私は悪役令嬢なのか、脇役なのか、モブなのかを知りたい

千代子レイ子

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番外編1 元聖女たちのその後

 新たな土地で領主の妻、母親と忙しく働く私にカルフィシファー公爵家から近況の手紙が届いた。

 内容はエスメラルダ様の体調などを心配する親らしい事と王家の話しだった。

 王家は新しく留学していた第2王子を呼び戻し皇太子とし、第1王子の婚約者だったエリザベス様を帝国へのお詫びとして第2王子のイベリス様の婚約者として新たに発表したらしい。

 (エリザベス様にとっては思わぬ幸運ね。大好きな人と結婚出来ることになったんですもの)

 そしてカルフィシファー公爵家もガーネット様のご懐妊が分かり、来月結婚式だと言うのに悪阻が酷いらしい。

 お義母様は「兄弟揃って下半身が我慢出来ない未熟者で申し訳ない」と書かれていて笑ってしまった。そんな私もそろそろ2人目が出来そうなくらいカイン様とは仲睦まじい。


 そんなある日領地の視察にカイン様と同行し、近くのベンチに腰を下ろして休んでいたら隣にドカリと座る音がした。護衛が直ぐ様剣を抜こうとするのを私は即座に止める。

「……お久しぶりですね。ミカ・・さん」
「あの時は色々あってさ、ちゃんと謝れなかったから、ここできちんと謝罪しようと思ってね」
「もうよろしいですよ。貴女も被害者だったのですから」
「ううん。ララはそうでもあたしは違うから」

 ここは辺境の外れも外れ。勇者と元聖女たちがここで暮らしていると噂では聞いていたけれど会えるとは思わなかった。なので急に彼女の方からの接触にビックリはしたが思っていたより嫌悪感はなかった。

「あたしにとってララはさ、全てなんだ。頭も悪くて要領も悪いあたしをララだけは見捨てなかった。腐ってる教会で聖女として何とかやってこれたのは全部ララのおかげだった」

 元聖女のミカはこちらに顔を向けずに前を見ながら淡々と話し始めた。

「だからあの志操堅固って言うの? 自分の考えが絶対だと盲目に信じる馬鹿女に嵌められた時にさ凄く後悔したんだ。大切なララを守ることが出来なくってね」

 声は次第に震えていき、涙を堪えているようだった。

「でもさあたしも元々馬鹿たから守る方法を間違えたんだ。貴族令嬢に逆らうことがどんなに愚かなことだってくらい理解はしてたよ。けどあたしはララを止めなかった。ララがそうしたいなら応援しようと思ったんだ」
「……勇者様を2人で共有することに嫌悪感は無かったのですか?」
「全然! むしろ大好きなララとずっといれるんだって喜んじゃったよ! まぁ勇者はどうだか知らないけど」

 (いや、これ幸いと喜んでいるんじゃない? あの旅でもこちらには目も向けずに、あんたらと盛り上がれば朝昼晩関係なく森の奥へ行ってたし、魔王城でも魔素の存在を忘れるくらいだったじゃん)

「だからさ、お嬢様の屋敷でララが変貌した時、私の人生も終わったと思ったんだ。きっとララは殺される。そうなれば私はララ無しに生きていけないから死ぬだろうってね」

 ミカのララへの執着度は最早信仰だ。腐っていた教会内部がどうなっていたかは知り得ないが、きっとそうでもしないと生きていけない環境だったのかもしれない。

「でもお嬢様はあたし達を許してくれた。辺境でここはほぼ自給自足だけどさ凄く今が楽しいんだ! ララも昔みたいに戻ってくれて子供たちも元気に過ごしているしね!」
「お子さんも生まれたのですね」
「うん。3人とも元気いっぱいだよ!」

 (はぁ? 3人? 計算が合わないんだけど? 聖女2人が妊娠しても出産までの時間がおかしい)

「えっ? 3人?」
「そっか、お嬢様はララとあたししか知らなかったね。追放されてここに来た時にさ、あたしの妊娠が分かって大変だったんだ」
「悪阻ですか?」
「それもあったけど、妊娠してしまえばあたしは捨てられるとララは思ったらしいんだ。あたしは別に勇者から捨てられても何ともないんだけど、ララは違った。勇者に捨てないでくれと懇願したんだ」

 (それはまた空腹のライオンへ霜降り肉を放り込むようなことでは?)

「そしたら誤解した勇者が感激してあの時以上にララと燃え上がってねぇ……。さすがのあたしも呆れたよ」

 (きっと妊娠ほっぽといてヤりまくったんだろうな)

「そんな時に神の悪戯かララにそっくりな旅人が家の納屋で勝手に休んでたんだよ」
「……まさか……」
「そう、ララを溺愛していた勇者が間違えて襲っちまったんだ。しかもルル……あっ、あの娘の名前ね。ルルは貴族の隠し子だったんだ」
「えっ?」

 (ってか勇者何してんだよ! 本当に下半身だらしねぇな!)

「いやー、あの時は焦ったよ。でもさ運良く? ルルはその貴族にとっても厄介者だったらしくて、大金と一緒に引き取れって金をぶつけられて汚物みたいな扱いをされたよ。あの時はどれだけお嬢様が寛大で優しい方だったんだって思い知った」

 (きっとその貴族はメイドか愛人が産んだ子供を厄介払いしたかったんだろう。まったく下衆な話だ)
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