私は悪役令嬢なのか、脇役なのか、モブなのかを知りたい

千代子レイ子

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30 その後 【最終回】

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 マーガレット様の悪事が露見して事態は大きく動いた。

 まさか辺境伯の末娘が私利私欲の為だけに動いていたとは思わず、帝国、魔王城、教会を巻き込む甚大な被害の結果に陛下は戦いたと言う。

 そして疑っていた帝国も蓋を開ければ被害者だったので、そりゃ「帝国がしっぽを出さない」ではなく「始めからしっぽなどない」が正解だったのだ。

 マーガレットは両者に種を蒔き疑心暗鬼にさせることで自分に目がいかないようにする巧みな戦術を仕掛けていた。宝珠を持っていたとしても流石は悪役令嬢と言うところか。

 次に帝国へ誘拐された事件もエリザベス様があの食事を共にした第二王子と結ばれたいが為に何らかの弱味を握られて仕方なく起こしたようだ。なので後日涙ながらの謝罪を第二王子と共にしてくれた。

「なるべくお怪我などされないようにしたかったのですが、マーガレット様の監視が厳しくて……うっ、うっ、申し訳ございません……」

 (そうか。だからあの時王子は誘拐ではなく訪問なのだと苦し紛れの事を口にして悪役を演じ、両者がなるべく傷つかないように配慮したのか)

 今回の事件、私利私欲と言うことだが全部『恋』が原因だ。マーガレット様も男爵令嬢も王子たちもエリザベス様も全員の共通点はそれだ。

 全く恋とは麻薬のようだ。美しく甘美に見えるが手を出せば狂いもがき苦しむのに手放せない。

 きっと私も心のどこかでこれが恐いから踏み込めなかったのかもしれない。

 (まぁ、もう息子もいるし、自立しても生きていける程の地盤は作ってあるから失恋してもそこまで狂わないと思うけど、どうなんだろう?)

 それにしても私は全然、悪役令嬢にはなれそうもないとかマーガレット様を見て思ったけど、母親になり守る存在が出来たとたん、武闘派のチンピラ令嬢に変貌したのでキレたらある意味私も極悪令嬢になる素質は十分だったのかもしれないと今更考えを改めた。



 

「私、弟が欲しかったの!!」

 カルフィシファー公爵家の末娘、エスメラルダ様は私達の息子をそれはそれは可愛がった。

 (エスメラルダ様、弟ではなく正確には甥っ子ですよ)

 心の中で突っ込みながらもその情景を微笑ましく見守る。


 後から聞いた話だが帝国に行っていたケント様はやはり今回の魅了事件も兼ねて訪れていたらしい。

 (まぁ、弟が事件に巻き込まれたんだ。黒幕が帝国だと聞けば探りに行きたくはなるだろう)



 あれからマーガレット様や辺境伯はその事件の大きさから死罪となり一族は取り潰しとなる。そして新たにカルフィシファー公爵家がその後を継ぐことになった。

 なので次男のカイン様が今度の辺境伯となり私はまた違った意味で忙しくなりそうだ。

「リコリス!」
「あら、今日はお早いお帰りだったのですね」
「あぁ。だからここにきた」
「お迎えもせずに申し訳ございません」
「構わないさ。ヘンリーを見ていたのだろう?」

 相変わらずの美貌で微笑まれ私はクラクラする。

「エスメラルダ! まだヘンリーと遊ぶか?」
「まぁ、お兄様ったら失礼しちゃうわ! 私はヘンリーと遊んでいるのではなく、お世話をしているのよ!」

 甥っ子が出来て嬉しいエスメラルダ様はお姉さんとしてのお世話をしたくて仕方ないお年頃だ。なので私や乳母の仕事をすぐにやりたがる。

 こちらも目が離せない状況だ。

「エスメラルダ! やっぱりここに居たのね! お勉強の時間はとっくに過ぎてるじゃない! 先生も探していたわよ」
「お勉強はいいの。私はヘンリーのお世話をしなくちゃいけないから!」
「ヘンリーの事はリコリスと乳母に任せないといつも言ってるでしょう!」
「嫌よ! 私の弟なんだから私が面倒を見るのよ!!」

 母親の公爵婦人といつものように喧嘩するエスメラルダ様はご覧の通り息子を離さない。

 なので辺境へ向かう時、それはそれは荒れたのだ。

「嫌! やめて! ヘンリーを返して!! 私の弟よ!!」

 泣きわめくエスメラルダ様は癇癪を起こしてついには痙攣まで起こる事態に陥り、大人たちは頭を悩ませた。

「エスメラルダ、弟ならこれから俺が頑張るから待っていろ!」
「?! ちょっ、ケント様!!」
「ん? 産んでくれるだろうガーネット?」
「そ、その言い方は卑怯ですわ!」
「なら今夜からいっぱい頑張ろうか」
「!! バカ!!」

 エスメラルダ様を餌にイチャイチャし始めた長男夫婦に顔をぐちゃぐちゃに濡らした本人は激怒。

「弟なら誰でもいいんじゃないのよ!! ヘンリーはこの世に1人しかいないのに玩具みたいに言わないで!! ケントお兄様は人でなしだわ!! ヘンリーに謝って!!」
「!!!……これはこれは……。そうだな。今のはお兄様が悪かったな。カイン、リコリス、ヘンリー、申し訳ない」

 それでもまだ怒りが収まらないエスメラルダ様は肩で息をしながら泣いている。

 私はその発言と涙に心打たれて気付けば同じように泣いていた。

「?! リコリス!!」
「す、すみません。あまりにも嬉しくて感動してしまいました」
「そうだね。ここまでヘンリーを想ってくれる親族がいることは喜ばしいね。よし、エスメラルダ質問だ」

 カイン様の胸で泣く私を優しく包み込みながら目線はエスメラルダ様へと向けられた。

「俺たちと辺境に行くとヘンリーとは一緒に居られるが、父上も母上もケント兄上もいない。だがここにいればヘンリーとは居られないが「辺境へ行くわ!!」

 最後まで話す前にエスメラルダ様はお決めになった。

 こうして私達はエスメラルダ様を連れて辺境の地へ赴くことになる。

 そして新たな領主としての生活が始まり、これからも私は物語の『めでたしめでたし』を目指して生きていくだろう。

【完】


※番外編が3つほどあります。

 元聖女と会う話が前半後半であり、最後にほのぼの家族話で完全終了になります。
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