからだ。

 あの時はそれが高位貴族に対する嫉妬だと思ったが、彼女たちは聖女と言えど平民だ。封建制度が根強いこのご時世に女と言えど貴族に逆らえばどうなるかなど、子供でさえ知っている。

 なのに彼女たちは嫉妬の宝珠の力だとしてもあからさまだった。きっと飲み込む前は正義感の強い聖女だったのかもしれない。

 (だって宝珠が取り除かれた聖女は別人のようだったもの。きっと心の底にまだあった彼女の正義感に助けられたんだわ。男性は出してしまえば落ち着くから……)

 聖女たちに反省していると、またマーガレット様が爆弾を落としてきた。

「それに折角カルフィシファー公爵家の見取図も時間帯も人員も全部教えてあげたのに、あっさり失敗するんだもの。エリザベスも使えないわ」
「なっ!! あれもお前の仕業だったのか!!」
「? そうよ? だってリコリスが邪魔じゃない」
「邪魔はお前だ!!」
「何ですって! 私のカインを奪った挙げ句、恥までかかされたのよ! 許せる筈がないでしょう!!」
「俺はお前の物になったことは1度もない!! 俺は俺だ!!」

 あまりの事にカイン様がついに爆発した。

 それにしてもあの誕生日事件から凄い執念だ。逆恨みもここまで来ると怨念に近い。

「……辺境伯の娘である貴女が何故そこまで権力があるのですか? とてもお金だけだとは思えない……」
「ふっ、勘もいいのね。そうよ。辺境伯うちのパパはとっても私に甘いの。それに皆の信頼もとても厚のよ? パパからのお願いと言えば何だって聞いてくれるの。魔王城にだってお願いすれば連れていってくれる人がいるくらいにわね」
「でもいくら対処法があったとしても魔王城は魔素の瘴気にまみれていて状態異常回復者か耐性を持つ者でなければ無理です!」

 私が指摘するとマーガレット様は待っていましたと言わんばかりに微笑む。

「リコリス。状態異常回復者や耐性持ちだけがあそこに行けると思っているの?」
「? 魔素を分解か取り除かなければ人は狂い死にます」
「そうね。普通はね?」

 クスクスと新しい玩具でも見つけたようにマーガレット様の顔は楽しそうに歪む。

「それ以外だと言うのですか?」
「ふふ。なんだと思う?」

 (悪役令嬢のてっぱんは、黒魔法か闇魔法だ。つまりその法則でいくのならマーガレット様は分解も除去もしない。なら答えは1つ。吸収だ。魔素をエネルギー変える力。魔物たちと同じ能力が使えるか備わっているんだ)

「……空気で気が狂うこともないんですね……」
「…………えぇ。平気よ。へぇ……直ぐに答えへたどり着くのね。つまらないわ」
「えっ? どう言うこと?」

 1人蚊帳の外にいるカイン様は会話についていけていないので、説明すると顔を真っ青にした。

「ふふ。化け物と叫ぶ? 助けは来ないから好きなだけ罵倒でも何でも叫ぶといいわ!」
「貴女は魔王城から何個の宝珠を盗んだのですか?」
「? さぁ?」
「さぁって……大罪ですよ?!」

 罪の意識が皆無なマーガレット様はある意味貴族らしく細かいことには無関心だ。

「……昔も思ったけど、リコリスは変わっているわね。これから死ぬのに意味の無い正義感を貫いてどうするの?」
「リコリスは殺させない!!」
「自身の心配よりピアノの機能を最優先するくらいですものね。今度は何を優先するのかしら?」

 問う表情は答えを求めてはいない。ただ有るのは私の絶望か死のみだ。

 だから最後にどうしても気になる質問をした。

「……何故カイン様なんですか? 高位の男性なら皇太子や他の男性だっていますし、美しい人もいましたよね?」
「…………忘れたわ……」
「えっ?」
「でもそうね。皇太子だけは位だけの馬鹿だから初めから無いわね。だからあれを押し付けられたエリザベスには当時、流石に同情したわ」

 (悪役令嬢に完全拒否されるうちの王子ってどうなんだ?
王室教育どうなってるの陛下!!)

「カイン! 最後の忠告よ。リコリスを置いて私の所に来なさい!」
「行かねぇよ!」
「そう。残念だわ」

 全然残念とも思ってない顔でマーガレット様は何か呪文を唱えた。その瞬間私とカイン様の周りに黒い靄が出たと思ったら、あっと言う間に包み込まれてしまう。

 (恐い!! 状態異常回復で何とかなるのだろうか?)

 カイン様にしがみついて祈るように魔法をかけ続けた。目の端にはつまらなそうに爪の出来映えを確認するマーガレット様が写る。

 (どうしよう! どうしよう! この靄が何なのか分からないけどきっと良くないものなんだろう)

 私は無力だ。今迄は運だけで何とかなっていたが、もしかしたらここまでかもしれない。

 心の中で産まれたばかりの息子を想うと悔しくて涙が出そうだったが、これをマーガレットに見せるわけにはいかない。

 (泣くな! マーガレットが喜ぶだけだぞ!!)

 カツをいれて目をつぶると何故か赤ん坊の泣き声が聞こえる。

 (えっ? 幻聴? いや、この声はヘンリー?!)

 再び目を開ければ、そこには愛息子のヘンリーが泣き声を上げながらふわふわ浮いているではないか。

「?!!!」

 気付いた時にはマーガレットの靄を飛び出していて、息子を胸に抱きかかえていた。
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